FAIRY TAIL 〜白き英雄伝説〜   作:fortissimo 01

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魔法舞踏会

ルドラがギルドに入ってから数日が経過したーー。ギルドメンバーとも打ち解け、今やルドラも立派なギルドの一員。しかし、ルドラはまだ依頼を引き受けた事がない。そんなある日の出来事、ルドラは何処の依頼に行こうか掲示板を眺めていた。

 

「どれにしようかな……」

 

「おーい、ルドラ〜何してんだ?」

 

背後から声をかけられ振り向くとそこにはナツと羽を出して飛んでいるハッピーがいた。ハッピーの羽はどうやら魔法らしい、最初は驚いたが。

 

「ん? ナツとハッピーか。今日は初めての依頼を受けてみようかなと思ってね」

 

「それならこれなんてどうかな〜」

 

するとハッピーは何処から持ってきたのか、いつの間に手に持っていた依頼の紙をルドラに渡す。ルドラは紙に書かれている内容に目を通す。

 

「えっと、お尋ね者のベルヴェノを捕まえれば……賞金400万Jか」

 

「いいわね〜それ! 私、今金欠だし、もうそれで決定よ!」

 

いつの間に後ろにいたルーシィがそう言った。ルドラは再度依頼書を見つめる。

 

「ルーシィいつの間に……まぁこれにするか。依頼主はバルサミコ伯爵」

 

「ん? バルサミコ?」

 

「マカオさん、何か知っているんですか?」

 

椅子に座っていた四代目マスター、マカオにルドラはバルサミコについて聞いてみた。

 

「確かそのベルヴェノって奴が今度、そのバルサミコ伯爵が7年に一度開く魔法舞踏会に現れるって噂だぜ」

 

「魔法舞踏会?」

 

「ああ、魔導士だけが参加できる舞踏会だ。ちなみに開催日は次の土曜日だ」

 

「よっしゃぁ! それじゃ早速その伯爵のところに行こうぜ!」

 

「あいさー!」

 

ナツとハッピーはすぐさまギルドに出ようとするがーー。

 

「ちょっと待って、ナツ。舞踏会という事はダンスをしないといけないんだぞ?」

 

「だ、ダンスゥゥ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルドラ達はダンスの練習をするために外の広間に出た。まずはルーシィとナツがペアになり練習を始める。

 

「まずは基本のステップから、ほら行くわよ?」

 

「ちぇーめんどくせぇ」

 

ルーシィとナツはダンスを始める。見ている感じだとルーシィはダンスに慣れている様子だった。そんな様子をルドラとハッピーと黒髪の少年ーーロメオは眺めていた。

 

「ルドラ兄、ルーシィ姉とナツ兄は何してんだ?」

 

「ああ、ソシアルダンスだよ」

 

「ソシアルダンス? なんだそれ?」

 

「それはーー」

 

ルドラがソシアルダンスを説明しようとした瞬間、ナツの足がルーシィの足を踏んだ。

 

「痛った〜!」

 

「はは、悪い悪い」

 

その様子を見たロメオはソシアルダンスを理解した。

 

「なるほど足踏みゲームか」

 

「違うと思うけど……」

 

苦笑いしながら紫の髪の女性ーーキナナは言った。すると隣にいた白い髪の女性ーーミラがソシアルダンスを説明する。

 

「ソシアルダンスっていうのは男女がペアになって踊るダンスの事よ」

 

「「へぇ〜!」」

 

ロメオとキナナはミラの説明でソシアルダンスを本当の意味で理解できた。

 

「説明ありがと、ミラさん」

 

「どういたしまして。それとルドラ、私の事はミラでいいわよ?」

 

「え、いきなりはちょっと……」

 

「いいわね?」

 

「……わかったよ、ミラ」

 

にっこりとミラは微笑む。ナツ達の方を見るとなんか人が多くなっていた。水色の髪の女性ーージュビアがグレイを追いかけたり、ナツと、ミラの弟の大男ーーエルフマンがエルザとミラの妹のリサーナに回されたり。皆もうソシアルダンスどころではなかった。すると外出中だったウェンディと白い猫ーーシャルルはルドラに近づく。

 

「お兄ちゃん! 皆なにをしてるの?」

 

「んっ、ウェンディか。実は……」

 

ルドラはこうなった経緯を簡単に説明する。

 

「へぇ〜そうなんだ!」

 

「ダンスどころじゃないみたいだけど?」

 

シャルルは今のナツ達の状況を見て、呆れたように呟く。するとルドラが木材の山から降りた。

 

「俺もダンスの練習しないとな……一緒に踊らないか? ウェンディ」

 

「お兄ちゃん……うん!」

 

そう言いルドラはウェンディに片手を差し出す。ウェンディはルドラの手を取る。そしてルドラとウェンディはリズムを刻みながらダンスを始める。

 

「ルドラとウェンディってダンス上手なんだね!」

 

「ウェンディはダンスが上手いって知ってるけどまさかルドラも上手いなんてね……」

 

ルドラとウェンディのダンスを見てハッピーとシャルルは感心する。するとハッピーが先ほどのルドラみたいにシャルルに片手を差し出す。

 

「オイラと踊らない? シャルル」

 

「……まぁしょうがないわね」

 

シャルルがそう言いながらハッピーの手を取る。ハッピーの目は嬉しさからくるものかハートで溢れていた。周りの皆も徐々に落ち着きを取り戻しちゃんとしたソシアルダンスの練習をした。

 

 

 

そして魔法舞踏会開催当日の夜ーー。ルドラ達は依頼主のバルサミコ宮殿に到着した。

 

「ついたー!」

 

「ここで舞踏会が開かれるのね……」

 

「案外遠かったな」

 

「ダンスの為だ、仕方がない」

 

「本当にダンスの為に来たんだ、エルザ達」

 

ルドラはエルザ達の方を見てそういった。ここにいるメンバーはルドラ、ナツ、ルーシィ、ハッピー、シャルル、ウェンディ、エルフマン、グレイ、エルザ、ウォーレン。少々大勢だがベルヴェノを探すという点においては助かる。早速、ルドラはドアをノックする。すると大きな扉が開かれた。

 

「どちら様ですか?」

 

ドアの向こうから大きなリボンが付いてる赤い服に茶髪のロングヘアーの女性が現れた。するとーー。

 

《うお〜〜!! スッゲェ美人!》

 

「そんな事念話で伝えなくてもいい!」

 

「綺麗ですね」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「口説くな!」

 

ウォーレンが魔法、念話でルドラ達にいらない情報を教える。ルーシィはそんなウォーレンに怒る。ルドラは自分の思った正直な感想をアチェートに言うと、又もやルーシィが怒る。

 

「あんたは?」

 

「私はこの宮殿の主、バルサミコ伯爵の娘でアチェートと言います」

 

女性、アチェートが自己紹介をすると又もやーー。

 

《舌噛みそうな名前〜……》

 

『ウォーレン!』

 

思わずウェンディ以外のメンバーはウォーレンにキレる。気を取り直し、ルドラの口が開く。

 

「フェアリーテイルのルドラです。貴女の父君から依頼を受けて来ました」

 

「あ、父から話は聞いています。どうぞ中へ!」

 

アチェートの案内の元、ルドラ達はバルサミコ伯爵に会うため応接間に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私がバルサミコ伯爵だ!」

 

と、アチェートの膝上に座っている小さい男性ーーバルサミコ伯爵はそう名乗りだした。

 

「だっはははっ! 名前もすっぱいけど……!」

 

「顔もすっぱいね!」

 

「あんた達、だまってて!」

 

「「あ、あい……」」

 

馬鹿笑いしていたナツとハッピーにルーシィは気迫の篭った言葉で二人を黙らせた。二人が黙ると伯爵が依頼の内容の本題を話す。

 

「内容なのだが……依頼書に書いた奴とちと複雑でのぉ……」

 

「聞かせてもらおう」

 

「ここにいる超美人の私の娘なのだが……」

 

「ああ、シタカミーさんだっけ?」

 

「アチェートだ!」

 

ナツがアチェートの名前を間違えるとエルザの左ストレートがナツに命中し、壁にめり込むほどぶっ飛んだ。

 

「ふぅ……すまない、続けてくれ」

 

エルザがそう言うとバルサミコも何事もなかったかなように説明を続ける。

 

「実は今回の舞踏会、娘の婿を決めるためのものでな」

 

「え、お婿さん!?」

 

「その際に7年に一度だけ披露する指輪があるのだが……それこそがバルサミコ家に代々伝わる大切な指輪なのだ!」

 

「つまり、ベルヴェノはその指輪を狙って?」

 

「うむ。そのせいで7年前の婿選びも台無しじゃった」

 

そうバルサミコはため息を漏らす。するとエルザは依頼書のベルヴェノを見る。

 

「しかし、ベルヴェノのこの容姿……いくら変装してもバレるのでは?」

 

「ベルヴェノは変身魔法、マジカルドレインと言う魔法を使うのじゃ」

 

「! 変身魔法とマジカルドレイン……なるほど、それは確かに見つけるのは難しいな」

 

ルドラはベルヴェノの魔法を知り、全く捕まえられない理由を理解した。

 

「なんだよ、そのマジカルドレインって?」

 

「マジカルドレインは希少な魔法でな。触れた相手の魔法を短時間、複数コピーができるんだ」

 

ルドラはマジカルドレインを知らないメンバーに説明する。

 

「へぇ〜〜! やるじゃねえか、こいつ!」

 

「君たちの力でベルヴェノから指輪を守り、奴を牢屋に送り込んで欲しい!」

 

「任せとけ!」

 

「期待には必ずこたえる!」

 

ナツ達は気合いをバルサミコに見せる。

 

「それであの〜……ベルヴェノを捕まえたら依頼書通りの〜」

 

「うむ、キャッシュで400万Jきっちり払おう」

 

「やったー!」

 

ルーシィは確認の為に報酬の額を聞き、ちゃんと払うと言われた嬉しさにはしゃぐ。皆が各々気合いを入れている中、ルドラだけ、真剣な顔をしながら無言でソファーに座っている。

 

「(今の風の動き……やはりか)」

 

「お兄ちゃん、どうしたの?」

 

「ん? いや、なんでもないよ」

 

ウェンディにそう言うと納得したのか皆と話し合っている。ルドラはちらっと視線を後ろに向ける。皆は気づいていなかったが、ルドラは気づいていた。先ほどの話を誰かに盗み聞きされていたと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

女子更衣室ーー。

 

「完璧……エビっ!」

 

「ふふっ! 可愛すぎて私がプロポーズされちゃったらどうしよう……!」

 

そう椅子に座りながら言うルーシィ。赤いドレスを着ており、髪はルーシィの星霊『黄道十二門』、巨蟹宮のキャンサーが綺麗にセットしてくれた。ルーシィはキャンサーに礼を言い、更衣室を出る。

 

「ルーシィ、似合ってるじゃないか」

 

「あ、エルザ……って何でそんな本気モードに?」

 

別の更衣室から出たエルザを見て思わずルーシィは質問する。高級そうな紫のドレスを纏い、髪もいつもの違う髪型だ。

 

「仕事とはいえ舞踏会に参加するには最低限の礼儀だ」

 

ルーシィとエルザが話しているとウェンディがいた更衣室が開くーー。

 

「私……大丈夫かな?」

 

最後に出てきたウェンディ。ピンクのドレスに肩には赤いケープを羽織り、髪留めも今日はいつものやつとは違うものを使用している。

 

「ウェンディ、すごく可愛い!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

照れながらウェンディはルーシィに礼を言う。

 

「さぁ! 舞踏会の幕は上がった! 我々も舞台に上がるぞ!」

 

気合いが入りすぎて、エルザの背後に炎のようなものが現れる。

 

「エルザ、お芝居の時みたいにノリノリ!」

 

「わ、私も頑張ります!」

 

気合いの入ったエルザを筆頭にエルザ達は舞台に向かう。そんな中、ウェンディはーー。

 

「(お兄ちゃんも可愛いって言ってくれるかな……?)」

 

この場にいない兄を思っていた。ウェンディはその希望を胸に会場に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

エルザ達は会場に到着する。エルザは辺りを見渡すとすぐさまウォーレンに連絡する。

 

《ウォーレン、ベルヴェノらしき者は?》

 

《監視魔水晶(ラクリマ)でこの宮殿を見ているが……今のところそれらしき人物はいないな》

 

《怪しい奴を見つけたら知らせるよ!》

 

《それまでなるべく自然に振る舞って》

 

《そうか、何かあったら報告する》

 

ウォーレンとウォーレンの近くにいるハッピーとシャルルにそう言うとエルザは念話を解く。

 

「ところでナツ達は……?」

 

ルーシィ達はナツ達を探すため、周りを見渡す。

 

「あ! 見つけました」

 

ウェンディがそういいエルザとルーシィもそちらに視線を向ける。そこにはグレーのスーツ姿をしたエルフマン、ウェイターの服をしたナツ、赤いシャツに黒いネクタイ姿のグレイ、そして黒いシャツを着こなしているルドラの姿がそこにあった。ルドラ達もこちらに気づいた。

 

「ウェンディ達も出てきたか……俺たちも参加者に混じってダンスをしようか?」

 

「お、おぉ! こ、これもまた、漢!」

 

「何緊張してんだよ!」

 

緊張しているエルフマンの肩を叩いて緊張をほぐすグレイ。するとーー。

 

《皆、早速エルザが男にからまれているぞ!》

 

ルドラ達はエルザがいる方に視線を送る。視線の先ではーー。

 

「気合いが足りんっ!」

 

「ま、ま、回る〜よ!」

 

エルザが一方的に踊り、男がくるくると回されているだけだった。

 

「……エルザは大丈夫みたい」

 

「だな」

 

エルザなら大丈夫と信じ、ルドラ達は少しバラバラになってベルヴェノを探すことにした。ルドラは真剣な表情で一人会場を見て回っていた。

 

「さっきの奴……おそらくまだこの宮殿にーー」

 

『おおおおおおお!!』

 

「ん? なんだ?」

 

ルドラは盛り上がっているところに行ってみるとそこにはバルサミコ伯爵と美しいドレスを身に纏ったアチェートの姿があった。男性達はその美しさにしばし見惚れていた。

 

「ふふ……アチェートが美しすぎて誰も誘えないようだな」

 

バルサミコ伯爵はドヤ顔でそう言う。しかし確かにバルサミコが言ったようにどの男性も自分から名乗りでない。

 

「あなたの眩しさは、漢らし過ぎる!」

 

「私、女の子なんですけど…………あ」

 

近くにいたエルフマンにアチェートは苦笑いを見せる。するとアチェートは少し辺りを見渡すと、ルドラのところで止め、こちらにやって来る。

 

「あの、踊っていただけませんか?」

 

「ぇ…………俺でよろしければ」

 

最初は驚いたルドラだが、アチェートが差し出された手を取りダンスをする。二人のダンスはとても美しかった。

 

《ルドラの奴〜! アチェートさんとダンスして羨ましい奴!》

 

ウォーレンが念話で悲痛の叫びを上げるが、聞かないフリをしておこう。

 

「お上手ですね」

 

「ありがとうございます……アチェートさんはもう心の迷いは大丈夫ですか?」

 

「!……気づいていらしたんですか?」

 

周りに気づかれないように言ったルドラの一言にアチェートは目を開く。応接間で話を聞いてる時、アチェートさんは浮かない表情を浮かべていた。ルドラはアチェートの質問を笑顔で答える。

 

「大丈夫です、もう決心はできています」

 

「そうですか……」

 

ルドラが言うと鐘が鳴り響く。そして柱時計から美しい宝石のついた指輪が現れる。

 

「あれが?」

 

「はい、バルサミコ家に伝わる指輪です」

 

そしてバルサミコ伯爵の掛け声に合わせ、一斉に男性達が指輪を取りに走る。皆は指輪に気を取られている。次の瞬間ーー。

 

《皆、ウェンディと踊っているのがベルヴェノだ!》

 

「! あれか」

 

ルドラはウェンディを探し、見つける。すると先ほどまで踊っていた少年が飛び上がり、アフロヘアーの男ーーベルヴェノに姿を変える。ウェンディはショックなのか呆然と立ち尽くしていた。

 

「天竜の……咆哮!」

 

ベルヴェノが魔法、マジカルドレインでコピーしたウェンディの天竜の咆哮を放ち、会場が風が吹き荒れる。さらにその風はお披露目の指輪を吹き飛ばし、ベルヴェノの手に渡る。

 

「へへへ……バルサミコ家の指輪は確かにこのベルヴェノ様が貰ったぁ!」

 

「己! ベルヴェノ、指輪を返せぇ!」

 

バルサミコ伯爵は怒りを露わにする。

 

「ベルヴェノ……」

 

アチェートはベルヴェノを見つめる。その目には恐怖や怒りの感情はこもっておらず、ただ()()そうな視線を送っていた。

 

「……とりあえず、アチェートさんはここにいてください。俺がなんとかします」

 

「! ……ありがとうございます」

 

ルドラはアチェートをかばうような前に出る。ベルヴェノの方を見るとナツが浮いている足場を利用してベルヴェノに近づいていた。

 

「やーーっと面白くなって来た!」

 

「ん?」

 

ナツはベルヴェノの足場に向かってジャンプする。ナツは手に炎を纏わせる。

 

「火竜の鉄拳!」

 

「へっ……火竜の鉄拳!」

 

「何!?」

 

なんとベルヴェノも火竜の鉄拳を使用し、ナツの火竜の鉄拳と相殺させる。衝撃で二人は吹き飛ぶが二人はすぐさま体制を立て直した。

 

「火竜の咆哮!」

 

「火竜の咆哮!」

 

又もやベルヴェノはナツの魔法をコピーし、相殺する。足場は崩れ、二人とも地面に着地する。

 

「野郎……!」

 

「ヘヘっ、ダンスしている間にお前の魔法もドレインさせてもらったのよ!」

 

笑みを浮かべながらベルヴェノは言う。するとナツの後ろからエルザが前に出た。

 

「なら、私が相手だ。換装! 煉獄の鎧!」

 

エルザは換装魔法を使い、黒い鎧『煉獄の鎧』を身に纏う。エルザはベルヴェノに近づき、手に持っている黒い剣をベルヴェノに振り降ろす。

 

「換装! 煉獄の鎧!」

 

しかしベルヴェノはエルザもドレインしたのか、煉獄の鎧を身に纏いエルザの一撃を受け止める。

 

「無駄だ、ここにいる妖精の尻尾のメンバー全員の魔法はコピー済みよ!」

 

「この野郎……! 上等だ! 物真似野郎がどこまでやれるか、とことん勝負してやる!」

 

ナツは又もやベルヴェノに攻撃を仕掛ける。ーーしかし。

 

「待った、ナツ」

 

「ぐえっ」

 

ルドラがナツの襟を掴み止める。

 

「何すんだよ、ルドラ!」

 

「少しじっとしてろ」

 

そう言うとルドラはナツより前に出る。

 

「ベルヴェノ。あんた、アチェートさんに何か言いたい事があったから来たんじゃないのか?」

 

『え!?』

 

ルドラの言葉に後ろの人たちは驚く。するとベルヴェノの口が開いた。

 

「……あんたの言う通りだ。俺はアチェートに、プロポーズする為に来たんだ」

 

「え?」

 

「プロポーズ!?」

 

「お前とはガキの頃からの付き合いだったが……俺はずっとお前に惚れていたんだぜ」

 

そうベルヴェノは真実を話しているとバルサミコ伯爵が怒りの声を上げる。

 

「使用人の息子だったお前を特別に娘の遊び相手にしてやった恩を忘れたか!!」

 

「はん! あんたに屋敷を追い出されてから何度もアチェートに会いに行ったが、あんたは身分の違いを理由にして毎回門前払いしてくれたな!」

 

「え? お父様、私そんなの聞いてない!」

 

「ぐっ……お、お前は黙っていなさい!」

 

隠していたのがバレたバルサミコ伯爵はジタバタと手を動かしながら叫ぶ。そんな事に構わずベルヴェノは話を続ける。

 

「俺はそれが理由で勝手にアチェートを諦めた。だがそのせいで心はすさんじまって悪事に手を染め、気がつけば刑務所暮らしよ……。だけど檻の中でお前に気持ちを伝えられなかった事をずっと後悔してた。だから俺は脱獄し、この7年に一度のチャンスに賭けたのよ……しかも、二度もな!」

 

ベルヴェノはそう言うとアチェートに近づき、アチェートの前で片膝をついた。

 

「アチェート……俺の嫁さんになってくれ」

 

ベルヴェノはアチェートに先ほど手に入れたプロポーズするためな資格の指輪を差し出す。

 

「そ、そんなもん断るに決まっておる!」

 

すると又もやバルサミコが声を上げる。アチェートは片膝をついているベルヴェノに近づく。そしてーー。

 

「はい!」

 

「えっ?」

 

『ええええぇぇぇぇ!!?』

 

ベルヴェノを含めた会場の皆は驚きの声をあげる。ルドラは薄々気づいていたのかあまり驚かない。

 

「ほ、本当か!? アチェート!?」

 

「ベルヴェノ、私も貴方をずっと待っていたのよ!」

 

「じゃ、じゃあ本当に俺の嫁さんに?」

 

「ええ。だけど……自首して、罪を償ってからよ」

 

「……わかった」

 

ベルヴェノの返答を聞くとアチェートは左手を前に出す。ベルヴェノはそれに答えるようにアチェートの薬指に指輪をはめる。同時に静まり返った会場は歓声に包まれた。二人の祝福に盛大な拍手を贈る。片膝をついていたベルヴェノは立ち上がる。その時、ベルヴェノは見てしまった。観客の中にアチェートに指先を向けている男の姿を。そしてーー。

 

ーーパァン!

 

無慈悲に指から魔法が放たれた。ーーしかし。

 

「そういえば、まだいたな……」

 

『きゃあぁぁぁぁ!!』

 

ルドラは放たれた魔法を握りつぶす。一瞬遅れて会場の者達は叫ぶ。皆は銃弾を放った若い男から離れる。

 

「へぇ〜よくかわせたなぁ!」

 

「誰だ、貴様は!」

 

「ふっふっ……さぁ誰だろうな?」

 

《あ、あいつはヴェーダだ! ある宮殿の人を大量殺人し、指名手配中の『風魔のヴェーダ』だ!》

 

ウォーレンが男ーーヴェーダの情報をメンバーに知らせる。

 

「へっ! 相手がどんな奴でもぶっ飛ばせばいいんだろう!?」

 

そう言い、ナツはヴェーダに飛びかかる。

 

「火竜の鉄拳!」

 

「ウインドメイク……ランス!」

 

するとヴェーダは手を合わせると空中に巨大な槍状の風が無数に出現し、それをナツに向かって飛ばした。

 

「うおっ!?」

 

ナツは間一髪で直撃は避ける。しかし掠ったところから血が少しでている。

 

「あいつも造形魔法か!?」

 

「ああ、そうだぜ。お前らは俺の風の造形魔法に勝てねぇよ!」

 

「なんでアチェートさんを!?」

 

ウェンディはヴェーダに叫ぶ。

 

「俺はなぁ……幸せな顔をしてる奴を殺すのが一番の快楽なんだ。いいもんだぜぇ……幸せから一転して絶望に染まる顔はよぉ!」

 

「狂ってる……!」

 

「野郎……!」

 

ナツはまた突っ込もうとすると背後にいたルドラに肩を掴まれた。

 

「ナツ、お前は下がって皆と一緒にアチェートさん達を守ってくれ……。ここからは俺一人でやる」

 

「ルドラ」

 

「お兄ちゃん……」

 

ルドラの瞳にはほんのすこし怒気が込められていた。ルドラは皆の前にでて、ヴェーダを睨む。

 

「アチェートさんとベルヴェノの門出の邪魔だ。消えろ」

 

「あん? 消えるのは……てめぇだろ!!」

 

ヴェーダはルドラに向けて先ほどより巨大な槍をぶつける。砂煙が舞い、ルドラが無事かわからない。

 

『ルドラ!』

 

「へへっ……まず一人ーー」

 

「ーー弱い風だな」

 

「なっ!?」

 

煙が晴れるとそこには槍状の風を()()()()()()ルドラの姿がそこにはあった。

 

「お、俺の風を!?」

 

「そっか! ルドラはウェンディと同じ天空のドラゴンスレイヤー! 風は効かないんだった!」

 

「こ、こいつっ!」

 

懐から銃を取り出し、ルドラに向けるーーが。目の前にもうルドラの姿があった。ルドラはヴェーダの銃を握りつぶす。

 

「え? あ、あれ?」

 

あまりに唐突な出来事すぎてヴェーダは理解が出来ず、粉々の銃とルドラの顔を見る。

 

「少しお前には腹がたったよ……天竜のーー」

 

ルドラの拳に風が吹き荒れる。それはまるで嵐のような風だった。

 

「ーー鉄拳!」

 

「ぐぼっ!!?」

 

ルドラの鉄拳はヴェーダの脳天に突き刺さる。ヴェーダの顔面は瞬間的に床にめり込む。その衝撃の余波は会場全体に届いた。

 

「よかったな、お前の好きな絶望を自分で味わえて」

 

ピクピクと身体を動かし、しばらくすると動かなくなった。しばし沈黙が続くとーー。

 

『うおおおおお!!』

 

会場は再び歓声の嵐に包まれた。

 

「あの凶悪な奴を一撃で!」

 

「すごいぞ! あの青年!」

 

会場に参加していた人達はルドラに感謝の言葉を送る。しばらくすると評議員の者達が気絶しているヴェーダとベルヴェノを連れて行く。

 

「じゃあ行ってくる」

 

「はい、ずっと……貴方の事を待っています。必ず」

 

「! ああ、必ず迎えに行くよ」

 

アチェートの言葉に安心したのかベルヴェノは安堵の表情を浮かべながら評議員に連れて行かれた。そんな光景の他所でルーシィはバルサミコ伯爵に近づく。

 

「あの〜……報酬の件は〜……」

 

「そんな物……払うわけないだろうがぁ〜〜!!」

 

「そ、そんなぁ〜!!」

 

バルサミコの怒りのこもった言葉にルーシィは悲しみの声を上げる。確かに今回のことはしょうがないなと心の中で呟くルドラ。

 

「あの〜……」

 

「ん? なんですか?」

 

評議員の一人がルドラに近づく。

 

「ヴェーダをとらえてくれて感謝します。これは報酬の1000万Jです」

 

「あ、ありがとうございます」

 

評議員から1000万Jが入った袋を受け取る。……後でルーシィに分けてやるか。

 

「よし! 今宵はアチェート殿の幸せを願い、踊り明かそうじゃないか!」

 

『おおおお!!』

 

エルザの声に会場の皆はダンスを再び始める。ルドラも誰と踊ろうと辺りを見渡すとある人物に視線を固定させ、その人物の元に歩く。

 

「ウェンディ」

 

「あ、お兄ちゃん!」

 

ルドラはウェンディに片手を差し出す。

 

「一緒に、踊らないか?」

 

「……うん!」

 

ウェンディは手を取り、ルドラと踊る。

 

「言い忘れてたよ、そのドレス……よく似合ってるよ」

 

「あ、ありがとう……。お兄ちゃんもその……かっこいいよ?」

 

ウェンディは顔を赤くして照れながらも兄の衣装を褒める。

 

「ふふっ、ありがとな……ん? それは……」

 

ルドラはウェンディの首にかかっている青い宝石を見つめる。

 

「これ? グランディーネから聞いたんだけどこれお兄ちゃんの物なんだよね? 返した方がいいかな?」

 

「いや、ウェンディが持っておいてくれ。きっとウェンディを守ってくれる」

 

「そう? じゃあ持ってる!」

 

ウェンディは兄の言葉通り自分が持っておく事にした。こうして舞踏会が終わるまでルドラ達は踊り明かしたーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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