人外教師兵藤一誠   作:隆斗

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遅くなりましたが、原作突入です。


第一章
始まり


 始まり

 

 

 

 

 

「あ~、おっぱい揉みてぇ~」

 

兵庫一翔(ひょうごいっしょう)君に同意~」

 

「言うな、虚しくなる」

 

 駒王学園の校庭が見える斜面で、メガネ・茶髪・坊主の男子生徒三人組がアホな事を言っていた。

 メガネが元浜で茶髪が兵庫一翔、そして最後の坊主が松田である。

 この三人駒王学園校内だけでは無く、ここら辺の地域一帯に有名である。勿論悪名の方で。

 メガネの元浜は眼鏡を通してみた女子の体型を数値化できる。それ故に〝エロメガネ”〝スリーサイズスカウター”等の異名を持つ変態だ。

 坊主の松田は身体能力が高く、過去にその身体能力で数々の大会の記録を塗り替えた男だ。当時の松田の活躍を知っている者は口を揃えて、

 

「あれは人間じゃねぇ、悪魔か何かの人外だ」

 

 と言った。

 しかしそんな彼も今は写真部に所属していて〝エロ坊主”〝セクハラパパラッチ”の異名を持つ変態だ。

 最後に茶髪の兵庫一翔は、超重度のおっぱいフェチで特にこれといった異名は無いものの変態だ。

 そんな彼らは三人そろって〝変態三人組”と呼ばれている。これならどこぞの〝クラスの三バカ(デルタフォース)”の方がまだマシだ。

 そしてそんな変態三人組が寝ている斜面の上の道を一組の金髪の男子生徒と女子生徒が歩いて行く。

 

「佑斗、最近体調はどう?」

 

「? どうって……別に普通だけど」

 

「そう……。……もっと入れる量増やそっかな」

 

「オーケー、最後の一言について小一時間ほど話合おっか」

 

「あっ、聞こえてた?」

 

「残念ながらね」

 

「それよりも佑斗、〝狐火BL(きつねびびーえる)”って作家知ってる?」

 

「勿論。昔から有名な作家でしょ。ライトノベル・恋愛・ミステリーその他様々な分野を書いている作家だよね。確か近いうちに彼の作品の一つが映画化するとか」

 

「そうそう、その人」

 

「でも確かあの人って—————」

 

「そこはどうでもいいの。それよりもその映画今度二人で見に行かない?」

 

「えっ? でもその映画って超人気で、前売り券は発売当日に僅か二時間で完売したんでしょ」

 

「大丈夫、本人に貰ったから」

 

「納得。じゃあ今度身にいこっか」

 

「ええ!」

 

 二人は楽しそうにしながら三人組の上を歩いて行った。

 

「木場佑斗……〝駒王の王子様”の一人で〝一途系王子様”と呼ばれている。容姿端麗、成績優秀の完璧(パーフェクト)王子様。そして隣の女子はジャンヌ・ダルク。上から九十・五十六・七十九の隠れ巨乳で、二年生ながらにして〝駒王のお姉さま”の一人で、〝愛が激しいお姉さま”の名を関している。さらに————」

 

『さらに?』

 

「木場佑斗とジャンヌ・ダルクは……付き合っている!」

 

 元浜がメガネを指で押し上げながら告げた真実に、一翔と松田の身体には雷に打たれたかのような衝撃が走った。

 

「なん…だと…⁉」

 

「クソォォォォ‼ やっぱり顔かっ? 顔なのかっ⁉」

 

「言うな、虚しくなる」

 

 松田は斜面に手を着き項垂れ、一翔は頭を抱えながだ絶叫した。

 元浜もメガネを指で押し上げてクールに見えるものの、彼の周りには何処か哀愁が漂っていた。

 

「おっと、もうこんな時間か」

 

「? どこに行くんだ松田」

 

「フフフフフ……」

 

 一翔の問いかけに松田は気味のお悪い笑いを返すだけだった。

 気になった元浜と一翔は彼の後を付いて行く。

 

「? 此処って女子剣道部の部室の外だよな。どうしてこんなところに来たんだ?」

 

「フッフッフ、これを見ろお前ら!」

 

 一翔の疑問に松田は、小声で叫ぶという器用な真似をしながら壁の木目のある場所を示す。

 そこには、目玉一個分より二、三周りほど大きい位の穴が開いていた。

 

「お前……これはまさか————」

 

「そう。これが思春期男子(俺達)にとって伝説と言っても過言では無い穴、〝覗き穴”だ!」

 

「こ、これが伝説の……」

 

「伝説は、こんなに近くにあったのか」

 

 感極まって今にも泣きだしそうな一翔と元浜を前に、松田は実にさわやかな笑みを浮かべて彼らに言った。

 

「本来ならばこの覗き場所(ベストプレイス)は俺が独占するんだが、お前達とは同志ゆえにこの場所を共有しようと思う。さあ行くぞ、理想郷(アヴァロン)へ!」

 

「ハハァ~、有難きしあわ———」

 

「サンキュー、松田。じゃあ早速見ようぜ」

 

「おう!」

 

「あっ、ちょっと待てお前らっ!」

 

 一翔がふざけて時代劇めいた感謝を松田にしている内に、元浜と松田は早速、と言わんばかりに穴を覗き込んでいた。

 

「グヘへ、いい眺めだぜ」

 

「グフフ……ああ、全くだ」

 

「おい、お前ら! 俺にも見せろよっ!」

 

 自分だけのけ者にされた一翔は叫びながら二人を穴の前から退かそうとする。だがそんな事をすれば当然中にも聞こえるわけで————

 

『ねぇ、今なんか声が聞こえなかった?』

 

『あっ! そこに穴が開いてるわよっ!』

 

「しまった」

 

「見つかった!」

 

 中からの声が聞こえた元浜と松田はすぐさまその場を去る。

 しかし、剣道部の女子更衣室を覗くことしか頭にない一翔は、今まさにその覗く対象が自分の元に制裁をしに迫ってきているのを知らない。

 

「グヘへ、さ~てどんな感じなのかな~……ってあれ?」

 

 一翔が穴を覗いた時にはすでに中はもぬけの殻だった。

 そして彼にとってタイミングが悪い事に、その覗いている時に剣道部の女子部員たちが彼の元に来た。

 

「いたわ! 変態三人組の兵庫よっ!」

 

「皆、ボコボコニしましょう!」

 

「え? 何で? え?」

 

「かかれーッ‼」

 

「ギャァァァァァァッ‼」

 

 晴れ渡る青空の中少年の悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

「ギャァァァァァァッ‼」

 

 よう皆、兵藤一誠だ。

 俺がこの学校にある悪魔の巣窟に向かっている途中、何処からともなく少年の悲鳴が聞こえてきたが恐らく、この学園の問題児の一人である〝兵庫一翔”のものだと思うので取り敢えず無視した。

 

「邪魔するぞ」

 

先生(・・)、部屋に入る時はノックをしてくださいといつも言っているじゃないですか」

 

「すまんすまん。だがお前はいつもノックをしても気づかないじゃないか」

 

「………」

 

 俺がそういうと彼———ディオドラ(・・・・・)アスタロト(・・・・・)は黙ってしまった。

 そしてさっきディオドラが言ったように、俺はこの駒王学園で教師をしている。

 最初は学生という選択肢があったのだが、この年になって授業を受けるのもメンドイし、色々と仕事があるのに一日の大半を此処に拘束されるのはあれだったので、生徒よりは自由の利く教師になった。あ、ちゃんと教員免許は持ってるぞ。

 そんな事を言うならそもそも駒王学園(ここ)に来なければいいじゃないか、と思う人たちもいるだろう。だがここに通う人外たちの保護者的立ち位置の人達に、土下座までされたので流石に断れなかった。後、ここ原作で渦中の中心だし。

 現状で原作との違いを上げるとすれば、兵藤一誠()ではなく兵庫一翔(あいつ)がいて、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を持っている事。黒歌が三年生で通っている事。駒王学園にある悪魔の巣窟が、オカルト研究部(グレモリー眷属)・生徒会(シトリー眷属)・風紀委員会(アスタロト眷属)になている事。原作では英雄派だったジャンヌ・ダルクが二年生で通って事。原作主人公()が教師としている事。原作とは違う眷属がいる、もしくは登場していない眷属がいる事。他にも色々あるが、まあ……これくらいだろう。

 

「それで何しに来たんですか、先生」

 

「理由が無いと顧問は風紀委員室に来ちゃだめなのか?」

 

「いえ、そいう訳ではありませんが………」

 

「だったらいいじゃん」

 

 俺がそういうとディオドラは呆れたようにため息を吐いた。

 因みに今ここには俺とディオドラの二人しかいない。普段なら彼の女王(クイーン)が、部屋に装備されているソファで寝ているのだが今はいないらしい。

 

「なあ、お前んとこの女王はどこ行った?」

 

「さあ? 多分屋上で寝ていると思いますよ」

 

「そうか。……じゃあ何かあったら呼べよ」

 

「分かっています」

 

 歪みないなぁ~、と思いながら俺は部屋を後にする。

 この日の放課後、兵庫一翔は生まれて初めての告白を堕天使ミッテルトにされた。

 

 

 

 

 

 数日後、俺の予想通り兵庫一翔はリアス・グレモリーの眷属悪魔になっていた。

 彼を一度殺したのはゴスロリ服のミッテルトだ。

 恐らく、とゆうか確実に彼女が原作でのレイナーレの役をするのだろう。

 別に助けることもできるが、彼女達三人は規則の緩い〝神の子を見張る者(グリゴリ)”の中でも絶対に守らなければならない掟を犯した。したがって助ける気は微塵もない。

 俺が介入したせいで〝神の子を見張る者(グリゴリ)”は原作よりも緩い組織になった。いや、最早単なる堕天使の集まりと言っても過言ではないかもしれない。

 ルシフェルがトップだった時は、彼女のカリスマ性もあって組織として立派に機能していた。

 アザゼルも勿論カリスマはあるが、彼女ほどではない。

 このまま彼を組織にしたら原作の様にむやみやたらに人間を殺したりする堕天使が出るかもしれない。そう危惧した俺はアザゼルにある提案をした。

 

 もういっそのこと〝神の子を見張る者”を潰さないか、と。

 

 最初の内は渋っていたアザゼルだったが、詳しい話をしていくうちにだんだん俺の話に乗り気になっていた。

 そして〝神の子を見張る者”は潰れた。

 形式上はある事になっているが、あれは表面上だけで緊急時以外は最早組織では無い。

 そんな〝神の子を見張る者”(笑)だが、一応まだ規律は存在する。

 その内の一つが、『人間と無闇に関係を持たない事』というものだ。

 これは神器(セクリッド・ギア)狩りを防ぐ意味もあるし、裏の世界の事が人間世界にバレたり影響を与えない為でもある。後者の方は他の勢力もあるので出来ているとは言いずらいが。

 勿論この規則にも例外はある。

 それは、人間界のルールで人間として(・・・・・)なら関係を持つことも構わない、といったもの。

 実際に幹部の一人が人間界のルールで人間として活躍してるしな。

 そしてこの規則に反対した堕天使は勿論いた。

 だが他の事を緩める事でそれも無くなり、今ではルシフェルが〝神の子を見張る者”に居た時と同じかそれ以上の結束力を持っている。まあ、普段は(総督も含めて)それぞれの趣味に走ってるけど。

 そんな訳で俺はあの三人を助ける必要はない。

 そして俺は今ある問題を抱えている。それは、いつどのタイミングで俺の事をグレモリー眷属とシトリー眷属に伝えるかという事だ。まあ、二巻の時には確実にバラすと思うけど……。

 

「————であるからして、——————」

 

 そしてそんな考察を続けている俺は、今現在授業の真っ最中だったりする。因みに教科は三年の数学。

 

「—————である。……グレモリー、ここの答えは?」

 

「……6x+5でしょうか?」

 

「違う。次、姫島」

 

「7xですわ」

 

「それも違う。黒歌、〆ろ」

 

「4x+6だにゃ」

 

「正解だ。グレモリーと姫島には課題一つ追加だ」

 

 俺の授業では、どの教科でも授業中に出された問題を間違えると課題が一つ出る。

 任された以上仕事はきちんとするさ。

 

「では次の問題を読むぞ。—————」

 

 あっ、そう言えば今日は主人公が悪魔になってから初めて襲われる日だったな。

 ふむ……助けるか否か、どうするかな……。

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……ハァ」

 

 辺りも暗くなった頃、兵庫一翔はただ我武者羅に後ろから追いかけてくる黒いカラスのような翼をもった男から逃げていた。

 というのも、彼の親友の元浜と松田と(エロビデオ)鑑賞会をした帰りに道を普通に歩いていたら、この男が一翔にとって意味不明な事を言いながら手に光で出来た槍を出現させて襲ってきたのだ。

 そして現在に至る。

 

「ハァ……ハァ……ここは……」

 

 そして彼が辿り着いた場所は、偶然にも彼が殺された(一翔本人は夢だと思っている)公園だった。

 その時の事が甦り一翔の身体は恐怖で竦む。

 

「ふむ……仲間を呼ぶそぶりもないし、主の気配もない。貴様〝はぐれ”か。ならば殺しても問題なかろう」

 

 一翔には訳の分からない事をブツブツと呟いた後、男———堕天使ドーナシークは手元に光の槍を出現させ、それを一翔目掛けてブン投げた。

 

(ああ……俺はここで死ねのか)

 

 〝死”が近づいている所為か周りの物がすべてゆったりと見えるようになった世界で、一翔は一人そんな事を考えていた。

 そして光の槍が一翔の腹に突き刺さろうとした時、突然真横に弾き飛ばされた。

 

『……ッ⁉』

 

 突然の事に、投げた本人であるドーナシークも投げられた一翔も驚愕に目を見開いた。

 だが、一翔の驚きの理由はそれだけではなかった。

 それは彼の前に立つ一人の人物が原因だった。

 

「ひょ、兵藤先生……?」

 

 彼の通う駒王学園の中で一、二を争う人気教師、兵藤一誠その人がいた。

 

 

 

 

 

 案の定兵庫一翔を見張っていたらドーナシークと接触した。

 後でリアス・グレモリーへの説明が面倒だと感じながらも助けた俺は、下級中の下級堕天使と対峙する。

 後ろで驚愕に目を見開いている俺の教え子を見ながらふと、思う。

 結局俺も生徒を大事にする一教師だったのか、と。

 ガラにないという事は自覚しているが、そう思わずにはいられなかった。だって、教え子助けちゃったし。

 取り敢えず、アザゼルに連絡しとくか。

 

 ~実況通神(チャット)個人空間(プライベートルーム)

 人 外:アザゼル、下級の堕天使が赤龍帝の籠手所有者と接触したぞ

 堕総督:だからなんだよ。そいつも裏の関係者だろう。それに赤龍帝の籠手を持ってるなら下級堕天使くらい———

 人 外:そいつ、現在進行形で裏とは無縁だ。だがついこの間悪魔に転生した

 堕総督:だったらもう関係者だろう

 人 外:因みに主はリアス・グレモリーだ

 堕総督:あー、あのメンドくせぇ小娘か。分かったそいつら三人は好きにしていい。他の堕天使どもにはこっちで言っとくから

 人 外:了解。ついでにグレモリーには何か言っとくか?

 堕総督:いや、別にいい。実力がプライドに追いついていない奴は面倒だからな

 人 外:はいよ

 

 実況通神(チャット)を切りドーナシークと対峙する。

 実況通神(チャット)中は『時を操る程度の能力』を使って俺以外のここいら一帯の時間を止めていたから、ドーナシークとついでに俺の後ろに居る兵庫も先程の耐性からずっと止まったままだ。

 

「……貴様、何者だ」

 

 能力を解くと、先程兵庫一翔に対してしていた余裕な態度とは違い明らかな戦闘態勢に入っていた。

 まあ、いくら今の俺が人間だからっていってもこの程度の奴に負ける気はしないけどな。

 

「兵藤一誠。俺の後ろにいるこいつが通っている高校の教師だよ」

 

「ふん、冗談はよせ。ただの教師ごときが私の槍を弾けるものか。……貴様、神器(セクリッド・ギア)所有者だろう」

 

「さあ……どうだろうな」

 

 一応俺は堕天使幹部でもある訳なので、こいつに顔を見られたらバレると思ったんだが全く心配なかったな。

 コイツは自分の所の幹部も覚えていないなんて、アホなのか?

 それにしてもどうするか……。

 さっきも言った通り俺は今は人間だ。故に闇の魔法等の人外が使うことを前提としているものは、ものすっごく疲れるから使いたくない。

 まあ、いくらでも手はあるから別に気にすることでもないか。

 

「貴様も我らが計画の邪魔になるゆえ、消えてもらう」

 

 先程とは違い殺気全開で放たれた光の槍は、真っ直ぐに俺目掛けて飛んでくる。

 それに対して俺がしたのはただその槍の移動上に右手をもってきただけ。

 そして俺の右手に光の槍が当たり、ガラスの割れるような音と共に粉々になった。

 

幻想殺し(イマジンブレイカ—)』。異能の力なら神様の奇跡だって殺す事が出来る、ただの世界の基準点だ。

 

「ふむ、それが貴様の神器か。だがどうやら効果は右手から先だけらしいな。ならばっ!」

 

 ドーナシークは手に光の剣を作ると、人間には到底出せない速度で接近戦を仕掛けてきた。

 

「兵庫、お前はどっかに隠れてろっ‼」

 

「でも先生っ‼」

 

「邪魔だっつってんだよ。死にたくなかったら隠れてろ」

 

 少しごねたが、兵庫は俺の指示通りに近くの茂みに隠れた。

 そのタイミングで俺に光の剣が当たる。がしかし、それはドーナシークの真後ろに弾き飛ばされた。

 

一方通行(アクセラレータ)』。すべてのベクトルの向きを操る、ただの超能力だ。

 

「ッ⁉ ……反射、か?」

 

「さあ~てね。もう一度自分でやって確かめてみたら?」

 

 やっぱりこいつは強いな。伊達にあの大戦を生き延びていない。

 じゃあ、なんで原作ではあんなに雑魚臭がしたんだろうな。謎だ。

 俺は体中を帯電させると、今度は俺の方から接近する。そして種も仕掛けもない右ストレートを繰り出す。

 

「すごいパーンチッ!」

 

「なっ⁉」

 

 ドーナシークはそれを避けた。

 そしてそれだけで、そこら辺に爆発が起きる。

 

超電磁砲(レールガン)』。最強クラスの電撃使いで、これも同じくただの超能力だ。

 

『ナンバーセブン』。繊細ながらも多彩な技や機能を持つ、ただの原石だ。

 

「なめ、るなっ⁉」

 

 反撃とばかりに光の剣が俺目掛けて振るわれる。

 しかしそれは途中で止まる。

 理由は簡単。ドーナシークの身体に砂鉄が絡みついているから。

 

「な、何のこれしき……」

 

 それでも人外の力をフルに使って、彼は動こうとする。

 

「じゃあ、これは保険だ」

 

 何処からともなく取り出したリモコンのボタンを、彼に向けてポチッと押す。

 

「……ッ⁉」

 

 それだけで彼の体の自由はがすべて奪われる。

 

心理掌握(メンタルアウト)』。タスの能力を一手に引き受けて使いこなす最強クラスの精神系能力で、ただの超能力。

 

「……くっ」

 

「それじゃあ……さよなら」

 

 彼の頭上に大きな光の球が浮かんでいて、そこから勢いよくビームが発射される。

 そしてそれに触れたドーナシークは塵も残さずに消えた。

 

原子崩し(メルトダウナー)』。圧倒的な破壊力を誇る、ただの超能力だ。

 

 さて、別に苦労せずに倒した訳だが、まだ面倒事が残っている。

 

「そこにいる奴、出てこい」

 

 適当に声を掛けると、兵庫の奴が隠れた茂みの当たりから真っ赤な髪の女が出て来た。

 

「リアス・グレモリー、未成年がこんなところで何をしている」

 

「それはこっちのセリフよ。どうしてあなたは堕天使を圧倒する事が出来るの? あなたの力はなに? 答えなさい、さもなくば……」

 

 質問が多い奴だ。それに学校では敬語で話しかけて来たくせに、今では命令口調になってやがる。しかも手のひらに滅びの魔力が集まってやがるし。

 はぁー、何で俺関わったんだろう。

 

「そんなことより、兵庫の奴はどうした」

 

「眠らせたわ。さあ、早く私の質問に答えなさい」

 

 自分よりも何兆年も年下の奴、しかも大して強くもなく、〝世界”をまるで知らない奴に命令されるのは意外とイライラが溜まるもののようだ。

 なのでちょっと〝警告”をする。

 丁度使っていなかったものもあったしな。

 

「お前、ちょっと黙れ」

 

「……ッ⁉」

 

 背中から六枚の発光する翼をだし、そのすべてをグレモリーの首元に当てる。

 

未元物質(ダークマター)』。無限に近い創造力と、この世に存在しない物質(素粒子)を作り出すことができる、ただの超能力だ。

 

「天使っ……」

 

「バーカ、光の力がないだろうが。これはただ翼があるだけだ。それよりも、兵庫の奴にお前はまだこっち世界の事を説明して無いんだろ?」

 

 俺がそう問いかけるとグレモリーは、黙って頷いた。

 

「だったら説明する時に俺を呼べ。その時に話してやる。ただし、それまでに俺に必要最低限以外の接触はするな。以上だ」

 

 そう言うと俺は翼を消し、家へと転移した。

 はあ~、これからメンドそうだな。




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