簪の奇妙な冒険 -宇宙翔け夢物語-   作:原作未読の魔改造フェチ(百合脳)

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原作を知らないって事はな……いくらでも原作クラッシュできるって事なんだよ……
キャラも物語も設定も全てが俺の思うがままよ……(暴論)


第0部【或いは星達の第6部】
更識家の日常


 『更識家』―――

 

 それは日本国に古くから存在する暗部の家系である。忍者の流れを汲むとも言われるこの一族の主な役割は、日本という国家に対して陰謀を企てる者達を未然に察知し、その企みを阻み、彼らを排除すること。要は「毒を以って毒を制す」の諺の如く、「暗部を以って暗部を制す」為の対暗部用暗部である。

 

 国家を守護し、無辜の民の流血を防ぐべく、日の当たる世界の裏側に身を潜め、血で血を洗う暗闘を続けてきた更識の一族。その長きに渡る経験と磨いてきた技術の集大成こそが、『更識流諜報術』である。

 敵対組織が如何に巧妙な偽装を施し地下に潜ろうとも、必ずその尻尾を掴み白日の下に曝け出す情報収集術や、敵対者を迅速且つ秘密裏に抹殺し、表に生きる人々を守り抜く隠密戦闘術、その他諸々の技術の組み合わせによって成る『更識流諜報術』の殆どは、更識の家に仕える諜報員達に須らく叩き込まれている。だがしかし、その真骨頂たる【秘伝】を受け継げるのは一つの時代にたった一人だけ。

 ―――そう、更識家の当主は代々『楯無』の名と共にこの『更識流諜報術』の【秘伝】を受け継いでいる。故にこそ『楯無』は一族最強であり、一族最強であるからこそ『更識楯無』なのである。而してそれは『楯無』以外の更識家の諜報員が無能であることを意味しない。『楯無』に率いられた『更識』こそが日本国の誇る最強の暗部なのだ。

 

 現に、遡ること10年前。IS―――インフィニット・ストラトスと呼ばれる、既存の兵器を遥かに凌駕する性能を持つ"女性にしか起動できない"パワードスーツ―――が世に知られるようになった『白騎士事件』とそれに続く世界の混乱期。

 政情不安定となり、世界各国の諜報組織の格好の的として、様々な裏工作を受けたことで一度は国家として崩壊しかけた日本国。それが「女尊男卑」という偏りを孕んだにせよ、現在に至るまで独立国としての形を保っていられたのは、先代『楯無』率いる更識家の決して表沙汰になることの無い活躍があってこそだったのだ。

 

 

 ともあれ、更識家という一族、特に『楯無』と呼ばれる当主の特異性や実力の片鱗はご理解頂けたかと思う。その上で『当代の』更識家とそれを率いる17代目楯無の、現在の様子をご覧いただこう。

 

 

 

 

 

   ※   ※   ※

 

 

 

 

 

「妹は生命(いのち)なり!」

 

当主(オサ)!』 『当主(オサ)!』 『当主(オサ)!』

 

 

 ほらこんなもん。

 

 

 ……一応説明しておくと、壇上で自らの妹である「更識簪」を模した仮面を被り、「簪ちゃんLOVE」と書かれた扇子を振り回して踊っている彼女が当代の更識楯無。その周りで「簪ちゃん鉢巻」と「簪ちゃん団扇」を装備し我を忘れて熱狂してるのが更識家の幹部連中である。こんなでも諜報員としては有能だってんだから始末が悪い。仕事はキチンとこなす以上、下の者は個人の趣味嗜好に対して何も言えないのである。

 

 真っ暗な部屋の中、壇上をビビットなスポットライトが照らし、色取り取りのレーザーライトが飛び交い、ミラーボールまで吊り下がったこの場所は何処ぞのディスコでもクラブでもなく、更識本家の屋敷内に最近設けられた『簪ちゃん神殿(楯無命名)』……「簪ちゃんを愛する同志諸君が一同に会し想いを高め合う為の神聖なる殿堂(楯無談)」だそうである。日本語訳すると、シスコン極まった彼女が職権濫用して建てた妹萌え専用の大広間である。

 (やく)しても(わけ)が分からないって? それは貴方の萌えが足りないからです。お手元の「簪ちゃんの素晴らしさと尊さを伝道するパンフ」を読みながら私と一緒に世界の真理(妹萌え)を解き明かして逝きましょう……てな具合で更識家の幹部達を楯無直々に説得(洗脳でも可)していった結果がこの有様だ。無論、『更識流諜報術』の【秘伝】、その一端である人心掌握術をフルに活用した。碌なもんじゃねえな。

 

 

「お嬢様っ、緊急事態です!!」

 

 と、この馬鹿騒ぎの魔窟に飛び込んできた女性が一人。

 彼女の名は布仏虚。楯無付きの側近兼侍女であり、親友でもあり、更に楯無が洗の……説得するまでもなく『妹萌え』を心に刻んでいた魂の盟友(ソウルメイト)でもある。彼女と楯無は昔から互いの妹を自慢し合い語り合って萌え上がる仲だと言えばどんな人物かは察して頂けよう。………そこ以外は割りと真面目で仕事のできる女ではある。

 

 その彼女が血相変えて部屋に飛び込んで来たのだ、楯無とて何事かと気にかかる。とはいえ、楯無とて伊達に当主を、『楯無』をやってる訳ではない。焦りを隠し切れない様子の虚に対し、沈着冷静な態度でなだめるように言い聞かす。

 

「落ち着きなさい虚、『風林火山』の『山』のような動じない精神で落ち着いて報告なさい。私は更識最強の『楯無』、どんな事態が起ころうと一切の心配も焦燥も無用よ。一体何があったの?」

 

「『妹達』が、この集会を嗅ぎ付けましたっ」

 

「撤収! 撤収よ! 全員今すぐ持ち場を放棄! 何としてもあの子達が来る前に脱出するのよ! 私では事態の収拾は不可能! 全員今すぐに一目散に脱兎の如く逃げるのよォォーーー!!」

 

 その掌返しの速度たるや。

 一瞬で前言を撤回した楯無に従い、というか恐慌に駆られて蜘蛛の子を散らすように逃走する更識家の構成員達。それに続いて慌てて楯無も逃げ出そうと走り出すが、どうしたことか『何も無いところで躓いて』転んでしまった。そこに世界の終焉を告げるかのように響く、今一番聞きたくなかった声。

 

「……お姉ちゃん……こんな所で『何してる』のかな……?」

 

「ひっ……か、簪ちゃん!? ち、違うの! これはきっとそう、悪の秘密結社(亡国機業(ファントムタスク)とか)の陰謀で……!」

 

 見苦しい言い訳をしている間にも、冷たい微笑を顔に貼り付けた更識簪(愛しの妹)は一歩ずつ歩み寄ってくる。対して楯無の方はというと、必死に逃げ出そうとしても何故だか『足がその場に固定されたかのように動かせない』。楯無にはもう何がなんだか分からなかった。一つ確かに分かっていることは、自分がもう詰んでいる、ということだけだった。

 

「さあ、お姉ちゃん……覚悟はいい?」

 

「……お、お手柔らかに…………ぐふっ!?」

 

 妹からの全力の平手打ちというお仕置き(ごほうび)をもらい、意識が暗転していく中で密かに思う。

 

(簪ちゃん、『あの日』から随分とアグレッシブになった気がするわね……『あの目』の事といい、一体何があったのかしら? 何が簪ちゃんを変えたのかしら……)

 

 しかしまぁ、『あの日』以前の、――自身が更識家の当主となって以来続いていた姉妹間のギクシャクした雰囲気が解消された、という意味では決して悪い変化ではないのだろう。

 そう結論付けたどこまでもシスコンな彼女が失神する直前、最後に瞳に映したのは、彼女に対して呆れを含んだ……しかしどこか温かい表情で楽しげに苦笑する愛しの妹の『()()()()』と『()()()()』であった。

 

 

 以上が「妹萌えで暴走した楯無が簪に制裁を受ける顛末」、つまり更識家の日常的風景である。日常なのである。

 

 

 

 

「……お嬢様、貴女の犠牲は決して忘れません……」

 

「……お姉ちゃん、ひょっとして『自分は関係無い』とか思ってないかな~?」

 

「ひぇっ!? 本音!?」

 

 

 ―――日常、なのである。

 

 

 

   ※   ※   ※

 

 

 

 ―――その後。恙無くそれぞれの姉への制裁を終えた二人の妹は、簪の自室へと向かっていた。

 

「まったく、あの人たちはアレさえ無ければ『自慢のお姉ちゃん』なのにね~」

 

「そう言わないであげなよ、お姉ちゃんにも虚さんにも息抜きは必要なんだし……少しくらいは大目に、ね?」

 

 部屋への廊下を歩く道すがら、ぷんすか、と口で言いながら頬を膨らませているのは虚の妹、布仏本音。長さが合っていないのか合わせていないのか、だぼだぼに余っている服の袖口が真っ赤に濡れているのはきっと気のせいだし、同様に赤い液体が付着した金属バットを携えているのも目の錯覚である。

 

 その隣を並んで歩きながら本音の呟きに応えたのが件の更識簪。楯無の妹であり、姉と同じく侍女として仕える本音のご主人様兼親友であり、何より先の集会(儀式)で崇め奉られていた張本人でもある。

 困ったような笑みを浮かべてはいるものの、本音ほど姉達の奇行に対し不満がある訳では無く、ある程度の理解を示している。楯無への制裁も、彼女に言わせれば姉妹間のコミュニケーションの一環だ。本気で憤っているというよりむしろ『仲良し姉妹の戯れ』なのである。……ツッコミを入れなければ際限無く暴走する、という事情もまた事実ではあるが。

 

「かんちゃんもかんちゃんで、そこまで寛容になれるのは流石としか……」

 

「そうかな? ……まぁ私もアニメとかマンガとか『全身全霊で愛せるモノ』はあるから、お姉ちゃん達の気持ちは分からなくも無いんだよね」

 

「……かんちゃんの趣味とお姉ちゃん達のアレは一緒にしていいモノなのかな?」

 

「一緒にしていいんだよ、本音。どっちも本質は一緒なんだから」

 

 可愛らしく小首を傾げる本音。その頬に返り血が付いていなければ、さぞ微笑ましい光景だったろう。

 そんな本音に向き直り、簪は真面目な顔で主張する。

 

「私はアニメやマンガが好き。特にコテコテのヒーローものは、必殺技を叫んだり変形合体だったりドリルだったり、『浪漫(ロマン)』に満ち溢れてるから大好物……ってのは本音も知ってるよね?」

 

「うんまぁ、ドリルってのはよく分からないけどロマンってのは何となく分かるよ。……どちらかって言うと『男の子のロマン』って気はするけど」

 

「ロマンに男も女も無いんだよ……ってのは置いといて。お姉ちゃん達の、所謂『妹萌え』っていうのも、『ロマン』の一つの形なんだと私は思ってる」

 

「えー……『妹萌え』ってロマンの一種に分類されちゃうのー……?」

 

「いいじゃない、『妹萌え』と書いて『ロマン』と読む。妹萌え(ロマン)。そもそも、人間には一人ひとり『自分だけのロマン』があるんだよ? ……っと、到着」

 

 会話を続けながら歩き続けるうち、簪の自室の前に辿り着く。部屋のドアノブに手を掛けた簪は首で振り返り、意味深な笑みを浮かべて本音に告げる。

 

「私には私の『趣味(ロマン)』があるし、お姉ちゃん達にはお姉ちゃん達の『妹萌え(ロマン)』がある。人それぞれの『情熱(ロマン)』を否定する事は誰にも出来ないの……人間は、自分自身の『物語(ロマン)』を追い求める生き物なんだから」

 

 簪の持つ紫と青のオッドアイが本音を真っ直ぐに射抜く。互いの視線がぶつかりあったのは数秒にも満たない間であったが、その瞬間確かに本音は簪の纏った『凄み』に圧倒されていた。齢16にも満たぬ少女から感じられるその『凄み』は、まるで幾つもの死線を潜り抜けてきた歴戦の勇士のような貫禄があった。

 

 

「……ま、さしあたって本音も本音自身のロマンを見つけるために。これから私のコレクションの鑑賞会と洒落込もっか! 私のロマンをみっちり教え込んであげるからね?」

 

「…………えっ? ええええっ!? ちょ、待ってよかんちゃん! 今日は来週のIS学園入学に向けて荷造りするんじゃなかったの~!?」

 

 纏っていた雰囲気を一瞬で霧散させると、簪はさっさと部屋に入っていってしまう。一拍置いて我に返った本音は、簪の宣言に慌ててツッコミを入れて後を追うが、その間にもアニメだか特撮だかのディスクがいそいそと準備されていく。どうやら簪の頭の中では既に荷造りの事など忘却の彼方の様子。

 

 やれやれと溜息を吐きながら、しかし本音は思うのだ。

 ―――人それぞれにロマンがあるというのなら。この何事も無い平穏な時間こそが、私の愛する『日常(ロマン)』なのだろうな、と。

 

 

 

 

 かくして日常は過ぎていき。

 運命のIS学園入学の日は近付いてくる………訳だが。

 

 

 

 

 物語の舞台をIS学園に移す前に一つだけ、語っておかねばならない因縁(ロマン)がある。

 それは楯無が疑問に抱いていた、『あの日』の更識簪に起こった出来事であり、彼女に『変化』を齎した原因。

 別に彼女が何かを成し得た訳ではない。が、彼女自身の『変化』――『成長』の為に必要だった過程。

 ある一族に纏わる数奇な運命の『収束点』であったその一連の闘いは、彼女にとっては『出発点』となった泡沫の夢。

 それは、彼女――更識簪が自分自身の物語を歩み出すまでの、『もう一つの物語』。

 

 

 

 

 故に、舞台は。

 『IS』――『インフィニット・ストラトス』の存在しない『並行世界』の2011年、アメリカ。

 

 

 ――――――『グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所』に移るッ!

 

 

 ……To Be Continued→




執筆前の俺「物語の導入部だしかんちゃんの魔改造部分だけ仄めかせれば後は軽く流していいかな(慢心)」

投稿前の俺「なんか知らない設定生えてきた……なんだよ『更識流諜報術』って俺の脳内プロットには無かったぞ(困惑)」

なお一番の被害者は虚さんの模様。やっぱりノリと勢いで書くもんじゃないね、あの人何時の間にシスコンになったんだろ(他人事)


(追記)
すっげー便利だわ『更識流諜報術』……よくこんな謎設定考えたな偉いぞ過去の俺
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