(仮題)起きたら子ヒョウになってた   作:職員室

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第一話【起きたら小ヒョウになっていた】

 さて、現在俺は不思議な夢を見ている真っ最中だ。何せ体が人間じゃなくなってるんだからな。

 

 何がどういう妄想をしたらこんな夢を見るのかわからんが、やけに見るもの聞くもの感じるものがリアルで困る。

 

 俺の記憶が確かだったら、昨日は女と別れた同僚を慰める為にしこたま酒を飲んだ筈だ。んで、タクシーに乗って自宅っぽいとこに着いたっぽいのはうっすらと覚えてるんだがなぁ。

 

 

 目の前の、小川の水面に映る猫っぽいんが人生に疲れたように深くため息を吐いていた。

 

 

「にゃう……(何がどうなってんだか)」

 

 

 黄色の体毛に、所々にある黒のぶち模様。頭にはライオンとは違った、登頂部から後ろまで重力に逆らったように真っ直ぐに上に伸びたオレンジの鬣。手のひらってか、前足の裏を見れば人間の頃だったら是非堪能したくなるような肉球。何となく、言葉にしにくいがグッと力を込めるとニョキっと出てくる鋭い爪。ガパッと口を開くと尖った牙。

 

 うーん。猫科なのは間違いないっぽいんだが、猫っていうかヒョウ? ずんぐりむっくりな体型から子どものヒョウかな? もし子どもだってんなら、親がいるんだろうが、パッと周りを見渡したが見当たらない。

 

 

 いつまでも立ってるのもアレなんで、伏せをして組んだ前足の上に顎を乗せる。後ろからパタリパタリと音がして振り返ると尻尾が左右に揺れていた。……何となく、尻にグッて力を込めたら尻尾が止まる。

 

 

 俺は、何を思ってこんな夢を見てるんだろうか。疲れてんのかなー。動物と戯れたいみたいな? 末期だわー。

 

 

 何で、夢なのにこんなに精神的に疲れにゃいかんのだ。どっと疲れた所に、ポカポカとした日差しが暖かくて、ついつい目がとろんなり思考が薄くなっていく。夢の中で寝るとはこれ如何に、まあ抵抗する気もないんですがね。

 

 

 大きくあくびをして、いよいよ寝ようとした時に後ろから何かがガサガサ近づくような音がして、俺は振り返った。草むらを掻き分けてやって来たのは、青色の半透明なゼリーだった。ゼリーの癖に愛嬌のあるようなないような、そんな顔がある。わずかな沈黙の後、ゼリーは大きく息を吸って天高く吠える。

 

 

「ピキー!」

 

 

 ……あるぇ?

 

 

 

△▲▽▼△▲▽▼

 

 

 

 襲いかかってきた人面ゼリーは、肉球パンチで何回かぶん殴ると弱ったのか動かなくなった。っていうか、外見に似合わず体当たりとか強烈だし、噛みつきとかマジで痛かったんだが。

 

 人面ゼリーに意識は無さそうだが、僅かに上下してるって事は呼吸してるってこったから、まだ生きてるんだろうけど……。これって、やっぱりアレなんだろうか。

 

 

「にゃう(スライム……だよなあ)」

 

 

 マジマジと見るが、やっぱり某人気RPGシリーズのマスコットキャラクター、スライムにしか見えない。ちょいちょい触ってみると、何か生暖かい。ひんやりしてそうな外見の癖に、これは詐欺ではなかろうか。

 

 夢、なんだろうか。ここにきて自信が無くなってきた。……いやさ、都合のいい考えは捨てよう。未だに噛みつかれた所は痛いし、見れば血も出てる。なのに起きる気配は無い、って事はつまり。

 

 

「がう……(ここがドラクエの世界で、俺はこのヒョウに憑依かなんかしてるってことだよなあ……)」

 

 

 ヒョウに憑依……。やめよう、何か虚しくなる。

 

 頭を切り替えて、もしこれが現実だと仮定する。そうなると、少なくても元の世界に戻るか、やっぱりこれが夢なら覚めるまでは俺はこの体で生きなきゃならんわけだ。さすがに死んだら戻るか何て、怖くて試したくないし。

 

 

 

 そんな事を考えながらボーッとスライムを見てると、もぞもぞと動き始める。

 

 

 おっ、目を覚ますかな?

 

 

 ゆっくりと、気だるそうに起きたスライムが、こっちを見るなり後ろに飛んで身構える。いや、何もせんて。

 

 

 俺が攻撃する素振りを見せない事に何を思ったのか、こっちに口から何かを放ってスライムはどこかに去っていった。

 

 金色に光るそれを見ると、1円サイズの硬貨っぽいものがあった。中央にGって書いてある所からするに、多分この世界のお金なんだろう。

 

 

 まあ、この体じゃ使いようないんですけどねー。

 

 

 あのスライムには申し訳ないが、お金はここに放置する事にした。勝った証として、記念に取っておきたかったんだが。

 

 グーっと、俺のお腹がなる。そういえば運動した為か腹が減ったな。……飯はどうすればいいんだろうか。

 

 

「がぅ(狩るしか、ねえのか)」

 

 

 さっきのスライム、食えたんかなあと考えながら俺は立ち上がり水辺を離れる。

 

 まだ、自分の身に何が起きてるのかは分からない。だが、どういう訳か俺はこの世界に生きている。そして死ぬつもりもない。

 

 元の世界に、元の体に戻れるかはとりあえず置いといて。俺は生き延びるために魔物のひしめくドラゴンクエストの世界に、足を踏み入れたのだった。

 

 




初めまして作者の職員室です。ドラゴンクエストⅤはスーファミ時代からやりこんでいる思い入れの深い作品なので、汚さないように注意しつつ、ドラクエⅤの素晴らしい世界観を皆様に少しでも伝えれたらなと思います。
ちなみに、一話なんでこんな堅苦しい後書きですが、これ以降は執筆中に思ったこととかその話の小話とかを軽く書く予定です。
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