1年と少しほど潜伏してみた。場所は主に戦の少ない湯の国だ。
水の中だから安心だった。相当気合を入れないと見つからないだろう。ゼツには見つかる可能性も十分にあるけどね。
この間はただ黙って隠れるだけではなく、真剣に修行もしてみていた。
多く影分身を出し、ある者達は組手、ある者達は新術開発だ。
組手については、特に理由を教えずに相手の目を見ずに戦う方法を練習させた。写輪眼対策だ。尾獣の俺がいれば幻術にかかってもすぐに解けるかもしれないが、念のためだ。
忍術は、なんとなくの記憶を頼りに螺旋丸と尾獣玉をやらせた。が、すぐにできるようになった。リンは医療忍術が使えるように、チャクラコントロールが非常に上手であるようだ。いずれは忍術のエキスパートになるだろう。
食べ物はリンにサバイバルの知識があるからなんとかなった。主に魚とか木の実とかを食べた。野菜を黙ってくすねたりもした。
服はボロボロだが、変化の術を使えばごまかせる。と言っても、年頃の女の子だ。一度どこかの町に買い物に行かせようと思う。そろそろ戦争も終わったころだろうしね。もちろん変化の術で化けてだが。
お金は里を抜けた時に持ってきたものがまだ余っている。問題ない。
ところで、オビトとカカシは万華鏡写輪眼を手に入れたのだろうか。
リンは死んでいないが、死んだものだと錯覚した可能性はある。それでも万華鏡に変わるものなのだろうか。これはわりと大きな問題だ。
なぜなら、オビトは万華鏡が使えないと一気に弱体化するからだ。どころか、先の大戦で霧隠れの忍びにやられた可能性すらある。この辺はどうなのだろう。
『久しぶりの火の国だ。少しだけならハメを外してもいいかもね』
と、精神世界から話しかける。
「戦争は終わったみたいだしね。でも、まだ隠れないといけないのでしょう?」
『うん。あとはほんのちょっとでいいけどね』
リンの声がオビトに届き、九尾事件を未然に防ぐことができればだが。
そのためにはクシナの妊娠状態を把握しておく必要がある。
今回も、買い物だけではなく情報収集もしてみる。影分身で。
意図的に隠しているから難しいが、カカシがこぼしてくれるのは確かだろう。と言っても、やつは毎日墓参りしているし、いつあのセリフを暴露するかも分からない。あまり近づきすぎると勘付かれそうだし、注意が必要だ。
と言っても、正確な時期が分からなければ、適当に見計らって先にこちらから仕掛けるつもりだ。それでもさしたる問題は無いだろう。重要なのはオビトに届くかどうかだから。
ちなみにだが、国には不法侵入だ。川を伝った。
尾獣化すれば魚みたいな格好だし、人間サイズで深い位置を泳げばバレはしない。
『おっと、一人いいカモがいることを思い出したぞ』
「カモ?」
『うん。場所も分かる。そいつは温泉に張り付いているはずだ。行ってみよう』
「温泉か。そう言えば、久しぶりにゆっくりしたいな。入ってもいいの?」
『かまわない。むしろどんどんやっちゃって』
ちなみにだが、今までもリンの裸は見まくりである。
不意に手が胸や尻や股に当たったことも何度もある。五感を共有しているからふつうに興奮した。
が、この『どんどんやれ』はもちろん真面目な意味である。あの男を釣るためだ。
「はあああ、生き返るー」
リンはグッタリとして湯船に浸かっている。
俺は神経を研ぎ澄ませる。周りに警戒する。特に視線は感じない。影分身をいくつか回しているが、やつらからも返事は無い。
と言っても、そんなに簡単に見つかるものでもない。やつは達人なのだ。
実際にいない可能性だってあるしな。
「えっ」
「どうかしたの? って、ええっ」
しかしここで、別の女性が声を上げ始めた。
怪しい人間を見つけたのだろうか。
『リン』
「うん」
俺の呼び掛けに応じてリンが顔を上げる。
「あっ」
とリンが驚いて声を漏らす。
俺も漏らしたい気分だ。
「リン……」
「まさか」
そこには見知った人間が2人いた。
シズネと紅だと思う。若いから少し印象が違うが。
『おいリン。お前、変化の術が解けてるじゃねえか』
と、焦ってももう遅い。
完全にバレてしまった。