日光農民リベリオン LEGEND OF THE TAKEYARI MASTER   作:kadochika

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戦場のメリークリスマス

 

 

 

 

 

 ぐだ子は走る。

 彼女の身体能力は常人と大差がない。

 魔術礼装による強化増幅はあるし、時間に余裕があれば魔術の修錬、体術練成や多少の戦闘訓練も行ってきた。

 だが、人類史上にその名を残した英雄であるサーヴァントたちに比べれば、恐らくその違いは、戦闘力としては誤差のようなものだ。

 それでも、走る。

 動機もそれぞれ、接し方もそれぞれ。

 しかしそれでも、今や100を超える数のサーヴァントが彼女と契約を交わし、人理再生のために戦ってくれているからだ。

 既に彼女たちの前方からは、防塁に身を隠した鉄砲隊と思しい集団からの射撃の雨が降り注いでいる。

 それらを全て巨大な防盾で防ぎながら、マシュ。

 

「先輩、結構来てます!」

「このまま前進、小次郎と天草は隙を見て吶喊(とっかん)っ!」

「うむ……と、その前に、天草殿!」

「マスター、危ない!」

 

 小次郎と天草が、弾丸の雨の勢い衰えぬ中、マシュの後ろから飛び出した。

 盾に守られて進み続ける一行を撹乱するために、接近戦を挑んできた者がいるのだ。

 一人は天草が食い止めた、身の丈に不釣り合いな大型の蛮刀を携えた小柄な娘。

 

「ちぇー、やっぱりそれなりに護衛がいたか」

 

 もう一人は、拳銃を構えた黒尽くめの少年。

 こちらの弾丸は小次郎によって弾かれたが、さしもの彼も至近距離での連続速射には冷や汗をかいていた。

 

「メアリーちゃん、一旦戻ろう!」

「ちゃん付けすんな!」

 

 二人の黒尽くめのサーヴァントは、突入攻撃が不首尾に終わったと見るや、あっという間に防塁の向こうに退散してしまった。

 

「逃がすか!」

 

 サーヴァント最速級の速度を誇る小次郎が、二人を追撃しようとすると、

 

「ぬッ!?」

 

 前方からのひときわ強烈な一撃が小次郎を叩き、彼は竹槍でかろうじて防ぎつつも、その硬直を狙った射撃に晒される。

 こちらも何とか回避してマシュの盾の影に戻ってきた彼が、ぐだ子に報告する。

 

「いかんいかん……考えてみれば当然だが、向こうにはあん殿もおった。死ぬかと思ったでござるよ」

「竹槍でアンのライフル弾いたの……?」

「こうして角度をつけて弾くでござる」

「角度て」

 

 天草が、状況を分析する。

 

「彼女が鉄砲隊を指揮しつつ、切り込み役の二人と連携して盾の影から出た瞬間を狙うということか……単純なだけに、厄介ですね。

 私の宝具で、陣地をまとめて吹き飛ばしますか。こちらに来る余波はマシュ殿の盾で防いでもらいます」

「街道の向こうから知らずに来る人がいるかも知れないから、対軍宝具はちょっとなぁ……」

 

 そこに、レオニダス一世の部下らしき、似たような鎧を身に着けた英霊がやってきた。

 

「マスター!レオニダス王からの伝令をお伝えします!

 ちょっと後ろ、まずいかも。と!」

「……!」

 

 ぐだ子は少し考えた末、新たにサーヴァントを呼ぶことにした。

 

 

 

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 街道の途中に設置された陣地の中には多数の鉄砲兵と、それを指揮する三騎のサーヴァントがいた。

 まず一騎、蛮刀を背負った黒尽くめの娘。

 

「どうするアン、あの盾の向こうからあぶり出すのはちょっと難しいかも」

 

 彼女に対し、同様に黒尽くめの装束を纏った小柄な青年が、微笑みながら提案する。

 

「今度は三人で行ってみようか? 二人とも僕が、しっかり守るよ」

「そういう黒ひげみたいなのはいらないから」

「さすがに彼を引き合いに出されると傷つくなぁ」

 

 半眼で拒否する彼女に対し、今度は真っ赤なコートを羽織った長身の娘が、銃身の長いマスケットを抱えながら応じた。

 

「お館様から預かった鉄砲隊だけ残すのは不安がありますけれど……

 シャドウが引き付けている後衛にも合流されたらこちらが不利ですから、ビリーさんのおっしゃるように、思い切って三人で攻めてみましょうか」

 

 発言順に、メアリー・リード、ビリー・ザ・キッド、アン・ボニー。

 メアリーとアンは18世紀カリブ海で活動していた女海賊にして、二人で一騎のサーヴァントという変わり種のライダークラスだ。

 ビリーは19世紀北米の西部開拓時代にアウトローとして活動した、人類史でも有数の著名な銃手。

 通常の聖杯戦争であればエクストラクラス、ガンナーの適正が強いが、カルデアとシステムFATEは、今回彼をアーチャーとして召喚している。

 三騎(厳密には二騎)のサーヴァントは、今回は銃砲部隊の担い手として、この下野国に呼ばれたようだ。

 鉄砲隊はいまだ、交代で射撃を続けている。

 メアリーが、その射撃を防いでいるサーヴァントの盾を遠目に眺めながら提案する。

 

「んじゃあ、またボクから突っこんで……ん?」

 

 彼女はふと、空に黒い点のようなものが見えることに気づき、声を止めた。

 相棒のアンもそれに倣って、空を見上げる。

 

「どうしましたメアリー? あら、この音……」

 

 それどころか、季節はおろか時代や地域にも似合わない、軽やかな鈴の音が聞こえてくる。

 ビリーも同様に空を見上げると、感想を口にする。

 

「ん、もうクリスマス?」

 

 そして力強い、真名解放の叫び声。

 

「聖夜に沈め……!

 約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガーン)ッ!!!!」

 

 上空から黒い光が容赦なく、激烈に降り注いだ。

 対城宝具の直撃を受けて、鉄砲隊とその布陣していた陣地は崩壊する。

 

「そんなのありですのー!?」

「言ったならちゃんと守れよなー!?」

「ごめんさすがにこれはちょっと無理だった!!」

 

 アン・ボニーとメアリー・リード、ビリー・ザ・キッドは、下野国の特異点から退場した。

 

 

 

 

 

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