Fate/Apocrypha EXTRA  月の聖杯大戦   作:フィロ

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書いている最中にキャラ設定が色々と矛盾した為、削除しました。先日上げた設定は忘れてください


第2章「聖杯大戦開幕」

 真実の扉は開き

 選ばれた者達は歩き出す

 隣に己が背中を預けるに足る従者と仲間と共に

 さぁ、始めよう

 最も愚かで、最も崇高な儀式を

 熾天の玉座にて君達を待つ

 

 

 

意識が覚醒し始める。嗚呼、眠りから覚めるのだな、と自覚してはいるものの、このまま布団を蹴って起き上がる自信があまりない。いっそ、このまま二度寝を決め込もうと身体の位置をもぞもぞと変える。

 

「マスター、時間だ」

 

 そんな言葉と共に布団を捲られ、外気の冷たさと心地よさが身体を襲う。

 

「うぅ~……」

 

「酷い顔だ。顔を洗って眠気を落とした方がいいな」

 

 安眠を妨害した人物に無言の抗議をしたのだが、帰って来たのはそんな返事。二度寝する気分も何処かに吹き飛んだ為、仕方なくベッドから洗面所へと移動する。

 

「うわ、本当に酷い」

 

 寝起き特有の顔と寝癖の長い髪。さながら神話の怪物の様だ。取り敢えず顔を冷たい水で洗い、備え付けのブラシで髪を整える。

 

「セイバー、どれくらい寝てた?」

 

「二時間と少し、といった所だ。後十分ほどでアリーナ探索の時間だ」

 

 そういって、セイバーは少しだけ間を置いて。

 

「マスター、あまり言っても仕方ないが」

 

 そういうと、セイバーは真摯に私を見る。

 

「もう少しお淑やかな夢を見た方が良い。女性としてアレはない」

 

「……えっと」

 

 セイバーの言葉を聞き、ゆっくりと理解して私は顔を真っ赤にする。

 

「せ……セクハラ~!!!!!」

 

 叫び、手当たり次第に物をセイバーに投げる。

 

 

 

 

 

 

「よし、集まったな。ん?どうした、秘羽。そんな亡者の様な顔をして」

 

 ユーリ君の気遣いに大丈夫と伝える。場所は生徒会室。サーヴァントとマスターが全員揃っている。

 

「んじゃ、アリーナへ行く人数を決めるぞ?秘羽、決められるな?」

 

「大丈夫だよ」

 

 とは答えたものの、さてどうしようか。

 

「アリーナには相手チームもいるんだよね?」

 

「可能性は高いな。さっき、対戦相手が決まった様だしな」

 

「あのチーム名から真名の特定は出来るのでしょうか?」

 

「さぁ、どうでしょう。ブラフの可能性も捨てきれませんから、何とも言えません」

 

 あれ?なんか話題に置いてかれているんだけど。私は急いで端末を見る。そこには新着メッセージとして参加チームの名簿があり、自分のチームと他チームの名前が光っている。どうやら光っているのが対戦相手の様だ。

 

「えぇっと『竜殺し軍団』?」

 

「それは俺達のチーム名だ。相手は『狂気連盟』だ」

 

「流石に此処から真名は無理だろう」

 

 そういって皆が話し合っている。取り敢えず、私はアリーナ探索のチームを考えよう。

 

「この『暴君のハレム軍団』ってのはなんだ?」

 

「それよりも『征服王と愉快な仲間達』って」

 

「いやいや『騎士王と運命の仲間達』ってのも」

 

 後ろが騒がしい。というか、なんか真面目にやっている自分が馬鹿みたいだ。

 

 

 

 

 

 

「シルヴィアさんとアーチャー。後、バーサーカー。宜しくお願いします」

 

 アリーナの入り口である扉の前で私は同行する三人に声を掛けた。

 

「はい、こちらこそ。ふふ、アリーナとはどんな場所でしょうね、アーチャー」

 

「さてな、興味などない」

 

 シルヴィアさんの楽しそうな声にアーチャーが素っ気なく答える。この二人はコレが基本なので、問題はない。問題があるとすれば。

 

「出陣か?うむ、では行くとしよう!!!」

 

 コレである。自分で選んだとはいえ、ランサーかライダーを同行させた方が良かったかもしれない。

 

「まぁ、考えても仕方ない。行きましょう」

 

 そういって、私はアリーナの扉を開く。

 

 

 

 

 

 

 そこは幻想的な世界だった。水晶の様に透き通った壁と床によって道が形成され、時折聞こえる水の音と共に水疱が浮かび上がっては消えている。

 

「うわぁ……」

 

 だが、そんな幻想的な世界も目の前に広がる受け入れがたい現実に塗り替えられる。

 

「……悪趣味ですわね」

 

「酷い臭いだ……」

 

 隣にいるシルヴィアさんとアーチャーも同じように不快に表情を歪ませる。目の前で毅然と立つセイバーも同じような表情だろう。唯一、バーサーカーは笑みを浮かべているが無視しよう。

 

「これは……蛸?」

 

「恐らく、海魔と呼ばれる存在でしょうね」

 

 そこにはアリーナ全域に蠢く海魔がいた。蛸の足に無数の牙が生え、その中心に口があり、そこから肉が腐った腐臭が定期的に吐き出されている。更にその海魔から流れ出る魔力は耐性のない者が感じ取ればそれだけで発狂或いは嘔吐してもおかしくないほど禍々しく、濃密だった。

 

「これを蹴散らすの?」

 

「ゾッとしませんわね」

 

 私の涙交じりの発言に流石のシルヴィアさんも苦笑を浮かべる。

 

『あぁ~、聞こえているか。理性ある奴』

 

 頭に響いたのはラッセ君の声。どうやら生徒会室からモニターしているようだ。

 

『状況はこっちでも確認した。その海魔だが、どうやら宝具による無差別な召喚らしい。今現在も絶賛生産されているようだ』

 

 止めるにはどうしたらいいのだろうか?

 

『術者。つまり宝具を起動しているサーヴァントを倒す。しかないだろうな。ランサーならばサーヴァントを倒さずとも無力化出来るが。まぁ、無い物ねだりしても始まらん。取り敢えず、サーヴァント反応はこっちでも確認出来ている』

 

 つまり、ナビに従って海魔を駆逐して行け、ということか。そういえばラッセ君以外の声が聞こえないんだけど。

 

『あぁ、そっちの状況をモニターした瞬間。二瞳、言峰、アサシンが気絶してな。他の奴等が解放している所だ』

 

 成る程。

 

「サーヴァントの反応は何処にありますの?」

 

『この先に広い空間がある。反応はそこだ……否、少し待て』

 

 ラッセ君の声はそこで途切れ。

 

『反応は二つだ。一つはこの『海魔』を召喚しているサーヴァントで間違いないだろう』

 

「そのサーヴァントの護衛、ということでしょうね」

 

 そう呟いたシルヴィアさんはキョトンと表情を浮かべる。

 

「あら?バーサーカーは何処ですの?」

 

「え?」

 

 シルヴィアさんの声に後ろを振り返れば、さっきまで笑みを浮かべて佇んでいたバーサーカーが消えていた。

 

「ハッハッハ!!!さぁ、怪物達よ!!私の胸に飛び込んできたまえ!!!!」

 

 そんな叫びの先、何時の間にか海魔の群れに歩いて行くバーサーカーを見付ける。

 

『まぁ、そうなるだろうな。取り敢えず死にはせんが、見失うなよ?』

 

 そんなラッセ君の言葉に私とシルヴィアさんが苦笑する。

 

「まぁ、進む以外に選択肢が無い以上は仕方ありませんね」

 

「そうだね」

 

 そういって、私はセイバーを見る。セイバーは黙って佇み、私の命令を待っている。

 

「セイバー、バーサーカーを援護して道を拓いて」

 

「アーチャー、貴女は二人の援護と奇襲の警戒を」

 

 私達の指示を聞いた二人の英雄は頷きと共に行動に出る。

 

 

 

 

 

 

 マスターの命令を受け走り出す。視線の先には既に敵陣へ向かっていたバーサーカーに海魔が襲いかかっていた。

 

「……放っておくか」

 

 いざとなれば、マスターであるラッセが令呪で呼び戻すだろう。それに。

 

「ハッハッハ!!!元気があって宜しい!!!!」

 

 そんな叫びと共に肉が潰れ、骨が砕ける音が響き覆いかぶさった海魔がグシャリと潰れる。バーサーカーは無傷、表情は変わらず微笑みで固まっている。もし海魔に感情があるのならば同情する。あんな相手をするにはかなりの労力が必要だろう。

 

「ヌゥン!!!」

 

 そんな事を考えていると目の前に海魔が襲いかかる。だが、それも一息に抜き放った剣に両断される。

 

(予想より手応えが軽い……?)

 

 疑問は目の前で起きた現象によって解決する。両断された海魔はその血と臓物を派手に跳び散らせる。だが、それだけに留まらず飛び散った血は泡立ち、新たな海魔を生みだす。

 

(これは……血を媒介にした召喚術か)

 

 だとするならば、長期戦はこちらが不利。無論、三日三晩戦っても疲れはしないが、マスターはそうもいかない。

 

「アーチャー!!!」

 

「分かっている!!」

 

 答えと共に音速を超えた矢が海魔を吹き飛ばす。アーチャーも海魔の厄介さに気付いたのだろう。矢の一撃は海魔の動きを一時とはいえ、止めさせる。

 

「駆けろ、セイバー!!!」

 

 アーチャーの言葉を背に走り出す。後ろは振り返らず、意識を前へ向ける。

 

 

 

 

 

 

「おやおや、勇敢な方ですね」

 

「全くだ。自ら贄としてやってくるとは殊勝な者達よ」

 

開けた場所に来ると同時に聞こえた声。その方向には二つの人影がある。

 一人はカエルめいた異相をした長身の男性。眼を細め、笑みを浮かべたその顔は何も知らぬ人間には聖人の様に優しく移るだろう。だが、アレはバーサーカーの笑みとはまた別のベクトルの『危険』な笑みだ。そして彼の持つ禍々しい本から溢れる魔力は十中八九、海魔を召喚している宝具だろう。

 

(ならば、あのサーヴァントを倒すのが良策だが……)

 

 視線をもう一つの影に映す。

 血の付いた黒い鎧にボロボロのマントを棚引かせた男。手に携えるは突き刺す為の槍ではなく、引き抜く際に苦痛を与え、傷を広げる為の槍。海魔を召喚する男と同様。否、それ以上の狂気を感じさせるその眼光は侮って掛かる訳にはいかない。

 

「さぁ!!どうする。寡黙な騎士よ。何故、動かぬ?」

 

 槍のサーヴァント。恐らく、否間違いなくランサーは無造作に一歩前に出る。奢りか、慢心か。いや、真実目の前のランサーは何も考えてはいないだろう。

 

(此処で時間を浪費すれば、それだけ我等が不利になる……か)

 

 思考は一瞬、決断は刹那。鞘に収めた大剣『バルムンク』を抜き、構える。その動きにランサーは感極まったかの如く獰猛な笑みを浮かべる。

 

「そうだ!!!そうでなくてはな、侵略者よ!!!さぁ、我が槍をその身に受け、哀れな屍を晒すか。それとも――」

 

 言葉を遮るかのように強く一歩前へ踏みだす。遮られる形になったランサーは槍を構える。

一瞬の貯めと共にランサー目掛け大剣を振り下ろす。

 

「ヌゥオッ!?」

 

 驚愕交じりに槍で受け流すランサー。

 

(休ませるつもりは……ない!!)

 

 更に深く踏み込み、肩でランサーの胸部にぶつかる。

 

「ぬっ!?」

 

 ランサーの表情が変わる。そして下から掬い上げる様に大剣を振り上げる。

 

「舐ァめるなァァ!!!!」

 

 叫びと共に槍を回し、丸太の様な一撃が肩に入る。

 

「ぐ……」

 

 如何に宝具によってダメージを無効、軽減されようとも衝撃は無効化できない。僅かにズレタ一撃は致命傷に至らず、僅かなダメージとなってランサーに与えるに至った。

 

「く!!ふはははは!!!!!成る程!!!面白いな侵略者よ!!!嗚呼、これほどの猛者を相手に出来るとは!!!この闘争には感謝せねばな!!!!」

 

 歓喜の叫びと共にランサーが地面を砕く一歩と共に刺突を繰り出す。その突きを大剣で受け流す。前へ出ようとするも、槍を杖の様に操り、間合いを詰める事が出来ない。

 

(見事。狂気に支配されて尚、これほどの武勇)

 

 本音を語るならば、今ここで思う存分、武を競いたい。だが、ランサーの背後で笑みを浮かべる男の存在がソレを許さない。

 

(かといって、この男に背中を見せるのは危険)

 

 ソレは自分の弱点が露出すると同時に己のプライド故だろうか。

 

「ハハハハハハハハ!!!!!!」

 

 狂気しか感じさせない歓喜の哄笑は背後の海魔の群れから轟き、次いで海魔を吹き飛ばしながら現れる。

 

「バーサーカー……」

 

 視線を向ければ、身体のあちこちに裂傷と噛みついた海魔を引き摺りながらバーサーカーがやってきた。どうやらあの群れを相手にしながらやってきたらしい。

 

「おぉ!!!おぉお!!!!いたぞ!!そこにいる!!!我が敵!!我らが敵の圧制者がそこにいるぞ!!!!」

 

 その叫びを聞いたランサーが憤怒の表情でバーサーカーを見据える。

 

「おのれ!!!!叛逆者め!!!性懲りもなく!!!」

 

「さあ、圧制者よ。傲慢が潰え、強者の驕りが蹴散らされる刻が来たぞ!!!!」

 

 片や怨嗟と怒りの叫びを。片や歓喜と興奮の叫びを上げ、狂った槍兵と狂戦士がぶつかる。

 

「……礼を言う」

 

 最早、聞こえていないであろうバーサーカーに短く告げ、走り出す。見据える先には怒りに顔を歪ませる男。

 

「おのれェェェ!!!卑しき者共めが!!!」

 

 そんな叫びと共に海魔が襲いかかる。だが、ランサーに比べればこの程度は赤子同然。苦もなく切り裂き、踏み砕き。そして見据える男の顔面を殴り飛ばす。

 

「がばぁっ!?」

 

 そのまま吹き飛び、地面に叩きつけられる瞬間、男は粒子となって消え去る。どうやらマスターが外からサーヴァントを帰還させたようだ。

 

「ぬぅ!?逃げるか圧制者!!!!!」

 

 背後を見れば、同じように消えたランサーを憤怒の形相で睨むバーサーカーがいた。

 

(あの男も微笑み以外の表情はつくれるのだな)

 

 そんな感想を抱きながら視線を巡らせればアリーナを埋め尽くしていた海魔達が次々と血にかえっていく。

 

「だ、大丈夫。セイバー?」

 

「それは俺の台詞でもあるが、問題はない」

 

 少しだけ顔色が悪くなっているマスターを気遣いながらもそう答えると彼女は安心した様に笑みを浮かべる。

 

(全く、我がマスターは優しすぎるな)

 

 戦士としては欠点であるものの、人としては美点だ。

 

「それで?サーヴァントの方は?」

 

 追い付いてきたアーチャーに聞かれた問いに黙って首を横に振る。

 

「そうか。あの軍団は厄介故、早めに敗退させたかったのだがな」

 

「まぁ、相手も愚かでは無かった、という事は分かりましたし。今回はそれでよしとしましょう」

 

 その言葉に頷くと回復したのか、少しは顔色が良くなったマスターが声を上げる。

 

「そういえば、このアリーナって奥に何かあるのかな?」

 

『消費アイテムやこの月の内部で通用する通貨が入った宝箱がある。他にも確認出来るだけではアリーナはその道から更に奥まで広がっているようだ。とはいえ、初日でそこまで深入りする必要はないだろう。サーヴァント反応は無くなったので付近の探索のみ行って帰ってこい』

 

 マスターの問いに答えたのは生徒会室で此方をモニターしていたラッセの声だ。

 

「こっちで使える通貨ってどんなだっけ?」

 

「確か、此方で通用するデータ状の通貨ですわね。エネミーを倒せば得られる筈でしたが」

 

 そう答えたシルヴィアが端末を見る。

 

「他にも事前に持ち込めることが出来ます。私も一応、申し訳程度ですが両替していますし」

 

 そういって、端末を見たマスターが固まる。どうやら貴族の常識に思考が止まった様だ。

 

「マスター、これからどうする?アリーナにいるエネミーならば問題はないが」

 

「え?あ、うん。そうだね。少しだけ探索しようか」

 

 そういって、歩き出すマスターの背中を見ながら苦笑してしまう。

 

(面白いマスターだ)

 

 

 

 

 

 

「うぅ~、疲れた~」

 

 アリーナから生徒会室に戻るなり、私は机にだらしなく突っ伏す。

 

「大丈夫ですか?」

 

 アル君が心配そうに近づく。

 

「大丈夫ですわ。ただ、初日だというのに、体力のペース配分をせずにアリーナを探索した彼女の自業自得ですから」

 

「返す言葉も御座いません……」

 

 私の返答にシルヴィアさんはクスリと笑う。

 

「と、取り敢えずお茶にしましょう。えぇっと……」

 

 そういって、いそいそと人数分のお茶を用意する姿が有難い。

 

「待て、その茶はとっておきだ。その横にある蒼いのにしろ」

 

 ラッセ君がその作業を横から指示している。一緒にやってあげないのは面倒臭いだけなのかな?

 

「はい、出来ました。味は……えっと、そんなに美味しくないと思います」

 

「うぅん、文句なんてないよ。有難う」

 

 そういうと、照れたのかラッセ君は顔を赤くして笑みを作る。

 

「さて、それでは情報整理といきましょうか」

 

 お茶を飲んで一息入れた後、シルヴィアさんが声を上げる。彼女は生徒会室のホワイトボードの前に移動する。

 

「先ず相手チームのサーヴァントからですわね」

 

 そういうと、ラッセ君が立体型のキーボードを操作する。すると、ホワイトボードにアリーナでセイバーが戦った二体のサーヴァントが映し出される。

 

「海魔を召喚しているのはこっちのカエル顔の男だろうな。恐らく、キャスターのクラスだろう」

 

「確かに宝具の性質上。キャスターが有力ですけど、断定は出来ないのでは?アーチャーやライダークラスは宝具の制限が緩いですし」

 

 ラッセ君の言葉にアル君が手を上げて意見を述べる。

 

「確かにその可能性も捨てきれないな。けど、仮にアーチャーやライダークラスだとしたらセイバーの拳を避けるか防御するか出来た筈だ」

 

 ユーリ君の言葉にアル君が確かに、と頷く。

 

「取り敢えず、コイツを仮にキャスターとして。問題は宝具だ。解析できた範囲ではキャスター自身は宝具発動を維持するための魔力消費が殆ど無い。つまりアレは単独で永久機関の役割を持った宝具という事になる。恐らく、宝具自体をどうにかするしかないだろうな。使い手を倒しても完全に消えるまで宝具の効果は残るだろうからな」

 

「それならランサーが適役ですね」

 

 自信満々に告げた言葉に皆が頷く。魔力で動いている以上、ランサーの宝具との相性は良い筈だ。

 

「それならキャスター相手にはランサーを中心として考えるとしよう。次にセイバーと戦った敵のランサーだが」

 

 そういって、ラッセ君は伸縮式の指示棒で黒いランサーを示す。

 

「セイバーとの戦闘方法を鑑みるに俺達のランサーとは逆の戦い方だな」

 

「逆って?」

 

 思わず口に出した言葉に答えたのはアル君だ。

 

「恐らくあのランサーは自ら打って出るのではなく。待ち構え、迎撃に徹するタイプではないかと」

 

 成る程、それなら確かにこっちのランサーとは戦い方が逆だ。

 

「まぁ、あのランサーが戦い方を偽っている可能性も捨てきれんが。まぁ、その時はその時だ。バーサーカーとはお互いに相性が良さそうなので、ランサーにはバーサーカーを当て、補佐をアサシンかライダーが請け負うのが妥当だな。残りのサーヴァントについては情報が全くない。まぁ、相手の方も今回の戦闘でそれなりに警戒はしているだろうから。キャスターは極力出さない様になるだろうな。下手をすれば決戦日まで姿を現さないサーヴァントもいるだろうが。そこは仕方がないだろう。こちらが挑発してやってくるほど間抜けでもあるまいし」

 

 そういって、言葉を区切ったラッセ君はお茶で口と喉を潤す。

 

「次に明日以降のアリーナだが、取り敢えずランサーだけは連れて行け。アルには決戦日までにユーリと仕事を頼んであるが、状況はどうだ?」

 

 声の先、表示枠を操作していたユーリは軽く伸びをしながら。

 

「取り敢えず問題はなさそうだ。唯、数がそこまで揃わねえな」

 

「代わりに質を良くしようとしているんですが。実際に作ってみないと分かりませんね」

 

 アル君の返答にラッセ君は頷く。

 

「情報も少ない今はあまり動かん方がいいだろう。まだ猶予もある事だしな。取り敢えず、今日は解散だ。明日の8:00に集合。寝坊するなよ?」

 

 そういって、今日の会議は解散となった。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、セイバー」

 

 個室に戻り、ソファーに寝転がって天井を見ながら私はセイバーに声を掛けた。彼は視線を窓の外から私に移す。

 

「セイバーはどうしてこの戦いに参加したの?」

 

 何となく、疑問に思った事柄。その問いに彼は暫し、黙った後。

 

「何のことはない。個人的な……そう、戦士としての欲だ」

 

「戦士としての欲……?」

 

 そんな事を言われても、戦士ではない私には分かりません。そんな意思を視線に込めて睨むと。セイバーは何処か困った様な表情を浮かべ、頬を掻く。

 

「……マスターは俺の伝承を知っているな?」

 

「うん、一応ね」

 

 そう答え、起き上がってソファーに座り直す。彼は視線を再び窓の外へと向けて語りだす。

 

「俺は不死身の肉体を手に入れた。誰に傷つけられることなく、誰にも負ける事が無かった。だがな、マスター。俺は……俺という戦士にとって、その恩恵は間違いなく『呪い』だったんだ」

 

 重く、吐き出す様に告げられるのは伝説における彼の華々しい活躍の裏にあった彼の感情。

 

「あの日から。死力を尽くし、命を削る程の戦いは無かった。どれほどの武勇を誇る戦士でも俺の前では雑兵と変わりがなかった。戦闘は作業へと変わってしまったんだ」

 

 だから、と彼は私に顔を向ける。

 

「俺が望むのは死力を尽くした戦いだけだ。聖杯に託す望みなんて無いんだ」

 

 そういって、彼は自嘲するように苦笑する。

 

「幻滅したか?如何に英雄と呼ばれ、讃えられた男は真実、血に飢えた獣と変わりがない」

 

 そういって、彼は話を終える。

 

「……幻滅はしないよ」

 

 私の言葉にセイバーは静かに私を見る。うん、幻滅なんてしない。

 

「だって、個人の欲望で動くのは人として当たり前だもん。逆にもっと崇高な感じの願いを出された方が驚くかも」

 

 ベクトルが普通の人間より違うだけでセイバーの願いはそんなに間違った物じゃない。逆に欲望に忠実、という点で凄いと思う。

 

「私だって似たような物だよ。私も自分の為に動いているし」

 

「ほう、それは興味があるな」

 

 笑みを浮かべた彼に私は悪戯っぽく笑う。

 

「教えません♪」

 

「む、それでは不公平だ。マスター」

 

 確かに不公平だ。けれど、これは黙っておきたい。何故なら。

 

「こんなに早く話したら面白くないでしょ?もっと先、取り敢えず三回戦位まで勝ち上がってからかな」

 

 ちょっとセイバーを困らせようと思って告げた言葉に彼は笑みを浮かべる。

 

「三回戦か。いいだろう、その時になったら話してもらうぞ?」

 




第二話投稿です。そして最初に申し訳ありません。前書きに書いたとおり、キャラ設定を削除して、一から書き直しました。考えてみれば月にいる以上、現実の魔術なんて殆ど使い道ありませんし。
我が儘な作者で申し訳ありません。
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