ハリー・ポッターと魔法生物の王   作:零崎妖識

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今回は長いです。夢は、多分最後のはず。


八つ目の夢


──夢を見た
──この世全ての和平を見た
──この世全ての不和を見た
──我らにできることは少ない
──だが、これだけはできる
──我らは封印した
──彼の能力を封印した
──彼が、遠き未来において、新たな生を得たその時において
──疎まれぬように、恐れられぬように、人と対等でいられるように
──だからこそ、あの魔術師を廃棄したい
──それができぬ我らが憎い
──あの冠位が干渉しなければ、彼、否、彼女は王となる運命を避けられた
──まあ、楽しくやっているとフォ■■■■が言っていたので良しとしよう
──我ら■十■の魔■、その最後をこの我が務める光栄を持って、我が名を記す
──我が名はア───────










決闘

ヴォルデモートは手をポケットに入れ、杖を取り出した。その杖をワームテールに向ける。ワームテールは地上から浮き上がって、僕の縛られている墓石に叩きつけられた。

 

「ワームテールよ、腕を伸ばせ」

 

ワームテールが期待に満ちた目で切り落とした右腕を差し出す。けど、ヴォルデモートは嗤い、もう一方の腕を出すように告げた。

出された腕には赤い刺青のようなものがある。口から蛇を出した髑髏。クィディッチ・ワールドカップで見た、闇の印だ。

 

「戻っているな。全員が、これに気づいたはずだ……そして、今こそわかるのだ……今こそ、はっきりする……」

 

ヴォルデモートが長く青白い人差し指を、印に押し当てる。その途端、頭の傷が再び痛みだした。ワームテールはさらに叫んでいる。

ヴォルデモートが腕から指を離すと、印は真っ黒に変わっていた。それを見たヴォルデモートは、残忍な嗤いを見せた。

 

「ああ、これを見て、感じた時、戻る勇気のある者が何人いるのか。離れようとする愚か者が何人いるか、楽しみだ」

 

ヴォルデモートが僕の前に立つ。赤く輝く目が、僕の額の傷痕を見つめる。

 

「ハリー・ポッター、お前は、俺様の父の遺骸の上におるのだ。マグルの愚か者よ……死してようやく、俺様の役にたったわけだ。丘の上に見える館……あれに、父親は住んでいた。典型的なマグルで、魔法を嫌い、魔女と打ち明けた母親を棄てた。そして、母親は俺様を産み、死んだ。憎々しいことに、俺様には奴の名がつけられた……トム・リドルと!

……俺様が自らの家族の歴史を語るとは、なんとも感傷的になったことよ。しかし、見るがいい、ハリー・ポッター!俺様の真の家族が戻ってきた!」

 

マントを翻す音があたりに響き、墓と墓の間から、闇の中から、木の陰から、魔法使いが〈姿現し〉して来た。全員がフードを被り、仮面をつけている。全員が跪き、ヴォルデモートのローブにキスし、輪になって立つ。しかし、輪には切れ目があった。誰かを待つように。

 

「よく来た、死喰い人(デス・イーター)たちよ。十三年ぶりだ。我々が最後に会ってから、十三年も経った。しかしお前たちは、それが昨日のことであるかのように、俺様の呼びかけに応えた!……さすれば、我々は未だに、『闇の印』の下に結ばれていると……違いないな?

だが、罪の匂いがするぞ。

お前たち全員が、無傷で健やかだ。魔力も失われていない──こんなに素早く現れるとは!そこで、俺様は自問する。この魔法使いの一団は、ご主人様に永遠の忠誠を誓ったはずだ。それなのになぜ、そのご主人様を助けに来なかったのか?」

 

誰も答えない。あたりを恐怖が支配する。

視界の端に、セドリックの亡骸が映る。けど、さっきとは体勢が違う気がする。

 

「俺様は自答する。奴らは俺様が敗れたと信じたのに違いない、と。そして、俺様の敵の間にするりと立ち戻り、無罪を、無知を、そして呪縛されていたのだと申し立てたのだろう……さらに自問するべきことは、自答するべきことはあるが、時間の無駄となる……だが、これだけは言わせてもらおう。俺様はお前たちに失望した!

……お前たちには十三年分のつけが貯まっている。ワームテールは既にその借りの一部を返した。俺様を復活させることによって。ヴォルデモート卿は、助ける者には褒美を与える……例えそれが、虫けらのような裏切り者でも」

 

ヴォルデモートが杖を上げ、空中でクルクルと回す。その跡に、溶けた銀のようなものが一筋、輝きながら残っている。やがてそれは人の手の形になり、ワームテールの手首に嵌った。

ワームテールは急に泣き止み、銀の手を見つめ、地面の小枝をつまみ上げて揉み砕いて粉々にした。

 

「我が君、ご主人様、偉大なるヴォルデモート卿……素晴らしい……ありがとうございます……ありがとうございます……」

 

ワームテールは跪いたまま、ヴォルデモートのそばに寄りローブにキスをした。

 

「ワームテールよ、貴様の忠誠心が二度と揺るがぬよう」

 

「我が君……そのようなことは……決して、そのようなことは……」

 

ワームテールは立ち上がり、輪の中に入った。

 

「ルシウスよ……抜け目のない友よ……世間的には立派な体面を保ちながら、未だに昔のやり方を捨ててないと聞きおよぶ。率先してマグルいじめを楽しんでいるようだが……一度も、俺様を捜そうとはしなかったようだな。ああ、弁明はするな。今までよりももっと忠実に仕え、このヴォルデモート卿を満足させるがよい」

 

次に、ルシウス・マルフォイの隣の空間に目を向ける。そこには何人か分の隙間がある。

 

「レストレンジたちがここに立つはずだった。しかし、あやつらはアズカバンに葬られている……忌々しい、エリザベート・クリミアとマッド-アイ・ムーディの手で。アズカバンが解放された時には、レストレンジたちは最高の栄誉を得るだろう。吸魂鬼(ディメンター)も我々に味方するだろう……あの者たちは、生来我らの仲間なのだから」

 

多分、吸魂鬼はリアスの仲間になると思うのは僕だけだろうか。

 

「消え去った巨人たちも呼び戻そう……闇の生物全てを呼び戻そう……忠実なる下僕の全てを、そして、誰もが震撼する生き物たちを、俺様の下に帰らせようぞ……」

 

いや、その生物たちも多分リアスの軍門に下ると思う。急に頭が冷えてきた。リアス単体でも、そのペットたちの戦力で今ここにいる死喰い人たちは殲滅できるはず。

何人かの前をヴォルデモートは通り過ぎ、何人かに声をかけ、一番大きく空いている空間の前に立った。

 

「ここには、六人の死喰い人が欠けている……三人は俺様の任務で死んだ……主に神秘部の者たちに殺された。一人は臆病風に吹かれて戻らぬ。一人は永遠に俺様の下を去った……この二人には、死あるのみ……そして、最も忠実な下僕であり続けた者は、既に任務についている。その者の尽力により……我々はここに、親愛なる客人(ゲスト)であるハリー・ポッターを迎えた。

そして、この奇跡を……復活の儀式を遂げることができた。そこらのゴーストにも劣るナニカに落ちぶれ、誰かの肉体に取り付くしかなかった。四年前にある魔法使いに取り付き、復活の兆しを得た……賢者の石を得る機会を。しかし、それは挫かれた。ハリー・ポッター、そして、謎のネズミたちと銀に透き通った蜻蛉に……その下僕は、生きたままネズミの餌となった。

希望を捨て、もはや復活を諦めていたその時……ワームテールが現れた。まだ一年も経っていないほど最近だ。しかも、良い土産を持ってきた……バーサ・ジョーキンズだ。そして、その女が持っていた情報により……今、俺様はここに復活した。失脚の時よりも強力になって!」

 

ヴォルデモートがこちらを向き、全死喰い人の目線が僕に向けられる。そして、明らかにセドリックが動いた。おそらく、セドリックは生きている。

 

「縄を解いてやれ、ワームテール。此奴と俺様の、どちらが強いかを示そう。此奴を殺すことで、俺様が最強であることを証明しよう」

 

ワームテールの銀の手は強力なようで、一振りするだけで縄を切り落とした。

ワームテールに僕の杖を押し付けられ、ヴォルデモートと相対する。死喰い人には既に隙間はなく、逃げることは困難だ。どうしても、ヴォルデモートと決闘するしかない。

 

「決闘のやり方は知っているだろう、ハリー・ポッター。さあ、お辞儀をするのだ!」

 

ヴォルデモートが大げさにお辞儀する。僕も、本の少しだけ腰を曲げた。

 

「よろしい。男らしく前を向け。俺様に杖を向けろ……背筋を伸ばし、誇り高く!」

 

僕はポケットの中の羽を意識した。迷路の中で絶対絶命だった時に助けてくれた羽を。もう一度だけ、僕に力を貸して欲しい。

 

「さあ──決闘だ。死ぬ前に言っておきたいことはあるか?」

 

言っておきたいこと……死ぬつもりはないけど、少しだけある。もちろん、リアスのことを話すつもりはないけど。

 

「ヴォルデモート、その歳で『俺様』はさすがにどうかと思う。あと、言い回しとかが芝居がかってて、何というか……滑ってる」

 

激痛が襲ってきた。呪文は聞こえなかったけど、多分〈磔の呪い〉だ。

 

「ふん、俺様を侮辱した罰だ。どうだ?もう一度やって欲しいか?答えるがいい」

 

こいつに、命乞いをする気はない。誇り高く──そう言ったのは、こいつ自身だからだ。

 

「答えるのだ!〈服従せよ(インペリオ)〉!」

 

幸福に、頭を、思考を支配される。「嫌だ」と言え、と頭の中で響く。

 

「僕は、絶対に、言わない!」

 

気力を振り絞って、言葉を口から出す。墓場に響きわたった言葉は、死喰い人たちを静かにさせていた。

 

「どうやら、死ぬ前に、従順さは徳だと教えてやる必要があるな……」

 

ヴォルデモートが再び杖を向ける。僕は横に跳んで地上に伏せ、墓石の陰に隠れる。呪文は、大理石の墓石を砕くにとどまった。

 

「誇り高く、と言ったのはお前だぞ、ヴォルデモート!僕は、お前に命乞いするぐらいなら、吸魂鬼に囲まれる方がマシだ!」

 

ヴォルデモートの笑い声が止む。僕はしっかりと杖を握りしめ、墓石の陰から飛び出した。

 

「〈アバダ・ケダブラ〉!」

 

「〈武器よ去れ(エクスペリアームス)〉!」

 

二つの呪文は、同時に飛び出し、ヴォルデモートと僕の真ん中でぶつかった。そして、二つの閃光は金色の糸となり、僕とヴォルデモートの杖を繋いだ。

糸は裂け、ドームのように僕とヴォルデモートを囲む。そして、信じられないことが起こった。

ヴォルデモートの杖先から、何かが現れた。前に、夢で見た老人だ。濃い灰色のゴーストのような彼は、完全に現れると、驚いたように杖と僕らを見渡した。

 

「もしや、あいつはほんとの魔法使いだったのか?なら、俺は坊やを応援する……あいつは俺を殺しやがった……頑張れ、坊や……」

 

新たな影が現れる。次は、女性だった。バーサ・ジョーキンズだ。

 

「離すんじゃないよ、ハリー!」

 

遠くから聞こえるような声で、二人の影は僕を応援する。僕とヴォルデモートの周りを歩きながら。

次に現れた影は、一目で誰なのかわかった。ずっと、夢に見てきた影だから。

 

「もうすぐ、お父さんが来ますよ……大丈夫、頑張って……」

 

そして、待ち望んだ影が現れる。ジェームズ・ポッター。父さんと母さんは横に並び立って、僕に微笑んだ。

 

「繋がりが切れると、私たちは少しの間しか留まれない。それでも、時間を稼いであげよう……移動(ポート)キーへ向かいなさい。それが、お前をホグワーツに連れて帰ってくれる……もし、次に会うことができたのなら、エリザから教わった呪文を伝授してあげよう。私の息子なんだ、きっと使える」

 

「なら、私の呪文も教えましょう。私の息子でもあるんですものね、ジェームズ」

 

「そうだね、リリー」

 

死んでなおいちゃついている二人に、ヴォルデモートは苦々しげな顔をした。恋人とか、いなかったんだろうか。

 

「さあ……今だ!」

 

渾身の力で杖を振り上げ、繋がりを切る。墓石を避け、死喰い人を吹き飛ばして走る。呪いが墓石に当たる音を聞きながら。

 

「〈妨害せよ(インペディメンタ)〉!」

 

僕の前から、死喰い人に向かって呪文が放たれる。セドリックだ。

 

「馬鹿な、貴様は殺したはずだ!」

 

「生きていたのさ、お前には想像もつかないような方法で」

 

セドリックと並び立ち、同時に優勝杯に触れる。移動(ポート)キーが作動して……ホグワーツのクィディッチ競技場、迷路の外に、僕らは着地した。




多分、ヴォルデモートの出した銀の腕は、ヌァザの右腕(アガートラム)のようなものですかね。その逸話の再現、もしくは模造品。無限の剣製の投影品よりも格下の。
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