ナノガイガー戦記~勇者とエース~    作:かがみん

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第5章 戦いの記憶

かつて。

数多の世界が生まれ数多の文明が栄えた。しかし。如何なる世界も衰亡の運命を免れ得なかった。

……それは三重連太陽系も例外ではない。

紫の星。赤の星。緑の星。それぞれに高度な科学文明が咲き誇り、発達し繁栄した三重連太陽系。その世界も紫の星で誕生した技術によって終焉を向かえる。

怒り、妬み、憎しみなどに起因する負の感情から発するストレスの波動……マイナス思念。

紫の星ではマイナス思念を消去するためのプログラムが開発された。

プログラムとはある一定の目的を果たす為、人工的に創造された知性体の総称である。

マイナス思念浄化のために、Zマスターが創られた。

だが。そのマスタープログラムが暴走し、紫の星を機界昇華してしまったのだ。Zの力は有機物と無機物を融合させる生機融合が特徴である。マイナス思念を完全に消去するには、全知性体を機械に融合してしまえばよい、とZマスターは判断した。

かくして紫の星の住人はすべてZの力に取り込まれ機械と融合し、惑星全体が機界昇華により生命なき死の星と化して滅んだ。

Zマスターによる全有機生命体のゾンダー化。この事に脅威を覚えた赤と緑の星では、各々異なるスタンスで、事態に望んでいる。

「赤の星では、対Zマスター用の戦闘システムを構築した……」

その、護の言葉を本局からJが継いだ。

『あぁ。指導者アベルはZマスターを迎撃するため、我々ソルダート師団を、そこにいるラティオの力をコピーした生体兵器アルマと超弩級戦艦ジェイアーク、艦の制御を司る生体コンピューター《トモロ》を誕生させた。これらの複合戦力をもってアベルは万全の体勢を整えた……はずだった』

「はずだった?」

『何もかも、間に合わなかった、という事だ』

ソルダートJは自嘲気味に笑みを浮かべた。それは苦い記憶である。

『原種の侵攻は我々の予想を遥かに越えていた』

原種とは、Zマスターの分裂体のであり、総数は31体。故に機界31原種と称した。

アルマはこの原種と、対消滅する能力を持たされていた。いわば天敵である。ソルダートもジェイアークもアルマを確実に原種のもとに送り届けるために作られたのだ。

だが。

それらは役目を果たす事もなく原種の急襲にあい、アベルの戦闘システムはあっという間に瓦解(がかい)してしまった。

赤の星は機界昇華の為に滅んだ。

『私は……原種に破れ……原種の端末となった』

あの日のことをJは永遠に忘れないだろう。赤く染まる故郷の上で胸に刻まれた、敗北した戦士の屈辱と絶望感を。

先に原種の行動端末ゾンダリアンとなっていたトモロが、Jにゾンダリアンとして生きるように勧めてきたあの瞬間も含めて……

Jは原種に命じられるまま、機界四天王の一員ピッツァとして、数々の惑星を機界昇華に導いてきた。

そして。蒼の星地球において初めて彼は戦うに足るライバルに出会ったのである。

「僕が生まれた……緑の星も、やはり原種に滅ぼされた……」

護は緑の星の指導者カインの顔を脳裏に思い浮かべていた。

優しげな風貌の、生前ついに会うことの叶わなかった、実の父の姿を。

「緑の星が滅亡の寸前、指導者カインは、息子であるまだ赤ん坊だった僕を、対Zマスターの切り札である宇宙メカライオン・ギャレオンと一緒に、遥かな宇宙に逃したんだ……」

赤の星が機界昇華されたのを知ると、カインは浄解能力……アルマが持つのと同じ力を持って産まれた我が子、ラティオにすべての希望を託してギャレオリア彗星の彼方へと避難させた。そして自らは緑の星と運命を共にしたのである。木星決戦のさい、獅子王凱はカインの人格コピーと出会っている。

ギャレオリア彗星は赤と緑の星が開発した次元ゲートだった。ゲートは数百億の時を越えた太陽系に繋がっている。

そうして、ギャレオンとラティオは蒼の星地球へとやってきた。

 

当時、北海道旅行中であった天海勇・愛夫妻は、この赤ん坊のラティオをギャレオンから引き取り、息子として育てた。

一方、原種もラティオを追って次元ゲートに侵入しようとしていた。

彼らは尖兵としてゾンダリアン・パスダーを地球に送り込んだ。

「──天海夫妻はラティオという赤ん坊に護という名前をつけて、大切に育ててくれました。そして……その僕は普通の子供として生きてきました。自分が何者なのかも知らずに……」

だが。やがて運命の刻は廻ってきた。

小学三年生となっていた護は社会見学の途中、巨大ロボットの暴走に巻き込まれたのだ。

その巨大ロボットこそ、パスダーの侵略が始まった証であった。

巨大ロボットはゾンダーロボといい、ゾンダーメタルを人間に植え付けられて誕生する。

ゾンダーメタルは紫の星で開発されたゾンダークリスタルの亜種であり、人間のもつマイナス思念をエネルギーに変えて周囲の有機・無機物と融合を繰り返し成長を続ける。やがては負の感情からくる衝動に突き動かされ、破壊を行う怪物と化す。

パスダーはゾンダーを増やし地球を機界昇華させようとした。

後にEI-02と呼ばれるゾンダーロボの前に、護たちは死を覚悟するしかなかった。

しかし。

「その時。この、凱兄ちゃんが助けに来てくれたんだ!!」

護は今でもはっきり覚えている。危機に陥った護たちの前に颯爽と現れた若きサイボーグの姿を。

それが、勇者との最初の出会いだった。

その青年──獅子王凱こそが、地球をゾンダリアンから守るために結成された、地球防衛勇者隊《GGG》の機動隊長だったのである。

護が言うと、皆の視線は凱に集まった。

「なんだが照れるな……」

凱は頭を掻きながら、GGGについて説明した。

命が彼の話をフォローする。

それは、歴戦の猛者である管理局の者たちでも驚愕せずにはいられない、凄まじき勇者たちの物語であった。

 

──西暦2005年。

獅子王凱は人類史上初めて地球外知的生命体とのファーストコンタクトを果たした。

当時。凱は高校生でありながら、有人宇宙船スピリッツ号のパイロットに選ばれ、宇宙へと飛び立つ。それは木星圏で消息を絶った母・(きずな)を探す、第一歩になるはずのフライトだった。……しかし、結果としてそれは、彼の肉体に重大な危機をもたらすことになる。

地球に飛来した謎の飛行物体。

地球外知的生命体……ゾンダリアン・パスダーとスピリッツ号は遭遇したのである。

そして両者は衝突した。

この接触により、無惨にも機体はおろか、凱自身も深い損傷を負ってしまう。

その凱を救ったのは、鋼鉄の獅子。

それは、6年間の沈黙を破って覚醒したギャレオンであった。

ギャレオンはパスダーと交戦し、東京湾に墜落。パスダーは横浜に落下し甚大なる被害を地上に与えた。

日本政府はギャレオンを回収し詳しく調査を行った。そして数々のオーバーテクノロジーを入手する。これがGGG結成に繋がっていくのである。

一方、重傷を負い生死の境をさ迷う凱は、実父・麗雄(れお)博士からサイボーグ手術を受け一命を取り留めた。

麗雄博士はギャレオンから手に入れた異星文明の技術を用いて息子を救ったのだ。

特に、凱のサイボーグボディの維持は、緑の星が生み出した無限情報サーキット・Gストーンが無ければ不可能であったろう。

Gストーン。

ゾンダーメタルがマイナス思念をエネルギーに変換するのとは逆に、あらゆる生物が持つ生命の源……プラス思念である『勇気』をエネルギーへと変える。ラティオの力もまたこのGストーンが源泉にあった。

Gストーンは機械のジェネレーターとしても使用可能で、これまで実現が困難だった巨大ロボットの運営も夢では無くなった。

ギャレオンからもたらせれた情報により、いずれ異星人の侵略があることを予期した政府は、対異星人組織を秘密裏に作り上げた。それこそがGGG《Gutsy Geoid Guard》地球防衛勇者隊である。

宇宙開発公団の総裁を兼任する不屈の男・大河幸太郎を長官に頂いたGGGは、Gストーンを利用した超エネルギー機関GSライドを搭載した巨大ロボットを次々に配備し、有事に備えた。彼ら巨大ロボットたちは機動部隊の要であり、サイボーグとして蘇った獅子王凱が隊長だった。

その中心は竜神シリーズと呼ばれる一対のロボットたちで、それぞれ氷竜・炎

竜、雷竜・風竜という。彼らは合体することでさらに強大な竜神となるのだ。

他には諜報部に所属する隠密行動が得意なボルフォッグがいる。

しかし。あまたの勇者ロボのなかでも、機動部隊の勝利の鍵といえるのは、GGG最強の勇者王の他にないだろう。

護たちの前にゾンダーが出現した時、サイボーグ凱とギャレオンが救出に駆け付けた。

いかにサイボーグといえど、凱のみでゾンダーは倒せない。

倒すにはギャレオンの協力が必要だった。ギャレオンにはカインのためにフュージョンする機能が持たされていた。

凱がギャレオンの体内に収容・融合すると、システムが組み換わり、人型の形態へと変わる。即ち、メカノイド、ガイガーである。

ガイガーでもゾンダーに勝てない場合、長官の承認を得てファイナルフュージョンが行われる。

ステルスガオー、ライナーガオー、ドリルガオーの三機のガオーマシンとガイガーが一つになって誕生する勇者王。スーパーメカノイド、ガオガイガーである。

夢の島における初フュージョンを成功させたガオガイガーは、EI-02をたやすく撃破した。

だが、まだゾンダーメタルの知識がなかった凱は、摘出したゾンダーの核……ゾンダーメタルを素体ごと握り潰そうとした。

この時。天海護は己の力に覚醒した。

緑の光を放つ、羽を生やした妖精のような姿。護は無意識にガオガイガーの掌まで飛んで行き、ゾンダーメタルを浄解した。護の力で、ゾンダーの素体とされた人が、元に戻ったのだ。

その能力を請われ、護はGGGの仲間になった。特別隊員の扱いで、両親には秘密の、極秘の待遇である。

凱と護はゾンダーとの戦いを通じて絆を深め、素晴らしいコンビネーションでゾンダリアンの野望を挫いていった。

あるいは、二人はGストーンで結ばれた兄弟とも言えるだろうか。

地球防衛の戦いはついに東京を舞台とした決戦に発展する。

パスダーと機界四天王と最後の戦闘。凱は敬意すら抱きあったライバル、ピッツァと決着を着け、護の勇気はゾンダーメタルプラントによって危機に陥った人々を救った。

しかし。

かろうじて勝利したGGGだったが、新たに出現した機界31原種の奇襲で壊滅してしまう。

勇者王ガオガイガーも、原種により破壊された。

絶望した護の前に、一隻の戦艦が現れる。

阿蘇の火口より復活した光の翼。超弩級戦艦ジェイアーク。

そして護は行方不明だったクラスメートの戒道が、自分と同じ力を持つ異星人だと知る。

アルマとなった戒道は死の道を進んでいたゾンダリアン・ピッツァを、ペンチノンを浄解した。

本来の姿を取り戻したピッツァ、いや、ソルダートJ-002は課せられた使命を果たすため舞い上がった。原種を殲滅するために。ジェイアークは敢然と原種に立ち向かうのだった。

 

一方。GGGも国連の管轄下に移行して、新生GGG《Gutsy Galaxy Guard》宇宙防衛勇者隊となって再び立ち上がる。

地球軌道上のオービッドベースに基地を移し、宇宙空間用のスター・ガオガイガーなど、戦力を増強、ジェイアークも交えた原種との過酷な戦いに挑んだ。

原種は木星決戦において、全てのパーツが合体した完全体Zマスターとなり、GGGを苦しめた。

Zマスターは木星に眠る未知の超パワー《ジュピターX》を使い優勢に立つが、ジェイアークの捨て身の特効を受け、力の制御に失敗し、自滅とも言える形で敗れ去った。

とは言え、それでGGGの戦いは終わらなかった。

GGGオペレーター、卯都木命にかつてパスダーが植え付けた《機界新種》の種が覚醒し、命を素体に成長したのだ。

機界新種・ゾヌーダはゾンダリアンや原種を遥かに越える力を持ち、スター・ガオガイガーを苦戦させた。

ゾヌーダロボの物質昇華能力は凱を苛んだ。

熾烈な戦闘の果てに凱は愛する命と、共に死ぬ道を選ぼうとした。ここで、Gストーンは大いなる奇跡を起こした。

護の浄解とGストーンの輝きは、命をもとに戻し、サイボーグだった凱を血の通った肉体を持つ人間に生まれ変わらせた。

いや、それは普通の肉体ではなかった。

人間の限界を越えた超進化動力体。

超人エヴォリュダー。

それが獅子王凱が与えられた、Gの力の贈り物だった。

 

GGGは死闘の果てに原種大戦を生き抜き、地球を救った……。

だが。集結後に待っていたのは、友との別れだった。

天海護は言った。

──宇宙のあちこちに、機界新種が出現しているかもしれない、と。

もし、ゾヌーダのような存在により地球のように滅びの危機に陥っている星があるのなら、その人たちを守るために戦いたい、自分の力を困っている宇宙の人々のために使いたい、と決意を語った。

少年の旅立ちを誰もが悲しんだが、しかしその意思を抑えようとする者は一人もいなかった。特に、最も彼を愛する両親すらも、護の意思を尊重し、許可してくれた。

そして。星降る丘の上で。

少年は将来を約束した少女や、クラスメイト、GGGの仲間たちに別れを告げ、ギャレオンに乗って宇宙の闇へと駆け上がっていった。地球の平和を勇者に託して……。

だが。

護が旅立った理由は半ば嘘だった。

機界新種が現れたから、ではなく、彼が宇宙を目指したのは、カインからのメッセージを受け取ったことが動機なのだ。

嘘をついたのは両親を悲しませたくなかったからだ。息子は本当の子供ではない、いつか実の両親のもとへ、故郷へ戻っていって二度と還っては来ないのではないの

か。永遠に。

天海夫妻はつねにそれを恐れていた。護は両親を安心させるため、必ず還ってくると、笑顔で約束した。とは言え実父であるカインに会ってみたいのも事実であった。その人となりに触れてみたいと思った。

凱からは、カインは緑の星と運命を共にした、と聞いている。ところが、数日前、カインからのメッセージを思いがけず受け取ったのだ。カインは生きている。ギャレオンに送り込まれた人格コピーは、はっきりと己の生存を訴えた。

そして、カインは三重連太陽系の復興に、護の力を借りたいと申し出てきた。

失われた三重連太陽系を復活させのに自分が役に立つのならば、と、護はカインの頼みに応じた。

そうして。護は次元ゲートであるギャレオリア彗星を抜け、遥かなる三重連太陽系に向かっていったのである。

 

護とギャレオンが去った地球では、国際的犯罪シンジケート《バイオネット》が俄かに活動を激しくしていた。

GGGやシャッセールといった組織とバイオネットは対立を深めつつ、抗争を繰り返した。

流出したオーバーテクノロジーを利用するバイオネットは極めて危険な組織である。

そこで、GGGはガオガイガーに変わる新しい純地球産の勇者王の開発に着手した。

ガオファイガープロジェクトがそれである。

元バイオネットに所属していた天才少女アルエットの組んだプログラムにより完成したガオガイガーより安定した、ファイナルフュージョンが実現したのだ。

開発が最終に差し掛かったところで、命や機体がバイオネットに奪われるという事件が発生したが、 香港決戦にて無事にガオファイガーは初ファイナルフュージョンを達成した。凱は再び勇者王としての力を取り戻したのだ。

ガオファイガーは次々にバイオネットの野望を粉砕していった……。

やがて、彼らの元に緑の髪の少年が帰還する。大いなる謎と新たなる敵を伴って──カインの招きで三重連太陽系に到った護だったが、彼の前に姿を現した人物は、カインではなかった。

正確にはカインの人格を表面的に写しただけのペイ・ラ・カインであった。

即ち、偽物だ。

それはソール11遊星主からの招待状なのだった。

偽物のカインも遊星主の一人と知り、護は愕然とする。

しかし、三重連太陽系の復活に手を貸してほしいという、遊星主の言葉は真実だった。

赤の星の指導者であり、遊星主を束ねるアベルの願いに、違和感を覚えつつも、護は承諾した。

遊星主は元来、三重連太陽系の再生を担う守護神。Zマスターと同じ人工のプログラムではあるが、彼らが悪しき存在とは疑ってはいなかった。

それはとんだ間違いであると、すぐに思い知る事になる。

アベルは護にGクリスタルを破壊させるのが目的だった。

Gクリスタルは遊星主に懸念を抱いたカインが、対遊星主用に開発したアンチプログラムの母体である。ギャレオンは本来Gクリスタルの行動端末であり、フュージョンシステムも遊星主に対抗して造られた機構なのだ。

しかし、原種の侵攻によって急遽、システムはZマスター戦に対して再調整されて地球に送られたのである。

ギャレオンやGクリスタル、カインの遺産は遊星主用の切り札であるために、アベルには苦々しい存在だった。

Gクリスタルから放たれるジェネシックオーラは、遊星主の身体を破壊する。彼らが乗り込むことは難しい……だったらカインの息子ラティオを使えばよい。

護を騙し、Gクリスタルを破壊しようと謀るが、その目論みは護に知られてしまう。

そして。

護はたった一人、Gクリスタルを拠点に遊星主と戦い続けた。

その渦中、生死の貞かでないJや戒道と再会する。

そこで、彼らの口から太陽系が破滅に向かいつつある事を聞く。

全ては遊星主の画策によるものである。

遊星主は三重連太陽系を復活させるため、太陽系宇宙から暗黒物質を回収して利用していたのだ。

暗黒物質は目に見えない物質だが、銀河と銀河の間を支え、星々や生命の誕生する材料ともなりうる貴重なマテリアルだった。

もし、それが減少した場合、宇宙は収縮に向かうだろう。いわゆるビッグクランチと呼ばれる現象である。

遊星主により人為的に宇宙収縮現象が引き起こされ、結果、護たちの宇宙の滅亡が早まる可能性があったのだ。

護はなんとしてでも、遊星主の目的を阻止しようと決心した。

老いたる宇宙である三重連太陽系の復活と引き換えに、自分が育った宇宙を見殺しにはできない。

だが、戦力は圧倒的に遊星主が上回る。

戦局を挽回するにはGGGの力が必要だった。

Jと離れ離れになり、戒道の安否も確認できない状況のなか、彼は信じた。必ずGGGは来てくれる、と。

しかし。遊星主は巧妙である。彼らは地球に向かい、物質復元装置の核であるパスキューマシンを奪い去り、GGG艦隊を三重連太陽系に来るように仕向けた。そしてケミカル攻撃で隊員たちを無力化。唯一、戦意を持った凱をおびき出し、紙を引き裂くが如く、ガオファイガーを打ち砕いたのである。

護、命、ルネらは監禁されていたJを解放し、ジェイアークに乗り込むも、操り人形にされた凱と戦うことになってしまう。複製体とはいうが、最強の勇者王と勇者ロボ軍団だ。

Jがフュージョンしたキングジェイダーは苦闘を余儀なくされる。

レプリファイガーとの決戦。ゴルディオンハンマーの攻撃で必殺のジェイクォースを失うキングジェイダー。絶体絶命の護たち。

だが、凱を信じる護と命の心が、奇跡を起こす。

凱を操っていたケミカルボルトの呪縛を、二人の想いを受けて勇気ある誓いを取り戻した凱が断ち切ったのだ。

この時よりすでに、神話は始まっている。

 

目覚めしギャレオンは、凱を己に相応しき勇者として認め、ジェネシックオーラの力を与えた。勝利を確信していたアベルは焦りを覚える。

一時的に撤退するつもりだったのかは不明だが、彼女は三重連太陽系を照らす太陽……いや、物質復元装置たるピサ・ソールを爆発させたのである。

それにより時空間に歪みが生まれ、遊星主も凱たちも、次元の狭間へと吹き飛ばされてしまう。

気がつけば、ミッドチルダの大気圏内に転移していた。───

それが、次元世界に凱たちがやって来る経緯であった。

 

「……遊星主は故意に、この世界に来たのか。偶然飛ばされただけなのか。それは僕たちにもわかりません」

ただ、彼らが次元世界の存在を知っていたとは思えない。

知悉していればなんらかのリアクションがあるはずだ。

「奴らは何かを企んでいる。絶対に」

凱は断言した。Jが頷く。

「その、彼らと話し合いはできないのかね。知的生命体なら対話で戦うことの無意味さを伝えるのは」

「彼らは聞く耳を持っていないと思います。人間とは根本的に考え方が違うんです」

一年以上遊星主と戦ってきた護なれば実感できることだった。なにしろ、地球の命を虫けらのように嘲笑い、平気で自分達のいけにえにしようかという連中である。

アベルは三重連太陽系の再生に異常な程執着していた。目的の為なら容赦なく破壊を行うだろう。それがプログラムであるソール11遊星主の存在理由なのだから当たり前といえばそうなのだが……。

「やはり、戦うしかないのか……」

「それでや」

はやては、ばんと、軽くデスクを叩き皆を見渡した。

ここからが本題だ。

「遊星主は今まで私らが相手をしてきた犯罪者とは違う、極めて強力な、別世界のロストロギアみたいな連中です」

未知の技術。しかも魔法ではない質量兵器のみの武装。

さらに問題なのは、人間にある倫理感が欠如している点だ。

「凱隊長に聞いたところ、遊星主は人口の密集する地帯でも平気で破壊活動を行ったそうです」

それは、京都市街で起こったレプリガイガーとガオファイガーの戦闘のことである。あの時、ガオガイガーは一般人がいようが関係なく力を使おうとした。凱は逆に、どうすれば街や人々に被害を与えずに戦えるか考えながら動いていた。結局、建物以外の損傷は皆無だったが、一歩間違えれば恐ろしい惨劇になっていたはずである。そうならなかったのは、凱の判断とボルフォッグらGGGの尽力があったからだ。

ガオガイガーに搭乗していたのは遊星主パルパレーパに操られたレプリジン・護であったが、遊星主の意思の元に行われた破壊であるにはかわりない。

「なんだと。それじゃあJS事件より酷い事態になるんじゃないのか!」

「しかも魔力を必要としない質量兵器のみだ。魔力素が存在しない世界では奴らが有利だぞ」

「そんなのが管理世界のあちこちでテロをおこなえば……」

口々にざわめきが走る。

「皆さんのおっしゃる通り、遊星主の機動力は侮り難いものがあります」

はやては強い口調で言った。

「そこで、遊星主に対抗するため、私たち管理局の戦力を大幅に再編成したいと思います」

「なんだと……?」

「次元世界の治安を守るため特別に部隊を編成する計画です」

はやては、機動六課を中心にGGGのメンバーを加え、陸と空を効率的に統合した部隊づくりの案を一同に提示する。

会議に居合わせた陸士部隊の隊長たちは、それぞれ複雑な相貌を見せた。

故・レジアス中将は空に対する憎悪を隠さなかったが、その薫陶もあってか陸の人間には空には非協力的な者が多い。

陸士隊は地上を守っているという妙なプライドがあるせいか、今さら空に媚びる態度はとりたくないのだ。

とは言え、プライドにこだわって民間人を救えなければなんにもならぬと、黙って会議を見守っていたゲンヤ・ナカジマは思った。

ここで彼は発言した。

「次元世界が危ねぇって時に陸も空もねえ。ここは互いに協力し合わねえと、守るべきものも守れなくなる……」

師とも仰ぐゲンヤの言葉に、はやては意を得たように頷いた。

「しかし、空の意見も──」

聞いてみないと、と誰かが言った。

これまで、空戦隊や航行部隊が地上部隊に援助をしてきた例は数少ない。レジアスは、なればこそ、地上部隊のみで強大な兵器の開発を非合理に行っていたのだ。

「それについては、次元航行部隊のクロノ・ハラオウン提督から、全面的な協力を約束してもらっています」

「あの、クロノ提督か」

「「闇の書」事件の功労者か」

さすがに彼の名前は陸士たちの耳にも届いている。

「空と陸をうまく連携させれば、遊星主の対処もやりやすくなるはずです」

はやての瞳は、つまらぬ自尊心など捨ててしまえと訴えていた。

陸士たちも意地を張る事にこだわっている場合ではないと、気づいていた。それにクロノの名が効いている。信頼できる人物だと、彼らにも伝わっていたからだ。

「みんな、わかってくれたみたいやね。それでは──」

具体的にどういった部隊編成でいくのか、これから細かい案件を全員で詰めていく。

会議は白熱の色を帯びていった。

 

……そんな中。

一人、心ここに在らず、という表情をした者がいる。

高町なのはがそれだ。

隣の席のヴィータは、深い憂いを浮かべたなのはを心配そうに見ていた。

「なぁ、大丈夫か……?」

小声で囁いた。

「私はなんともないよ、ヴィータちゃん」

なのはは笑みを浮かべた。

ヴィータは彼女の身体を心配したのだと、思った。だが、ヴィータはむしろ、その心を気遣っていたのである。

無敵のエースは弱音を決して人前では吐かない。だけど、傷つかないわけではない。数年前の事故でヴィータはそれを知っていた。

だから、またなのはが無理をして壊れてしまうのではないかと、恐れた。

「大丈夫なら……いいんだけどな」

大事な会議の席では、ヴィータも強く言えない。それに励ますのならもっと相応しい人が他にいる。

「うん、ありがとう。ヴィータちゃん」

もちろん。なのははずっと、奪われたヴィヴィオについて考えていた。

今度こそ取り戻すはずだった、娘。

非情な遊星主のもとでどんな思いでいるのだろうか。

泣いてはいないだろうか。

ヴィヴィオが苦しんでいる姿を想像すると、夜も眠れず、居ても立ってもいられなくなる。

パルパレーパの酷薄な顔を思い出しては、不安に陥った。

そんな彼女を、ヴィータだけではなく、シグナムやリインも、フェイトも、痛ましげに見つめていた。

「遊星主に対する戦力としては、うちらだけでは不安や。だから、是非ともジェイアークが動けるようになればええんやけど……」

そこんとこはどない?と、はやては本局に訊いた。

管理局本局には、運ばれたジェイアークの修復や分析等が急ピッチで進められている。ハード面に関しては、管理局の技術でもなんとかクリアーできそうだが、シャーリーの報告では肝心のソフト面で手こずっているそうだ。

『艦を再起動させるための生体コンピューターがブラックアウトしているため、メインシステムが作動しません』

アベルはジェイアークの動力機関であるジュエル・ジェネレーターを封じた。そのため、生体コンピューター・トモロ0771は停止を余儀なくされた。いわば強制的なシャットダウンに見舞われたのである。さらに、アベルは二度と創造主に逆らわぬよう、トモロを改造しようとした。

しかし、GGG艦隊が息を吹き返し、凱が復活したことで作業は中断される。

アベルの手は免れたものの、ジェイアークは制御不能となったまま次元世界に来てしまったのだ。

ソルダートJがその真価を発揮するためには、どうしてもジェイアークの復旧が必要だった。

フェイトはデバイスを用いてアベルの停止コードを回折・解凍できないかと、力を尽くしてみたが、如何にバルディッシュといえども簡単にはいかない。

「まいったな……」

はやてとしてはジェイアークの力に期待したいところなのだが。

「なぁ、J」

凱は焦慮しているJに呼びかけた。

『なんだ?』

「もしかして、俺なら、ジェイアークの停止コードを解除できるかもしれない」

『なんだと!』

「そうか……!!」

命はオービットベースでの出来事を思い出した。

「凱なら……うまくいくかも」

「あぁ。俺の──エヴォリュダーの力ならば!」

『どういう事だ?』

凱はJやはやてたちに説明した。

原種大戦の後、凱が新たに獲得した、超人の力の事を。

「エヴォリュダーは全身の細胞がGストーンと融合した、超進化導力体!!」

「オービットベースの制御が国連に奪われた時も、凱がすぐにハッキングしてくれたから……私たちは地球圏を旅立てた」

コンピューターに神経系を直接繋げられるという能力には、皆も驚いた。

『だが、それは……Zの力だ』

Jは不信を漂わせた。

「たしかに。俺の能力は生機融合体……ゾンダリアンとほぼ同じだ。だが」

凱は右手を掲げて見せた。

鮮やかに、Gの紋章が浮かび上がる。

「俺の心まではゾンダリアンにはならない。なぜなら、俺の力の源はゾンダーのマイナス思念ではなく、勇気だからだ!!」

わかるだろう、と凱の瞳が言っていた。

『あぁ。貴様ならば……ゾンダリアンのようにはならないだろう』

Jは認めた。かつてライバルとして戦い、共闘もした間柄だ。

その時に触れた凱の勇気は、本物だった。

『よかろう。貴様に任せてみよう、凱』

「よっしゃ。それじゃあ、凱さんには本局に向かってもらう」

はやてが決定した。

「会議が終わったら、すぐに行ってもらう。ええな?」

「わかった」

凱は頷いた。

「私も一緒に」

命がサポートを申し出た。

「じゃあ、命さんにも頼むわ」

「僕はここでギャレオンを見てるよ」

護はギャレオンの再調整を三重連太陽系で行っていた。そのシステムが次元間の移動で変調していないか、厳しくチェックする必要がある。

「じゃあジェイアークはお二人に頼むな。あとは、部隊の編成の計画を具体的に決めるだけやな」

はやての言葉に、隊長たちは厳しい顔つきになった。

『あ、ついでになのは隊長も来てもらえますか?』

と、シャーリーが言ってきた。

『レイジングハートさんの検査が完了しそうなんで……』

聖王のゆりかごでの戦いで、レイジングハートは奇妙な反応を示した。

本人(?)は問題ないと告げたのだが、今まで見たことないような状態でもあったため、ジェイアーク共々、本局の技術部で検査を受けていたのである。

「それじゃ、なのは隊長は凱さんの護衛も兼ねて本局に向かって」

「了解しました」

なのはは敬礼して命令を受諾した。

そんな時。

『すまない。遅れてしまって』

本局から、クロノ提督が参加してきた。

「忙しいとこすまんな。ちょうどこれから編成案について、話すとこやってん」

『そうだったか』

クロノは改めて、会議に集まった面々に挨拶した。

(……なのは?)

クロノはなのはの表情を見て、怪訝に思った。

彼もまた、ヴィータと同じように心配したが、とりあえずは会議に集中した。

対策会議は二時間以上に渡って行われ、終了したのはすでに太陽が中天に差し掛かった頃であった。

会議が閉会しても、局員たちの仕事は終わらない。むしろ、本当の意味での行動はこれからだ。

時空管理局全体が熱気を帯びたようになっていた。

 

そして。

対遊星主戦用に再編成された新部隊の名は、機動勇者隊《Riot Brave Force》と命名され、はやてが指揮官として正式に承認を受けた。

再び、戦いの嵐に向かい、はやてたちは進もうとしている。

そのような、騒擾とも呼べるなか、なのはは一刻も早く、飛べる事を待ち望み続けた。

すぐにでも、レイジングハートをこの手に取り戻したい、と。

そう思いながら、なのはは凱と命が待つ転送ポートへと急いだ。

 

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