科学力で神級ファンタジーに挑んで見ようぜ。   作:目力の強いコーラ

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豚頭族の進軍を阻止して見ましょう。

 

 今までの木製の物より遥かに丈夫で、高い高台に登って遠くを見つめる。方向は南を指していた。

 見る限りに緑が生い茂る森林が続く。コレが今俺たちが住む、『ジュラの大森林』だ。

 遠くの方には、更に豊かであろう緑地帯が広がっていた。あの土地がどんな場所なのかは想像し易いが、それ故にどれ程の魔物が居るかなど想像するのに容易い。確実に上位の者らがいるだろう。

 

 そんな中、幾つかの場所に比較的黄色い塊が見える。それは時間が経つ度に動いており、まるで動物の群のようである。

 コレがなんなのかは既に、検討がついている。

 豚頭族(オーク)だ。

 俺達が今住むこの森の支配者になろうと、進軍してきたのだ。

 その理由は、俺には詳しくは分からない。

 元々住んでいた土地に強者が来たとか、土砂などで住めなくなった等の環境的要因なのか。

 それともこの時期を狙って森の支配者になるべく動き出したのか。

 はたまたそれ以外の理由なのか。俺には検討もつかない。

 

 それはともかく、様子を見てみるに現在豚頭族(オーク)は幾つかの隊に戦力を分け、進んでいるようだ。

 俺の基地を通らないであろうルート上に位置する一際大きな集団。

 こちらも俺の所を通らないであろう、先程より小規模の集団。

 そして、俺の基地上を跨いで進行していこうとしているであろう、先程と同じくらいの集団。

 大きく分けると、この3軍である。

 

 双眼鏡を覗いて詳しく様子を見てみる。

 豚のような頭に鎧を身に纏ったデブ男の集団が大多数を占め、その他にも小型の物や、胸の辺りに膨らみのある者もいる。

 恐らく、戦力として使える者は全て使うつもりなのだろう。その中には女子供も入っていると思われる。

 まあ種族総出で侵攻していると言うのならば、20万という数にも納得出来る。確かに数で圧倒できるだろう。

 まあコレで全滅したら、事実上の種族根絶だが。

 

 さて、と。

 こちらに近づいている部隊との距離が800m前後になった。そろそろ砲撃したほうがいいだろう。

 戦車の基本戦術は、

  移動しながら撃つ、

  隠れて遠くから狙撃、

  特攻して連射しまくる、

 などである。特に最後のはこの戦車(T-72)を開発した母国、ロシアが基本戦術として使っていたものである。

 大きな戦果を挙げるのだが、死亡者が多いという人命の重要性を完全に無視した戦術である。

 まあ命が金より安いという憎たらしい大国家であるからこそできる戦術であろう。

 

 今回はその場で動かずに撃ちまくる、と言う戦術を選択して居る。理由は、この基地を守る事が第一の目標だから。

 この基地を守る為に急遽こしらえた部隊だというのに、特攻して死んでしまったら元も子もないのである。

 それに、出来るならば部隊の被害も少なくしておきたい。呼び出して数日の彼らだが、何気に俺はこの空間を気に入ってるのだ。出来るならば壊したくない。

 まあ戦車や兵士を消耗したくないというのも事実上ではあるが。だって勿体ないし。

 いや、決して壊されないとは思うよ。だが幾ら奴らの脚が遅いとはいえ、近づかれたら厄介である。何気にマシンガンの弾を数発受け止めるし、その怪力で戦車をべこボコにしてしまいそうだし。

 

 さて、砲撃の合図を送るとしよう。

 持参してきた手のひらサイズの無線機を手に取る。新品同様なので、壊れてはいない。

 無線の電源を入れて、口元へと持って来る。

 そして、

 

「全部隊、砲撃を開始しろ!!」

 

 砲撃開始の合図を出した。因みに、この合図を出したのは俺ではなく、隣に控えていたカズヒラである。

 俺? んなもん気分だよ。口使えないのが悲しいなんて、思っていないんだからな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 豚頭族(オーク)は道なき道を進んでいく。

 それは通れなさそうな道を避けていくというものではなく、邪魔する物は全て蹴散らす、というものであった。

 木を切り倒し、道をぐちゃぐちゃに踏み鳴らして、目の前の全てを破壊し、食い尽くして進んでいく。

 小鳥など通り過ぎるものなら、彼らの嗅覚に寄って素早く捕らえられ、その癒えることのない食欲の餌食になってしまうことだろう。

 彼らの行動に、意志などない。あるのは動けば動く程増していく飢えと食欲、それと共に強くなっていく身体能力強化のみである。

 その頭には既に、正常な判断を出来るほどの容量はない。既に食欲と言う名の寄生虫に取り憑かれているのである。

 

 その元凶は、彼らの上に立つ支配者、豚頭帝(オーク・ロード)のスキル『飢餓者《ウエルモノ》』である。

 彼のスキルによって軍にいる者は強制的、にとは言わずも少なくない影響を受けているのだ。

 

 そんな中、一人の豚頭族(オーク)が倒れた。

 彼は部族の中で人一倍に明るく、慕われていた若者であった。

 そんな彼が倒れてしまえば、周りの者たちが取る行動はただ一つ……共喰い、である。

 

 彼らの思考は既に、正常な者ではない。脳内HDDのほぼ全てが、食べる事、進軍する事に支配されている。

 仲間が倒れればそれは、食糧が増えるという風に判断される。そこには救助しようなんて考えは、思い浮かぶ事すらない。

 

 ぐちゃぐちゃ、ガリガリと、今まで仲間であっただろう者の身体を貪り食べる。

 肝のみは豚頭帝(オークロード)に届けられる。だがそれ以外は、早い者勝ちである。

 腹、腕、太もも。あらゆる部位を食べ尽くす。だがそれだけでは、彼らの飢えは満たされない。肉だけでは無く、骨すらも貪り出す。決して癒えないというのに、憐れである。

 しかしまず、目をとめるべき場所はそれ以外にもある。それは、倒れた者にはまだ、意思が残っていた事だ。

 倒れた時にはまだ、その者には息があった。生きていた。生きて帰れるかもしれなかった。

 だがそんな事は、彼らの頭の中には出てこない。今彼らの頭の中にあるのは、癒えることのない食欲を満たそうとする剥き出しの本能、ただそれのみなのである。

 

 食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる食べる!!!

 

 彼らは進軍する。その食欲に従い、上位者に従い、進軍する。

 その命令の前には、どんな強者が相手であろうと、意味はない。

 

 彼らの前には、大鬼族(オーガ)の村があった。

 圧倒的な戦闘能力を有する、強者の代表格である。その強さは、多くの者を瞬殺できると言っても過言ではない。

 だがそれ故に、繁殖能力に掛けた。

 数が一つの村につき、300人程度。豚頭族(オーク)の数に対して、かなりの数差がある。

 

 だからこそ、彼らは襲撃された。

 森そのものと言っていい樹人族(トレント)などよりも、少ない犠牲で突破できると判断されたのだ。

 結果、全軍の1/10の以下の戦力、1万程度を差しむけるだけで、村のほぼ全員を食い殺す事が成功している。

 多少の犠牲は出たが、それは大鬼族(オーガ)の身体能力を得るのに比べれば、微々たる物である。

 

 彼らは、進軍する。

 さらなる破壊の為に。さらなる食事の為に。新たなる、帝王の為に。

 彼らの進軍を止める者は、誰一人として、いないだろう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——だがここで、歴史狂い(バグ)が発生した。

 

 本来の正史には無かった、居なかった、破壊者(イレギュラー)による、豚頭族(オーク)襲撃。

 豚頭族(オーク)は、この襲撃によって戦力の1/4を一度に喪った。それも、数時間数回なんて長い期間で、ではない。

 

 たった一度の、たった一回の襲撃によって、豚頭族(オーク)の一つの部隊が、壊滅的な被害を葬ったのだ。

 

 それは、一言で言えば『圧巻』。その一言に尽きる。

 

 進軍中に、真っ白い塔が見えた。そこには、人間(食べモノ)が、生きている人間(シンセンナ食べモノ)がいた。

 

 彼らは思った事だろう、ああ、また美味しい食事が出来る、と。

 だが、そう思ってしまった事を彼らは、すぐに後悔する事となる。

 

 考えてみれば、森に人間がいる事自体がおかしかった。

 『ジュラの大森林』は、魔物の巣窟とも言えるほど、魔物が多い。簡単に数えるだけで、10種族はいるだろう。

 また、彼処には以前まで、『暴風龍』が封印されて居た。その濃い魔素に触れてしまうだけでも、気が狂ってしまうような、そんなものが。

 そんな場所に、人間が来て塔を建てる? バカを言っては行けない。塔を建てるのに一体、どれだけの時間と資源がいると思っている。

 それを含めて考えると、そこに住む者は以前から大量の魔素を浴びながら住み続けた変人か、一瞬で建物を建ててしまうような、おかしな奴らか。

 

 もしも、その事を考えれていれば、あんな事にはならなかった。

 

 もし、塔がある事に気付いて、上に報告していれば、こんな事にならなかったかもしれない。

 

 もし、正常な判断さえ出来ていれば、こう言った事にはならなかったかもしれない。

 

 だが、全ては終わった事。過去を振り返っても、殺られてしまった者は戻ってこない。

 ちゃんと注意して居たら、自分の部下たちは、死ぬ事は無かったのかも知れない。

 ああ、私はなんと無力だったのだろうか、そんな事を思いながら、彼の意識は消え失せてしまう。今もなお続く、火焔の降り積もる雨の中、彼の存在が霞んでしまう。

 そんな彼の瞳に、最後に映った物とは、真っ赤に燃え広がる森林の中、焼けに苦しむ自分の部下たちの姿だったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……リムル様、少しお話があります」

 

 豚頭族(オーク)が此方に進軍している現在、(リムル)たちは早急に策を練らねばならない。

 その為、現在は会議を行って居た。

 主要人物12名が集まるこの会議は、簡単な地図の作成や蜥蜴人族(リザードマン)への同盟申請など、非常に有意義なものとなって居た。

 そんな中、会議にも出席していた諜報部門代表の、ソウエイが言葉を発した。その表情はあまり、いや、凄く優れていない。

 

「どうした?」

 

 軽い言葉で話しかける。

 口数は多い方が情報は伝わりやすい。その為に緊張をほぐすというのは、至って普通のことである。

 ソウエイは重々しく口を開いた。

 

「……報告させて頂きます。豚頭族(オーク)軍の1/4、それがたった今壊滅したようです……」

 

 その言葉に一瞬、一瞬とも呼べないような時間だが、俺の思考は停止した。

 なぜ?

 誰が?

 どうやって?

 いつ?

 様々な疑問が生まれていく。その度に、自分も『大賢者』も次々と答えを出していく。

 が、どれもパッとした結論とは言い難かった。

 なにせ、先ほどまで龍頭の勢いで進軍していた彼らである。それが自分達の支援又は、蜥蜴人族(リザードマン)の戦闘なしに、消滅するとは思えない。

 ならば、何が原因だ?

 その疑問にパッとした回答が出なかったは先ほども言った。しかし、幾つかの答えの中に、唯一そうであろう、答えが出る。

 第三者の介入?

 それ以外、考えようがない。豚頭族(オーク)の進軍を止めるような戦力は進路上には現在、何もいない。

 それどころか奴らが今いる場所はどの種族もいない、ただの森林地帯である。

 そんな場所で1/4の勢力が壊滅? あり得ない。

 そう言った考えの上に出した答えだった。

 

「誰がやった?」

 

 そう簡素に問いかける。

 取り繕うことは無い。事実だけを伝えればいい。今やるべきなのは答えを得て、それの対策も立てる事なのだから。

 ソウエイは答える。

 

「信じられませんが、数百規模の、人間のようです……」

 

 その言葉に俺は二度、思考を停止する事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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