デザートまで食べ終わり、ダンブルドア先生の先導でみんなが立ち上がる。そして、杖を一振りしてテーブルを壁際にどかして、右手の壁に沿ってステージを立ち上げた。その上には色々な楽器が置かれている。
妖女シスターズがステージに上がり、それぞれが楽器を取り上げた。そして、テーブルのランタンが一斉に消える。
「それじゃ、踊ろうか。ちゃんとリードしてよね?」
「わかってるさ。それでは、手をこちらにお願いできますか、レディ?」
妖女シスターズはスローな物悲しい曲を奏で、あたしたちは照らされたダンスフロアに歩み出る。そして、ジョージのリードであたしたちは踊り始めた。
以外にも、ジョージはダンスが上手かった。
少しして、他の生徒たちも大勢ダンスフロアに出てきて踊り始めた。マダム・マクシームはダンブルドア先生と踊っているけど、このあとハグリッドのところに行くのかな?
「どうする?もう少し踊るかい?」
「あたしはもういいや。端っこの方で座ってるよ」
「それじゃ、僕はフレッドとアンジェリーナの踊りを見てくるとするよ」
バグパイプが最後の音を震わせて、一つ目の曲が終わる。あたしとジョージはさっさとダンスフロアの外に出た。
「そういえばジョージ、なんでこんなにダンスが上手いの?」
「覚えておいた方が、いつか何かに使えるかもしれないからね。マグルのブレイクダンスとやらもできるよ」
妖女シスターズはいつのまにか、テンポの速い曲を演奏し始めている。ジョージはフレッドを探しに行って、あたしは壁際の椅子に座った。
あ、フレッドがいた。過激……というか危険なダンスだね。近づいたら怪我しそう。
曲が終わるまでに、あたしは何人かの生徒から声をかけられたけど、全部断った。踊るよりも見ている方が気楽だからね。
予想通り、マダム・マクシームはハグリッドと踊っていたし、血みどろ男爵はなんと灰色のレディを誘うことに成功していた。ただ、何があったのか知らないけど、曲が終わった瞬間に男爵はレディにビンタされた。
圧倒的なダンスの技術で周りを驚かせているのはレイブンクローの七年生だね。最も、驚きの理由の一つは相手がちっちゃい子だからだろう。前に図書館で見かけた二年生かな。夜空のような髪の毛を綺麗に結い上げている。
もうデザートとかはないみたいだし、外に出ているとしよう。これ以上ダンスに誘われるのも面倒だしね。
満天の星空の下、あたしは湖の側で座っていた。森に近い一ヶ所だけ、湖は凍りついている。マーカスやオオイカは眠りについているようだ。
ふとダームストラングの船を見ると、船底から何かが岸に上がろうとしている。
じーっと見つめていると、上がってきたのはアザラシだった。白くてふわふわしている子供のアザラシ。
だけど、少し普通のアザラシとは違うところがあった。普通のアザラシよりも一回りほど大きく、牙を生やしている。そして、白い霧が身体の周りを漂っている。
「……
北極海に生息している魔法生物。可愛いけど怒らせるととても危険なアザラシ。普通は四、五匹の群れで生活していて、子供は常に親と一緒にいるはずなのに……。
「まさか、ダームストラングの船にくっついてきちゃったの?」
……まずい。この子の親が怒ってなければいいんだけど。ゼーカルトが怒ると、最低でも半径二メートル、最大で半径二十メートル以内のゼーカルト以外の生物が凍死する。さすがに古龍種は死なないけど。
取り敢えず保護しないと。ゼーカルトは人気だし、しかも子供だから、見つかったら寄ってたかって撫で回すかもしれない。もしそれでこの子が怒ったら大惨事だ。まだ真夜中まで時間はあるし、ディーナ・シーのところにでも預けに行こうかな?それとも、あたしの部屋に匿うか……ディーナ・シーに預ける方が安心できるね。
こっそりとバックビークの元へ向かい、空へと飛び立つ。行き先は、神殿のある島。
神殿跡地に降り立ったあたしたちを、ディーナ・シーとルビコンが迎えてくれた。銀の妖精の手には純銀のネックレスが握られている。
「【久しぶり。そのネックレスは、もしかしてあたしに?】」
ディーナ・シーはコクコクと頷くと、あたしの首にそのネックレスをかけてくれた。あたしは微笑み、抱いていたゼーカルトをルビコンに渡した。
「【その子、北極海の群れからはぐれてこんなところまできちゃったみたいなの。明後日まで預かっててくれる?】」
ルビコンとディーナ・シーはともに頷き、バックビークとあたしを見送ってくれた。城に戻ったらママに手紙を書かなきゃね。場合によってはうちで預かることになるかもしれないし。
M.O.M.分類XXXX
見た目はアザラシだが、本当のアザラシよりも1.5倍ほど大きく、牙が生えている。背中には所々に氷が張り付き、半径二メートルほどには常に白い霧が漂っている。吐息には氷が混じる。とても愛くるしく、とある魔女が、「母性をくすぐられたから」という理由で知らない生物なのにモフりに行ったという記録が残っている。
怒ると霧が最大で半径二十メートルまで広がり、その霧に触れたゼーカルト以外の生物は三秒後には凍死する。氷に耐性を持つ生物、または古龍種なら耐えることができる。氷結呪文の三十倍ほどの力を持っている。
牙は鋭く鋭利、アザラシとは思えないほど俊敏。
近年ようやく世間に浸透し始めた生物で、まだまだマイナー。怒らせると危険なためにXXXXになった。関連本を出版した本屋は発売から一週間ほどは売り上げが恐ろしいほど上がるとか……。
蓬澪静八さんのアイデアです。ありがとうございました。