ぐれほわSHARK・T   作:GREATWHITE

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間章 1

 

 

 

 

 

 

間章1   「ほ」の字でおま。

 

 

 

 

 

吉備東高校―屋上にて

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・ほ~~~」

 

とある一人の少女が息を切らしながら屋上の出るドアの扉を背にして乾いた空に息を吐く。

 

 

「こ、これでしばらくは安心、か、な。・・・ほ」

 

乱れた黒いショートボブの髪を整えながら吊り目の少女―七咲 逢は屋上を見渡した。

周りに人は誰も居ない。生来根っからの真面目な気質の少女にしては珍しく、人目を気にして周囲を妙に警戒している。

 

少女は今、生涯かつて無い程誰にも会いたくなかった。屋上の扉を挙動不審にじ~~っと覗き、「よし誰も来てない!・・お願い今日はここに誰も来ませんように~~」とすりすり小さな手を顔の前で合わせ、目を閉じつつパタンとドアを閉める。

 

しかし―

 

 

「・・・う、んが?」

 

 

―・・・へほ!!!

 

七咲は驚いて飛び上がる。思わず内心奇妙な奇声も出た。

 

確かに七咲がここに来て以降、今日は誰もここには来なかった。しかし、残念ながら既に屋上にはとある先客が居たのであった。

 

「・・・」

 

恐る恐る七咲は声の方向屋上のドアの真上に設置された取水棟を見上げる。そこには

 

「あ~~よく寝た・・。う、んっんっ!!ん・・?・・ん?あれ・・。君は・・確か」

 

寝ぼけ眼のまま伸びをし、屋上に現れた来訪者―青ざめた顔で彼を見上げるその少女に体格のいい少年は記憶をめぐらす。

 

「あ、あ、あああ、ち、ちち・・茅ヶ崎先輩。こ、こんちにわ~~・・ほ」

 

「・・七、咲だっけ?杉の彼女だよね」

 

「は、はい。・・ほ」

 

「・・・?」

 

―・・・「ほ」?よくわかんないけど安心してくれてんのか。いきなりこんな俺見たら大抵の奴逃げ出すんだけどな。

 

彼にはそんな経験がこの二年間何度かある。逢引きしに来たらしいカップルが丁度今日の七咲みたいに現れて彼と鉢合わせした日、そのカップルが飛び上がって逃げて行った記憶もあったりする。

 

 

 

「・・ま。俺はまぁ適当に存在してるから君も寛いでいけば?天気良いし。何なら梨穂子が淹れてくれたお茶もあるよ。飲む?」

 

「・・は、はい。そうします。頂きます。・・ホ」

 

―・・・?

 

何か様子がおかしい。茅ケ崎はそう思う。

 

「・・どうかした?」

 

「へ、ほ・・」

 

「・・・?」

 

「その、ですね、・・ほ」

 

「・・・?」

 

「茅ヶ崎先輩・・気を悪くしないんでほしいんですがあまり今日の私を喋らせないでほしいんです・・ほ」

 

「・・何があったのよ」

 

 

七咲は今日一日―

 

「絶対に語尾に『ほ』をつけなければならないんですほ」と恥ずかしそうに言った。

 

 

 

こんなことになってしまった経緯は少々複雑である。

 

 

 

先日―七咲は杉内 広大を自宅に招いた。

 

父や母への紹介はもちろん、彼女と九つ離れた小学生低学年の弟―七咲 郁夫との初対面の日―そこで悲劇は起こる。

 

当初こそ七咲の弟―郁夫は比較的、姉の彼氏である杉内 広大に好意的であった。

 

が―彼がヘビロテで週三回は録画したのを見返す週一の仮面ヒーロー番組―仮面ライ・・、い、いや失礼。・・「イナゴマスク」ごっこを始めた時、悲劇が起こる。

 

杉内 広大という少年もかつてはそういうヒーロー番組を見てきた少年だし、元々末っ子で子供っぽい面もある。子供の相手は比較的しやすい性格をしており、郁夫の突然のヒーローごっこ遊びの要請にも快く付き合った。が・・杉内が童心に帰って繰り出すかつての歴代の「イナゴマスクが繰り出してきた技」たちは残念ながら・・十年ほど遅い。

 

仮面ヒーローものは1シーズン、1シーズン巡る。デザイン、ストーリー、主人公の境遇や敵、技に至るまで時代、世相を反映してマイナーチェンジされ、世代交代を経ても尚変わらず子供たちに受け入れられる。シーズンによってはコア的人気を誇り、大人が長年夢中になるものすらある。

 

が、残念ながら子供にとっては「超一過性の流行もの」という側面も強い。友達とのヒーロー談議で1シーズン話題が遅れようものなら時に完全に「時代遅れ」のレッテルを張られ、はみ出し者とされる。下手をすればいじめにもつながったりするから恐ろしい。子供の世界にも色々あるのだ。

 

結果―「十年遅い」技を次々繰り出すほかない杉内は七咲の弟―郁夫によって文字通り「そんな技で僕に勝とうなんて10年早い!」とか

 

「そんなんで僕の姉ちゃんをやれるか!!」とか散々言われ、出直しを要求される。

 

 

―う、お、おおお・・。

 

結果、杉内は心底マジで落ち込んでしまった。七咲の弟―七咲 郁夫とのファーストコンタクトの盛大な失敗を前にして。

 

結果―

 

「七咲・・俺負けねぇ。頑張るわ!!」

 

杉内はその日以降、イナゴマスクの研究に余念がない。知識を貪欲に吸収し、週一の放映時はリアルタイムで確実に視聴、そして録画を何度も見直すなど涙ぐましい努力を開始、めきめき実力をつけていく。

 

「ローリングイナゴスパーク・・イナゴスピニングバックナックル・・イナゴーゴー張手・・」

 

「この熱量を少しは勉強に向けろや…」という友人―国枝 直衛の愚痴も何のその、杉内は努力を続けた。しかし―彼は失念していた。

 

季節は冬を過ぎ、そろそろ春を向かい入れる時期となっている。つまり―今シーズンのイナゴマスクが・・最終回を迎えて終わってしまうのだ。

 

新シーズンが始まってしまっては今の彼の努力が全て水泡に帰す。一からやり直しである。斯くもヒーローものとはシビアなものなのだ。これに付き合わされ、シーズンごとに玩具を買わされ、そしてごっこ遊びに付き合わされる親御さんの苦労を杉内は垣間見る。

 

しかし―そんな彼に救世主(メシア)、否、女神が現れる。それが―

 

 

「良かったら杉内先輩・・私がイナゴマスクの事、その・・教えます、よ・・?」

 

 

中多 紗江だ。

 

 

彼女は意外にもはっきり言ってイナゴマスクのマニアだ。オタクだ。

今シーズンは勿論、ここ十年スパンのイナゴマスクの全ての知識を彼女は持っている。

あまりにも意外なダークホース出現に杉内は一人沸き立つ。

 

流石にイナゴマスクシリーズが1シーズン1シーズン、マイナーチェンジしていくとは言え、男児というものは心の中に潜在的に「この仮面ヒーローこそ俺の青春のバイブル」と銘打ち、他のシリーズと別格化、神格化するシリーズを持っているものだ。

流石に杉内の「十年前」というまだ七咲の弟がまだチンカスレベルの時のイナゴマスクには対応していないとしても、ここ二、三年のシリーズであれば七咲の弟の郁夫は小学校低学年か、幼稚園の年長でヒーローものに最も敏感なお年頃だ。「どれか」が当たる可能性はある。

 

「学んだ知識は奪われないから」という例の「英雄」の雷様の有り難いお言葉に従い、杉内のイナゴマスク研究は壁にぶち当たりながらも続いていく。中多 紗江というこれ以上ないブレインを得て。

 

中多 紗江自身も自分の大好きな共通の話題が出来る相手を見つけられたことが相当にうれしかったらしく、進んで杉内にイナゴマスクの情報を提供し続けてくれた。それだけではなく、休みの日にはともに遊園地のヒーローショーに繰り出したりもし、最早杉内と中多が会う頻度は彼氏彼女レベルにまで達していた。

 

更に彼女は仕事の関係で芸能関係に非常に顔の広い父親のコネにより、今シーズン、そして過去シーズンのイナゴマスクシリーズはもとより、まだ公開されていない次期の新シリーズのマル秘情報すら入手できる立場に在った。

 

「杉内先輩!!これがマル秘資料『新シリーズのイナゴマスクのデザイン設定資料』ですよ!うっかり出まわったら関連会社の株式市場に影響が出かねませんので絶対にオフレコにして!だ、そうです!!」

 

・・ヤバいものを学校に持ってくる女子高生も居るものである。しかしまさしく杉内にとって中多は救世の女神であった。

 

 

しかし、当然これを快く思わない奴は現れる。言うまでもなく中多 紗江の彼氏である―

 

 

―邪魔だなぁ・・杉内君。早く死なないかなぁ。あと寿命どれぐらいかな?

 

 

・・御崎 太一だ。

 

 

当初こそ中多が杉内と趣味の事に関して楽しく話していることを寛大に受け入れてはいたのだが日曜のデートは邪魔されるわ、登下校中も割り込んでくるわ、距離は近いわで流石に御崎も我慢の限界、噴火直前に達していた。

中多 紗江と出会って早々と源 有人、国枝、茅ケ崎に彼女を紹介した御崎ではあるが杉内に関しては本当に「誤算、紹介しなければ良かった」と今彼は心底後悔している。

 

しかし、そんな中でも必死に自分を抑え、「杉内には七咲が居るので大丈夫だろう」と御崎はどこか言い聞かせていた。結構ああ見えて七咲 逢という少女は嫉妬心、独占欲が強いことを御崎は知っている。杉内と中多の過剰接近にはいずれ彼女自身が物申すことになるだろうと踏んでいた。当の杉内も七咲にベた惚れだ。彼女から物言いがつけば流石に彼も自重するだろう。「ほんの少しの時間の我慢」と御崎は自分に言い聞かせる。

 

しかし彼―御崎 太一の誤算はここに在った。

 

 

在ろうことか後日、あの七咲すらも中多をイナゴマスクの「師」と仰ぎ始めたのだ。

これにも少々悲しい事情が有る。

 

杉内だけでなく姉―七咲もまた仮面ヒーローものの理不尽すぎる世代交代に振り回された「時代の犠牲者」の一人であった。

 

 

先日、弟郁夫への誕生日のプレゼントとして、彼女は思いの外安く手に入れることが出来たイナゴマスク変身セットを弟に手渡した。弟が喜んでくれる姿を想像してわくわくしていたが彼女はなぜその変身セットが他と比べて異常に安いのかを深慮すべきだった。

 

彼女のその変身ベルトは1シーズンどころか2シーズンも外していたものであった。そして残念ながら2シーズン前はイナゴマスクのスーツデザイン、ストーリーともに「不作」と呼ばれた谷間世代のイナゴマスクである。そんな不作のシーズンのイナゴマスクの変身ベルトを前にした七咲弟―郁夫の反応は「姉の前で泣きながらベルトを突っ返す」という姉―七咲にとって余りにも悲しい結末を迎える。

 

 

―う、ああああ。郁夫ぉ・・ゴメンね・・!お姉ちゃんを許して・・!

 

 

七咲もまた杉内同様、マジで落ち込んでしまい、自分の無知を恥じた。

 

そんな彼女の前に現れたのがクラスメイトであり救世の女神―中多 紗江である。

あとは言うまでもなく杉内と同じ道を辿る。彼女は杉内と中多の過剰な接近に然したる嫉妬の感情を覚えず、むしろ率先して自分も二人に溶け込んでいき、完全に三人で「イナゴマスク固有結界」を形成してしまったのだ。

 

そもそも、元々杉内がイナゴマスクを知ろうとしていたのは純粋に「七咲の弟と仲良くなりたい」というものである。よくよく考えれば姉の七咲 逢がそれを拒むはずがないのだ。むしろその必死な姿に内心嬉しいとすら感じていただろう。それに加えてあのプレゼントの悔しい経験を前に七咲もまた弟の喜ぶ顔を見るためにイナゴマスク知識が必須と判断、結果三人は各々の事情が複雑に絡み合い、かみ合い過ぎてしまった結果今に至る。

 

―し、しまった・・!!完全に僕読み違えた!!

 

御崎は頭を抱える。

 

 

 

 

そして先日―とうとう堪忍袋の緒が切れた御崎は―

 

「杉内君・・七咲さん。ちょっといいかな・・・」

 

「ん?どしたミサキ?」

 

「御崎・・先輩?」

 

 

「僕と紗江ちゃんをめぐって勝負だ!!かかってこい!!」

 

 

 

 

 

ここに中多 紗江を巡る戦争勃発。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在―

 

 

「と、いうわけなんですほ・・・」

 

しゅんと俯き、恥ずかしそうに事の経緯を語り、茅ヶ崎が同じ茶道部の桜井 梨穂子から今朝差し出してもらった水筒のおいしいお茶を啜って七咲はまたため息をついた。

 

「ほ・・・あ、おいしいお茶ですほ・・」

 

事の経緯を長々と茅ケ崎に語った中でも常に「語尾は『ホ』のルール」を律義に七咲は守り続けたため、彼女も少々慣れてきてしまったらしい。悲しい。

 

「・・・」

 

―・・アホらし過ぎて言葉がでねぇ。

 

 

 

「で、・・七咲。その勝負ってのは?君のその、語尾が『ホ』っていうのも罰ゲームかなんだろう?」

 

「はい・・流石に喧嘩は駄目ですし公平に『ゲームで勝負』という形になりました。勝った方が紗江ちゃんを手に入れられて、負けた方は罰ゲームという形です。今日は私は御崎先輩にトランプの『スピード』で勝負を挑みましたほ」

 

「・・あ。あ~ダメ。御崎の奴はその手のゲーム、っていうか全般的にアイツはなんでも強いよ?」

 

「そうなんです・・私も『スピード』には結構自信があったんですけど・・完敗でしたホ・・」

 

「・・で。肝心の杉は今何してんのよ?」

 

―こんな状態の彼女ほっぽり出してどこほっつき歩いてんだ。あの野郎は。

 

「杉内先輩は・・私の仇を討つために御崎先輩に勝負を挑んでますほ・・」

 

「で、次もトランプの『スピード』?・・杉じゃあ望み薄だな?」

 

 

「いえ・・確か『あっち向いてホイ』ですほ」

 

 

 

「・・・!」

 

「より悪いわ」、と言いたげに茅ケ崎は眉を顰め、首を振った。

 

―・・馬鹿が。ジャンケンの勝率がもろに勝敗に左右されるゲームを選びやがって。アイツ自分のジャンケンの弱さに気付いてないのか!?

 

「・・茅ヶ崎先輩・・どうかしましたか?・・ほ?」

 

「・・。七咲・・その、残念だけど。今日は中多さん諦めろ」

 

「・・・。そうですかほ・・」

 

「あの、敢えて聞くけど・・杉が負けた時の罰ゲームは?」

 

「・・一日中語尾が『ホイ』ですほ・・」

 

「・・・」

 

―彼女が語尾が「ホ」。彼氏が語尾が「ホイ」に決定か。・・帰り道ただのバカっプルだな・・オイ。

 

 

 

 

しかし考えてみるとこのケース悪いのはいったい誰なのだろうか・・。えてして戦争というものはこんな些細なすれ違いから発展してしまう物なのかもしれない。

 

世の不都合で不条理な真理を垣間見、茅ヶ崎は一人物思いにふける。吉備東高校の乾いた空に吹く風はまだ寒々しい。

 

 

「へ、へくしょん、・・・は・・!ほ!」

 

本当に律義だ。

 

「七咲・・もういいよ。その、俺の前では罰ゲームやっても意味ないし・・普通でよくね?」

 

「そ、そうはいきません!!罰ゲームなんですから甘んじて受けます!!・・ほ!!」

 

「そ。そう?無理しないでね」

 

「は、はいっ!・・ほ」

 

「・・なぁ・・七咲?」

 

「はいほ?」

 

 

 

「君って案外ア『ホ』?」

 

 

 

「・・とほ『ほ』~~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の放課後―下校時間

 

 

「智也。お待たせ」

 

太ましい体を揺らし、ふぅふぅと息を吐きながら栗毛の少女―桜井 梨穂子は茅ヶ崎の下へ走り寄る。

 

「あぁ。おかえり。梨穂k・・」

 

「ん?」

 

「・・じゃあ帰るか。梨『穂』」

 

「『りほ』・・?珍しいね。智也が私をそんな風に呼ぶなんて」

 

「・・嫌か?梨『穂』」

 

「・・う~~うん。新鮮でいいよ~~♪もっと呼んでくれたまへ~~♪」

 

 

 

 

 

 

数日後―

 

昼休み

 

 

茅ヶ崎が桜井と昼食を終え、中庭周辺を散歩していた時であった。

 

 

「あ、茅ヶ崎先輩に桜井先輩!こんにちわですぴょん」

 

 

「・・」

 

茅ヶ崎は絶句。桜井も七咲のあまりにキャラに合わないその言葉に驚きで元から丸い目を「へ?」という感じで( ゚Д゚)←こんな風に更に丸くさせた。

 

 

「・・また負けたの?」

 

「はい!三連敗ですぴょん!ちなみに~昨日は『べし』でした!あははは!傑作ですぴょん」

 

「・・・」

 

―おい杉。いい加減にしろ。お前の好きな子が・・今確実に壊れていってるぞ・・。

御崎も御崎だ・・遠慮してやれよ・・。無理か。

 

「七咲さん・・」

 

流石の梨穂子も居た堪れなさそうに可愛い後輩女子を憐れんだ。

 

「・・七咲。いいんだもう無理しなくて」

 

「ダメですぴょん!絶対に今度は勝ちますぴょん!御崎討つべし・・!・・・。ぴょん!!」

 

「・・」

 

「・・」

 

―・・間違えたな。

 

―・・間違えたね。

 

 

壊れかけの彼女を手を振って見送ったのち、桜井は神妙そうに茅ケ崎に上目遣いで訴える。

 

「智也ぁ・・」

 

「ああ。わ~ってるよ」

 

―梅はインフルエンザ、国枝は学期末テスト控えてグロッキー、棚町さんは棚町さんでぜってぇあの状況楽しんでるだろし。源は・・「彼女」の事で手一杯だろうしな。

 

 

昨年末―彼の担任である多野に言われた言葉を茅ヶ崎は思い出す。

 

 

―今度はお前の仲間たちの力になってやれ。

 

 

「・・じゃ梨穂子」

 

「うん」

 

「ちょっと・・シメてくるわ」

 

「うん。いってらっしゃい♪」

 

 

 

彼は五分後2-Aに無言で潜り込み、教室後方でいがみ合うバカ二人の姿を確認するとつかつかと詰め寄り―

 

 

「お前らいい加減になさい」

 

 

思いっきり二人の頭に拳骨をめり込ませる。頭頂部を抑えて悶絶する二人を見下ろし、茅ヶ崎はこう言った。

 

 

「中多さんは皆のものだ。公平に分け合いなさい」

 

 

 

「ぐ~~っ・・!茅ヶ崎君!!紗江ちゃんは僕のものだよ!!」

 

「解ったよ茅ヶ崎・・じゃあ俺紗江ちゃんの左胸な。確か『そっちの方が大きい』って聞いた事あるし」

 

七咲が居ないことをいいことに暴言レベルの言葉を発する。この状況で尚、御崎を煽る杉内。「連敗」の鬱憤が溜まっているようだ。

 

「てんめ~~杉内!マジで殺すよ!?」

 

 

そんな二人に再び鉄拳を突き刺し、

 

「お前らがそのつもりなら中多さんと七咲さんは預かる。お前ら二人で一生バカやってろ」

 

「な・・!!今度は茅ヶ崎君が紗江ちゃん僕から奪う気なの!?」

 

「七咲関係ねぇだろ!?」

 

「・・安心しろよ。預かるのは俺じゃなくて梨穂子だ。今のお前らであの梨穂子に勝てると思ってんのか?ん?」

 

 

 

「・・・」

 

「・・・」

 

 

二人は返す言葉を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




間章1   「ほ」の字でおま。・裏






ルートS 喧嘩はやめて 二人を止めて 4







実は今回のこの状況を楽しんでいた人間が今回の件では終始、傍観者に徹していた棚町 薫以外にももう一人いる。




御崎、杉内、そして七咲の三人に取り合われていた当の「景品」―


・・中多 紗江だ。


やはりあの母親在ってこの娘、なのだろうか。それとも何度もあの母親に調教されるたびに彼女自身が図太くなっていったのか・・それは解らない。

自分を巡って二人の男子(プラス1親友の女の子)が戦い、いがみ合うその姿。初めのころは恐怖を覚えていたものの徐々にむくむくと―

―あれ・・?なんだか私・・楽しい。

そんな感覚が小さな少女の中で芽生えつつあった。

自分が持ってきたイナゴマスクの情報に我先に喰いつく哀れな羊たち。誰もが彼女を見、彼女の話を聞き、喜び、泣き、笑い、そして最後にいがみ合うその姿―




け、喧嘩はやめて~二人を止めて~


私のために 争わないで~(音痴)


うふっ・・うふふふ~~~(*´艸`*)















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