ハリー・ポッターと魔法生物の王   作:零崎妖識

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ムーディ先生の授業──〈磔の呪文〉、〈死の呪い〉

「他の呪文を知っている者はいるか?何か禁じられた呪文を?」

 

ムーディ先生が再び質問する。もう一度ハーマイオニーの手が挙がったけど、今度はネビルの手も挙がった。

 

「何かね?」

 

ムーディ先生がネビルに聞く。義眼だけがネビルの方を向いていた。

 

「一つだけ──〈磔の呪文〉」

 

ネビルは小さな声で、だけどしっかりとした声で答えた。

先生はネビルを両方の目でじっと見据える。

 

「お前はロングボトムと言う名だな?」

 

魔法の目を出席簿の方に向けて、ムーディ先生が聞く。ネビルは緊張してるみたいだけど、頷いた。

ムーディ先生はそれ以上何かをネビルに聞くことは無く、ガラス瓶から二匹目の蜘蛛を取り出した。

 

「〈磔の呪文〉。それがどんなものかわかるように、少し大きくする必要がある。〈肥大せよ(エンゴージオ)〉!」

 

蜘蛛が大きくなり、ロンが恥も外聞もかなぐり捨ててムーディ先生の机から遠ざかる。蜘蛛はタランチュラよりも大きくなった。アクロマンチュラよりかは小さいけど。

 

「では、見ていろ。〈苦しめ(クルーシオ)〉!」

 

蜘蛛は肢を胴体に引っ付けてひっくり返り、痙攣し始める。とても……とても苦しんでいる。蜘蛛の声は、もはや言葉をなしていない。ただの悲鳴だ。

 

「やめて!」

 

ハーマイオニーが金切声を上げる。彼女の視線の先にはネビルが居た。蜘蛛から目を離さず、関節が白くなるほど、拳を握りしめている。その顔は恐怖で満ちていた。

ムーディ先生が蜘蛛から杖を離す。蜘蛛は落ち着いたけど、まだ痙攣は続いている。

 

「〈縮め(レデュシオ)〉」

 

蜘蛛を縮ませ、瓶に戻した先生は〈磔の呪文〉について語り始めた。

 

「苦痛。〈インペリオ〉が完全なる支配なら、〈クルーシオ〉は完全なる苦痛だ。自ら死を望むほどの激痛を与え、最悪の場合、廃人となってしまう。

この呪文を使えるのなら、拷問には何の道具も必要ない。かつて、この呪文は盛んに使われた……。

……では、他の呪文を知っている者はいるか?」

 

支配、苦痛……ならば、三つの呪文の最後は──。

三度目の挙手をしたハーマイオニーの手が震えている。どんな呪文なのか、知っているんだろう。

 

「何かね?」

 

先生がハーマイオニーに質問し、彼女は震える声で答える。

 

「〈アバダ・ケダブラ〉」

 

「……ああ、そうだ」

 

先生が微笑む。何度か見せた笑い顔よりも、一層恐ろしかった。

 

「最後にして最悪の呪文。全てに平等に訪れる、最も恐るべき出来事を確実に引き起こす呪文だ。〈アバダ・ケダブラ〉──死の、呪いだ」

 

ムーディ先生が最後の蜘蛛を取り出す。蜘蛛はジタバタと暴れたけど、捕まり、机の上に降ろされた。

 

「覚悟しろ。この呪文はお前たちにも降りかかるかもしれんのだ。この、最も恐ろしい呪文はな。〈アバダ・ケダブラ〉!」

 

先生の声が轟く。目も眩むような緑色の閃光が走り──蜘蛛が力を無くしひっくり返る。傷は一切ない。だけど、はっきりと死んでいるとわかる。誰かの悲鳴が上がった。

 

「ああ、気持ちの良いものではない。しかも、反対呪文は存在しない。防ぐには避けるしかないのだ。それも、一切閃光に掠らないように。これを受けて生き残った者はただ一人。その者は、わしの目の前に座っておる」

 

ムーディ先生の両目がハリーを覗き込む。

 

「〈アバダ・ケダブラ〉の呪いの裏には、強力な魔力が必要だ。同時に、確実にその者を殺すと言う思いも。〈クルーシオ〉にも思いは必要だ。『苦しめようと本気で思い』、かつ『苦痛を与えることを楽しむ』必要がな。お前たちがわしに〈死の呪い〉を唱えたところで、鼻血さえ出させることが出来るものか。もちろん、そんなことはどうでも良い。わしは、この呪文の使い方を教えに来てるのではないのだから。

反対呪文が無いのなら、なぜお前たちに見せたりするのか?それは、お前たちが知っておかねばならないからだ。最悪の事態がどういうもの、お前たちは味わっておかねばならない。せいぜいそんなものと向き合うような目にあわぬようにするんだな。油断大敵!




ムーディ先生──クラウチJr.って、先生としては一流のような気がするんですよね。この人ホグワーツに就職してればよかったのに。
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