『しょうがない。作戦変更だ。素直に隠れていた理由を話すんだ』
『私もそれがいいと思う』
と精神世界で語り合ったところで、再び目の前に意識を向ける。
驚愕。その言葉がぴったりな2人。目を見開き、口も小さく開いたままで固まっている。
「あなた、リン、よね」
「どうして……」
ゆっくりと口を動かし始める2人。
リンは苦笑いで応える。
「実は……」
そして、こうなった理由を語っていく。
自分の中に三尾という尾獣がいること。そいつが言うには、自分は霧隠れに何かを施されていること。もしかしたら操られる類で、木の葉にキバを向けてしまうかもしれないこと。
だから、今後は死んだふりをして隠れて過ごすしかないこと。
「何それ。本当に、そんな理由で」
「リンさん。みんな悲しんでいたのですよ。ミナトさんやカカシくんなんて特に」
紅はどこか怒りを含んだ表情に、シズネは誰かに同情するかのような表情になる。
「ごめんなさい」
リンは決まりの悪そうに謝る。
紅とシズネも決まりの悪そうにリンの方をジッと見ている。
「しかし、ともかく、リンさんが無事でよかったです。私はうれしいです」
と、ここでシズネが急に明るくなって言った。
「まあそれは、私もうれしいけどね」
紅も少しだけ表情をゆるめる。
「そうだ。綱手さんに頼んでみましょう。リンさんによくしてもらうようにと」
「ミナトさんにも言っておくべきだわ。きっと味方してくれるから」
話も動き出す。
リンの生存を報告し、なおかつ木の葉の忍びとして迎え入れたいようだ。
とは言え、基本的に里抜けは重罪。それは彼女達も分かっているだろう。ミナトと綱手の権力だけでどうにかできるのだろうか。いや、できそうな気もするけどね。厄介そうなダンゾウも、なんだかんだ人柱力は手元に置いておきたいだろうし。
だが、少しだけ待ってほしい。霧隠れの脅威が残っている今、まだ生きていることは秘密にしておきたいのだ。
再び味方となったオビトに危険を排除してもらい、そこで初めて堂々と木の葉に戻りたいのだ。
『まあでも、言わなくても分かってるよな』
『うん。彼女達ならきっと、裏で綱手さんや先生に報告してくれるはず』
彼女達は木の葉でもとてもやさしい部類だ。
うまく対応してくれるだろう。
実際に、シズネと紅は裏でうまく打ち合わせをしてくれた。
まずシズネによって綱手との面会ができた。そこで素直に事情を話すと、ミナトに取り次ぐと約束してくれた。
そして今、やっとミナトと面会できている。綱手とリンとミナトの3人で。
「先生。勝手にいなくなってごめんなさい」
と、リンは涙ながらに頭を下げる。
申し訳なさに再開の喜びが合わさったような涙だ。
「いや、リンは悪くない。事情は聞いた。後は僕が何とかするから安心していいよ」
ミナトはやさしく微笑む。
不満などは一切感じられない。
「先生、そんな」
「いいんだ。1人でさびしかったろう」
「うっ、うう」と泣き出すリンに、ミナトはそっと手を差し伸べる。
頭にポンと手を置いて、抱き寄せる。
リンがミナトの胸で泣く格好になる。リンはたぶん、師弟愛を超えた部分で惚れてしまうだろう。
この人なら信用できそうだ。
面倒だし、今まではリンにも秘密にしていたが、あれを言っちゃおうか。
『リン、変わってくれ』
『えっ』
と、驚いている間にも勝手に変わってみる。
「失礼、三尾です。リンさんに体を代わってもらいました」
「えっ」
「うん?」
ミナトの手からはたと力が抜ける。綱手がいぶかしげに首を傾ける。
「今まではリンにも秘密にしていたことですが、とても重要な話があります」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
「本当に三尾なのか?」
ミナトは手を離す。
俺は綱手に「本当に三尾です」と答える。
「どうやら、本当にリンではないようだね」
「チャクラの質が違うな」
信じてもらえたらしいので、話を再開する。
「では、とても重要な話をしたいと思います。実は、うちはオビトは生きているのです」
「えっ」
「ちょっと待て、なぜその名前が」
慌て始める2人。
が、すぐにおさまった。たぶんリンが生きていたから、オビトが生きている可能性もなくはないと思ったのだろう。
「落ち着いて聞いてください。オビトが今、どういう状態にあるかを説明します」
俺は語っていく。
オビトがうちはマダラに助けられたこと。柱間細胞を移植されたこと。
おそらく、リンを監視していたためにリンが死んだものだと思っていること。
リンの死に絶望し、世界を壊そうと考えていること。
「……信じられんな」
「しかし、作り話にしてはやけに細かい」
綱手は驚愕、ミナトは冷静に状況を判断中と言ったところ。
「きみはどうしてそんなことを知っているんだい?」
やはり聞かれるか。それは予想できていた。
が、説明が非常に難しい。ここが物語になっている世界があるだなんて、信じてもらえるだろうか。まあ、適当に答えるか。
「よく分からない輪廻の流れに巻き込まれまして、そこで知りました」
「輪廻の流れ?」
「はい」
転生か憑依かは分からないが、たぶんそういうやつだ。
憑依は輪廻とは違うかもしれないが、細かいことはどうだっていい。
「そうだ。信じてもらえるように、僕の知りえないあなた達の秘密を言っちゃいます」
NARUTOに書いてあったことを言ってみよう。
「わたしたちの秘密?」
「はい」
ミナトはクシナ関連でいいよね。
「そこのミナトさんは、雲隠れに連れ去られそうだったクシナさんを助けています。その時、クシナさんの赤い髪を目印に追いかけました。その後、赤髪が素敵だとか、きみを失いたくなかったとか説明しています」
俺はずばりと言ってしまう。
ミナトは「えっ、うっ、それは。事実だけど」なんて慌てている。
「綱手さんは、かつて自来也にまな板のような胸だと罵られていました。その度にケンカしていたはずです」
綱手の情報はちょっと弱いかな。
でも、ペンダント云々は暗い話だから、暴露するのもはばかられる。
「まあ、確かにそうだがな。昔の話だ」
と、大きな胸をバンと突き出して言う。
ミナトは「えっ」と少し驚いていた。この胸から貧乳は想像できまい。いや、子供は皆ぺったんこだが。
その後、なんとか可能性の1つとして認めてもらえた。
次は肝心の対策だ。
「今はどこにいるのか分かりませんが、クシナさんの出産時には必ず現れます。ですから、その時にでもリンをオビトに出会わせたいのです。説得できる自信はあります」
と、言いたいままに言ってみる。
「そう言われても、お前をクシナの出産に立ち会わせるわけにはいかんぞ」
「いや、綱手さん。待ってください」
難しい顔をする綱手に、ミナトが手を差し出して制する。
「三尾。まず、リンと話をさせてくれないか?」
「おいミナト」
少しおだやかになって言うミナト。綱手は慌てる。
これはたぶん、リンの返答次第では出産に立ち会わせてくれるという流れだろう。
「いいですよ。今変わります」
俺は作戦成功を確信し、にやりと笑った。
「リン、どこまで知っていたんだい?」
「あの、ほとんどは今知りました。あいつは何も言わなかったから」
「出産に立ち会いたいかい?」
「それは、はい。オビトがそんなことになっているのなら、私は止めに行きたいです」
「だからミナト、一旦落ち着けって」
「綱手さん、いいんです。彼女は僕の教え子です。教え子すら信用できないようなら、僕に里を治める権利はありません」
「だったら、オビトだって」
「はい。ですから、すでに僕には里を治める権利はないのかもしれませんね。どちらかを疑わざるをえないのですから」
なんて会話が聞こえてくる。
これはもう『理想のシナリオ通りに進む』と決まったようなものだ。