FAIRY TAIL 〜白き英雄伝説〜 作:fortissimo 01
それは遠く、懐かしい記憶ーー。蒼色の髪に白と黒を中心とした異国服を纏った青年が自分と同じ髪の色をしている少女を抱えて立っている。青年と少女の前には美しい純白のドラゴンがいた。
『良く眠っている……じゃあこの子を頼む、グランディーネ』
『……ええ、わかったわ』
純白のドラゴンーーグランディーネは青年が抱えていた少女を優しく抱える。
『やっぱり行くのね?』
『ああ……これは俺がやらないといけない事だからな』
青年は彼方を見る。その目は水色に染まる。グランディーネは抱えている少女に目線を下ろす。
『ウェンディはおそらく悲しむわ。貴方を慕っていたから……』
『ウェンディは強い子だ。俺がいなくても頑張っていけるさ』
『………………』
すると青年は自分の首にかけてある青い宝石のついたネックレスをドラゴンが抱えている少女の手に握らせた。
『それは……』
『こいつがウェンディを護ってくれる……そろそろ時間だ。ウェンディを見守っておいてくれ、“母さん”』
『ええ……400年後の時代でいつかまた会えることを願うわ、“ルドラ”』
グランディーネはそう言うと眠っている少女を抱え、何処かに飛び去っていった。青年はその様子を安心した様子で見ていた。その瞳には一滴の雫が溢れる。
『強く……強く生きろよ、ウェンディ。ナツ達も強く生きろよ』
ルドラはそう言うと飛んでいるグランディーネに背を向け、深い闇が広がる森の中に入っていった。
「懐かしい夢を見たな……」
ここは人々が決して訪れない禁忌の森の奥深く。辺りの木は腐敗し、花がしおれている。そんな環境の中、蒼色の髪の青年ーールドラは岩の上で横になり、空を眺め呟いた。
「あの時から400年……時が流れるのは、はやいものだな」
そう呟きながらルドラは立ち上がる。すると黒かった瞳が次第に薄い水色の瞳になる。
「『アクノロギア』……もうあいつの好きにはさせない」
ルドラは森を出ようと出口に向かって足を進める。するとルドラの周りに純白の風が現れ、それは森全体に駆け巡る。すると辺りのしおれていた花や腐敗した木がみるみると蘇っていく。数秒で辺りにはたくさんの花や緑で溢れるーー。そしてルドラは森を出た。ルドラは遠くに見える街を見つめる。
「まずあの街に行ってみるか……」
そう呟くとルドラはその街に向かって歩みを進めた。
何時間か歩き、ルドラは『マグノリア』に着く。人々が賑わっており、とても活気のいい街だ。ルドラはそう思いながら歩いているとーー。
「そこの変わった服を着たお兄さん!」
「え……俺ですか?」
何年振りに人に話しかけられたのだろう。突然知らない男の人に呼び止められてルドラは困惑する。
「そうそう、あんたもしかして
妖精の尻尾《フェアリーテイル 》に入りたい魔導士かい?」
「一応魔導士はあっているけど……その妖精の尻尾《フェアリーテイル》って言うのはなんですか?」
「え、妖精の尻尾を知らないのか? 相当田舎から来たんだね、お兄さん。まぁいいや妖精の尻尾って言うのは昔はこの大陸最強とも言われていた程のギルドでね。でもそれは7年前の話。今や弱小ギルドって呼ばれているんだよ」
「(妖精の尻尾……何処か聞いた事があるな。気になる) そうなんですか、それは今どこにありますか?」
「入るならあまりオススメしないけど……あそこにある丘の上だよ」
「ありがとうございます」
ルドラは丘に向かって歩いた。
「あ、そういえば先週、行方不明だったメンバーが帰って来たんだっけ? うーん、まぁ伝えなくてもいいか」
「ここが妖精の尻尾……」
数分経過し、その妖精の尻尾と呼ばれているギルドの前についた。外見は酷くボロボロだ。看板も取れかけている。本当にここなのか? と思いながらルドラは扉に手をかける。
「失礼します……」
扉を開くと中では多くの人が賑わっていた。ギルドは壊れかけているのにギルドの者達は皆笑顔で酒や食べ物を食べている。ルドラは少しその光景をぼーっと眺めていた。するとーー。
「むっ? おぬしは誰じゃ?」
何処からか声をかけられたのでルドラはキョロキョロと話しかけて来た人物を探す。
「下じゃよ、下」
そう言われ下に目線を落とすとそこには小さいおじいちゃんが立っていた。
「え、えーっと貴方は?」
「儂はここのギルドの……あ、今は違うか。ギルドメンバーのマカロフと言うもんじゃ。お主の名は?」
「あ、俺の名前はルドラ・マーベルです」
「そうか、そうか……ん? マーベルって何処かで聞いた事あるような……」
マカロフは顎に手を当て唸る。するとーー。
「じっちゃん! 何してんだ?」
人混みの中から桜色の髪をした少年がこちらにやって来た。ルドラはその少年を見て驚いた。何故ならその少年は自分の『親友』の弟でもありルドラにとっても大切な弟ーー。
「ん? 誰だお前?」
ナツ・ドラグニルがそこにいたからだ。
「(ナツ……大きくなったな)」
「?」
出そうになった涙を堪え、ナツを慈愛のこもった目で見つめる。そうしているとマカロフが何か良いことを思いついたのかニコニコとルドラを見る。
「そうじゃ、お主ここに入らんか?」
「え?」
感動に浸っていると不意にマカロフが放った言葉に驚く。
「その為に来たんじゃないのかの?」
「それは……」
どう返答すれば……。
「じゃあ俺と勝負しろ!」
「…………え?」
「何でこんな事に……?」
いつの間にか勝負する事になり、現在ギルドの外でルドラとナツが向かい合っている。その近くにギルドのメンバーがその勝負を見学している。
「燃えてきたぞ……!」
「ナツ、頑張れ〜!」
「(青い猫が喋っている!?)」
今の時代は猫も喋れるのかとルドラは心の中で驚く。するとマカロフがルドラとナツに近づく。
「準備は良いか?」
「問題ねぇ!」
「あ、大丈夫です」
ルドラとナツが首を縦に振る。
「それでは試合、開始!」
マカロフは右手を振りかざし、それを降ろす。降ろした瞬間、ナツは思いっきり地面を蹴り、ルドラに接近する。
「!」
「火竜の鉄拳!」
ナツの攻撃がルドラの腹に命中し、ルドラを吹き飛ばす。
「容赦ねぇな、あいつ」
観戦に来ていた黒髪の男ーーグレイ・フルバスターは呆れたように言う。
「……ラクサス、今のは……」
「ああ、奴は『わざと』受けた」
緋色の髪に鎧の甲冑を着た女性ーーエルザ・スカーレットと金髪の大男ーーラクサス・ドレアーはそう呟いた。
「い、痛えぇぇぇ!!」
するとナツは先ほどルドラを殴った方の拳を抑えている。
「なんでナツが痛がってんのよ!?」
金髪の女性ーールーシィ・ハートフィリアは驚く。
「いい炎だ……だけどそれだけじゃ俺は倒せないよ」
近づきながらルドラはナツにそう言う。ルドラの腹は何事もなかったかのように『無傷』だった。するとナツがルドラの顔を見てにやっと笑った。
「火竜の……」
「?」
「咆哮!」
ナツは至近距離で炎の咆哮をルドラにくらわせた。
「ゼロ距離で火竜の咆哮!」
「あい! 流石ナツ、手加減なし!」
「流石にあれをくらったら……」
青い猫ーーハッピーはやれやれと首を横に振る。これはナツの勝ちか……と皆が思っているとーー。
「いや、まだだ」
「ギルダーツ?」
黒いコートを纏う男性ーーギルダーツはそう呟いた。
「奴は全く実力を出してねぇ。遊んでやがるんだ」
「え……」
ギルダーツがそう言い終わると同時に火竜の咆哮の炎が
「な!?」
「確かにいい炎だ……だけど俺の風は超えられないよ」
ルドラはそう言うと拳を振り上げる。
「お返しだ……『天竜』のーー」
「え?」
ナツは聞き覚えのある単語に目を開いた。
「ーー鉄拳」
「へぶっ!」
拳骨のようにナツの頭に拳を落とす。ゴンッと鈍い音が聞こえ、ナツは地面に叩きつけられ気絶する。
『…………』
一瞬で終わった勝負にギルドメンバーは目を大きく開き、固まった。
「えっと……俺の勝ちって事でいいですか?」
少し沈黙が走るーーそして。
『……ウオォォォォ!!』
ギルドメンバーは興奮した様子でルドラに駆け寄る。
「すげぇ! あのナツをあんな簡単に倒しちまうなんて!」
「すげぇ奴が入ってきたぞ!」
「あの、俺はまだ入るとは……」
ルドラの呟きに誰も気づかない。
「ナツ〜大丈夫?」
「きゅ〜」
ハッピーは気絶しているナツを心配そうに見てる。そんなナツにルドラは近づいた。
「えっと君は?」
「あい! オイラはハッピーと言います!」
「ああ、よろしくハッピー。と、まずは怪我を治さないとな……」
そう言うとルドラの周りに純白の風が現れ、ナツを包む。するとナツの怪我がみるみると治る。
「少ししたら目を覚ますはずだよ」
「今の……治癒魔法?」
ハッピーは驚きの表情を浮かべる。するとルドラの背後に誰かが近づいてきた。
「おい、お前」
「! …………君は?」
振り向くと又もや運命のいたずらか、黒髪の少年ーーガジルがそこに立っていた。ルドラはもちろん名を知っているがここは知らないふりをして尋ねる。
「ガジルだ。そんな事よりオメェ……『天竜』って言ったよな?」
『ええ!?』
ガジルの一言に周りはざわめく。
「……君が思っている事は正解だよ。俺は滅竜魔導士だ。一応天空の、ね」
「それって……」
するとマカロフがルドラの前に立つ。
「ルドラよ、お主……妹はおるか?」
「え? 一応いますけど……」
今は何処にいるのか、何をしているのかわからないけどーー。
「その妹の名はーー」
マカロフが名前を言おうした瞬間ーー。
「ーーお兄ちゃん?」
「え……?」
とても懐かしい声と呼ばれ方。まさかと恐る恐る声のした方に振り向く。そこにはーー。
「お兄ちゃん……なの……?」
自分と同じ髪の色、懐かしい匂いーー間違いない、間違えるわけがない。400年前に別れを告げた少女が成長した姿でそこに立っていた。
「ーーウェンディ……なのか?」
「うん、うん!」
少女ーーウェンディは涙を流しながら何度も頷き、そしてルドラに思いきり抱きついた。
「ずっと……会いたかったよぉ」
「ウェンディ……!」
ルドラはウェンディを優しく抱きしめた。ルドラの瞳から一粒の雫が零れ落ちた。周りは皆はその様子を優しく見守っている。そんな中マカロフは二人に歩み寄る。
「この子はお主とドラゴンをずっと探していたのじゃ。きっと何処かで生きていると信じて……。儂からの言える事はただ一つだけじゃ。もうこの子を悲しませないであげてくれ」
「…………あの、マカロフさん。お願いしてもいいですか?」
「なんじゃ?」
「この子と同じギルドに……妖精の尻尾に入ってもいいですか?」
「ああ、いいとも」
マカロフはにかっと笑った。
「ガキ共! 新たな家族が増えた! 宴じゃあぁぁ!」
『ウオォォォォォ!!』
X791年ーー。ルドラの止まっていた時間が動き出したーー。