ナノガイガー戦記~勇者とエース~    作:かがみん

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第8章 嵐の決戦、ふたたび

『なぁ。大丈夫かな、なのはの奴』

ミッドチルダの首都。クラナガン。

スターズ隊副隊長「紅の鉄騎」ヴィータ三等空尉は現在、時空管理局地上本部周辺区域のパトロールの最中だった。

深紅の騎士甲冑に愛槌グラーフアイゼンを手にしたヴィータは、一見すると小学生くらいにしか見えないが、実は熟練した腕を持つベテラン局員である。

彼女は念話で、離れた場所を警邏している同僚に話し掛けていた。

『どういうことだ?』

ライトニング隊副隊長の「烈火の将」シグナム二等空尉がヴィータに聞き返す。

シグナムは鷹のような眼をした、ポニーテールの女性だ。

赤紫色を基調にした騎士甲冑を纏い、腰間には魔剣レヴァンティンを()いている。

司令官八神はやての方針で、機動勇者隊では、首都を中心に警備を強化していた。

フォワード達新人を始め、ヴィータら隊長勢もパトロールに駆り出されている。

一般には、JS事件の様なテロを警戒しての事だと説明がなされ管理局はパニックを恐れて、報道機関には極力、情報を制限するように命じていた。

したがって詳しい事情はまだ一般市民には広まってはおらず、しかし不安感は増している様な気がしていた。

そのためか、人々はあまり外出をしなくなったようである。

都市を巡回していたヴィータの目には、管理局地上本部襲撃の影響か、繁雑なストリートにも人通りが少なく映っていた。

活気が消えているようだ。

『本局行く前のなのはを見ただろ。あんな顔、スカリエッティにやられて以来じゃないか』

──せっかく立直ったっていうのに、妙な連中のせいで元に戻っちまったじゃねぇか!

『あいつ、あんな風に沈んでてさ、いざという時ちゃんと遊星主と戦えるのかな……変に自暴自棄になって突っ込んでくんじゃないか?』

シグナムが溜め息を吐いたのが、雰囲気で伝わってきた。

『お前は相変わらず心配性だな。特に高町隊長の事となると、な』

『ち、ちげーよ。あたしは部隊の一員として……』

『お前は彼女をそんなに見くびっているのか。そんな心配は余計なお世話なだけだ』

『だって。またあんな事故が起きたら──』

『いつまで、その事を悔やんでいる。いい加減自分を責めるのをやめろ』

ヴィータは反論しようと、口を開いた。

『友人を気遣うのはいいが、少しは彼女を信じてやれ』

『……』

『お前が大好きなエースは、それほど弱い人間か。違うだろう。どんな時でも冷静さを失わないのが彼女の特質だ。

この期に及んで不様な真似はすまい』

確信気味にシグナムは言った。

『それでも、判断を誤る事だって──』

『なら、私達が正してやればいいだろう。そのための仲間だ』

シグナムの言葉を聞きながら、ヴィータは空を見上げた。

灰色の雲が太陽を覆い、地上に陰りが生じていた。

『なんのためにテスタロッサやお前がついているんだ? 我々は一人で戦っているわけじゃないんだ』

守護騎士達のリーダーとしての経験から、シグナムは常にチームの連携を考えるようにしていた。

ヴィータも今や部下がいる組織の管理職として、充分理解しているのだが……

『お前は先程《チームの一員》と言ったが、本当は友としてまた守れなかったらどうしようと恐れてるんだろう?』

なのはの事故からずっと、ヴィータは彼女の背中を守る事ばかり気にしてきた。

自分のせいで彼女が傷つくのが、怖い。

だから必要以上に神経質になってしまう。

『安心しろ。隊長の能力は健在だ。どうも昨日の報告を聞いてないらしいな、ヴィータ』

『昨日の?』

『新しいシステムを組み込んだデバイスの実験さ』

レイジングハート・ジェネシスの機能を測る実験だったが、なのはは通常の数倍の結果をうち出していた。

『マジか!?』

『あぁ。リインの話では、エクセリオンより効率的かつ、恒常的な魔力運用が可能らしい』

それというのも、なのはのリンカーコアに加えて、Gストーンのパワーがエネルギーを生み出すために相乗効果を発揮しているからだとか。

『……そうか』

『本人自身も、落ち込んだ様子は見られない、だという。全くいつものエースに戻っていると』

『ふん。心配かけやがって……』

と、ヴィータは微かに唇を綻ばせた。

『だから言ったろう。心配など杞憂だと』

 

風が強くなってきた。

雲が厚くなり、泣きそうな空模様だ。

『ちっ、雨か──』

雨粒が、ぽつりぽつり、落ちはじめた。

『おい、ヴィータ!』

「なんだっ!?」

突如、空が明るくなった。

雲のカーテンを突き破って、強烈な光が眼を()いた。

「なっ……」

続いて、低い轟音ともに下降気流(ダウンバースト)が襲ってきた。魔法を使える者達は咄嗟に結界を張って衝撃に耐える。

「なんなんだ、今の光は……」

地上部隊本部などのシールドで守られたものを除いて、家や道路などには亀裂が生じ、崩壊する建物もあった。人々は騒然となって避難場所を探した。

すでに災害時を検討して、訓練してきた地上部隊の隊員達が、一般市民を誘導して避難させる。

ヴィータも部下に指示を出すべく回線を繋ごうとした。

(うおっ!?)

今度は地震か。ヴィータの足元の地面が揺れはじめた。

一方、シグナムは天空から飛来する集団の影を見つけた。

「まさか、あれは……」

『緊急事態発生!!』

管理局地上部隊本部から局員全員に通信が割り込んだ。

『各衛星軌道上の拘置所が何者かに襲撃されました。犯人はおそらく──』

「連中か!!」

となると、あの光は、ミッドチルダの衛星拘置所が襲撃されたために生じたものか。

ヴィータは跳んだ。

地面を砕いて巨大ななにかが現れる。

「てめぇらは!?」

狼狽しながら、ヴィータは戦闘態勢に入る。強風の中、グラーフアイゼンを振るう。

「ちぇあぁぁぁっ!!」

シュワルベ・フリーベンの弾が出現した敵を叩いた。

攻撃を喰らった敵は光の粒になって消滅した。

「こいつら、前と違っている!?」

そもそも、なぜこいつらが動いている?

スカリエッティが死に、ウーノが捕われ、ゆりかごが崩壊した時点で全ての機体が停止したはずではなかったのか。

「ちっ……」

『副隊長!!』

スバルの悲鳴がヴィータの脳裏に響いた。

『突然、ガジェットが!!』

『こっちもだ。こいつらを片付けたらお前達に合流する』

『了解しました』

ティアナが生真面目に返答した。

リインとのユニゾン無しか。少々疲れるかもな……

はやてにも連絡した。すでにシグナムから増援が要請されてたらしい。

はやては急いで緊急に防衛部隊を調えると告げた。

「アイゼン!!」

《Jawohl.》

グラーフアイゼンのハンマー部分が、変形し、ジェットを噴いた。

《Raketenform.》

「ぶっ潰す!!」

次々に現れたガジェット・ドローンの群れと、ヴィータは交戦に入った。

その光景を、上空から観察している者がいた。

浮遊物体、パーツキューブに乗った、白衣の男。

「魔法とやらの力がどれほど神の力に対抗出来るか、見せてもらうぞ……」

ソール11遊星主・パルパレーパは嘲笑いながら、そう呟いた。

 

……第一種警戒警報発令。

首都クラナガン。

そこには、時空管理局地上本部がある。地上部隊の全てを統轄する部局で、本局が海……次元航行部隊のベースならば、こちらは陸……地上部隊のベースともいえた。

クラナガンは政治的、軍事的に重要な施設や人物が集まる都市であり、その防衛には多くの労力と技術が注ぎ込まれていたのだ。それゆえに、陸士隊戦力の保有数は、他の世界の比ではない。

今から一週間以上前、地上本部は大規模なテロ攻撃を受けた。魔法攻撃には万全な体勢を整えた地上本部は、質量兵器という盲点を突かれ手酷い被害にあう。最も、テロの首謀者スカリエッティにとっては単なるデモンストレーション以外ではなかったのだが。しかし、この事件で地上本部はプライドを傷つけられた。

地上の守護者を以って任ずる砦が、次元犯罪者のテロを許したのだから……

苦い思いを抱いた地上部隊の責任者達は、再度のテロリズムに備え、防衛機構を強化した。

そして、それに挑戦するが如く、再び同じ敵が現れたのだ。

地上本部に緊張が走る。モニターには、以前とほとんど違わぬ光景が映し出されていた。

 

J・スカリエッティが目的遂行のために操っていた機械兵器。ガジェット・ドローンだ。

 

触手を伸ばしたカプセル型のガジェットI型。全翼型航空機のガジェットII型。その大型機のIII型。

その集団が、地上本部に攻撃してきた。まさに、JS事件の再現だ。その時にはバリア内に侵入され、甚大な危機に陥った。まだ記憶に新しい、悪夢のような事態だ。

「なんでや……」

ガジェットの出現は、八神はやてをはなはだ困惑させた。

ガジェットは、スカリエッティや戦闘機人ウーノ達が倒された時点で全機が停止していたはずだ。仮に秘密の場所に隠匿されていたとしても、勝手に起動するとは考えにくい。

「ガジェットの総数、三百から四百と推定されます」

と、はやてに報告される。

ガジェット群はクラナガン、港湾地帯、ベルカ自治領に別れて襲撃を行っていた。

「ガジェットIII型が本部に向かってきます」

ズズンッと、衝撃が伝わる。建物が震え轟音が響く。

地上本部は攻撃に耐えた。

前回のスカリエッティ襲撃事件に鑑み、管理局は対質量兵器の為のセキュリティを強化するよう改装が施された。ガジェットの熱線や体当たりにも対応した多重結界により、地上本部の陥落は難しくなっている。

「地上本部機動部隊、ガジェット群を迎撃中。各地より応援要請が届いています」

「本部の人員はあんまり割かれへんが……」

それでもはやては非番や待機中の隊員を増援に送り込んだ。

「なるべく、苦戦している場所に送ったって」

「了解しました」

オペレーターを担当するアルトが命令を部隊に伝えた。

空戦魔導師の数は少ないが、JS事件で活躍した精鋭達である。

きっと地上部隊の窮状を救ってくれるはずだ。

「八神長官。あのガジェット……何かおかしく感じませんか?」

若い士官である、機動勇者隊副官・整備部隊長グリフィス・ロウランが、首を捻ってはやてに言った。

「どういう事や?」

怪訝そうに訊かれ、グリフィスは躊躇いがちに答えた。

「なんというか、色素が薄いというか、くすんだような機体のとにかく以前に見た物とは違う印象が──」

グリフィスは艦艇や兵器に詳しく、はやての部下の中でも造詣が深いほうだ。その彼は、目の前のガジェットに違和感を覚えた。とは言え、何かがおかしいと思うのだが、はっきりと違いを指摘出来ずにいる。まるで幻術にかけられたかのような──

もどかしいが、うまく説明できそうにない。

(色合いが違う……幻術……?)

はやてが視線をさ迷わせて考えこんだ時、モニターにウィンドが開いた。

『それは、レプリジンかもしれません!!』

護がそう、指摘した。彼はいま、ジェネシックマシンの整備のため、地下格納庫で作業している最中である。

ガジェットの映像をそこから見ていたのだが、記録されたガジェットの情報と見比べて、それが複製された機械だという結論に護は達した。

「こいつらが、遊星主が複製させたという、レプリジン……」

はやては得心しながら思考を巡らせた。

奴らはガジェットを複製して、攻撃をしかけてきた。これは遊星主の宣戦布告なんやな!

「連中め。うちらとやる気になったんやな……」

望むところと、はやての闘志は燃え上がった。

こうして地上本部を攻撃するということは──

「遊星主め。このミッドチルダを制圧するつもりか」

護は今までの戦いを振り返った。遊星主はガジェット群のみで勝負を決しようとは考えていまい。

このガジェット群はデコイ……囮ではあるまいか?

(戦力を分散させる陽動?)

自分達をこちらにくぎづけにし、アベル等は別の場所で行動に移す……

「本局より緊急通信」

「なんやて」

時空管理局本局、そこに遊星主とおぼしき者が現れたという。さらにガジェットも一緒に侵入したらしい。

「本局からの応援は難しなったなぁ」

と、はやてがこぼした。

あちらには海の精鋭達がいる。フェイトたち執務官やなのはも揃っている。陥ちる可能性は少ない。それよりも、ミッドチルダの地上だ。

ここで奴らの侵攻を防がな、せっかく守った地上の平和が台なしや。

はやては、ガジェット群の一掃を改めて各部隊に指令した。

「複製とは言え、ガジェットなんぞAMFさえ対策とれば……」

勝てる。

私達のストライカーが経験を積んだいまならば。

はやての思い通り、各地に散らばったガジェット群は、魔導師達の活躍で着実に数を減らしていっている。

(けど、油断はでけへん)

いざとなれば、はやて自身が魔導騎士として出陣するつもりであった。リインが本局にいるのがネックだが、

それでも、夜天の主の力は大した戦力になるだろう。

『八神長官、お願いがあります』

と、護がはやてに言ってきた。

『僕にも出撃の許可をください!』

「なんやて……!?」

思わぬ訴えに、はやて達は目を丸くした。

『ギャレオンの修復は完了しています。僕達も皆さんと一緒に戦わせてください』

「でも、あんた。危険やで──」

ギャレオンは対遊星主で切り札になる。そう、告げたのは護自身だ。それなのにギャレオンを出撃させようとは。

『たぶんガジェットは遊星主の囮です。一刻も早く撃退して、主力の襲撃に備えないと』

「その目、覚悟は決めとるんやな……」

はやては通信モニターを覗きこんだ。

『僕にも戦う力があります。だからお願いします。世界を護る事に協力させてください!!』

真摯な護の言葉に、はやての心が揺れた。

「……よし」

意を決してはやては命じた。

「天海護客員隊員に、ガジェット迎撃に加わる許可を与えます」

『ありがとうございます』

GGG式の敬礼をしながら、護は嬉しそうに言った。

護は急いでギャレオンが納まった格納庫へ走る。

「ギャレオン。僕達の出番だよ」

鋼鉄の獅子は優しげな眼差しで、護を見下ろした。頷きの色が目に浮かんだような

気がして、護は安堵する。

なにしろ、遊星主そのものとの戦いではないのだから、拒否されたらどうしようもない。

だが、ギャレオンは護の朋友だ。これまでも、苦しい時こそ力を貸してくれた、強力な味方だったのだから。

今度もまた僕達と共に立ち上がって、ギャレオン。

護は「行こう」と、促すと、ギャレオンの口蓋部に収まった。未だ最終調整段階のジェネシックマシンを残し、黄金の獅子は発進ポートへ移送される。

護の意思を受け、ギャレオンがスラスターを噴かせた。

曇天の空へと飛び立つ。

「あの目の輝き──」

はやては微笑しながら、その姿を見送っていた。

あの、クリスマス・イブの夜。初めて夜天の主に目覚めた日に、はやてが見た輝き。

「あん時のなのはちゃんと同じ輝きやったな……」

ひたむきな、強い意思を宿した瞳。

「機動部隊へ──」

機動部隊は、遊星主戦を考慮して、新たに編成された部隊である。陸戦/空戦魔導師の混成チームで、六課時のスターズ、ライトニング分隊をもとに、十二の各小隊で構成されていた。

第一~第二はなのはとフェイトが受け持つ。

「護くんのサポートを、最大限にお願いや」

指令に応え、機動部隊がギャレオンを追跡した。

さらに、研究部にはギャレオンの性能を計測するよう命じる。対遊星主戦で、どれだけの能力を発揮するのか。この眼で確かめたい。

機動勇者隊スタッフの注目が、護とギャレオンに集まった。

 

一方。

警ら中のシグナムは、ガジェット・ドローンII型と交戦していた。

「紫電一閃」

雨のなか。

レヴァンティンが全翼機を両断する。

斬られたガジェットが、光の粒に分解され消滅した。

「複製……か」

港湾地帯上空に浮かぶレプリガジェットに、鋭い視線を投げ掛ける。

体色が、薄い。

「だが、能力や耐久性はオリジンと変わらぬようだな」

カートリッジ・ロード。レヴァンティンが紅い光輝を纏った。

熱線をかい潜り、炎の魔剣を振るう。ガジェットの熱線は、雲の中では威力を低下させていた。シグナムの防御魔法でも充分に防げる。

そして。火竜フリードリヒに騎乗した機動部隊のキャロ・ル・ルシエとエリオ・モンディアルが少し離れた空域で、ガジェットを撃退している。JS事件で頼もしく成長した二人は、見事に戦っていた。

「良いコンビだ……」

ふっと、シグナムは微笑んだ。

「もはや私が教える事など、ないのかもしれんな。テスタロッサ……」

呟きつつ。斬撃をガジェットへと振り下ろした。一機が消える。

数ではガジェット群が上だが、全く不利を感じさせない戦いぶりだった。

そのあとも、シグナムはさらに、剣を振るい続けるのだった。

 

同時刻。

ヴィータは、ガジェットI型の集団に襲われていた。その数は八十機あまり。

くろがねの伯爵《グラーフアイゼン》が、魔力の鋼球を打ち出す。

四方からガジェットに迫る。高速の弾がガジェットを穿つ……かに見えた瞬間。機体を守るアンチ・マギリング・フィールドが魔力を失効させ、鋼球は霧散。それを目撃したヴィータは舌打ちする。

「また、AMFかよ」

ゆりかご内で味わい尽くしたというのに。気に入らない。

「ヴィータ副隊長!!」

触手のような器官──アームケーブルの一撃を避けたヴィータの隣から、スバル・ナカジマが飛び出してきた。

マッハキャリバーを疾駆させ、ぐんぐんとガジェットへと向かう。アームケーブルがしなって、スバルを襲う。

機械の鞭が当たったスバルは、音もなく掻き消える。

機動部隊のティアナ・ランスターによる幻術だ。

本物のスバルは回り込んだ下から蹴りを食らわす。加速した足が巨大な無人兵器を後方に飛ばす。すかさずスバルが拳を胴体の真ん中に打つ。

リボルバーナックルが一直線に打ち込まれる。

ガジェットはAMFを発動。魔力結合を解く無効化フィールドは近代ベルカ式魔法

といえども効果はあるはずだった。

──だが!

スバルの拳はAMFをすり抜け、本体にヒットした。

魔力は最初から使用されてはいない。

振動破砕と呼ばれる、スバル固有の先天技能(IS)による一撃だった。それは機械などに最も効果を表わす。

ガジェットは内臓機器を粉砕され、消滅した。

「ったく、弟子に負けてられるかよ」

若い二人に、ヴィータは称賛と悔しさのないまぜになった念を覚える。

「アイゼン!!」

《Jawohl!》

カートリッジを二発消費。

「ラケーテンハンマー!!」

まばゆいジェットを噴射して、ドリルとなったグラーフアイゼンが激しく回転する。

勢いをつけて、ヴィータはアイゼンをガジェットの頭部に叩きつける。

「AMFごと──」

凄まじい轟音がして、ドリルが表面にめり込む。装甲がひしゃげ、内部が削られる。部品が飛び散り、スパークして火が舞う。

「ぶっ潰す!!」

バットのように、振り抜いた。

ガジェットはぐしゃっと、上部を潰されながら、吹っ飛んでいき、亜音速で仲間に衝突する。

そして消えた。

守護騎士で最も破壊力を誇る、鉄槌の騎士ヴィータの力は、なお健在だった。

「凄い……!」

スバル達は畏敬の思いに打たれながら、そのあとも彼女と共にガジェット群を倒していった。

 

古代の伝統を伝えるベルカ自治領、自然に囲まれたアルトセイム地方では、聖王教会の者達と機動勇者隊とが手を携えて、ガジェット群と戦っていた。

聖王教会で管理局にも名を連ねる騎士カリム・グラシアが指揮を取り、戦闘地域においてはシャッハ・ヌエラらが近代ベルカ式デバイスを存分に振るう。

いつもは慎ましやかなシスターのシャッハだが、このような時は率先して敵にぶつかる。

シグナムと互角と言われる彼女は、打撃系に特化した攻撃を駆使して、ガジェット群を撃破していった。

 

皆が戦っている。

 

早く。早く。

護は戦場へと、急いだ。

 

 

 

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