結局、俺達はクシナの出産に立ち会わせてもらえるようになった。
そこで待ち構え、一気にオビトを落とす。元々落ちているが。
しかし、うまくやらなくては逃げられる可能性がある。「俺にはもう、リンのそばにいる資格がない。クズになってしまったから」とか言って。
そうならないように確実に仕留めたい。
そこで思いついたのがあれだ。
「ハーレムの術?」
すばらしいあの術だ。
これでオビトを興奮させて立ち止まらせる。
「相手をメロメロにさせることができる。影分身の術と変化の術を合わせた高等忍術だ。もっとも、変化の術で変えるのは服だけでいい。やつはリンに心底惚れているからな」
「ふーん」
真面目に話しているからか、さして恥ずかしがらない。
が、ここからは汚い話も交ぜていく。
「スク水、セーラー服は鉄板だ。全裸も1人くらいはいてもいいかもな。ただし、裸には恥じらいが必要だ。恥ずかしそうにクネクネしながら胸と股を隠すんだ」
「えっ? あれ? 高等忍術って言ってたのに、そういうことなの?」
「いや、まだまだ足りない。股だけ破れたジーパンや、濡れて透けて見えるブラなんかも必要だ。ミニスカートもいいが、パンツが見えないように手で押さえるべきだな。もちろんシマシマのパンツだぞ。あとはナースとメイドと……」
と、意見を出しながら気が付いた。
やはりこういうものには恥じらいが大切だ。初々しさと言ってもいい。
あまり計画的にしない方がいい。その場その場の勢いが大事になってくるからだ。
と、説明してみる。
「よく分からないけど、頑張ってオビトを振り向かせればいいのね」
「まあ、そういうことだ」
それで話は終わった。
ちなみにだが、クシナの出産まではリンは綱手の付き人をすることになった。
綱手はガラが悪く、周りを詮索する人間があまりいないため安全ならしい。医療忍術も学べて一石二鳥というわけだ。もちろん姿は変化の術で変えながらだが。
そうして、とうとうその日がやってくる。
出産は里の外れにある大きめのテントの中で行われる。周りには厳重に結界も施している。
現在その中には、ミナトとクシナとリン、それに三代目火影の妻であるビワコと綱手がいる。綱手が呼ばれたのは戦闘になる可能性が高いからだ。一応難産対策としての医療忍術も買っているが、そこまでは期待していない。現在スランプ中だからだ。
それよりも、そろそろ時間だ。
「ううっ、ミナト」
「大丈夫だよ。僕はここにいる」
クシナは顔を歪めて「ひっ、ひっ、ふー。ひっ、ひっ、ふー」とやっている。
もうすぐ生まれる。オビトもそろそろやってくるだろう。
さあ、今こそ修行の成果を発揮する時だ。
「多重影分身の術」
部屋いっぱいにリンの影分身を用意する。
これでオビトがどこからやってきても、真っ先にリンと出会うことになる。
戸惑っている隙に捕まえてやる。
クシナはかまわずあえいでいる。
俺達は虫一匹すら見逃さぬように、集中して周りに意識を傾ける。
ふと、空間が少しゆらめくのが見えた。
「来た。変化の術」
多くのリンから煙が出る。恥ずかしい格好になる。
ふつうに忍者の格好をしているものもいるが、それでいい。そういうフェチの可能性もあるからだ。
そしてついに、そいつが現れる。
「オビト! 覚悟おおおお!」
リン達が突っ込んでいく。
オビトは前傾姿勢を作る。飛び込むような形だ。
が、そこでピタリと止まる。一歩も動かない。
固まっているオビトに対し、それなりに露出の多いリンが続々と飛び込んでいく。
そのままバーンと手を伸ばして、抱きつく。胸に顔をうずめる。
他のリンもペタリ、ペタリと体にくっついていく。
オビトは避けなかった。狙い通りだ。
「オビト、よかった。生きていて」
1人のリンが振るえる声で言う。
よく見ると、全てのリンが涙を流している。
ちなみにだが、俺は台本を用意していない。
説得は完全にリンに任せている。その方が違和感がなくていいと思ったからだ。
実際にそれなりの効果があったようだ。
オビトは動かない。固まっている。
「そうか。これは夢か。なるほど、最近は無限月読のことを考えたりもしていたしな。こういう夢を見るのもうなずける」
突然口を開いたかと思うと、見事な勘違いっぷりを披露してくれた。
多くのリンが「オビト、夢じゃないよ」「これからはまた一緒だよ」とやさしい声で言う。
しかしオビトは「やはり無限月詠はすばらしい術だ。それが再確認できただけでもよかった」なんて言っている。
その次の瞬間、リンの1人がオビトの面を殴る。
面が落ち、その顔が露わになる。
「オビト、ここは夢じゃない。ほら、痛かったでしょう?」
「いや、リン。無限月読は五感も再現できるんだ。それぐらい立派な仮想現実なのさ。ああそうか。なら、現実的なリンに対してこんなセリフを言うのも失礼だな」
「オビト、私の言葉を聞いてほしいの」
「うーん、もったいない。こんなにすばらしい夢なのに目覚めなくてはならない。この夢を現実にするために。現実を夢にする感じだけど」
そう言うと、オビトは急に表情をゆるめ始める。
「興奮すると目覚めると聞いたことがある。だから今は素直に楽しもう。リンに相手してもらって、楽しんで興奮してみよう。くっくっくっくっく」
笑いながら大きく両手を広げる。
全身でリンを味わっているかのようだ。
「オビト、まだ間に合うわ。一緒に木の葉を守りましょう」
「ふっふっふ。ああいいさ。ここは守るに値するすばらしい世界だからな」
まだ誤解している様子だ。
会話もかみ合わない。
「リン、大好きだーーーっ!!!」
そして、突然叫び出す。
目の前のリンに、思いっきり抱きついたりもする。
それから「好きだー、好きだー」と何度でも言う。笑顔全開で。
「オビト、私も好きだったのよ。男とは見ていなかったけど、あの時までは」
『え、そうだったの?』
思わず俺が聞き返してしまった。
いや、なんとなくそんな気もしていたが。
あの時ってのは、オビトが岩につぶされた『神無毘橋の戦い』のことだよね。
オビトはさらに興奮して「ええ! 本当に! よっしゃー!」なんて言っている。
見ていてちょっとおもしろい。俺も笑ってしまう。
「やっぱりここはすばらしい世界だ! よしリン、結婚しよう!」
欲望丸出しだ。
夢だと思っているから怖いもの無しなのだろう。
「それは、さすがに」
が、リンは少し引いてしまっている。
「ああそうか。現実らしい空間だから急すぎるのはダメだったな。よし、なら今からデートしよう」
「それは、どうなんだろう」
「場所はええっと、公園とか映画館とか山とか海とか。そうだな、全部回っちゃおう」
困った風なリンに対し、オビトは早口で語りかける。
すごく楽しそうだ。たぶん、言いたいことが言えて気持ちがいいのだろう。
しかし、デートか。
このままじゃ埒が明かないし、デートするのも手かもしれない。どうせリンは攻撃されないから安全だし。
『よしリン、デートしてやれ』
「ちょ、本当に?」
「大丈夫だ。リンが疲れたら俺が負ぶってどこへでも連れてってやる。俺、この間にすっごく強くなったんだぜ」
『大丈夫だ。オビトは夢心地だが、お前に危害を加える気はない。むしろこの間にたくさんいい思いをさせてやるんだ。この世界に希望が持てるようにな』
と、説明がオビトに重なってしまった。
「もう、うるさい。ごっちゃになってわけが分からない」
「ふっふっふ。まあそう言うな。俺はリンのためならなんだってできる。世界を作り変えることですらな」
『おいリン、落ち着け。俺への返事を声に出すな』
また重なってしまった。こいつ邪魔だ。
「あっ」
やっと気付いたか。『今後は気を付けろ』と言っておく。
「ふっふっふ。リン、キスしてやる。顔を近づけな」
と、何を思ったか、オビトがリンに唇を近づけ始める。
「ちょっ、待ってよ」
リンは両手で押しのける。
「ふっふっふ。この恥ずかしがり屋め」
と、なぜかオビトは笑みを強めた。