The Grand Tourer's Dream 作:νMicra
治の始めたアルバイトとは、「コースレコードの打ち込み」。
上矢部が上矢部の記録を上書きしていくため、彼へのライバル心は必然的に心に積もっては山になっては積もっていく。
「はぁ・・・まーた上矢部さんか。1:21.7。ハッチバックのレコードはこれで決まりかな。破られそうにはない。」
「まぁ破るんだったら破るでチューンしなきゃな・・・」
家に帰ってそのことを相談するにも親との関係はほとんどシャットアウトしている治はなかなか言えたもんではない。それも承知で、治はダメもとで言ってきた。
「親父?このヴィッツをチューンしたいんだk」
「金もないんだからそんなもんできるわけあるか?考えろ家の家計を。」
「じゃあ自分d」「そのバイトどうせろくなことじゃないんだし金も入ってこないだろうよが」
やはり、切れた配線は簡単に直せたものではあるまい。治は静かに諦めを頭に入れて、寝床につきかける。
その時ふと思いついた。
「上矢部に手伝ってもらおう。」
次のバイトの時までに、治はできること、やるべきことをし始めていた。
まず雑誌・本を読み漁ってチューニングの知識をインプットし、ゲームで実践してみる。
そのあと足りない知識は上矢部に補充してもらうとして、自分自身に合った猛勉強をする。
そして土曜日が来た。サーキットにやってくるとすかさず上矢部に相談をする。
「上矢部さん?」「おぉ、また来たか。お仕事お疲れ様。」
「チューニングについて相談したいんですけど・・・」
「あぁ、ヴィッツを速くしたいってことだな?つまり。」「そうです。」
「チューニングについては数日間本を読んだだけで全くの素人なので、1、2から教えてくれませんか?」
「ああ、OKだよ?」
「そうそう。まずはサスペンションからだ。どうせ初心者が無茶走りしてもコースアウトするだけ。安定感のある車を手に入れることによって自分の理想が叶ってくるんだよ。」
「エンジンに手を付けるのは無茶だ。所詮ヴィッツはただのハッチバックだから、ホットハッチのスイフトスポーツだったり、SX4だったりに追いつくのは本当のレーシングモデルを本当のレーシングドライバーが操ることとか、そんくらいでしか実現できない。」
「だからエンジンさわりたいんだったら俺の親父にでも言ってくれよ。連絡先はこっちだ。携帯は持ってんだろうなぁ?」
「持ってますよ。田舎者だからってナメないでください!」
平日は学校・バイト、土曜はバイトと忙しい治にとっては日曜が唯一の休みである。
そこで彼はその機会を見逃さずに、上矢部と彼の父に相談することにした。
「お前はヴィッツ乗りだと聞いたんだが・・・」
「はい。名前は車田 治と言います。今日はよろしくお願いします。」
「サスには手を付けて、プロペラシャフトとかも軽量化したんだってな?」
「そうだってね。」
「はい。それで、エンジンチューンはまだまだ素人なので手を付けられない状況なのですが、なにかできること・お父さんがやっていただけること、ありますか?」
「うむ・・・難しいが機械の部分をスポーツ系に変えてみるよ。そこから軽ーくおとなしいターボをつけてみようか。」
「ありがとうございます。今ある車で、速いタイムを出したいので。」
「なるほど。いい精神だ。こいつが気になるな。」
「俺も少々気になってる。向上心がスゴイよ。車田は。」