人外教師兵藤一誠   作:隆斗

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お久しぶりです。
やっと受験に合格したので、投稿します。といっても短いですが(笑)。
またすぐに学校の最後の定期テストがあるので、次の投稿はいつになるか分かりません。出来れば年内にあと二回くらいは投稿したいと思ってます。


修行

 

 翌日の朝四時。駒王学園の前に集まったグレモリー眷属を見回して俺は頷いた。

 

「よし、全員動きやすく汚れてもいい格好で来たな」

 

 指示しなかったものの、全員がジャージを着てきたことに俺はほっとした。表には出さないけど。

 かくいう俺も今は黒いジャージを着ている。

 

「それじゃあ、今から合宿所の近くまで転移する。そこからは修行がてら山の中を歩くからな」

 

 そう言って俺は全員の足元を覆うほどの魔方陣を展開して、箱根の山の近くまで転移した。

 

 

 

 山の歩き出して一時間とちょっと。

 

「兵藤ゼェ……先生、まだゼェ……着かないん、ですか?」

 

 転移した直後に付けさせた重り(両足に一キロずつ)の所為か、息も途切れ途切れの兵庫がしんどそうな表情で聴いて来た。

 

「後ちょっとだ」

 

 それに俺は短く返す。

 因みに重りは兵庫とアルジェント以外は片足二キロ以上、佑斗とジャンヌは片足四キロずつ付けている。俺? 俺は勿論付けて無い。この特訓は初歩中の初歩だから俺がしても意味がないからな。

 

「お前ら、見えて来たぞ」

 

 俺らの目の前に現れたのは、一軒の古い旅館だった。

 

「おーい! 巴ぇー!」

 

 俺はその旅館の前に居た、着物を着た中学生くらいの身長の子に声を掛けた。

 

「ん……? おおぉ一誠! 久しぶりじゃな」

 

 巴はこちらに気づくと、箒を掃いていた手を止めて大きく手を振って来た。

 彼女は久しぶりと言っているが、大体月一もしくは二ヵ月に一回は此処に来ているのでそう久しぶりでもない。ましてや今回は前回来てから二週間しかたっていない。

 

「こんな朝早くにどうした? それにお主確か平日は教師の仕事で忙しいとか言っていなかったか?」

 

「ああ、だから用事が終わったらすぐに帰るさ。実はこいつらが修行するから場所の提供と師匠役をやってほしいんだ」

 

「ふむ………」

 

 用件を伝えながらグレモリーたちを指さすと、巴は彼らを値踏みするように観察しだした。恐らくあいつらの現状での実力を測っているのだろう。

 

「まぁ、どちらも引き受けるのは吝かではないが………期間はどのくらいなのじゃ?」

 

「昨日から数えて二週間。練習メニューはすでに俺が考えてあるからその通りにやってくれればいい」

 

 そう言って昨日適当に考えた練習メニューの書かれた紙の束を巴に渡す。

 それから周囲に転移魔方陣を二つ展開させる。そこから青髪でアロハシャツを着た男と赤髪で赤いパーカーを着た男が出て来た。

 

「アロハシャツの男がランサー、パーカーの方がドルイグだ。巴と一緒にお前達の修行の手伝いをする」

 

「ふむ……まあ、この二人なら問題ないじゃろうな」

 

 機嫌が良さそうにフムフム頷く巴とは対照的に、呼び出された二人は不機嫌だった。

 

「おいおい、何で俺がこんな雑魚どもの相手をしなきゃいけねぇんだ。これだったらいつもやってるはぐれの方がまだ手応えがあるぜ」

 

「同感だ。俺が何故こんなやつらの相手をしなければならないんだ……」

 

 ドルイグ——ドライグはグレモリーたち——特に一翔を睨みながら不機嫌そうに呟いた。彼の呟きとそこに含まれていた僅かばかりの殺気にグレモリーたち——特に一翔は怯む。

 まあ、ドライグが不機嫌なのも分かる。なんて言ったって自身の半身ともいうべき『赤龍帝の籠手』を宿しているのが、四六時中おっぱいおっぱい叫んでいる兵庫(変態)なのだ。そりゃあ不機嫌になって殺気もぶつけてしまうだろう。いや、ドライグはまだマシな方だ。これがアルマとかウィサとかだったら相手を痛めつけた後、殺してしまうかもしれない。

 

「その紙に書いてある事以上の事はしなくて良いし、口答えだりなんだりしたら半殺し位までなら許す。それに後でストレス発散の機会を設けてやるから、今は大人しく我慢しろ」

 

「ちょっ⁉ 先生それはいったいどういう————」

 

「おいおい、そんな事言って前回はただいつも通りはぐれ狩りをやらされただけじゃねえか!」

 

 俺の発言に不穏なものを感じ取ったグレモリーが抗議の声をあげたが、クーの苛立ちを全く隠せていない叫びにさえぎられた。

 

「分かった分かった。じゃあ今回はお前が指名したやつと戦わせてやる」

 

「おっ、それは誰でもいいのか?

 

「家族内ならな。それならお前も満足できるだろう」

 

「あー……まあ、その条件なら悪かぁねぇな。……よし! ちゃんと約束は守れよ‼」

 

「はいはい」

 

 取り敢えずこれでクーの説得は完了。

 今の居れとクーの会話を聞いて、グレモリーが眉間にしわを寄せてなにやら考え込んでいるが……まあ放っておいても大丈夫だろう。

 

「ドルイグ。ちょっとこっち来い」

 

「……?」

 

 そして俺はドライグを説得するために、皆から少し離れた所に呼び出した。

 

「お前、本当にやらないのか?」

 

「当然だ。誰があんな性欲の塊の相手なんかやるかっ」

 

 吐き捨てるように言うドライグ。その顔には一翔に対する嫌悪感がありありとうかんでいた。

 だが、俺もあいつらに頼まれた身だ。だからその頼みを断る事は絶対にしない。兵藤一誠の名に懸けて。

 

「だが、考えてみろ。この修行でもしかしたらあいつの変態性を少しは直せるかもしれないぞ」

 

「むぅ……。確かにあの変態性は一刻も早く直したいが、今回の修行で『確実に』直る訳では無いだろう」

 

 ドライグのいう事は尤もだ。

 

「それはお前の頑張り次第だろう。そこは自分で頑張れよ」

 

「それはまあ……確かに」

 

「じゃあ頑張ってくれ」

 

 一方的に言い残して俺は駒王町に帰った。

 

 

 

 駒王に帰ってきた後は、普通に授業をしていた。グレモリーたちが一斉に休んだので、生徒たちの間ではいろんな憶測が飛び交って少し騒がしかった。だが、それ以外はいたって普通だった。

 

「気をつけて帰れよ」

 

「起立、礼!」

 

『さようなら』

 

 今帰りのHRも終わり、部活のない生徒たちは速やかに帰宅していく。俺はまだ仕事が残っているので帰ることは出来ない。はあ、帰ってルシファー達と遊びたい……。

 

「兵藤先生!」

 

「? どうした姫島」

 

「実はここの所がちょっと分からなくて……(今日ヴァーリは一誠さんの家にいますか?)」

 

 そう言って朱乃は数学の教科書のある部分を指さしていた。それと同時に念話で全く関係のない事を聞いて来る。朱乃に限らず黒歌と白音も学校ではこのやり方でコミュニケーションを取っている(裏の事限定)。

 

「ああ、ここはこうしてこうやって……(いや、ここしばらくは夕食にならないと帰ってこない。だから今日もまだ家には帰っていないだろう)」

 

「そうですか、ありがとうございました」

 

 若干しょんぼりしながら朱乃は帰っていった。

 

「……先生」

 

 後ろから呼ばれると同時に、スーツの上着の裾を軽く引っ張られた。

 

「塔城妹か。どうした分からない所でもあったのか?」

 

「……違います。姉様を知りませんか?」

 

「塔城姉? いや、見てないぞ」

 

「……そうですか」

 

 今彼女に猫耳と尻尾が出ていたら、シュンと垂れ下がっている事だろう。

 全くこんな可愛い妹に心配させるなんて、黒歌はダメな姉だな!

 

「見つけたら連絡するから、そんなに落ち込むな」

 

 微笑みながら頭を撫でてやると、白音に少し元気が戻った。

 普通の教師が学校で生徒にこんな事をやったら噂になりそうだが、俺は落ち込んでいる生徒には全員同じようにやるので問題ない。いや、ある意味問題かもしれないが。

 その後、俺は職員室の自分の机で暗くなるまで小テストの採点等をしていた。

 

 

 

「ただいまー」

 

 俺が家に帰ると、キッチンの方からカレーのおいしそうな匂いがした。誰が作っているのか気になってリビングを覗いてみると、淡い黄色のカーディガンの上に肌色のエプロンを着たライヴィスがいた。

 

「お帰りなさい。今日はどうでしたか?」

 

「いつもよりは採点するテストとか少なかったからいくらかは楽だったな。まあ、もうすぐで定期テストが始まるからまた忙しくなるんだろうけど……」

 

「あらあら、それは大変ですね」

 

 元神らしくその笑顔には慈愛に満ちていた。だが料理をしているその手つきは、完全に主婦のそれだ。

 

「何か手伝う事はあるか?」

 

「では、何人かが既にお腹を空かせていたので軽くつまみでも作っていただけますか?」

 

「はいよ」

 

 そして俺は、ライヴィスと並んで調理を始めた。家のキッチンは、家事担当の奴らの意見によりちょっとした大きさのレストランの厨房くらい広さがある。だから三人までなら並んで調理が可能なのだ。

 

「そういえば、今日はクーとドライグは帰ってくるのでしょうか? それによってつくる量が変わるのですが……」

 

 既に八割方作り終わってて何を言うか、とはツッコまない。こんなのは日常だ。うん。

 

「ちゃんと帰って来るぞ。てか、帰ってこさせないとストレス溜まりそうだからな」

 

 俺の言葉に彼女は笑いながら肯定してくれた。

 

「おし出来た。ちょっと味見してみてくれ」

 

「では私のもお願いしますね」

 

 俺達はお互いの作ったモノを小皿に取り分けると、それを相手に渡した。

 うん。今回もライヴィスのは美味しくできてる。

 

「いつも通り美味しかった。ただ美味しいがゆえにこの量では足りるかが心配だな」

 

「では、私はもう少し追加で作っておきますね。その間にあなたはそれを前菜として出しておいてください」

 

 彼女は食器棚から取り皿を取って俺に渡してくる。

 俺はそれを受け取り、作った奴を盛っていく。

 

「そう言えば一誠」

 

「ん?」

 

 皿を持って出て行こうとした時、ライヴィスに呼び止められた。

 

「“あの”アザゼルが結婚したそうですね。あの厨二と結婚した物好きはどこの誰なのですか?」

 

 なにやら話題が古いしアザゼルに対して嘲笑ってる気がしたが、彼女は家からほとんど出れないのだからそれも仕方がないのだろう。あいつがライヴィスにどう評価されようとも俺には関係ないしな。

 

「一般的な評価から見ても美人の分類に入る女性だよ。ドSな部分があるが戦闘力も申し分ないしな」

 

「なるほど。それは是非とも一度お会いしてみたいですね」

 

 ……残念だが彼女のささやかな願いを俺は叶えてあげる事が出来ない。アザゼルは彼女を含めた旧三大勢力トップが生きている事は知ってる。だからその嫁くらいなら、と思わなくもないが情報はいつどこで漏れるか分からない。特にこの事は神話間の関係に大きな衝撃を与えるだろう。だからできない。

 だったらなぜアザゼル達には教えたのかと言う話だが、あの頃は俺も若かったんだ。だから世間の事は考えずに行動できた。と言ったところだろう。

 

「……別にあなたが気に止むことはありませんよ」

 

 ライヴィスに俺の思考を見透かされたようにそんな事を言われた。俯いていた顔をあげると、彼女はこちらに背を向けて調理に勤しんでいる。

 

「そんなに気に止むことはありません。私達は貴方がしたことを責めませんし、あの時の行動に後悔もしていません。だって私達は、あなたが今まで頑張ってきたことを知っていますから」

 

 肩越しに振り返った彼女は、まさしく女神の微笑みで語りかけてくる。

 その笑顔を見た瞬間、その言葉を聞いた瞬間俺の胸がすっと軽くなった気がした。

 

「……ありがとう」

 

 ありったけの感謝の気持ちを込めて彼女とここには居ない皆に向かっていた。

 

 

 

 

 

 夕食を食べ終わった後、俺はあいつらがどれくらい真面目に修行をしているのかを見に巴の旅館を訪れた。

 

「お前ら~、ちゃんとやってかぁ~」

 

 アイツらの気配がした道場の扉をあけながら声を掛ける。

 道場の中心では佑斗とジャンヌが木刀で模擬戦をしていた。そこから少し距離を置いたところでは、兵庫が柔汪にボコボコニされていた。いや、元々は二人で模擬戦をしていたのだろうが、兵庫が弱すぎて一方的な展開になってしまったのだろう。更に道場の端の方では、グレモリーとアルジェントが魔力を操る練習をしていた。

 皆集中している所為か俺の言葉に返事してくれる者がいない。

 

「なんじゃお主、来ておったのか」

 

「ああ。今さっき来たんだ」

 

 後ろにいた巴は、それ以上聞かずにどこかへ消えていった。おそらく夕食の準備でもしに行ったのだろう。

 

 カランカラン

 

「私の勝ち」

 

「うん、僕の負けだ」

 

 佑斗とジャンヌの試合が終わり、二人は他の奴らの邪魔にならない様に壁に寄りかかって座る。現状特にやるのことのない俺は、二人に修行の進行状況を聞いてみることにした。

 

「よう。どうだ修行の具合は?」

 

「え、え~と……」

 

 俺に気づいた二人の内、佑斗は露骨に目を逸らした。それだけで聞かなくても分かってしまったのだが、ジャンヌが呆れた半分怒り半分の声で進行状況を説明してくれた。

 

「どうだもそうだも、私達以外は殆どダメ。お手上げ状態ね」

 

 そんなにひどいのかよ。巴の事だからあんまりキツイ修行内容にはしてないと思うんだがな。

 

「具体的に言うと?」

 

「まず兵庫のヤツ。あいつは今日一日ずっとドルイグにつきっきりで指導を受けていたくせに、上達したのは回避能力だけ。その他は全く進歩無し。柔汪とグレモリーは修行については来れたけどそれだけ。逆にアルジェントは彼女達の中では一番成長したわ。魔力の扱いも一般レベルまでなったからね。でも実戦で使えるレベルじゃないわ」

 

「まあまあジャンヌ、それ位にしておこう、ね?」

 

 彼女の遠慮のない言葉が、他の奴らに聞こえるのを危惧した佑斗が彼女を宥める。

 

「……だって、本当の事じゃない」

 

 有象無象には強気だが佑斗に対しては弱い彼女は、彼が宥めただけですぐに大人しくなった。大人しくはなったが、今度は不貞腐れた。きっと佑斗が他の奴らに気を使ったのが気に食わなかったのだろう。体育座りした足に顔を押し付けて、時折非難する目で佑斗の事を見ている。おい、お姉さん気質どこいった。

 

「ま、まあこれからが悪魔(僕ら)の時間ですから。そうすれば日中よりは皆も良くなりますよ」

 

 ジャンヌの頭を撫でながら言っても、全くそんな気になれないんだが。それにお前結局ジャンヌが言った事否定して無いし。

 

「分かった。取りあえずは夜に期待だな。教えるのは巴だけになるが、しっかりやれよ」

 

「へぇ。自分が頼まれたのに、他人に押し付けるの?」

 

 拗ねた状態から少し回復したジャンヌが、俺に意地の悪い笑みを浮かべながら言ってきた。

 

「それに関しては、巴にもお前達に対しても申し訳なく思ってる。だからこうして空いた時間に見に来ているだろう。それにほらっ」

 

 俺は懐から取り出した大量のノートを彼女と彼の目の前に置く。

 

「なにこれ?」

 

「お前達が受けるはずだった授業を板書したやつだよ。これで授業にはおいていかれないだろう」

 

「ふーん……」

 

 ジャンヌは俺の書いたノートを品定めするように見ている。

 佑斗はそんな俺とジャンヌのやり取りにピリピリした雰囲気を感じ取ったのか、止めるべきかどうか迷ってオロオロしている。

 

「ところでお前達の勝敗はどうなってんだ?」

 

「今の所、僕がジャンヌに全敗しています」

 

 あ、今度は佑斗が落ち込みだした。おおかた好きな相手に負け続けている所為だろう。

 

「大丈夫よ。あなたも十分強いわ。だから自信を持って」

 

 そして佑斗に対しては、聖女度100%で励ましに掛かるジャンヌさん。お前他人と佑斗に対する態度が違いすぎるだろ。

 それに佑斗が落ち込む必要のないのは本当だ。だって半分呪われてるしな。

 

「じゃあ、他の奴らにも励むよう言っといてくれ」

 

 俺は慰めからイチャイチャに発展したバカップルに一方的に言ってその場を後にした。

 




如何でしたでしょうか?
何か使ってほしいネタがあったら感想の方で言って下さい。ただし私が知ってるネタに限りる上に、必ず使うとは保証できませんので。あしからず。
おかしな所があった場合も遠慮なく。
勿論純粋な感想もお持ちしております。
では、また次回。
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