今回はライザーと迦楼羅の馴れ初め的な話です。そして過去最長です。
ここで、ここまで間が開いてしまった言い訳を一つ。
実は定期考査があり、それが終わった直後に球技大会がありました。そこで『うっかり』靭帯損傷してしまって二週間前までギプスだったという訳です。
以上、言い訳終わり‼
馴れ初め
俺が迦楼羅と出会ったのは十代の後半の頃だった。
当時悪魔の学校を卒業した俺は、眷属探しの旅に出かける為に師匠である一誠さんからの最終試験を受けていた。因みに一誠さんが俺の師匠になったのは悪魔の学校に入る一年ほど前だ。当時の俺は家の名前の上に胡坐をかいているだけのクソガキだったのだが、一誠さんの修行(と言うか拷問)を受けた後少しずつ考え方と将来の志(当時はハーレム形成だった)がだんだん変わっていき今の俺になっていった。
そしてその最終試験と言うのが、一誠さんの領土内にあるある森で一ヵ月のサバイバル生活というものだった。別にこれだけ聞けば、忍耐力があればいけそうな気もするが、あの人の試験はそんなぬるくない。この試験の条件に俺の力を下級悪魔レベルまで落とす、というのと最低でも一匹以上のドラゴンに勝利しろ、というものがある。此処で言うドラゴンとは勿論一誠さんの領土内に居るドラゴンだ。なのでここの力が圧倒的に跳ね上がっているし、あの人からの加護もあるので、ドラゴンの鱗さえも焼き尽くすと謳われているフェニックス家の自慢の炎も彼らの鱗に軽い傷をつける程度の効果しかない。それなのに俺の力を下級まで落とすというのだから、相変わらずの鬼畜っぷりだった。
~数年前兵藤領にあるとある森~
試験の丁度一週間目。俺は三対のドラゴンに追われるという非常にまずい状況に追い込まれていた。
「チッ……これでも喰らえ!」
俺は自信を追って来るドラゴンの一体に向けて炎の槍を放つ。勿論今は下級くらいの力しか出せないので、使う魔力は最少にまで抑えてある。だがそれだとドラゴンにかすり傷の一つも与えられない。だから炎を槍状にして貫通力を上げて少しでもダメージを与えようって算段だ。まあ、実際は本当に少ししか効果は出ていないけど……。
「ゴギャァァァァァッ⁉」
俺が放った炎の槍は運よくドラゴンの目の付近に当たったらしく、そのドラゴンが叫び声をあげる。
だがこの後に、倍返しだ! どころの威力ではない攻撃が来るのはこの一週間で学んでいるので、すぐさまその場を離れて近くの洞窟の中に入る。その直後に、洞窟の外から今度は怒りに満ちたドラゴンの咆哮が聞こえてきた。
(無理だ無理だ無理だ! こんなところで一ヵ月も生活なんてできるわけがない!)
この一週間碌に寝てもおらず色々とストレスの為っていた俺の思考は、そんな考えで埋め尽くされていた。そしてこの絶好の機会に逃げてしまおうと考える。そして色々と限界に来ていた俺はそれをすぐに実行に移した。
取り敢えず転移用の魔方陣を大急ぎで書く。行先は魔方陣が書き終わてからだ。
だが生憎と、俺の意思に反して作業は思うように進まなかった。完全に、という訳では無いが俺の魔術に関する才能は普通以上に戦闘系統の方に偏っている。なので移動用の魔方陣を書くのは苦手なのだ。だからいつもは俺の後をついて来る妹のレイヴェルにやってもらっている。レイヴェルもいないときは、自力で移動する。俺の行動範囲は殆ど冥界の中に限られるので、それで十分だ。
ゴギャァァァァァッ‼
「クソッ! もう来やがったのか⁉」
ドラゴンの咆哮が此方に近づいて来ているのを感じた俺は、作業中の手を休めずに舌打ちする。
「よし、出来ッ⁉」
魔方陣が完成し転移しようとした時に、ドラゴンが炎のブレスを放ってきた。
普段ならフェニックス家自慢の回復力にまかせてそのまま何もせずに喰らう所だが、今はその回復力も下級レベルに落とされてしまっている所為で十全ではない。それにより迫りくる炎に恐怖した俺は、行先も碌に指定せずに緊急転移した。
此処は日本にあるとある霊山。その山の中を一人の少女が歩いていた。彼女の名は鳳迦楼羅。この霊山に住む聖獣フェニックスだ。
(う~ん……今日はこれからどうしようか?)
彼女は不死身だ。故に食事をとらなくても死なない。だから彼女は食事を取る為に必要なお金を使う必要があまりないので働いていなかった。偶に食事以外の娯楽(洋服を買う等)の時に必要になった時は、賞金首を狩ったりしてお金を稼いでいる。
そしてこの霊山には彼女しか動物がいない。より正確に言うのならば言語を使ってコミュニケーションを取る事の出来る動物は彼女しかいない。故に話す相手もいないので彼女はほとんど毎日暇を持て余している。偶に野生の狐や狼と戯れる事はあるがそれも連日繰り返していれば流石に飽きて来る。長年それが続けばなおさらだ。
と、いう訳で今迦楼羅は暇つぶしを探していた。その肩には小鳥がとまり、彼女の足元にいは小動物たちが屯っている。
「意外と……暇はつぶせないか~」
ため息を吐きながら一人そう愚痴る。本来ならば動物たちに囲まれた明るい色の金髪美少女、という構図は物語の中のワンシーンなのだが、彼女が現在進行形で放っている「暇ですよオーラ」の所為で台無しになっている。
「あれ? この気配は……」
突然山の中に現れた気配に迦楼羅は、その気配が現れた方向を見る。
彼女の周りでは動物たちが彼女と同じ方向を向いて、毛を逆立てて威嚇というより警戒している。
「ああ……これは悪魔の気配だね……。久しく感じていなかったから忘れてたね」
気配の正体が分かった事で少々気分が良くなる迦楼羅。
何故彼女が悪魔の事を知っているのかと言うと、少し前までは彼女を眷属にしようとする悪魔がこの山にはたくさん来ていたのだ。迦楼羅のその容姿と『不死鳥』というネームバリューにつられてきた悪魔はたくさんいた。中には実力行使で彼女を眷属にしようとする悪魔もいたが、その事如くを彼女は追い払っていった。そして勧誘しにくる悪魔はどんどん減っていき、ここ数年では一度も来ていない。だから迦楼羅は悪魔の事を忘れていたのだ。
「みんな待ってて。ちょっと様子を見て来るからね」
未だに自身の周りで警戒している動物たちにそう告げてから、彼女は気配のする方へと悠然と歩いていった。
「あら? 悪魔がこの山に来たというだけでも珍しいのに、その上訳ありとはね……」
金髪の青年くらいの悪魔が倒れている所に来て迦楼羅は開口一番にそう言った。だがその声音に面倒だ、という感情は含まれておらず、逆にいい暇つぶしを見つけた、と喜んでいるようだった。
「まあ、ここで野垂れ死んでもらっても一向に心は痛まないけど……そうすると暇つぶしが無くなるしね。何より対極にいる同族のようだしね」
そう呟くと青年悪魔を肩に背負い迦楼羅は周りに動物たちを従えながら自身の家へと歩みを進めた。
その際、彼女の周りの動物たちは彼女の事を守る騎士の様に周りを囲んでいる。
だが一匹の狐が堪えきれなくなって迦楼羅に青年悪魔をどうするのか問いかけた。勿論鳴き声で。
「う~ん……とりあえずは起きるまでは様子見か」
無難な答え。だが現状ではそれ位しか思いつかない。このまま殺してしまうという手もあるが、聖獣ではなくても相手はフェニックス。殺すまでに時間が掛かり面倒くさい。
暇つぶしはしたいが、面倒事は嫌いな迦楼羅なのでその方法は取らなかった。
こうして後に、永遠の愛を誓い合う事になる聖獣と魔獣のフェニックスは初邂逅したのだった(片方気絶中)。
(ここは……どこだ……?)
死ぬかもしれないというショックと極度の疲労から、丸一日眠っていたライザーは見知らぬベットの上で目覚めた。体を起こしてまだ半分くらいしか覚醒していない頭で周囲を確認し、ここが何処かを考える。だが当然ここに来たことが無い彼にはここが何処か分かる訳無い。
「あ、起きたんだね」
そんな事を言いながら迦楼羅が部屋に入って来た。
勿論ライザーは彼女が誰だか知らない。だが部屋に入って来た迦楼羅を見た瞬間彼の身体に雷が落ちたような衝撃が走った。
部屋に入って来た迦楼羅は、日の光がその柔らかな金髪に照らされキラキラと光り、その姿はとても神々しく(彼女は聖獣なので神々しいのは元からかも知れないが)名画のような光景だった。
そしてその美しさは、今まで勉学や修行三昧であまり女性に興味のなかったライザーが、あまりの美しさに茫然自失してしまうほどだ。
「………………君が、俺を此処まで運んでくれたのか?」
その為このように少々長い間が開き、内容的にちょっとアホな事を聞いてしまっても仕方がないだろう。
「現状だとそれ以外の選択肢がないと思うんだけどね……」
「なに、一応の確認だ」
照れ隠しで少しぶっきら棒な口調になってしまったライザー。
だが初対面であるのにすでに軽口を叩きあっている時点で、この二人の相性は中々良いのかもしれない。
一誠に矯せ……調きょ……しごかれたライザーは、普段はかなり飄々とした態度だが言いたい事はハッキリ言うタイプになっている。
「此処まで運んでくれたことに感謝する。そうでなかった今頃俺は野垂れ死んでいた所だ」
ベットの上で佇まいを正したライザーが迦楼羅に深く頭を下げる。
「別に礼はいらないわ、ただいい暇つぶしになると思ってやったことだからね」
あっけらかんと言う迦楼羅に、ライザーはポカンと呆けた後腹を抱えて笑い出した。
「クックック……まさか他人の生死に関わる事を暇つぶしとはな……」
「フフ……本当の事だから隠しても仕方ないし、私は思った事はそのまま言うタイプだからね」
それからしばらくの間二人は笑い合った。
ライザーが迦楼羅に助けられてから約一週間が経過した。その間にライザーは怪我を完治させ、今では迦楼羅の生活を手助けしている。彼曰く、
「助けてもらった恩は返さないとな」
だそうだ。
だが別に迦楼羅は恩を売ったつもりはないので、彼女的にはそんな事をしてもらう必要は全くない。全くないが、彼女は彼女でライザーと居ると退屈しなさそうという理由からされるがままになっている。
「迦楼羅、この食器は何処に置けばいいんだ?」
「ああ、それならそこの棚だね」
言われてライザーは食器をその場所に置く。
現在二人は昼食後の後片付けをしている。といっても殆どの作業をライザーがやっていて、迦楼羅は先程の様に何処にどれを置いたらいいかなどを指示するだけだ。
「ねえライザー……」
「んー?」
カチャカチャと音を鳴らしながら洗い物をするライザーの背中に向かって、迦楼羅は退屈そうに言葉を投げかける。
「この後ってさー、また組み手をする事になるのか?」
三日前にライザーが怪我を完治させてから、二人は昼食後に組み手をするようになっていた。始めはライザーのリハビリが目的だったのだが、その時迦楼羅に手も足も出ない事がものすごく悔しかったライザーはその日以降何度も昼食後に迦楼羅に組み手を挑んでいる。そして今日もすれば四日目になる。
始めの二、三日は食後の運動程度に思っていた迦楼羅だったが流石に四日連続は飽きたらしく、先程の声には彼女のやりたくないっといった感情が込められていた。
「んー……まあ、それでもいいが今日はちょっと趣向を変えて別な事をしないか?」
彼女のそれを分かったライザーはそう提案する。
「へー……何するね? もしつまらない事だったら右手の一本くらいは覚悟してね」
首を可愛く傾げながらライザーに向かってウインクする迦楼羅。その仕草は本当に絵になっているが、ウインクをされたライザーは寒気に体を震わせた。まだ短い付き合いだが、彼女がこういう事を冗談で言っている訳では無い、ということは分かっているのだ。
「んー………あ、じゃあたまには町の方に下りて買い物でもしないか?」
今まで勉学と修行しかしてこなかったライザーは、迦楼羅——というよりも女性が『退屈しない事』の案でイマイチいいのが思い浮かばなかったので、悩んだ結果かなり無難なものを提案した。
「ふむ……新しい発見はなさそうだけど気分転換と言う意味では悪くはないか……」
無難な提案だったにもかかわらず迦楼羅の反応はちょっとよかった。その事に安堵しつつ迦楼羅とのショッピングをしたい、という下心のあるライザーはもう一押しする。
「それにお前がいつもする買い物は食材を買ったり、足りない日用品を補充するだけだろう。だったらたまには服を買ったり、ただブラブラと店を見て回ってみるのもいいんじゃないか?」
「う——ん………」
ライザーの言葉に行くか行かないかの瀬戸際で更にグラついていく迦楼羅。ライザーはもうそれ以上は彼女に何も言わず、彼女の葛藤を黙って食後のお茶を啜りながら見守っている。
「うん、確かにライザーの言う通りたまにはそう言う買い物もありね」
迦楼羅がそういった瞬間ライザーは心の中でガッツポーズした。
「ちょっと待ってて、今準備して来るからね」
「ああ、じゃあ俺は先に山の入り口の所で待ってるぞ」
外出の準備をしに自室に向かう迦楼羅の背中に向かってライザーはそう声を掛けた。そして山の入り口の所まで歩いていく。その顔はニヤニヤしていてちょっと気持ち悪かった。
「待たせたね」
「なに、こういう時女性は遅れて来るものだ。気にするな」
外行き用の清楚系の服に着替えた迦楼羅が入り口に着いたのは、ライザーがそこについてから三十分経ってからだった。
いくら俗世から離れて暮らしているとはいえ迦楼羅も一人の女性(年齢的には女の子)。外出の準備に時間が掛かるのも仕方がないと言えば仕方がなかった。
「ねえ、ぶらりと買い物するのはいいけど具体的には何処に行く気なのね?」
「此処に来て一週間程度の俺にそれを聞くのか? 自分で提案しておいてなんだが、俺はこの町の何処に何があるのかはサッパリわからない。だから何か行きたい所があればお前について行くさ」
自信満々にそう言ってのけたライザーに迦楼羅は呆れ半分おかしさ半分の顔になる。だが次第に堪えきれなくなり小さく笑いだした。
「何に対して笑っているのかは知らないが、早く移動しよう。なんか俺達目立ってるぞ」
周囲にサッと目配せしたライザーが、ソワソワしながらそう提案する。
「フフ……フフフフフ………うん、そうだね。此処にいると時間がもったいないしね」
未だに笑顔で笑ったままの迦楼羅は、自然な動作でライザーの手を取ると気に向くままに歩き出した。
いきなり手を握られたことに驚いたライザーだったが、握っている手から伝わってくる迦楼羅の体温が心地よく自身も軽く握り返した。
「⁉ フフ……昨日雨降った後でなんかジメジメするから、冷たいものでも食べに行かね?」
ライザーが握り返してきた事に迦楼羅は目を見開いて動揺したが、すぐに彼のそう提案して自身の心の変化を悟られないようにする。
「そうだな、じゃあカフェかアイス屋を探そう」
こうして二人は仲良く手を繋ぎながら、町の人ごみに消えていった。
ライザーが迦楼羅に助けられてから早一年半が経った。
それだけの間息子が家を無断で出ていたら親は心配しそうなものだが、元々ライザーは一誠のあの試験をクリアした後家に帰らずにそのまま眷属探しの旅に出るつもりだった。なのでライザーから数か月連絡が無かったとしても彼の両親は不審に思わなかった。
………まあ、流石に半年を過ぎた頃に彼は家に一度連絡した。自分は元気にやっている等の簡単な内容だったが。
そしてそんな彼の最近の日課と言えば……
「おい、もう七時半だぞ。いい加減に起きたらどうだ」
「えぇ~…………後三十分ね~」
日常生活がキチッとしているライザーがいる故に、すっかり堕落してしまった迦楼羅を朝起こすことだ。
迦楼羅は元々朝に強くない。というか弱い。だがライザーが来るまでは一人暮らしという事もあって朝眠いのを我慢して起きていた。だがライザーが来たことにより朝にやるべきことはほぼ全て彼がやるようになってしまった。なのでやることが無くなった迦楼羅は、朝こうしてライザーが起こしに来るまで惰眠を貪るようになったのだ。
「はぁ———……お前はそう言っていつも起きないだろう。いいから起きろ!」
「キャッ⁉」
これまでの経験から迦楼羅がなかなか起きない事を知っているライザーは、多少強引だが力任せに彼女の掛布団を剥ぎ取った。
「うぅ〰〰ライ君からのイジメね〰〰ッ‼」
「イジメてない。これはれっきとした躾だ」
キッパリと迦楼羅に言い放った後、後ちょっとで朝食が出来るから早く降りてこいよと言い残してライザーは部屋を出て行く。
迦楼羅がライザーの事をライ君と言うようになったのは二人が会ってから一年ほど経った頃で、初めのうちはその呼ばれ方に抵抗していたライザーだったが、現在ではすっかりなじんだ様だ。というより、ライ君と迦楼羅に呼ばれると彼は無意識のうちに頬が緩む。デレデレデある。
「あ~……顔洗ったのにまだ眠いね〰〰〰…………」
テーブルに着いた迦楼羅はねぼけ眼でそう呟く。
その姿に苦笑しながらライザーは朝食をテーブルに並べていく。今日のメニューはごはんやみそ汁などの和食のようだ。
全て並べ終わった後ライザーは迦楼羅の向かいに腰を下ろした。
『いただきます』
食べ始めると二人は無言だった。これは別に作者が書く気が無い訳では無い。ホントダヨ、サクシャハウソツカナイ。
ライザーが喋らないのは彼が今まで教えられてきた『貴族の常識』によるものだ。別に貴族も食事中には喋るが、積極的に喋る訳では無い。だからいくら迦楼羅が相手でもライザーは食事中に積極的に喋らない。勿論話を振られたらちゃんと話はする。
迦楼羅が喋らないのは低血圧の所為でまだ頭が起きていないのと、ご飯がおいしいから食べることに集中しているだけだ。一応弁明しておくが彼女は腹ペコキャラではない。
『ごちそうさまでした』
同時に食べ終わった二人は、それぞれの食器を流しへ持っていきそれぞれ自分の使った食器を洗う。
「今日はこの後どうするのか~?」
「う~ん……そうだな~…………」
食器を洗いながらその日にやる事を二人で相談する事がしばらく前からの二人の日常だ。
「あ、確か日用品のいくつかが切れそうになってッ⁉」
言いかけている途中ライザーはとても強い聖なる気配を感じてものすごい悪寒に襲われた。そして反射的に気配がした方向を勢いよく振り向く。
その隣では先程までのねぼけ眼とは違い、真剣な目をした迦楼羅がライザーと同じ方向を睨んでいた。
「この強い聖なる気配は………もしや聖遺物か……?」
「かもしれないね。もしかすると、神滅具のどれかかも……」
二人は顔を見合わせた後、素早く食器を洗い終わるとそれぞれの部屋に戻り動きやすい格好(ジャージ)に着替えた後家を飛び出した。
「ライ君は待ってた方がいいんじゃないか? いくらライ君がフェニックスだといっても、下級レベルしかない今のライ君だとむざむざ死ににいくようなもんだよね?」
迦楼羅のいう事は正しい。だがそれでも、ライザーは家に戻りはせずに迦楼羅の隣で並走する。
それは危険な場所に女性一人では行かせない、という男の矜持からなのか。それとももっと別の理由からなのか……それはライザー自身にも分かっていない。
暫く二人が走っていると、前方に獣の集団が見えてきた。
獣たちは一様にグルルルと喉を鳴らして何者かに威嚇している。
現在でこそ獣たちと仲良くなったライザーだが、初めの頃は山の中を歩く度に獣たちに威嚇されていた。その事を懐かしく思いつつも、これから起こることをいくつか想定し気を引き締める。
「! へぇ~……ここは聖獣フェニックスが住む山だと思っていたんだが、まさか悪魔側のフェニックスまでいるとはな」
ライザーと迦楼羅が獣たちをかき分けて行くと、中心に居た中学生かそれよりももっと幼いくらいの漢服を着た黒髪の少年が二人を見るなりそう言ってきた。その隣には長い黒髪の日本人らしき少女もいる。
「ありふれた問いだが聞かせてもらおう。お前達は誰で何をしにここに来た」
迦楼羅の一歩前に立ちながらライザーは少年少女に問いかける。
「おっとこれは失礼。俺の名は曹操。三国志の英雄である曹操の魂を継ぐものだ」
「
少年と少女は丁寧に名乗りを上げた。
「一応の確認だが、それはちゃんと証明されているんだろうな?」
この世界には原作と違い、英雄や偉人や勇者の魂を継ぐ者あるいは英雄や偉人や勇者の子孫と名乗る者たちが『本物』であるかどうかを審査する機関がある。そこは特に名前は決められていなく、一般的には『審査証明機関』と何のひねりもない名前で呼ばれている。
「勿論だ。……ほら」
曹操は特に気を悪くする訳でもなく、何気なしに左手の甲をライザーと迦楼羅に見せる。その隣では卑弥呼も曹操と同じ格好をしている。すると曹操と卑弥呼の前に『審査証明機関』の紋章が現れる。
この紋章は彼らが本当に魂を継ぐ者あるいは子孫であるという証明証の様なものだ。
「そして俺達の目的だが、彼女を勧誘しに来たんだよ」
掲げていた手を下した曹操は迦楼羅を見ながらそう言った。
だがライザーと迦楼羅の二人は当然首を傾げた。悪魔なら勧誘に来るというのもあり得るが目の前の二人は何処からどう見ても人間だ。そうすると魔法使いの組織が残るが、卑弥呼は兎も角見た所曹操は魔法使いではない。明らかに戦士タイプだ。
「お前は悪魔じゃないのだろう? だったら何処に勧誘するというんだ?」
「悪いがそれを悪魔である君に答えることは出来ない。出来れば穏便のこの場から退場してもらいたいのだが………」
曹操はそう言ってライザーの顔を窺うが、彼は自身の中でどうするかなど答えは決まっている。それを顔を見た曹操も感じ取ったのか短く嘆息した。
「仕方ない…………力ずくで『退場』願おうか」
そう言って彼は手元に一本の槍を出現させた。
その槍を見た瞬間ライザーが感じる悪寒が段違いに強まった。
「……
その槍を見て迦楼羅が呟いた。その名前を改めて聞いたライザーの頬には冷や汗が浮かぶ。
「そういう訳だ。なのでここは大人しく引いて貰えないかな悪魔君?」
曹操は油断なのかそれとも自信の表れか全身の力を抜いて自然体で問いかけて来た。
「彼女は命の恩人だ。故に彼女を見捨てて俺だけがこの場を去ることなどできない」
キッパリと言い切ったライザー。それを聞いてまた嘆息する曹操。……どうでもいいけど、この曹操溜め息多いな。
「それじゃあ仕方がない。……死ね」
曹操が冷たく言い放つと同時に彼の姿が消える。その瞬間ライザーは迦楼羅と一緒に思いっ切り左側に跳んだ。その直後に聞こえてくる轟音。見てみるとそこには聖槍を突き出した状態の曹操がいた。そして槍の延長線上にいた獣たちは、槍を突き出した時の風圧により一匹残らず引き飛ばされてしまっていた。
「皆‼ 私達の事はいいから早く逃げてね‼」
その光景を見た迦楼羅がすぐさま獣たちに叫んだ。獣たちも素直にそれに従い、背中を曹操に見せないようにしながら後ずさりしここから離れていった。
「賢明な判断だ。あのまま動物たちが此処に残っていたら彼らは皆死んでいただろう」
体勢を楽にした曹操が迦楼羅の判断を称賛する。
だがライザーも迦楼羅もそれを素直に受け取っていられる状態ではなかった。
ライザーは今の状態でどうやったら曹操に勝てるのかを模索し、逆に迦楼羅はどうやったらライザーをこの場から退かせるか、についてそれぞれ考えていた。
(守ってくれるのは素直にうれしいんだよね。でもだからと言って私の為に命までかけてほしくないのもまた事実なんだよね。…………う~ん、どうしよう?)
(あいつらは迦楼羅が聖獣フェニックスだと知ってここに来た。てことはあいつらが迦楼羅をどんな事に利用しようとしているのかは分からないが、絶対迦楼羅にとっては良くない事に決まっている。……しかし封印されているこの状態でどうやって彼らを退けられるんだ?)
二人が思考している時間を曹操がくれるわけもなく、二人が考えている間も曹操の攻撃は続いている。だが幸いにもライザーと迦楼羅にとってその攻撃は決して避けられないものではないので、考え事をしている片手までも避けられているのが現状だ。
(見た所奴の獲物は
「はぁあっ!」
曹操が刺突して来るタイミングに合わせてライザーは彼の懐へもぐりこんだ。
力が下級まで制限されていても培ってきた経験と基本的身体能力は変わらない。故に今の状態のライザーでも簡単に懐に潜り込むことが出来た。そして左手一閃。
「ッ⁉」
「なるほど……ただの下級悪魔ではないという事か」
完璧に決まったと思われたライザーの拳を、曹操は首を動かすだけで避けていた。驚くライザーを他所に曹操は何かを納得するように呟く。
「おいおい、今のを避けるとか……バケモノじみた反射神経だな」
自身の後ろで呆然としていた迦楼羅を横抱き(所謂お姫様抱っこ)した後、その場をバックステップして曹操から距離を取りながらライザーが呻いた。
「気が変わった。君の名前と、何故君の力がそんなに低いのか理由を聞こうか、悪魔君」
自身の優位を実感している曹操は余裕だった。
「俺はライザー・フェニックス、フェニックス家の三男だ」
それだけ言ってライザーは口を閉じた。本当ならば乱れた息を整える為にももっと喋った方がいいのだが、力を押さえられている理由は……あまりに情けなさすぎて語る事ができない。故にライザーにはもう話すことが無くなってしまったのだ。
「ライザー・フェニックスか。覚えておこう」
曹操は確認するようにライザーのフルネームを復唱すると再び聖槍を構えた。
「あなたのような人物とは死力を尽くした勝負をしたかったが……。非常に残念だよ、ライザー・フェニックス」
言い終わると同時に曹操は先程よりも早い速度で攻撃を繰り出してきた。それを先程までとは違いすれすれで躱していくライザー。
彼は今度は迦楼羅を横抱きにはせずにその場に放置した。そして彼女から離れる様に曹操の攻撃を躱していく。しかし当の迦楼羅は先程の曹操がライザーに名前を聞いた辺りからなにやら考え事をしていて、その他の事はアウトオブ眼中となってしまっている。
(取り敢えずこいつらが今は迦楼羅に手を出してこない事が救いか……)
一撃でも直撃を喰らえば致命傷になる攻撃を避けながらも、なおライザーは迦楼羅の事を考えている。
ライザーが曹操の攻撃を必死で避けている中、迦楼羅はある意味では現在の状況に関係ありある意味では現在の状況に関係ない事を考えていた。
(いきなりライ君にキスして嫌われたりしないかな……?)
家族同然のライザーが死ぬかもしれない時に何考えてんだこの女、と誰もが思うだろう。だが彼女は超真面目だった。そして今彼女が考えているこれはライザーの封印に関する事でもある。
と、いうのも以前ライザーがいないタイミングで一誠が迦楼羅の元を訪れていたことがあった。
一誠の目的はライザーの様子見と封印の解除についてだった。
「ねえ、どうやったらライ君の封印って解けるね?」
ライザーを戒めている枷を外してあげたい。故に迦楼羅は真っ先に一誠に封印の解き方を聞いた。
「そんなの簡単だ。悪魔側でも聖獣側でもいいからフェニックスの血を
一誠にそう言われた迦楼羅は複雑な顔をした。
(キ、キス⁉ ライ君とキス⁉ い、いやでもちょっとしてみたいかも……ああぁ、でもそれでライ君に嫌われたらどうしよう⁉)
一誠が見ているのも気にせずに、頭を抱えて悶える迦楼羅。女心は複雑だ。
そういう訳で迦楼羅は今悩んであるのだった。だがそれでも卑弥呼の状況をきちんと観察していて、いつでも動けるようにしているのは流石と言える。
(ええいっ‼ 女は度胸‼)
決心を決めた迦楼羅は立ち上がり現状を確認する。
今はちょうどライザーと曹操との間には距離が開いている上に、ライザーとの距離は迦楼羅の方が近い。
それを確認した迦楼羅は迷わずライザーに向かって走り出した。そして走りながら指先を噛み千切り自身の血を口の中に含む。
そんな迦楼羅に反応して卑弥呼もいつでも動けるように術式の準備をしだした。
「ライ君ッ‼」
そしてライザーとの距離があと数歩までになった時、彼女は最愛の人の名を叫んだ。
「ライ君ッ‼」
俺と曹操が距離を取ったタイミングで、俺は最愛の迦楼羅から名前を呼ばれた。
その際に曹操が突貫してきたのを視界の端でとらえていたが、俺は迷わず迦楼羅の方を向いた。普段なら戦闘中に敵から目を離す事は無いが、迦楼羅の声が切羽詰まったものだったからだ。
「どうしむぐっ⁉」
どうした? と聞こうとしたが俺の口は何か柔かいもので塞がれてしまう。そして俺の口の中に入ってくるドロリとした液体。目の前で超ドアップになっている迦楼羅の顔。
あれ、これってもしかして俺今迦楼羅にキスされてる? え……ちょっと、マジで⁉
突然の出来事に混乱する心を落ち着ける余裕もなく、次の瞬間には体の中に在る鎖が音を立てて崩壊していったような感覚がした。
(何故このタイミングでキスかは分からないが、容赦はしない)
ライザーと迦楼羅が目の前でキスしているという突然の事に、曹操は焦らずにライザーに向かって聖槍を突き出した。
そして聖槍があと数センチでライザーに突き刺さるという時に、
ライザーを中心に火柱が出現した。
「……チッ」
聖槍を持っていても曹操自体は人間だ。故に火柱から発せられる膨大な熱量に、仕方なく卑弥呼の隣まで後退する。
だが、曹操は必殺の機会を逃したというのに笑みを浮かべていた。
「実に面白い。これだから強者との戦いはやめられないんだ」
「ふん。その余裕がいつまで持つのか見ものだな」
火柱を手で横に薙いでライザーと迦楼羅が姿を現した。
どうやら火柱に包まれる直前の曹操の一撃が決まっていたらしく、ライザーの脇腹には浅く刺された痕がある。だがそれ以外は二人には変化はない。ライザーの魔力が上級悪魔の中でも上位クラスまで高まっているという事を除けば。
『…………』
睨み合ったままライザーと曹操は動かない。だが次の瞬間、二人の姿が同時に消え中間地点で激突した。
『ッ⁉』
二人の頭に『後退』という言葉は浮かんでおらず、衝突した直後は
ライザーは不死鳥の炎を四肢に纏わせ、曹操は聖槍のオーラを全身から発している。
はたから見ると二人は互角に戦っているように見えるが、状況はライザーの劣勢だった。
彼は攻撃と回復に三対七の割合で魔力を割り振っている。そうして自身の再生力を普段以上に上げていなければ、一発一発が致死級である聖槍相手に
だが色々な要因が重なった上での近距離格闘戦なのだ。この開けた場所は、お互いが端まで寄っても中距離線くらいの距離しかない。なので遠距離戦をするだけのスペースがない。そしてライザーの中~遠距離攻撃は高威力の炎(数種類のバリエーション有)を撃つだけという脳筋攻撃しかない。なので多少の危険を冒してでも近接戦の方が勝率が高いのだ。
だがこのままいけばジリ貧なのでライザーは焦っていた。
(再生に大幅に魔力を割いている所為で攻撃力がガタ落ちしている上に、聖槍のオーラの所為であまりダメージらしいダメージが入らない……。クソッ‼ どうすればいいんだ!)
そしてその焦りが決定的なスキを生んでしまう。
少しでも威力をあげようとしたライザーは、大振りに腕を振りかぶってしまう。そこからの右ストレートは明確なスキを見せていない曹操にはもちろん当たる筈も無く、易々と躱されて懐に潜り込まれてしまった。
「さらばだ、ライザー・フェニックス」
聖槍がライザーの胴目掛けて吸い込まれるようにして繰り出される。
「ハァアアッ‼」
『ッ⁉』
突然聞こえた咆哮に男二人はギョッとして、その声の方を見やる。
そこには全身を聖なる炎に包まれた迦楼羅が、曹操の腹目掛けて蹴りを放っている緒中だった。
完全なる不意打ち。
更には迦楼羅の咆哮により一瞬体を硬直させてしまった為、最早曹操には避けられる筈も無かった。
そしてドラゴンの鱗をも溶かす灼熱の一撃が曹操の腹に直撃する。かに思われたのだが、彼の腹と迦楼羅の蹴りの間に突如として魔法障壁が現れたことにより、曹操は吹き飛ばされるだけで済んだ。
「か、迦楼羅………」
「全く……いくら力が戻ったからって無理はいけないね、ライ君」
呆れた顔でライザーに言って来る迦楼羅だが、視線は曹操と卑弥呼から逸らしていない。
「それにしても、よく私が乱入するってわかったね」
「まあ、女の勘ってとこかしら」
「またまた~。本当はずっと私の事警戒していたくせにね」
「あら、嘘じゃないわよ。それにあなたも女なら自身の勘は信じるでしょう?」
先程のライザーと曹操の本音同士の会話とは違い、この二人の会話は腹の探り合いと心理戦も兼ねている。故にそういうのが苦手な男二人は辟易する。
「ま、それはいいね。そんな事よりも君達二人にはさっさとここから出て行ってほしいんだけど?」
だが迦楼羅自身はあまりこういった事が得意ではない。どちらかと言えば彼女はライザーと同じく脳筋タイプよりだ。
「そうね……このままやってもこっちも必要以上にダメージを負いそうだし……。いいわ、今日はこの辺で引かせてもらうわ」
卑弥呼は迦楼羅の意見をあっさりとのみ、転移するための魔方陣を準備する。
「おいちょっと待て迦楼羅。あいつ等には捕まえて聞きださない事が—————」
「ストップだ卑弥呼。俺はまだ十分に戦える。それにライザー・フェニックスはここで排除しておいた方が—————」
『いいから黙って従う!』
『はい………』
戦い足りなかった男二人は苦言を申したが、女性二人にバッサリと却下される。二組とも恋人同士ですらないのに既に男性側は尻に敷かれていた。
「それじゃあ今日の所はこれで引かせてもらうけど、次もこうなるとは思わない事ね」
「そうね。それじゃあもし次があったら、その時は今度っこそボコボコニするね」
『…………』
女性二人は最後までギスギスした雰囲気を保ったままだった。
曹操と卑弥呼の襲撃から数年後。
「迦楼羅、俺と結婚してくれ」
ライザーは津井に迦楼羅に告白していた。
だがこの二人恋人でもなんでもないただの同居人の関係だ。
「え………そ、それって———」
「ああ、俺はお前の事が好きだ愛してる。だから今後も俺の隣でずっと一緒に居てほしい」
迦楼羅は心の中で小躍りするくらい喜んだ。だがライザーのいつもとは違った雰囲気に冷静を取り戻していく。
「……何か、あったの?」
迦楼羅の問いに、ライザーは彼女に言うかどうか迷ったが決心していう事にした。
「実は近々リアスと結婚させられることになった」
「リアスって
リアス・グレモリーの噂は迦楼羅も聞いたことがある。なのでその容姿もある程度聞いている。
「いいんじゃないのか、彼女美人なんでしょう? それにその結婚は政略的な意味も持ってるんでしょう?」
ライザーは無言で俯いた。
言ってて迦楼羅は泣きそうになった。本当ならば彼女だってライザーとこの先もずっと彼の隣で一緒に居たい。だがライザーにはフェニックス家の三男としても責務もある。そして迦楼羅は野良。二人の身分の違いは明らかだ。
だから迦楼羅はライザーの幸せを願って身を引く。
「政略的な意味もあるんだったら尚更そっちを優先しないと。私は、大…丈夫。ここには……皆も…いる…から…ね」
彼女の言葉は嗚咽の所為で途切れ途切れになっていく。
「ご、ごめんね。ずっと…一緒に居た……ライ君が……いなくなる…せいで、な、涙が止まらなくて————」
「もういい!」
嗚咽を漏らしながらも、なお話そうとする迦楼羅をライザーは自身の胸に抱き寄せる。
「ごめん、悲しませるつもりはなかった。こんな事になるなら俺の考えを先に話しておくべきだったな」
「……?」
「なあ、迦楼羅は俺の事好きか?」
問われて迦楼羅は悩んだ。本当の事を言うべきか言わざるべきか。
「………好き…だね。一緒に居ると安心するし、こうして触れ合ってると胸の奥がポカポカしてきて幸せな気持ちになるもんね」
結局彼女は嘘偽りのない自身の本音を言う。
もし嘘を言ってしまったら、自分の気持ちを偽ることになるなるから。
「そっか………」
迦楼羅の本音を聞けてライザーは安堵する。自身の決めたことは無駄じゃなかった、と。
「迦楼羅聞いてくれ。……俺はフェニックス家を出る」
「⁉ ダメだよそんなのっ‼ そんなことしたらライ君が———」
ライザーの胸にうずめていた顔を勢いよくあげて迦楼羅は抗議した。
「いや、これでいいんだ。それに、俺はお前の隣に入れる事が一番幸せを感じるんだからな」
「………バカ」
後半はおちゃらけた雰囲気で言うライザーに、迦楼羅は赤くなった顔を見られないようにするために彼の胸に顔を押し付けながら罵倒する。
そしてこの後二人はフェニックス家に行き、殆どライザーが勘当されるという形で二人の結婚は認められた。しかしその際に、グレモリー側には自分で説明して来いと条件を出されたので二人で説明しに行くことになった。
「そうか……。残念だが、君が生涯を通して愛せる女性をも付けられたのは素直に喜ばしい事だ。おめでとう」
「ありがとうございます、グレモリー卿」
グレモリー卿とその奥さんや現魔王でリアスの兄でもあるサーゼクスは、破談になった事は残念がったもののライザーと迦楼羅の結婚自体は祝福してくれた。
「だが、妹が君との結婚を非常に楽しみにしていてね……。悪いが当人であるリアスが納得しなければ正式に破断はできない。だがらリアスの説得には君自身でやってもらうよ」
と、サーゼクスに言われたのでライザーはリアスがいる駒王学園へと行くことになった。
「じゃあ俺が先に行く。その後こちらのタイミングで呼ぶから」
「うん。でもさ、説得が平行線をたどっちゃったらどうするのね?」
首を傾げる迦楼羅を見て、内心で鼻血をふきながら表面上は真面目に対応するライザー。
「(俺の嫁マジ可愛ぇぇえええ‼)そうだな……、多分だがお家同士の問題という事もあってレーティングゲームで決めるんじゃないか?」
「へー……。じゃあ皆にも頑張ってもらわなきゃね」
「ああ、そうだな」
迦楼羅の言う『皆』とは、勿論ライザーの眷属たちの事である。
曹操の襲撃から今までの間に、ライザーは何だかんだで眷属を全員集めたのだった。
そしてちょっといい雰囲気の二人に割り込むイケメン一人。
「お任せください主(あるじ)よ。その際には必ずや敵の大将首を打ち取って見せましょう」
「ああ、うん。張り切るのはいいがレーティングゲームはあくまでもゲームだから。例えるなら『これは戦いであっても殺し合いではない』だから。ちゃんとその辺は理解しとけよ」
「はい!」
張り切ってるイケメンの所為で多少の頭痛を覚えながら、ライザーは駒王町に転移しようとする。
「じゃあ、いってくる」
『いってらっしゃい』
「いってらっしゃい、ライ君」
大切な眷属と最愛の嫁(確定)に見送られながら、ライザーは転移していった。
今年は受験なので次の更新までまた間が空きます。
ですが出来るだけ早く投稿したいと思っています。