オビトは笑う。
少年のような顔で、思いっきり。
リンも笑う。シズネも紅も、アスマもガイも笑う。
「ねえあなた達、いつの間にそんな仲になったの?」
と、紅がにやりと笑って言う。
その視線はリンとオビトの中間にある。
リンもそこに視線を向ける。
自分の手とオビトの手がある。
「えっ」
と、気付いて手を離す。
「いいじゃねえか。俺達はもう恋人なんだから」
オビトが不満げに言う。
「えっ、なになに? どういうこと?」
紅がオビトに詰め寄っていく。
「なんだ。気になるな」「おお! 青春だ!」とか言って他の面々も寄ってくる。
オビトは「実は、リンは俺のことが」なんて得意げに語り始める。
「バカっ! 付き合うとは言ってないっ!」
が、そこでリンが怒ってしまった。
あまり人に見せびらかすのは好きではないらしい。
そう言えば、リンも相当追いつめられて初めてカカシに告白していた。オビトが言うように、そうとうな恥ずかしがり屋なのだろう。
「おいおいオビト。あんまりデリカシーのないことをやっていると嫌われるぞ」
「リンさんも、落ち着いて」
アスマとシズネが場を静めようとする。
が、オビトに話しかけるきっかけを失ったリンは動けない。
というより、ちらちらとカカシを見ている。オビトも好きらしいが、未だカカシも気になるらしい。それで余計にオビトを拒否しているのかもしれない。
オビトの方もそれに気が付いたようだ。
急に笑みが冷めていき、カカシとリンを見比べるようになった。
「そうだ。わたしたちはこれからご飯に行くつもりでしたが、お二人も一緒に来ませんか? つもる話はそこでしてみましょう」
そんな2人を見かねたのだろうか。
シズネはパンッと手を合わせると、明るい声で提案した。
「いいな、それ」
「こんな場所でしゃべるのもなんだしね」
「一楽でいいよな」
「ミナト班でよく行っていたしね」
と、2人を差し置いて勝手に決まっていく。
当の2人もまんざらでもないらしい。その店の名を聞いた瞬間、ちょっとほほがゆるんだ。
「というか、復帰の申請とかそういうのはいいのか?」
「一応ミナトさんとヒルゼン様への説明は済んでいます」
「なら大丈夫か」
と、里抜けの問題も勝手に納得する。
さて、一楽にやってきたリンたちは楽しい席順で座ることになる。
リンを挟んで、その両隣にオビトとカカシだ。
確かに、かつての班員同士で仲良くしたくはあるだろう。だが、あまり居心地のいいものでもないだろう。そういう恋愛事情があるからだ。
「ひゃっほーーっう! うちはオビト、歌いまーーーっす!」
オビトはかまわずに歌い出したが。
ラーメンがおいしく、テンションが上がったらしい。リンの隣だとか夢だから楽しまないと損だとか、そういうのも彼を興奮させていると思う。
「ははは」
と、不意にリンも笑い出す。
手拍子も始める。
「いいぞー、オビトー!」
と、周りもオビトを盛り上げる。
歌はうまくはないが、酷評されたりはしない。再会の喜びで細かいことは気にならないのだろう。
「ほら、カカシも一緒に」
と、ここで初めてリンがカカシに話しかけた。
それも笑顔で、手拍子をしながら。
「うっ、あ、ああ」
と、カカシも動き出す。
いい加減に手をパンパンと叩く。
それを確認し、リンはもう一度にこりと笑った。
正直な話、もう平気な気がする。
それでも危ないのは、次の日の寝起きくらいだろうか。一応リンに注意は促しておくが、断られるかもしれない。「寝室には行きたくない」とか「平気そうだから気にしなくていい」とか言って。
まあその場合は、無理矢理体を乗っ取ってやるまでだが。
さらに、この日はみんなで旅館に行って、そこで寝泊りすることになった。
男女別々に寝るために、オビトの寝室をチェックすればリンの尊厳が失われてしまうかもしれない。
しかし、それでもしなくてはいけないのだ。念のために。しょうがないから、影分身に変化の術もつけて監視してやるが。
オビトが温泉に行きたいと言うので、いい温泉のある旅館に泊まることにした。
森や川や岩やの景色がきれいで、日本風の赴きのある温泉だった。
俺もリンと五感を共有して、一緒にゆっくりした。もちろん興奮もした。若い子は肌がもちもちでいいなと思った。
「あっ」
「よお」
風呂上がり。
ほてったリンが1人庭で涼んでいると、ちょうどオビトがやってきた。
いいタイミングなので、ここでもう一度説明してもらうことにする。
ここが現実だとオビトに認識させるのだ。この世界を愛するようにと誘導しながら。
『リン、オビトに説明するんだ』
「オビト、この世界のことは好き?」
が、どうやら同じ考えだったようだ。
リンは返事もせずに語りかけ始めた。
「どうしたんだ急に? でも答えるなら、好きと言えるのかもな」
オビトは小さく笑う。しかしふと、真剣な顔になって「夢だし」とつぶやく。
それから眉をひそめて苦笑いする。
「ねえオビト。本当は気付いているんでしょう? ここが現実だって」
『えっ? そうだったの?』
思わず尋ねてしまった。
俺にも教えといてほしかったよ。
「リンがそう思うのもしょうがない。それくらい見事な術だからな。って、それも言うと失礼だな。ああ分かってる。ここが現実だってことはな」
オビトは「ははっ」と笑う。
本当に気付いているのだろうか。
「オビト!」
と、突然、リンが強い口調で名を呼ぶ。
そのままジッとオビトの目を見て、さらにがしっと両肩をつかむ。
「な、なんだよ。リン」
「ふざけないで! 私はちゃんとここにいるのよ!」
「あ、ああ。分かってる」
「オビト! 私の目を見なさい!」
「あ、ああ」
豹変したリンにオビトはたじろいでいる。
俺もちょっとビビっている。
「私はあなたのことをちゃんと見ている。あなたも私のことをちゃんと見てほしいの」
少しおだやかな口調になる。思いやりがにじみ出ている気がする。
オビトはたじろいだままだ。
いや、突然、フッと肩の力を抜いた。
「……ああ」
そして、真剣な表情になる。
ということは、マジで気付いていたのか?
「分かるでしょ。ここは夢じゃない」
「気付いてはいたさ。夢にしてはやけに頭がすっきりしているし、長いしな」
『マジかよ』
ツッコんでしまう。
「オビト。それを知って、これからあなたはどうするの?」
『って、おいリン。無理に答えを急ぐ必要は無いぞ。このままなあなあで行けば問題ないぞ』
と言うが、もう遅い。
「俺は……」
オビトは答えを出す気だ。