ぐれほわSHARK・T   作:GREATWHITE

27 / 91





ルートR 裏話

ルートR 裏話 喧嘩はやめて 二人を止めて 3

 

 

 

 

「全く・・お前も解らない奴だな・・。瑠璃子」

 

「その台詞そっくりそのままお返しするよ!愛歌!!」

 

茶道部三年生コンビ、夕月 瑠璃子と飛羽 愛歌―この二人はお互い毛色こそ全く違うが不思議な事に滅多に喧嘩する事は無い。が、年末を控えた今日、珍しく大変な剣幕でいがみ合っていた。

 

「どうしたんスカ・・?」

 

「るっ子先輩?愛歌先輩まで・・どうしたんですか?」

 

先日の創設祭で使用した庭の草むしりを終え、寒さで凍えた体をコタツに滑り込ませた二年生幼馴染コンビ、茅ヶ崎 智也、桜井 梨穂子の問いかけにも―

 

「ああん!?どうしたもこうしたもないよ!!愛歌がこんな解らず屋だとは思いもよらなかったもんでね!!」

 

「ふん・・貴様にそんな事を言われる筋合いはない。その言葉自分でそっくりそのまま咀嚼し・・噛み砕いてはどうだ?貴様も少しは自分の愚かさが解るであろうよ」

 

と、この通り取りつくシマが無い。智也は不謹慎ながらある意味レアな光景を前にして奇妙な好奇心の中、いがみ合う二人に声をかける。

 

「ホント、珍しいですね?お二人がいがみ合うなんて・・」

 

―これからの茶道部の方針で揉めてんのかな?まぁ・・梨穂子を部長にするのに不安なのは理解できるけど・・。

 

そんな智也の失礼な心象も露知らず、いつものように梨穂子はふんわか、ほんわりと二人を大袈裟な手ぶりを交えて宥める。

 

「まぁ~まぁ~お二人共~?まずは落ち着いて下さいよぉ~?とりあえず私達に話してくれませんか?その~・・何でそんなにお二人が真剣に喧嘩しているのか・・」

 

「・・とても大事な話だ・・茶道部のな」

 

「ああ・・譲れない話さ。私らの・・もちろんアンタ達二年生茶道部バカップルの為でもある!」

 

「うう・・・。酷い言われようだぁ~」

 

「・・・ずず」

 

少し落ち込む梨穂子をよそに智也は「もう馴れた」とでも言うようにお構いなしに茶をすする。

 

「まぁ丁度いい・・瑠璃子?・・こうなってはこの二人の意見も聞こうではないか・・。ふっ・・これで白黒がはっきりするであろうよ・・」

 

「はん!いいだろ愛歌!!望む所さ」

 

―・・漸く本題か。

 

智也はゆっくりと湯呑を置き、やや真剣なまなざしで先輩女子二人に向きあう。

 

「はい。して・・何があったんですかお二方?出来るだけ簡潔に・・『この』梨穂子にも解るように説明して下さい。政治家が幼稚園のまだ読み書きもできない子供に演説する時の様に。日本語がまだまだ苦手な移民系外国人居住者にも解る様な簡潔な日本語でお願いしますよ!!?」

 

「ふん。言われるまでも無い・・」

 

「小学生かそれ以下の知能レベルに合わせて解りやすく説明すりゃあいいんだろ?任せときな。伊達に私ら十八年生きちゃいないよ!」

 

「・・・・」

 

―うう酷い。誰か否定してよ。

 

フルぼっこの梨穂子がずんと落ち込む中で茶道部三年生コンビは二年生コンビに向きあい、喧嘩している割には絶妙なコンビネーションで迫ってくる。

 

「梨穂っち!」

 

「そして茅ヶ崎!」

 

「・・・ご、ごくり・・」

 

「・・・」

 

 

「「来る三十日!茶道部の忘年会の鍋パーティ!喰いたいのは」」

 

「カニ鍋!」

 

↑夕月。

 

「カモ鍋・・」

 

↑飛羽。

 

 

 

「「さあ!どっちがいい!?」」

 

 

 

「・・・へ?」

 

「・・・ずず」

 

―・・・。まぁこんなこったろうと思ったさ。

 

放心状態で目を真ん丸に見開いたままイマイチ現状を把握できていない梨穂子を尻目に、茶道部入部を「早まったかな・・」とでも言いたげな投げやりな態度で智也は再びお茶をすする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうですねぇ・・・カニ鍋にカモ鍋・・・どっちも捨てがたいですねぇ・・う~ん難しい問題ですよぉこいつはぁ・・ぐれーとですよぉ~~こいつはぁ・・」

 

数分後、徐々に梨穂子は状況を把握しつつあり、すでに二つの天秤は彼女の体内で胃袋と一緒にぐらぐらと揺れ動いている。

 

「何を迷ってるんだい梨穂っち!冬と言ったらカニ鍋に決まっているだろう!?」

 

「騙されるな梨穂っち・・カニ鍋など所詮邪道・・本当の通はこの季節にカモ鍋を食べるものなのだ・・」

 

梨穂子を間に挟み、三年生コンビは独自の忘年会の鍋プレゼンを開始し始めた。

食通の二人らしく内容が濃い。梨穂子の食欲を極限まで上昇させるのは想像に難くない。

 

「・・ふんふん。・・ほうほう」、「いいですね~ナイスですね~。」、「・・・え?凄い!るっ子先輩素敵!」、「え!?愛歌先輩!?カモにそ、そんな食べ方があるんですか!?」

 

二人の話を双方共に何時もの様な大げさなリアクションで八方美人に節操無く頷く梨穂子を尻目に―

 

「・・・」

 

智也は無言のまま、一人その場を離れ、茶道部の「四次元〇ケット」の如き謎の物体満載の棚を調べる。

 

―よー久しぶりー。「もっくん」。

 

無機質な人体模型―梨穂子命名の「もっくん」の顔が覗く。智也の友人、もしくは梨穂子の友人がこの茶道室に遊びに来た際、決まってここを調べさせ、ビビるリアクションを智也達は楽しんだものだった。

しかし・・唯一先日招いた2-A委員長―絢辻 詞があまり驚いていたように見えなかったのはなぜだろうか・・?

 

回想―

 

「・・・。きゃっ!?な、なにこれ?びっくりしたぁ」

 

―何処となく反応が一拍置いている様な気がしたのだが・・そして驚き方が何処となくわざとらしかったような・・?

 

そんな思いに智也がふけっていると

 

「あ、あの~この際両方ってのはダメですか・・?」

 

「あら・・」

 

―・・いかん。梨穂子がこう言い始めたという事は話し合いが末期に来ている証拠だ。

急がねば。えっと・・確かここらへんに・・。あった!借りるぜ・・もっくん。

 

 

 

数々の使途不明の茶道部備品の数々からおもむろに「かなりまともな方」である電卓を取り出し、無心に智也は叩き始めた。そんな中―

 

「・・ええい!だめだ!やはり梨穂っちでは埒が明かない!食に関して優柔不断すぎらい!」

 

「ちっ・・つかえないやろーだぁ・・・」

 

どちらにもイイ顔しようとしやがる奴は信用ならねぇ!と、でも言いたげに夕月、飛羽の二人は梨穂子に匙を投げた。

 

「二人共酷い!そもそも私がすぐにそんなの選べるわけ無いじゃないですかぁ~んああ~~」

 

かも~かに~。

 

頭を抱えた梨穂子が頭の中をぐるぐると駆け巡るカニとカモを追いかけまわしている中、彼女を見捨てた三年生コンビは標的を智也に変える。

 

「こうなったら茅ヶ崎!アンタが決めるんだよ。・・・。って、さっきからアンタ何してんだい!?こんな大事な話し合いをしている時に!」

 

「茶道部としての自覚が足らんぞ・・茅ヶ崎」

 

「・・え~~」

 

―いや・・茶道部で鍋をどうするかで揉めている貴方がたに比べれば。

 

 

 

 

「・・はいはい。解りました解りましたよ。今終わりましたっ。で・・・俺も決心が固まりましたよ先輩方」

 

「ぐっど!い~い決断力だ茅ヶ崎ィ~~~んで、で、で、で?よぉ~しお姉さんたちに恥ずかしがらずに言ってみな?・・カニ鍋だろ?」

 

「いつから瑠璃子は『二』を『モ』と勘違いするようになったのだ・・?カモ鍋に決まっているだろう・・?なぁ・・茅ヶ崎ぃ・・?」

 

「えーっと結論から言いますと・・」

 

「・・」

 

「・・」

 

「智也・・・」

 

 

だららららららら・・・・

 

何処からともなく聞こえてきそうな太鼓を刻む音・・そしてそれが一泊だけ止む。

 

他三人は固唾をのんだ。しかし次の智也の意外すぎる言葉に三人とも例外なく面を喰らう事になる。

 

 

 

「・・・。二つともダメです。却下」

 

 

 

「え?」

 

「・・何?」

 

「へ?」

 

「どういう事だ・・?返答次第ではお前の退部勧告も考えねばならん・・」

 

「えぇ!?ちょっと愛先輩・・そんな事したら来年待たずに茶道部は廃部ですよ!?」

 

「・・そうであった」

 

何時もは努めて冷静沈着な飛羽が動揺のあまり口走ったセリフを「何時もはボケ役」の梨穂子が諌めるという珍しい構図となる。

 

「な、何故なんだい?納得いく意見を言ってもらわないとアタイらは納得しないよ?」

 

夕月も同様に戸惑いを隠せないながらも、努めて冷静に智也の真意を聞きだそうとする。

 

「そ、そうだよ。智也?」

 

梨穂子も既に彼女の胃袋が「カニかカモの受け入れ態勢」を整えていた状態であった為、「どちらもお預け」という智也の結論は理由を聞かなければ流石に納得行かない。そんな彼女達から全く目を逸らさず―

 

「安心して下さい。確固たる理由があります」

 

智也はそう言いきった。

 

それは・・

 

「い、一体何・・?」

 

 

「ズバリ言いましょう。お金です。部費では到底賄えません。今の茶道部に贅沢は敵です」

 

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

ずがががががががが~~ん!!

 

三人絶句。そんな彼女らに構うこと無く更なる言葉を智也は紡ぐ。

 

 

「そもそも茶道部・・部員があまりに少ないんで今年度の部費・・・相当減らされたでしょ?」

 

「・・・!!そ、そうだな・・今年の部活の予算編成会議は思わず背筋が寒くなった・・」

 

「あ・・アタイもだよ。う・・今思い出すだけでもにょ・・」

 

「るっ子先輩!ダメです!女の子がそれ以上言っちゃいけません!」

 

パニック状態の三人を前に智也の畳みかけるような演説は続いていく。

 

「・・おまけにごくツブシの梨穂子がいる状態で連日お菓子やらお茶やらの大盤振る舞い・・貴方がたこそ茶道部としての自覚があるんですか?」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「ご、ごくツブシ・・」

 

「おまけに部活の備品の内容まで改ざんしている始末・・『気付かれなければいいんだよ』とか思ってるかもしれないですけど、『あの』来年の生徒委員会の間違いなく重鎮になるであろう、『あの』絢辻さんが遊びに来てるんですよ?・・見逃すはず無いじゃないですか。今茶道部は文化部の中で断トツ心象悪いと思います。・・来年の文化部の予算編成が思いやられますね」

 

「だ、だからな?・・茅ヶ崎。この前アタシらその絢辻さんを呼んで、色々おもてなしをしたんじゃないか・・」

 

「・・おもてなし?接待の間違いでしょ?菓子やらお茶やら見境なしに次々に出して・・『質素倹約』を信条にしている人にあれ逆効果ですよ。梨穂子はともかくお二人は目が\になってましたから。・・下心丸見えです」

 

「「「・・・」」」

 

オリジナル茶道部メンバー三人完全沈黙。押し黙ってず~~んと頭を垂れたまま、数十秒後―夕月→飛羽の順で徐に二人は口を開いた。

 

 

「茅ヶ崎・・・」

 

「いや・・!『部長』!」

 

 

 

 

 

「「茶道部をよろしくお願いいたします!!」」

 

 

 

 

 

 

「ええ~!?先輩方~~!?次の茶道部部長は私のはずですよ~!?」

 

「これ!茅ヶ崎部長に対して梨穂っち!頭が高いゾ!弁えい!!」

 

「ひかえおろ~ひかえおろ~・・」

 

かつて無いほどあの吉備東高校の重鎮、お局の二人が小物臭い。

 

 

 

「うわ~~ん。智也に茶道部を乗っ取られるよ~~」

 

 

 

「・・ずず」

 

 

 

―・・喧嘩は止めた。二人を止めた。

 

しかし部長の次の座を巡っての醜い争いが茶道部オリジナルメンバーの中で勃発している。

 

・・これこれ。三人とも。止しなされ。

 

 

 

 

 

 

 

わったしのために♪

 

争わないで~~♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。