キャンプ場への移動
数日後、あたしたちの家には何人かの人が泊まっていた。ママの同僚……というか研究チームだ。みんなでご飯を食べ、遊び、宿題を教えてもらったりしてる。
今日は向こう──ワールドカップ観戦用のキャンプ場に移動する日だ。本来ならもう少し遅いんだけど、先に着いちゃダメって規則はないしね。
「それで、どう移動するの?」
「〈姿現し〉よ。リアスは私が付き添いで行くわ」
姿現しを使えなくても、付き添い姿現しなら一緒に移動できるから、それに姿現しなら一足先にキャンプ場へ移動できるからだそうだ。キャンプ場の予約はバージルという人に頼んですでに済ませているらしい。
「じゃあ移動するわよ。サクヤちゃん、あとはよろしくね」
「かしこマリました、
「マイ・ロードってのはやめてほしいけどね」
ママがあたしの手を握り、くるりと回転する。何かが破裂するような音とともに、あたしの内側が引っ張られるような、狭いパイプの中に押し込められたような感じがする。けど、すぐにその感覚は消えて、目の前には森が広がっていた。
「えーと……いたいた。おーい、バージル!」
ママが声を上げる。すると、遠くの方からキルトとポンチョを着た魔法使いが走ってきた。
「来るのが早すぎやしないか、え?まあいいさ、エリザベート。神秘部のクリミア研究チーム御一行は向こうに歩いて行って最初のキャンプ場だ。管理人はロバーツさん。クリミアで予約してある」
「ありがと、今度何か奢るわ」
「よしてくれ。どんなゲテモノを食べさせる気だ」
後ろの方で何かが破裂するような音がする。他のみんなも到着したようだ。
「到着したところ悪いんだけど、早く行くよ。テントで休みたいだろうしね」
ママを先頭にみんなで歩き始める。自然の霧が森を満たして、時折リスや鹿が姿を見せてくる。キョロキョロしながら歩くこと二十分、キャンプ場が見えた。
キャンプ場の前の小屋には男の人が一人立っている。あの人がロバーツさんだろう。
「こんにちは、貴方がロバーツさんですか?」
「ん……ああ、そうだが。あんたらは?」
「クリミアです。テントを二張りほど予約していたと思うのですが」
「クリミアさんね。おめえさんらの場所は森のすぐそばだ。金は今すぐ払ってくれ。泊まるだけ泊まって森から逃げられちゃたまらねぇからな」
ママは財布を取り出し、その中からマグルのお金をいくらかロバーツさんに渡した。
「ちょうどだ。ほれ、キャンプ場の地図」
ロバーツさんから地図を受け取り、キャンプ場へ入る。まだテントは少なく、けど個性的なテントが多かった。しばらく進むと森のすぐそばに到着した。目の前のスペースには『クリミア』と書かれた看板。横のスペースには『うーいずり』と書かれた看板が立っていた。『ウィーズリー』の書き間違いかな?
「テントは普通なように偽装するけど、高性能なやつなのよ。あと、すこーし改造していてね、テントの中でなら魔法を使って平気よ。テントの中だけ『匂い』を無効化するようにしたの」
改めて思う。神秘部は一体何をやっているんだと。
魔法を使って見た目普通のテント、中身二階建てのキッチントイレバスルームベッドルーム付きのテントを二つ張り、男と女に別れて荷物を置いて水を汲みに行った。それとママ、さすがにサクヤに屋敷しもべ妖精の〈姿現し〉を教えようと計画しないで?確かに便利だけどさ。