かつて。
プレシア・テスタロッサが墜ちていった虚数空間。
白き箱舟、超弩級戦艦ジェイアークもまた、その特異な空間の中を漂っていた。
ソール11遊星主との戦闘でエネルギーを消耗したのか、推力が上がらず、暗黒の世界をーー彼らの感覚で言えば──下へ下へと墜落していくのだった。
このまま、ジェイアークは何処までいくのだろうか。
底が見えるまで、果たして力が持つのか。
ペンチノンがしきりに不安を表明した。
各センサーから得られる情報からは、あまり明るい材料が少ない。
GとJの相乗効果があったとしても、いづれは力尽きるだろうからだ。
そうなる前に脱出しなければ。
だが、ソルダートJもルネ・カーディフ・獅子王も絶望してはいなかった。
これまでの苦難の戦いから、2人は諦めなければ必ず闇を突破出来ると判っていたから。
それを教えてくれた人達は此処にはいない。しかし。心は繋がっていると信じている。
故に、GストーンもJジュエルも輝きを失わない。
希望は勇気を産み出す。
「Zマスターとの戦いも生き残った私だ……」
回想する。
あの時、自分たちは生命を喪っても不思議ではなかった。だが、彼は生き延び、そして仲間たちを護った。
「ルネ、お前にはやり残したことがあるのだな」
「あぁ」
真っすぐな瞳で答えた。
「母さんの仇……バイオネットを潰す」
「その目的に力を貸す、私はそう誓った……」
「だから」
「ここで死ぬ訳にはいかぬ」
生きる意志に呼応し、2人の宝石が眩い光を発する。
「J、空間の様子が変わってきた」
ペンチノンからの報告。
一体、どれくらい虚数空間にいるのか……ジェイアークの機器ですら計測できなかった。
Jの勘では一週間程ではないか、と予測したがもとより自信はない。
「そろそろ底が見えてきたか?」
落下していく先の色が、虹の色を帯びていた。
まるで夢の様な、奇妙な光景だ。
「さて、ここから何が待ち構えているのやら……」
ルネは不敵に笑った。まさに猛獣の笑み。
「何があろうと、我等はーー」
虹の中にジェイアークは包み込まれていった。
「戦い抜くまでだ」
そして。
ジェイアークの巨体は万華鏡の如き空間のうねりに飲み込まれ、消えていった。
……大河幸太郎が眼を覚ました時、彼が率いる艦隊は、漆黒の只中を漂流していた。
ここはどこだ? いや、皆は……?
朦朧とした頭から霧を振り払うかのように、首を振った。
「おい、大丈夫か?」
心配そうに大河に掛けたのはモヒカンヘアの巨漢ーー火麻激だった。
「大丈夫だ……それより」
「いま、耕助とパピヨンが状況を分析してる」
「む……」
曖昧な記憶の中から、パピヨン・ノワール、正確にはその複製体はピザ・ソールの能力によってその存在が維持されている情報を拾い上げた。
「では、ここは……」
三重連太陽系なのか?
「我々は、あの爆発によって出来た穴目掛けて突入したはずだ……」
遊星主が次元ゲートの様な空間を開いたのだと判断し、ガオガイガーに続いて後を追った。
そして、突入時の衝撃により意識を失い────
「ここは一体、何処なんだ……?」
「わしらが知っている宇宙ではないようですね」
猿頭寺耕助が乱れた髪を掻きながら報告してきた。
「わしらが来た宇宙でも、三重連太陽系でもない、全く未知の宇宙、と思われます」
「なんだって……」
凱や護たちの姿も感知できない。
GGG艦隊は、未知の宇宙を彷徨う存在となっていた。
まるで彷徨えるオランダ人だと、大河は独りごちた。
「長官、私のセンシングマインドが告げています」
パピヨンは遠くを見るような顔つきで言った。
「私達は何らかの役目を果たす為に、この宇宙に導かれたのだと……」
「導かれたっテ、何ニでしょうカ?」
スタリオンが不安そうに訊いた。
微かにかぶりを振り、パピヨンは答えた。
「わかりません。ですが、私達には何かを求められている。でなければ……」
雷牙とスワンが目を丸くしてパピヨンを凝視する。
「私はこの宇宙から消えているはずです」
「!」
ピサ・ソールが無ければ彼女は、レプリジンは存在を維持できない。そのはずだった。
「ザ・パワーの様な、人智を超えた存在が、私達をここへ、呼び寄せた……?」
謎は深まるばかりだった。
その答えの端緒を教えるかのように、それは姿を現した。
「……あれは!」
「陸地!?」
惑星ではない。
平らな世界が……まるで古代人が描いた平面的な世界が。空間の中に浮かんでいた。
「信じられん」
「こんな……物理法則に反しておるぞ」
「この宇宙の物理法則は、私達のそれとは異なるのでしょう」
その世界は、地球を輪切りにしたくらいには大きいだろうか。
海面に陸地が浮かび、雲なども見える。
「うーん、どうします長官。何処かに着陸しますか?」
猿頭寺がコンソールを操作しながら大河に尋ねた。
「とにかく、だ。我々が如何なる状況の中にあるのか。それを確かめなければ。その手がかりは、あの地にあるはずだ」
いまのところ艦隊に重大な破損は見つかっていない。勇者たちにも異常はなかった。
大河は決断する。
「あの大きな大陸に降りよう」
「了解」
GGG艦隊は加速。
ぐんぐん、平面世界が近づいてくる。
『彼処に何がある……?』
南北アメリカ大陸にも似た地形の大地に、艦隊は降下していった。
パピヨンの脳裏に、その名が浮かんできたのは、艦隊が厚い大気へと突入する瞬間であった。
「フォーセリア……?」
それがこの宇宙の名前なのか。
「そして、この大陸は……」
大陸北部に拡がる広大な草原を着陸目標とした。
「クリスタニア……」
かくして。
神々が目論む通り、異界の戦士たちが神獣の大地に降り立ったのだった。
久々どころか何年ぶりの投稿でしょうか。