ぐれほわSHARK・T   作:GREATWHITE

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ルートT 十七章 絢辻と国枝 

18 絢辻と国枝

 

 

 

 

絢辻の予想通り、クラス内で行われた異常なほどの「絢辻バッシング」は収束した。先日のドッジボールでの絶対的不利からの完膚無きまでの圧勝、そしてその時見せつけた絢辻の圧倒的な「覚悟」の行動はアンチ派の恐怖政治等比べ物にならないインパクトを与えていた。

 

更に先日―

 

行われた全国模試で何と絢辻はトップ百に入ると言う快挙を成し遂げ、大いに称賛された。

「自分のクラスに日本で最も頭のいい高校生百人の内、一人がいる」―ここまでの明確な結果を知らされては最早妬み、嫉みというような身近な感覚を覚えるよりも、まるでテレビの中に居る売れっ子のアイドルやら、将来有望のアスリートに対して抱く様な距離感を覚えてしまうだろう。

 

創設祭のトラブル、クラス内での数々のトラブルを抱えながらもそれを捌ききり、尚も止まること無く、誰もが驚嘆する様な実績を上げた絢辻を最早責める人間など居なかった。

だが逆境の中、全てを黙らす様な彼女の圧倒的な功績は結果、皮肉にも絢辻の孤立を更に深める事となる。

しかし、周りの自分に対する感情などどこ吹く風、絢辻は何時ものように振舞い、以前に比べると随分減ったとは言え他生徒の勉強や相談などの頼みを断る事はしなかった。

 

要するに絢辻は変わっていないのだ。変わったのは彼女に対する周りの接し方だけである。

先日から立て続けに起きた絢辻に関する事件はまるで現実味のない夢のような印象を周りの生徒たちに与え、いつしかその話題に触れる物も少なくなった。

それよりも徐々に近づく年末に際し、各々色々と考える事も多いこの時期に何となくこの触れがたい、理解しがたい事象にこれ以上余計に関わるのを良しとし難いのだろう。

 

 

棚町的に言うと「誰も喋らない=喋ると村八分」、「君子危うきに近寄らず」だ、そうだ。梅原、国枝、有人との四人ポーカー勝負で驚異の「フルハウス、Aのスリーカード、ストレート、ダイヤのフラッシュ」の鬼手で彼らを虐殺しながら彼女にしては神妙そうにそう呟いた。

 

そんな中で有人達の日常は続いていく。しかし今年は例年に比べると遥かに慌ただしい年末を彼らは過ごしていた。

創設祭を二週間後に控え、準備作業が佳境に入った創設祭委員会の連日のハードワークに今まで情熱と体力を持て余していた帰宅部の彼らもややガス欠が否めない状態にある。

 

「ふぃ~・・一息つくねぇ・・」

 

放課後2-A教室にて―

 

梅原はジジ臭い一言を発しながらヘッドスライディング着席した。それにぞろぞろと水泳部を手伝いに行っている杉内を除く何時もの2-Aメンツが続く。

 

「・・・」

 

国枝もいつも通り音も無く、無言で座り次の瞬間には既に寝息が聞こえた。当分「冬眠」だろう。その姿を見、何故か棚町薫は大きな溜息をついて

 

「私・・ちょっと恵子に用あるから・・んでその足でバイト行くんで、ほなバイバイ」

 

と、言って憮然とした顔をしながらその場を去った。

 

「棚町・・なんかあったのかね・・?」

 

「・・・う~ん。ま、」

 

「?」

 

「色々あるんでしょ」

 

有人は眠りこける親友―国枝を見た後、棚町の去っていった方向をちらりと苦笑い、何となく梅原、そして御崎も察し、有人と無言でお互い困った顔をして笑った。

 

 

「梅原・・太一君、連日お疲れ様。助かってるよホント」

 

「おう。大将もお疲れ。いや~しっかし創設祭の準備がこんなにキツイとは思ってもみなかったぜ・・毎年毎年なかなかすげぇコトしてたんだな~ウチの学校って」

 

「・・同感。僕も結構昔からここの創設祭は親に連れてきてもらったりしていたけど・・ただ楽しむだけの側だったからね」

 

御崎も幼い顔を少し引きつらせて笑いながらそう言った。

 

「裏方に回らなければ解らない事ってあるよな・・ホント。ただでさえ学校ってそういう行事の多い場所じゃん?やれ修学旅行だ、やれ体育祭だ、やれ林間学校だ。ただ漠然と参加してるだけじゃ気付かねぇわな」

 

「ホントそうだよね」

 

「・・で。二人共休憩もそこそこに各所の作業報告をお願いします。お疲れの所悪いけどね」

 

「了解。大将・・え~~~っと大体大筋は問題なし。舞台照明と音響機器のテストも問題なし。んで保健室の仮眠控室のベッド数も確保。了承済み」

 

「ふん。了解」

 

「・・それにしてもあの『幽霊保健室の先生』―来崎先生をみなもっち・・よく毎度毎度捕まえられるよな・・」

 

「あはは。『確実に居る時間』ってあるんだよ。その時を狙い撃ってるだけ」

 

「へぇ・・すげぇな大将」

 

「保健室に滅多に生徒が来る事のない時は大概いるよ」

 

「・・。それは『保健室の先生』として意味があるのかよ・・」

 

「ある意味怪談だね・・『見える人にしか見えない』霊感、的な?」

 

御崎がやや慄いた表情でそう呟くと有人は苦笑いする。その「霊感」とやらを有人に与えたのは他でも無い絢辻だが。

 

「委員会の作業は殆ど予定通り・・後は・・」

 

「冬眠」していた国枝が有人のその声に僅かに反応し、机に顔を突っ伏したまま資料を渡してきた。寝起きの悪い彼、そしてそれを自覚もしている彼なりの反射的行動らしい。それを何の気なし自然に有人は受け取る。

 

「ありがと直」

 

「・・国枝君・・。この人も大概不思議だよね。それに驚かない源君達にも驚くけど・・」

 

「俺たちゃ慣れてっからな」

 

「そだね」

 

「・・・そっか」

 

御崎はそう言って笑う「旧知の間柄」の彼らの姿を垣間見て少し複雑そうな表情をして笑う。

 

「太一君?」

 

「・・・ん?何?」

 

「・・・いずれ解るって。案外直は解りやすいヤツだから」

 

「・・うん」

 

 

有人の言葉に御崎は表情を少し緩ませる。

 

 

 

 

「・・。う~んやっぱりウチのクラスの作業は遅れ気味か・・」

 

国枝から手渡された資料を閲覧しながら有人の表情が曇る。

 

「まーここ一週間はほぼ委員会の主要な作業にウチの人員割いたからな~。遅れが出るのは解っちゃ居たけど・・」

 

「先週は急に寒くなったせいで病欠も結構出たしね。これで無理をする人が増えて入れ替わり立ち替わりで体調崩す人とかでたら・・ちょっとマズイよね」

 

「かくゆう俺も・・ゲフンゲフン!持病の、エイズが・・ごおふっ・・」

 

「まだ余裕があるね。頼りにしてるよ梅原。こことこことここ・・あ。ここも梅原に任しちゃおう」

 

さらっと有人はそう返し、手元の資料の「梅原に押し付ける箇所」に機嫌よさそうにくるくる○を入れる。最近の有人は度重なる絢辻の調教によって辛辣なスルー力、仕事の押し付け力が向上している。

 

「労わってェ・・お願い。ワタクシ結構ナイ~ブな少年なのよ~~?」

 

「梅原君・・自分に似合わな過ぎる表現は止そうよ。自己評価が下手だねぇ」

 

「御崎ぃ・・オメも案外辛辣だな」

 

 

 

「ふー・・それでも幾分マイナス・・かといって創設委員会のメンバーをこっちに回すわけにもいかんしな~頭が痛い・・」

 

「・・有人」

 

突っ伏したまま僅かに国枝が顔をあげた。国枝という少年は本当の意味で「睡眠学習」が出来る稀有な人間である。寝ながらもある程度周囲の話題に反応が出来る特技がある。

 

「ん?何」

 

「それに関しては俺に『アテ』があるからさ。任せてくんね?委員会の方は任せるけど」

 

「・・え?そうなの?」

 

「おぉ~国枝っち素っ敵ぃ~~!」

 

「でも国枝君ホント大丈夫?結構・・遅れてるよ?コレ」

 

「大丈夫」

 

「・・」

 

普段とは異なり、冬眠中、寝ぼけ眼の国枝はお世辞にも頼り甲斐があるとは言い難い。

ただしあくまで「他人にとっては」だが。

 

「解った。直衛に任せるよ」

 

「親友」の有人は微笑んだ。梅原も頷く。

 

「おう。じゃあ・・早速ちょっと行ってくる」

 

のそりと国枝は立ちあがってのろのろ教室を後にする。が―

 

ごちん

 

「あたっ・・」

 

「・・・!?国枝君!?」

 

教室の柱に顔をぶつけ、奇声を上げる国枝を心配そうに御崎駆けより、声をかけるが「・・大丈夫」と呟いて再びのろのろ歩き出す。

 

「だ、大丈夫かな~?」

 

御崎はその後ろ姿にハラハラしながら有人達にそう尋ねるが既に有人と梅原の二人は作業を再開していた。

 

 

 

 

 

 

図書室―

 

 

「・・絢辻さん」

 

 

「!」

 

 

今日の勉強のノルマを既に終え、一人息抜きの小説をいつもの図書室の机で読んでいた絢辻は突然、唐突に声をかけられた。振り返るといつの間にかそこには有人よりやや高めの長身のシルエットが佇んでいる。

 

―え・・。

 

意外な人物から声をかけられた事に絢辻もやや意外そうに瞳を見開きながら頷くように頭を少し下げる。

 

「・・国枝、君・・?」

 

「今大丈夫?」

 

「・・ええ。何か私に御用かしら?」

 

 

 

「その・・、よければ手を貸してくんないかな。ちょっと・・クラスの作業がまずそうなんだよね。日程的にも人員的にも。だから絢辻さんがいれば大助かりなんだけど」

 

意外な国枝の申し出に絢辻は目を丸くし、暫し考え込むように口を手でつぐんだ。

 

「う~~ん私は別にいいんだけど・・でも私が行ったら皆もやりにくいんじゃないかな?それに私、実行委員会干されちゃった身だし」

 

「・・俺は絢辻さんが『創設祭に関わる全ての事に関わる事を禁止された』って聞いた覚えは無いよ。ま、連中はそのつもりだったかも知んないけど。そんなの俺は知らない」

 

「・・くすっ。・・でも本当に大丈夫かな?」

 

あのドッジボール以来、和らいだとはいえ相も変わらず絢辻とクラスメイト達との微妙な空気と距離感は存在している。特に一部のクラスメイトの女子との間の溝は根深い。

 

状況を鑑みれば絢辻が国枝の要請を断る事は妥当だ。

 

ただし、一方で絢辻がそんな事も「瑣末なこと」として受け流し、クラスの作業を指揮し、滞りなく行う事が出来る事も事実ではある。今まで勤め上げた実行委員の山積していた課題をキレッキレに捌いていた絢辻のキャパからして山のようにお釣りがくる。

 

だが、ここまで多くの理不尽にさらされ、立場を潰され、尚も些細であっても理不尽な衝突や軋轢のリスクが生じる可能性のある場へ自ら踏み込む事にはなる。そう考えると「そこまでして手伝ってやる義理はない」と彼女が突っぱねても何ら問題は無い。国枝もそこは承知であろう。しかし・・

 

「・・いいわよ。喜んでやらせて貰うわ」

 

絢辻は笑って国枝の申し出を快諾する。

 

「・・有難う。本当に助かるよ」

 

国枝自身も恐らくは気を遣って絢辻をヘルプに回しても問題ない、比較的中立的な集団に自分を派遣してくれるだろう、という予測が彼女にはあった。

 

「じゃあ・・何をすればいいのかしら?今日からどこか手伝いに行けばいいの?」

 

「あ。今日の所は大丈夫。明日から梅原の所へ行ってくれるかな。ちょっと遅れている箇所がいくつかあるんだってさ」

 

「了解しました♪よろしく頼むわね?国枝君」

 

「こっちも了解。・・本当に有難う」

 

「・・ううん。気にしないで。」

 

「それじゃあ・・勉強中お邪魔して申し訳ない」

 

そう言って国枝が踵を返しかけた時だった。

 

 

「・・。国枝君?」

 

 

「・・・ん?」

 

「ちょっと・・時間ある?ちょっとお話したい事があるんだけど」

 

「・・俺に?絢辻さんが?」

 

 

「ええ。・・その、源君・・。・・・・有人君の事で」

 

 

絢辻は何時もとは違い、有人の事をそのまま名前で呼んだ。これは国枝が何時も彼の事を『有人』と呼んでいる事を意識してのことである。

 

「・・・。いーけど」

 

国枝はその意図を理解した。多くの人間にとっての「源 有人」ではなく、限られた人間、親友にとっての「有人」を知る人物。

 

それが国枝だ。

 

この学校に居る人間の中で最も有人を知る人物であろう。絢辻どころかひょっとすれば本人の有人以上に「彼」を知っている可能性すらある。そんな印象を絢辻は国枝に持っていた。

 

国枝は絢辻の向かいの席に座り、改めて目の前の少女の表情を見る。薄く微笑んだまま少女の表情は動かない。それは取引の代償を求める様であり、先に条件をだし、承諾をしてもらった国枝にとってその場をそのまま立ち去り難い空気を纏っていた。

 

「・・。申し出を引き受ける代わりの『交換条件』ってところ?」

 

国枝はいつの間にか進退極まった自分の状況に少し薄くニガそうに笑ってそう言った。

 

―察しが良くて助かるわ。

 

そう言いたげに絢辻もまた、国枝の質問に無言のまま今度はハッキリと顔を傾かせて微笑む。

 

 

揺れた長い漆黒の絢辻の髪が夕日に照らされて赤く光った。

 

 

 

 

 

 

翌日―

 

 

「・・・え。あ、絢辻さん?」

 

 

「・・。こんにちわ。今日からクラスの作業を手伝う事になりました絢辻 詞です。至らない点も多々あると思いますがよろしくお願いします」

 

 

目が点状態の有人を尻目に絢辻は少しわざとらしいとも言える様なまるで「初めまして。ふつつか者ですがよろしくお願いします」とでも言いたげな初々しい挨拶をした。

 

「足を引っ張らないように頑張るわ。源君よろしくね♪」

 

「は、はい・・・」

 

一通りのあいさつを終え、絢辻がその場を去ると有人は国枝のもとに詰め寄った。

 

「な、直・・ひょっとして君が言ってた『アテ』って・・」

 

「・・。最強の助っ人だろ?」

 

国枝は事も無げにそう言った。

 

「でも・・絢辻さんは・・」

 

「・・。そこはお前がフォローすんだよ」

 

国枝は「俺達」ではなくあえて「お前」と言った。流石の有人も少し顔をゆがませて

 

「・・。直衛ってさ~時折すっごく強引だよね」

 

国枝はその言葉にふんと鼻を鳴らし、無言で腕を組んだ。こうなるとこの親友は頑として動かない。

 

「・・その強引さを少し棚町さんに出してあげたら?喜ぶと思うよ」

 

「うっせ!!」

 

「ははっ」

 

有人は少し意地悪してやった。そして同時覚悟する。今度は自分達の番だ、と。

 

彼女は今まで自分達、そして他の多くの人間の為に自分を費やしてきた。自分の立場も積み重ねた実績も犠牲にし、自分たちを守ってくれた。

 

絢辻が再びクラスの中へ溶け込んで行く。周りの生徒は困惑の表情が隠せていない。目に見えた敵意を出す人間など最早いないが、絢辻に対する無意識の「怯え」に似た感情は当然残っている。

今度は有人達が彼女を守る番だ。彼女のしてきた事にほんの少しでも自分達が報いるためにはそれしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・なぁ・・有人?」

 

「何?」

 

「お前さ・・」

 

「ん?」

 

「・・いや。何でもねぇ」

 

「・・・?そう?」

 

「・・」

 

「・・・じゃ!行きますか。後ひと頑張り・・」

 

有人は息を吐くようにそう言った。

 

 

「・・おお」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「・・。やっぱすげぇわ。絢辻さん」

「全く」



「はい!猪瀬くんはそっち側持って!・・・。ダメ。少しずれてる。少し戻して・・。・・よし!大丈夫よ」


数週間創設祭の作業から一切離れていたにも関わらず、クラス内作業でも全く以て衰えを見せないリーダーシップを発揮する絢辻に梅原と御崎の二人は驚嘆する。



「あ、あの~~絢辻さん?」

蒼い顔をしたとある女生徒が怯えながらも絢辻に勇気を持って話しかけてきた。

「ん?どうかした?」

「ど、どうしよう・・備品をきらしちゃって・・あれが無いと作業が出来ないの・・」

「備品って・・ああ。コレ?大丈夫。実行委員会で発注しすぎた分があると思うわ。国枝君?悪いけど『彼』に話を通してくれないかしら?多分分けてくれると思うから・・」

「あ、りょ、了解です」

国枝。思わず敬語で返す。


「あ、ありがとう。絢辻さん」

絢辻に意を決して相談して良かったと安堵の表情で女生徒は絢辻に礼を言う。

「大丈夫よ。お金と一緒で『ある所にはある』んだからそこから有難く頂戴すれば♪・・さて・・棚町さ~ん?」

一つの課題を難なく捌いた絢辻は時計を確認した後、向こう側で作業をしている棚町に声をかける。


「ん~何?」


「そっちはどうかしら?」

「あらかた片付いた所~。大変な作業だったけど馴れれば結構楽しくて思ったより早くすんだわ」

「流石に仕事が早くて助かるわ。やっぱり頼りになるわね。棚町さんは」

「そ、そう?照れるなぁ」

「そこで折り入って棚町さんに次の頼みごとがあるのだけど・・でも忙しいかしら?そして疲れてるわよね?そうよね・・そうよね・・」

「いやいやいやいや!!大丈夫!大丈夫!のーぷろぶれむ!」

「そう!?実は―」



「・・・上手い。絢辻さん薫の扱い方をよく知ってら・・」

国枝が見事なまでに籠絡されている棚町のその光景を見ながら傍らに居る御崎、梅原二人にそう呟く。

「『棚町さんの扱い方』か・・確かに」

御崎も頷く。「ああ、恐ろしい、恐ろしい」と。

「・・解るか御崎。『キツイがやりがいのある仕事』を絶妙のスパンで切り替えて薫に与えているんだ・・。『典型的飽き性B型女子』―薫のモチベーションが落ち出すギリギリのところ、絶妙なタイミングで声かけ→次の作業への的確な指示と適度なおだて・・結果『ノンストップかおるちゃん』が出来るっていう寸法だ・・」

「い、嫌な『寸法』だな。オイ・・」




「・・梅原君?御崎君?」


「「!はっはいっ!?」」

びっくぅうううう!!??

傍観者だった三人の視線に絢辻は気付いていた。いかにも「ヒマそうね?」とでも言いたげな微笑みで三人に近付き、両手を合わせ―さぁ、「おねだり」開始だ。

「・・お二人にも頼みたい事があるんだけど~・・良いかしら?女の子だけじゃとても出来ない力作業で・・国枝君?悪いんだけどお二人をお借りしていいかしら~~?」

「・・・。ど、どうぞ」

―す、すまん。二人共・・。

ここまで行くと軍事国家の徴兵令並みに拒否は困難である。国枝は「召集令状」を突き付けられた二人に目で詫びた。二人は覚悟した顔で無言でこう言った。


―・・逝ってきます。

―・・梅原正吉十七歳。勇ましく死んで参ります・・。


絢辻。「ノンストップうめはらくん」「ノンストップみさきくん」―確保完了。





二時間後―

その二人の下に創設祭委員会の作業を一段落させ、クラスの様子を見に来た有人が現れる。

「・・はい!頼まれてた備品持って来たよ~~。・・ん?梅原?太一君?棚町さんまで・・どうかした?」

「いや・・まぁ」

「何でも、無いよ・・」

「バ、バイトより疲れたわ・・」

三人は座りこみ、ぐでぇと教室の壁にもたれかかったまま教室の天井を生気の失せた目で見上げていた。それを見て有人は瞬時に察する。

「・・・。あ。ひょっとして絢辻さん?どう?凄いだろ?」

元「ノンストップゆうとくん」は懐かしむように、目の前の友人達三人のくたびれた姿についこの前までの過去の自分の姿を重ねて微笑んだ。




















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