デザートも皿の上から消え去り、ダンブルドア校長がもう一度立ち上がった。
「さて、みんなよく食べ、よく飲んだことじゃろう。少し不満そうな生徒もおるようじゃがのう。
いくつか知らせることがあるので、よく耳を傾けて欲しい。
管理人のフィルチさんから、持ち込み禁止品の追加のお知らせじゃ。何が加わったのかはフィルチさんの事務所で確認してくだされ。もっとも、確認したい生徒がいればじゃが。
いつもの通り、校庭内にある森は許可証を持つ者以外は立ち入り禁止じゃ。ホグズミード村も、三年生まで禁止じゃよ。
次に、ごく少数、もしくはほぼ全員にとって悲しいお知らせを。今年の寮対抗クィディッチ試合は取りやめじゃ」
ダンブルドア校長が最後の言葉を言った時、全テーブルから野太い声と甲高い声で悲鳴が上がる。そしてダンブルドア校長に文句を言い始めた。
「みな、落ち着いてくだされ。これは、とあるイベントのためなのじゃよ。先生方も、この十月から始まり、今学年の終わりまで続くこの行儀にほとんどの時間とエネルギーを費やすこととなる。そして、クィディッチ試合をしている時間がなくなってしまうのじゃよ。
しかし、じゃ。わしは君たちがこのイベントを大いに楽しんでくれるであろうことを確信しておる。では、大いなる喜びを持って発表しよう。今年、ホグワーツで──」
校長先生がその続きを言う前に、一際大きい雷鳴とともに大広間の扉が開いた。
長いステッキに寄りかかり、黒い旅行マントをまとった男の人。フードを脱いで、教職員テーブルに歩き出したけど、一歩ごとに硬い物同士がぶつかり合う音が響いた。
「グルルルル……」
あたしの近くを通り過ぎた時、キノが歯をむき出して唸り始めた。どうしたんだろう。とりあえず、落ち着かせないと。
男性の顔が見えたけど、あれはとても怖い。片方の目が義眼で、しかもグルグルと回っている。
男性は、教職員テーブルの最後の席へと座り、ソーセージを食べ始めた。
「闇の魔術に対する防衛術の新しい先生をご紹介しよう。アラスター・ムーディ先生じゃ。マッド-アイ・ムーディと言ったら、わかりやすいかのう」
聞いたことはある。確か、数年前まで魔法省の闇祓い局に勤めてたんだっけ。ヨハンナさんとか、神秘部の人たちが時々捕まりそうになったこともあるとかないとか。
ムーディ先生は目の前のかぼちゃジュースには手をつけず、マントから携帯用酒瓶を引っ張り出して、お酒を飲み始めた。飲み過ぎは良くないと思う。
「えー、先ほど言いかけたことの続きを話させてもらおう。これより数ヶ月に渡り、我が校はここ百年以上行われていない、まことに心踊るイベントを主催することになった。知っている者はこの行事のことを良く知っているじゃろう。栄光の歴史、同時に負の歴史としても。安心して欲しい。あらゆる側面において、関係者全ての、もちろん君たち全員を含めての安全を保障しますぞ。では、発表しましょう。今年、ホグワーツで、
「ご冗談でしょう!」
フレッドが叫ぶ。三大魔法学校対抗試合ってなんだろう。聞いたことがあるようなないような。
「ミスター・ウィーズリー、わしは決して冗談など言ってはおらんよ。
三大魔法学校対抗試合とは、おおよそ七百年前に、ヨーロッパでもっとも権威のある三つの魔法学校──すなわち、ホグワーツ、ボーバトン、ダームストラング──の親善試合として始まったものじゃ。各校から代表選手を一人ずつ、統一された公正な手段により選び出し、三人が三つの魔法競技を争った。五年ごとに持ち回りで競技を主催してのう。国境を越えて、若い魔法使い、魔女たちの絆を結ぶにはこれがもっとも適した方法じゃった──おびただしい数の死者が出るにいたって、競技そのものが中止されるまではのう。
ただ、安心してくだされ。先ほども言ったように君たちには安全を約束しよう。最大限の安全対策をとり、危険が及ばんように尽力する。今は、最後の砦にして最大の対策に協力してもらえるよう、とある人物と交渉しておる。交渉に成功した場合、競技はさらに難しくなるがのう」
そこまで言って、ダンブルドア校長はあたしの方を向いてウィンクした。ハードルを上げないでください。
「何世紀にも渡り、この試合を復活させる動きはあった。じゃが、時期尚早と判断され、全て失敗に終わったのじゃ。しかしながら、ようやく再開できることになったのじゃ。
十月に、ボーバトンとダームストラングの校長が、代表選手の最終候補を連れて来校する。ハロウィンの日が代表選手の選考じゃ。選考方法は初めの時より今も変わらず、公明正大なる審査員によって決定される。その決定にはそれぞれの学校の校長も、協力してくださる魔法省の役員も関与はできぬし、発表するまでは誰が選手になるのか、誰にもわからぬ。ただ、選ばれた場合には古き魔法契約がなされることになり、破る場合には重い罰が与えられるじゃろう。それに、細心の注意ははらうが代表選手には危険が迫る。優勝杯と学校の栄誉、個人への賞金一千ガリオンを得るために危険を冒すか、観戦するだけに留めておくかは君たちの自由じゃ。……まあ、十七歳未満の生徒は参加禁止じゃがのう」
参加するとはしゃいでいたウィーズリーツインズがピシリと固まる。錆びついた機械を動かすような音を立ててダンブルドア校長の方を向いた二人の顔は二人の心境を吐露していた。「嘘だろ!?」と。
「十七歳未満が選考の審査員に名前を提出できぬよう、わし自ら一定以下の年齢の者を弾く魔法をかけさせてもらう。老け薬を使っても無駄じゃから、時間を無駄にせんように。
ボーバトンとダームストラングの生徒たちは今年のほとんどを我が校にて過ごすことになる。外国からの客人を、みなが礼儀と厚情を持って迎えることを願い、ホグワーツから誰が選ばれようと、みながその者を心から応援することを信じておる。さて、もう夜も更けた。明日からの授業に備えてゆっくり休むのが大切じゃ。就寝!」
ダンブルドア校長の掛け声でみんな立ち上がり、玄関ホールに向かう。さて、この後は校長室に使い魔を送らないと。うちの子たちの活躍が見れるのなら、努力は惜しまないよ。