簪の奇妙な冒険 -宇宙翔け夢物語- 作:原作未読の魔改造フェチ(百合脳)
実際問題、去年中にはプロローグ終える心算で書き始めたんだが……ま、とはいえ、投稿開始から一年以内には余裕で間に合ったんだし、誤差だよ! 誤差!
(追記)
このクソ長いプロローグをたった一年で書いたのか……なかなかやるなお前(遅筆の極み)
(何が……起きたの…………?)
……一瞬、気を失いかけたらしい。気付けば、尋常ならざる速度で寄せては返す海の波間に浮かんでいた。意識は朦朧として、身体は動かない。腹にパックリ開いた傷口から血液がだくだくと流れ出しているのは分かるが、感覚が麻痺しているのか痛みは余り感じない。
(たしか……そうだ、プッチ神父の……進化したスタンド……『メイド・イン・ヘブン』の……『時を加速する』能力が……)
―――簪達が徐倫一行と合流し、神父を完全に追い詰めたかと思われた時。あろう事か、プッチ神父は偶然に助けられ(まるで運命全てが神父に味方しているかのように)DIOの預言を達成し、『天国』へ到達するためのスタンドである『メイド・イン・ヘブン』を手に入れてしまった。
全世界、いや全宇宙の『時間』が加速し始め、プッチ神父以外の全人類はその時の流れに取り残される。文字通りの誇張抜きで『目にも留まらぬ』彼とスタンドの速度に翻弄されながらもどうにか海へ逃れ、昼と夜が目紛るしく変わる中、アナスイの捨て身の策により反撃に出る事となった。
即ち、アナスイのスタンド『ダイバー・ダウン』の
その唯一の勝機に賭け、簪達は神父が仕掛けてくるのを待った。そして。
(……そして……よく分からないけど、多分……承太郎さんが時を止めて……ああ、神父が言ったんだ……『二手遅れた』って……『娘がお前の弱点だ』って……)
……停止した時間の中で一体どんな攻防が繰り広げられたのか、簪には分からない。だが神父の言葉から察するに、きっと承太郎さんは娘を―――徐倫を盾に取られた事で攻撃が遅れ、その拳は神父に届かなかったのだろう。結果、決着は着かないまま時は動き出し、皆は……
(……そうだった……私達は……
何とか首を動かして周囲を見れば、死屍累々。アナスイが、エルメェスが、そして空条承太郎が。皆倒れ伏し、海に漂っていた。時の加速により、生きている人間はともかく、死んだ人間の遺体は即座に腐敗する。見る間に腐り落ちていく皆の姿を見れば、全員が事切れているのは明白だった。
それでも一応、全滅という訳では無い。簪はまだ命を繋いでいるし、徐倫は同じ様に血を流して波に揺られているものの、体が腐る様子が無いので多分息はあるのだろう。
そしてもう少し遠くに目を向ければ、一人無傷のエンポリオ少年。とはいえ、彼もまた無事に済みそうにはない。少年が震えながらも銃を向ける先には、余裕の表れか自身の加速を緩め姿を現し、冷淡な表情で一歩ずつ歩み寄っていくエンリコ・プッチ神父が見えた。
助けなきゃ、と頭では思うのに、体は鉛のように重い。腕や脚どころか、指の一本も動かせるかどうか。ならばと簪は、掠れた声で自らの半身である二人に呼びかける。
「……『アナザー……ロマン』……どこ……?」
『御主人様……オルタンスは……ここに』
「……ヴィオレット、は……?」
『…………』
簪の生命の限界を示唆するのか、現在進行形で崩壊していく
「……そう……道理で、体半分が……
……この時点で簪は、既に半分死に体だった。スタンドへのダメージは本体へ返る。ヴィオレットが『破壊』された事により、彼女の右半身は完全に機能を停止していた。単に手足が動かないというだけでなく、目も見えなければ音も聞こえない、完全なる『右半身不随』。大ダメージではあるが、『アナザーロマン』が群体型スタンドの性質も備えていた事が幸いし、オルタンスが無事だった為にもう半分は辛うじて生きていた。
とはいえ、それも時間の問題らしい。オルタンスは軽傷で済んだものの、本体はそうではなかったのだ。自らの脇腹に開いた裂傷を押さえつつも、簪はそれが致命傷である事を自覚していた。今は
それは確信だった。もはや抗いようも無い事実として、これから
(―――でも、
私は、これから死ぬのだろう。―――だから何だというのか。確かに未練はある。特に、仲違いしてそのままになってしまう姉の事を考えると死んでも死にきれない思いだ。
だが今は感傷に浸るべき時ではない。何故なら、まだ息があるからだ。まだ
(……それに……)
ついと視線を向けたのは、目に見える速度で腐り行く兄貴分―――エルメェスの亡骸。その体に残っていたのは人間一人を殺すにしてはオーバーキル気味な、致命傷の度を越して不自然なほど過剰な傷跡。他の仲間の遺骸と比べても明らかだ、余分に攻撃を受けたとしか思えない……
そんな彼女が、簪のすぐ傍に、寄り添うようにして事切れていた。そこから導き出せる答えは。
(……私は、
極限まで加速した時の中から訪れる、須臾にも満たぬ急撃の瞬間の出来事。考える暇などある訳が無い。脊髄反射的に、本当に無心で、ただ勝手に体が動いたのだろう。……詰まる所、自らを『兄貴』と呼び慕う少女の事を、なんだかんだ言って彼女もまた妹のように可愛がっていた。そういう事なのであった。
そうしてエルメェスは簪の盾となり、だから彼女はまだほんのちょっぴり『生きている』。
「……だから……私が、兄貴から託された……『希望』は……伝えなくちゃ、まだ戦っている……
※ ※ ※
そうして最後の気力を振り絞り、もはや動かぬ体の代わりに、自らの分身であり己自身でもあるオルタンスを操作する。ポケットからパチンコ玉を取り出しつつ、左目にリンクさせた彼女の視覚を通じて見たのは、近くを泳いでいたイルカに伸びて絡まった『糸』。徐倫のストーン・フリーだ。簪は即座にその思惑を悟る。
(『イルカ』……そうか、徐倫はイルカでエンポリオを逃がす気なんだ)
今の神父は地球上の何よりも速く動けるといっても過言では無い。泳ぐスピードだって、イルカなんかより断然速いに決まってる。だがいくら時を加速させた所で、神父が人間である事に変わりはない。息も続かないし、体力にも限度は有る。水に潜ったままいつまでも行動できない以上、最初に距離さえ稼げれば。
(……
思考する間にも事態は動き出した。神父によって追い詰められていたエンポリオにストーン・フリーの糸が巻きつけられ、イルカに牽かれる形で遠ざかっていく。対する神父は徐倫の策にも即座に気付いたのか、若干慌てながらも懐からナイフを取り出し、投擲の構えに入る。
イルカは神父から離れつつあるとはいえ、未だ射程圏内。
「
「!! キサマは更識簪! 即死のハズッ!?」
神父が再び時の加速の中に身を隠すより早く、オルタンスが放ったパチンコ玉が神父の手を撃ち貫く。頭部と心臓部を狙った弾こそ瀬戸際で避けられたものの、攻撃を中断させるという目的は達成できた。『
思わず取り落としたナイフは時間の加速の影響で瞬時に水底へ落着するが、そちらに気を取られる暇もない。振り返ったプッチ神父の目に映ったのは、同様にオルタンスの手で『射出』され猛然と己に迫る『簪自身』!
自らの体を砲弾として使った特攻は、正しく捨て身。ぶち当たれば神父諸共に自身も無事では済まないだろうが……元より後数分と持たぬ命、余さず使い切っても損は無い。そう考え、最期に残った生命力を全てスタンドパワーとして注ぎ込み、身の安全など考慮しない出せる限りの最高速で神父に体当たりを敢行したのだ。
……だが、それでも無限に加速する時には追い着けない。予想外の奇襲となった初弾こそ油断しきった神父に届いたものの、既に神父は加速を『完了』していた。残像すら残さずその姿が掻き消える直前、身を刺すような悪寒と殺気を感じた簪は、気配を感じた方向にオルタンスの拳を突き出す。視認など不可能だが、確かに
「それでも私はッ『
「邪魔だ小娘!」
すれ違った……のだろう。多分。簪が知覚出来ない速度で終わった刹那の交錯の後、彼女の五体は無残に切り刻まれ、飛び散る血潮が海を緋色に染めていた。今度こそ間違いなく即死だった。
※ ※ ※
―――来いッ! プッチ神父!
―――『ストーン・フリィィィーーーッ』
※ ※ ※
(…………えん、ぽりお……は…………)
意識が途絶える直前、雄叫びが響く。簪が最期に見た光景は、既に彼女の事など捨て置き遠方へ泳ぎ去るプッチ神父の高速移動の軌跡と……その神父の前にファイティングポーズを取って立ちはだかる、空条徐倫の勇姿。それだけだった。それだけしか見当たらなかった。
(…………よかった…………)
そう、視界に捉えられたのは
―――希望は、ちゃんと未来へと繋がったんだ……。
そんな風に安堵しながら、更識簪は自分自身の死を静かに受け入れたのであった。
※ ※ ※
―――暗い闇の中。上下左右も分からない、前後不覚で曖昧な場所。厳密には場所と呼ぶのもおかしいが、とにかくその空間は無限に、そして永遠に広がる暗黒だけだった。他には何も無い……己の身体さえ。ただ自我というか、意識だけがその場に漂っている……そんな感覚だ。
ここは、死後の世界か何かなのだろうか―――と、霞がかったように虚ろな思考のままぼんやり考えている内に、自分の……魂、とでも言うべきか、何にせよ自分という存在が、一方へ吸い寄せられるように『落ちていく』事に気付く。上も下も無い空間で『落ちる』とは奇妙な言い方だが、それが一番近い表現なのだ。
同時に意識はますます薄れていき、やがて永い微睡みへと誘われ―――
―――寝てはいけないよ。君はまだ
……意識を手放す直前、どこからか声が聞こえてきた。穏やかで爽やかな、それでいて力強い、理性と優しさが滲み出るような男性の声だ。未だ朦朧としながらも、その声に耳を傾ける。
※ ※ ※
―――先ずは謝らなきゃならない。無関係の君を、僕達の世界の過酷な運命に巻き込んでしまった事を……。許してくれとは言わない。けど、どうか僕の話を聞いて欲しい。それは、
―――君を『あの世界』に送り込んだのは『僕』だ。どうやら僕の
―――『魂の往来』は物理的な身体の移動を伴わない。ただ魂だけが時も場所も無関係に世界を越えて、辿り着いた先で『魂』に合わせて新たな身体が構築される。だから『あの世界』で命を落とした君も、『元の世界』では無事な体で生きている筈だよ……
―――……本来このチカラは、『死者の魂に対して』働くものなんだ。死んだ人間の魂が、他の世界で生者の体を得て『転生』する。その人選は完全にランダムで、僕の意志の及ぶ所では無かった……
―――その最初の一人は、『彼』だった。そして『彼』の魂に引かれる様にして、僕自身の肉体も『彼』が偶然転生した世界……『君の世界』へと渡ってしまったんだ。それ以来、僕の故郷だった『あの世界』と『君の世界』との繋がりができ、幾人かの死者が渡り、生き返った……
―――でも一番重大なのは、一人目の『彼』が
―――希望的観測で言えば、君達の世界にも『彼』に対抗するだけの力と心を持った人がいるかもしれない。或いは、『あの世界』から流れた"転生者"の中に『彼』と戦う意志を持つ者が現れるかもしれない。そう信じたい……
―――でもだからと言って、『彼』をそのまま野放しにはできない。自分自身の肉体に宿ったチカラが原因なら、その責任の一端は僕にもある。そうでなくても、僕には『彼』を止める義務がある。何かできないかと、我武者羅に精神の手を伸ばして、……たまたま海辺で佇んでいた君に、ほんの一瞬だけ手が届いたんだ……
―――迷っている暇は無かった。僕は残っていた魂の精神力を限界まで燃やし尽くして、君を『あの世界』へと送り出した。君に、『あの世界』で起こった出来事を知ってもらう為に。かつて『あの世界』の裏側で暗躍した、悍ましい『悪』の存在を知ってもらい、伝えてもらう為に……
―――まさか君が彼らのような『能力』に目覚めるとは、流石に予想外だったけど……それ以上に、君の精神の成長力には目を
―――だから、恥を忍んで君に頼ませてくれ……更識簪さん。生きている人々の世界にはもはや干渉できない僕に代わって、どうか、どうか『彼』を止めて欲しい。君達の世界の命運を、君達自身の勇気で切り拓いて欲しい。無責任な事を言ってる自覚はあるけど、それでもどうか……!
※ ※ ※
『―――――! ―――――!』
朧げな意識のまま、簪がその男性の声に答えるよりも、今言われた事を頭の中で噛み砕くよりも先に、今度は『上』の方から、別の声が聞こえてくる。女性の声……それも、よく聞き覚えがあるような……。
―――どうやら、
直後、闇に包まれていた空間に暖かな光が差し込む。その光が瞬く間に闇を祓い空間全体を満たすと同時に、声に引き揚げられるが如く一気に意識が浮上し、覚醒し―――
『簪ちゃん! お願い、目を覚まして簪ちゃん!』
※ ※ ※
「―――て……! 私が……私が悪かったから……だから、目を……開けてよぉ……」
……耳に入ってきたのは今まで聞いた事も無い程弱々しい、涙声の姉の懇願。
目覚めれば、波の打ち寄せる海岸で抱かれていた。少し離れた所には、実家を飛び出したあの日、『あっちの世界』に飛ばされる直前に立ち寄った堤防が見える。どうやら『戻ってきた』という事らしい。
始めはぼんやりと寝ぼけたような心地だったが、麻痺していた感覚が戻るにつれて現在の自分の状態を把握する。全身は海水でびしょ濡れだったが、神父に受けた多くの傷は跡形も無かったかのように……いや、夢で聞いた声が言っていた通り、『この世界』の自分の体はそもそも無傷だったのだろう。
服装もあの日あの時、渦潮に飲まれて世界を渡ったその瞬間に着ていたものと同じ。……そういえばあの声は『時も場所も無関係に世界を越える』とか何とか言っていた。時間の概念が関係無いとするなら、状況から推察するに、『この世界』では私が家出した後海に落っこちてから、それ程時間は経過していないようだ。
痛みや違和感も特には感じず、手足も問題なく動かせそうだ―――などと考えていたら、口元に違和感。唇に触れる柔らかな感触と温もり。僅かに開いた口の隙間から、生温かい空気が喉奥を通り肺へ向かって、極めて規則的なペースで送り込まれているのが分かる。目の前に迫った姉の顔から察するに、これは人工呼吸という奴だろう。
どうやらこの姉、相当錯乱しているようだ。私が意識を取り戻し、うっすらとだが目を開いて至近距離から彼女を見つめている事にもまだ気付いていないらしい。今にも泣き出しそうに、というか半分泣きじゃくりながら、必死で人工呼吸を施し続けている。
妹の事となると途端に冷静な判断力を失ってしまい、普段の余裕ぶった態度が何処かへ吹っ飛んで行ってしまう超が付く程シスコンな姉に抱いたのは、若干の呆れと……己の事をこんなにも大事に想ってくれる彼女への、無限大の愛しさと恋しさ。何だかんだで簪も、姉同様に超弩級のシスコンなのだ。その自覚も既に有る。故にもう色々辛抱堪らなかった彼女にとって、今こそが千載一遇の機であった。
「んっ……♪」
「っ!? か、かん……んんぅ……!」
何も知らずマウス・トゥ・マウスで息を吹き込み続ける楯無の口内に、
その後数分間、為す術無く妹にされるがままの楯無と、思うままに姉の味を確かめる簪。口内を余す所無く蹂躙し、激しくなる一方の熱い吐息を堪能し、口内に分泌される幸福の蜜を存分に交換し合い、漸く満足して口を離した頃には楯無は完全に蕩けきっていた。
「ん、ふふ……ごちそうさま。そして
「ぷはっ、ぁぁ……はっ!? か、簪ちゃん! 今のは一体っていうか私いまスゴイ事っていうか初めてっていうか……ああもうとにかく目が覚めたのねッ!! 生きてるのね無事だったのね簪ちゃわぁああああああんん!!!」
「わわっと、そんなに泣かないでお姉ちゃん……私は死んでないよ、……
まだ頭は混乱の極致にあるようだが、とりあえず妹の無事だけは確認できたので他の全ては思考の端に追いやったらしい楯無は、簪の存在を確かめるようにきつく抱き締めながら、ぼろぼろと涙を零して嗚咽している。
そんな姉の頭を穏やかな顔で優しく撫でて
……ちなみに、ホントは別の世界で一度死を経験した訳だが、只でさえキャラ崩壊レベルの大号泣を見せる姉上がショック死しかねないので敢えて黙秘しておく事にした。(なお信じてもらえない云々等とは微塵も考えていない。お姉ちゃんなら私を101%信じてくれるに決まってる、と簪は101%信じている)
※ ※ ※
「……あー、それと、……ごめんね、お姉ちゃん。家出なんてした事も、心配させちゃった事も……お姉ちゃんの事勝手に誤解して、一方的に嫌ってた事も、全部ごめんなさい」
「グスン、……え……? 簪ちゃん、ひょっとして私のあの失言の『意味』を……いえ、ううん、悪いのは私よ。言葉足らずで簪ちゃんの事傷付けて、その癖謝りに行く勇気も無くてぐずぐず引きずって……あなたが家出したのも海で溺れたのも、元はと言えば全て私の責任よ……簪ちゃんが謝る事なんて無いの、悪いのは全部私なのよ……本当に、本当にごめんなさい……!」
簪が今までの事を謝れば、即座に泣き止んで自らの非を悔いながら頭を下げる楯無。心の底からの後悔と自己嫌悪が滲むその謝罪を受けた簪は、敬愛する姉がこれ以上自責の念に駆られる事の無い様に、彼女の心を解放する為の
「でも、家出の事を知ってすぐに追っかけて来てくれたんでしょ? そして海に落ちた私にいち早く気付いて、いの一番に助けに来てくれた。それで十分だよ……お姉ちゃんの気持ちは、確かに私に『伝わった』。その上でお互い謝り合ったんだから、これで『仲直り』って事で。ね?」
「簪ちゃん……でも……私の言葉が今まで、あなたを苦しめてきた事は……!」
「もう、私は気にしないってのに……これ以上自分を責める言葉を吐くっていうなら、無理にでもそのお口を閉じちゃうよ? ―――こうやって」
「ちょ、んむっ……!?」
再び不意打ちのキス。簪への罪悪感で頭が一杯だったのか、二回目も避ける事は叶わなかった。そんな満杯の負の感情を解きほぐし昇華させていくかのように、優しく……しかし丁寧に、実の姉の口腔を舐り回す。そして楯無が余計な事を考えられなくなる程
「ぷはっ……え? 簪ちゃん、えっと、今の……っていうかさっきのも、あの……これ……?」
「えへへ……お姉ちゃん、大好きだよ♪」
「ふぁっ!? ちょ、簪ちゃんそれってどういうってこういう!? だ、ダメよ、そんなのだって私達は女の子同士はともかく家族でつまり姉妹でだからそんなの……」
「うん、姉妹だね。でも大好き。禁断の姉妹愛。ロマンだよね。
「へ? ろ、ろまん? 簪ちゃん何を言って……」
突如盛り上がり始める簪と、完全に話に付いて来れていない楯無である。
「お姉ちゃんだって私の事、好きでしょ? ……あー、つってもお姉ちゃん、肝心な部分で
「は、はい!? 告白って簪ちゃんホント待ってどうなってるの昨日までってか今朝まで私の事嫌悪っていうか憎悪してなかった!? あ、いえ論点はそこじゃなくて私達そのそんな関係はあばばばば……きゅう」
「あ、気絶しちゃった……色々衝撃的過ぎたかな?」
『御主人様のお姉様……なるほど、ヘタレです』
『御主人様が逞し過ぎる、とも言いますが』
「あ、オルタンスにヴィオレット、二人も無事……だったのは当然か、
なんかもー、カオスな空間が形成されていた。収拾がつきそうも無いので、
※ ※ ※
この世界では一日にも満たない、しかし簪にとっては久方ぶりの……家出の後、姉妹の仲が回復(というか進化、或いは深化)して、漸く帰る我が家への帰り道。
未だ目覚めぬ姉を背に負って歩きつつ、頭を
無論、運命だからといって"仕方が無かった"とは思いたく無いが……それでも、ただ諾々と運命に従った訳ではなく、皆と共に命の限り過酷な運命に抗い続けた。ならば最低限
―――まあ、実の所『あの世界』の未来についてはあまり心配してなかったりする。仲間として一緒に行動した簪は、エンポリオがとても賢い子である事を、強い子である事を知っている。自分達皆で彼に希望を託し、そして確かに繋がったのだ。ならばきっと、彼は成し遂げる。必ずや神父を討ち果たし、邪なる野望を打ち砕いてくれただろうと、信じる事ができた。
だから、私の物語は……あの奇妙な、しかし思い出の詰まった世界での
『御主人様?』
『考え事ですか?』
「……うん、今までの事と……
故に、これから始まるのは。
更識簪の、新たな……
「あの『声』は、この世界にも脅威が迫っているみたいな事を言ってたけど……何はともあれ」
―――即ち、
「ロマンに満ち溢れた下らなくも素晴らしいこの世界よ、私は帰ってきた! ……なんてね!」
簪の奇妙な冒険 ー
第0部【或いは
※ ※ ※
以下、その後の蛇足みたいな小話集。
※ ※ ※
1.
「簪ちゃんを連れ帰ってきたわよ」
「ただいまー」
「お帰りかんちゃん~……ってどうしたのその眼の色!?」
「カラーコンタクト……では無いようですが、お嬢様、これは?」
「……簪ちゃんその目は一体ッ!?」
『今気付いたんかい!?』
「……ちなみにかんちゃん、結局その目どうしたの~?」
「んー、オッドアイってロマンだよね!」
「なるほど、答えになってませんね」
(簪ちゃんの色違いの瞳……何だか綺麗ね……)
「お姉ちゃんの澄んだ瞳も十分綺麗だと思うけどなー」
「え、えっ!? もしかして私声に出て―――!?」
「ううん、出てなかったけど分かるよ、お姉ちゃんの事だもん」
「―――――!!?」
(お嬢様、顔真っ赤にして今にも火が出そうに……)
(っていうかかんちゃん、いつの間にお嬢さまと仲直り……寧ろ前以上?)
※ ※ ※
2.
「お嬢様、何ですかこの建築物は」
「よく聞いてくれたわね虚、これは『簪ちゃん神殿』! 簪ちゃんの可愛さと尊さとその他諸々を讃える為の聖なるモニュメントよ!」
「
「ちなみにあなたの大事な本音ちゃんの事を祀る為の聖廟でもあるわ」
「GJですお嬢様。この建物は世界遺産として末代まで伝え残しましょう」
「勿論よ! 愛する妹達のため、これからも頑張っていきましょう!!」
「はいッ! 喜んで付いて行きますわお嬢様!!」
『ふーん、ご苦労な事だね?』
「ひえぁッ!?」
「い、妹達よ何故ここにッ!?」
「いや敷地内に突然謎の建造物が現れたら見に行くでしょ普通」
「で、お姉ちゃん……何か言い残す事は?」
「待ってやめて二人ともコレは更識家当主としての正当な仕事であって―――」
「ちょっと本音そのバットを下ろしなさい下ろしてください金属はマズい―――」
『成敗!!』
『ぎゃふん!?』
「……まったく、このヘタレ姉はなんであらぬ方向に暴走するのか……この行動力の一割でも私に向けてくれれば、即座に応えてあげるのに。っていうか何でもするのに。何でも」
「か、かんちゃん……?」
※ ※ ※
3.
「か……簪お嬢様、その口に咥えてる物は……?」
「んー? 煙草。承太郎さんが学生時代に吸ってたのと同じ銘柄、こっちにもあったから」
「か、簪ちゃんが不良になっちまっただー!? (ジョータロー?)」
「何で訛るんですかお嬢様……(ジョータロー?)」
「っていうかかんちゃん、こないだパチンコ屋から出てこなかった? (ジョータロー?)」
「ああ、
「嗚呼、簪お嬢様がどんどん遠くへ行ってしまわれる……」
「うう、簪ちゃんが……不良に……ワイルドなやさぐれ簪ちゃん、……アリね」
「お嬢様っ!?」
「まあ今までの事考えるとグレたくなるのも分かるけどさ~、ほどほどにしときなよ~? これでお酒とかにまで手を出したら『トリプル役満』って感じだからね~」
「ははは」
「……え? かんちゃん何その乾いた棒読みの笑い……まさかかんちゃん」
「ははは」
「かんちゃん!? 手遅れなんだねかんちゃん! お酒の味覚えちゃったんだねかんちゃん!!」
「ははは」
「……協議の結果、とりあえずやさぐれ本音の魅力も発掘する事になったわ」
「とりあえずあなたの思う『不良少女』の演技してみなさい本音」
「死ねや糞姉貴(死ねや糞姉貴)」
「ああっイイわ! 最高にイイ! もっと私を蔑んで本音!! 養豚場の豚を見る様な目で!!」
「……それは何か違う気がするわよ虚」
「ははは(冷笑)」
※ ※ ※
4.
「……そろそろ教えてくれてもいいんじゃないの? あの日の真相」
「まだダメ」
「でもあの日以来、簪ちゃんはちょっと……いえ、かなり変わったじゃない(主にロマン方面に)。それにあなたの周りで時折起こるようになった不思議現象も……本当、何があったのよ」
「私にも暗部の仕事手伝わせてくれるなら教える、っていつも言ってるじゃん」
「……駄目よ。危険な仕事なの。貴女が無理して関わる必要なんて無いのよ」
「じゃあ私も教えてあげない」
「……分かったわ、今日は諦める」
『……よろしいのですか? 御主人様』
「……まあ、私も『巻き込みたくない』って気持ちは一緒だけどね。スタンドの事を喋るとなると、どうしても『こっち側』に関わっちゃうからさ……せめて、私にも暗部の仕事を回してくれる程度に頼ってくれるなら、互いに互いの分野をカバーしあえるんだけど。今のお姉ちゃんだと、私をとにかく危険から遠ざけようと空回りしちゃうだろうから」
『だからお姉様の心の準備ができるまで、秘密なのですね』
「うん。とはいえ、少しずつ私の覚悟も伝わってるとは思うし、近い内とは言わずともそう遠くない未来には何とかなると思うよ。まあ焦ってもいい事は無いし、じっくり時間をかけて―――」
「かんちゃんかんちゃん! ISを動かせる男の子が見つかったってニュースが―――」
「あっ一波乱ある奴だコレ。うち暗部だしお姉ちゃんIS学園の生徒会長だし絶対事件が起こる奴だコレ。……お姉ちゃんが考えを改めるのが先か、スタンド絡みの厄介事に巻き込まれるのが先か……何にしろじっくりしてる暇無いね、どーしよ(途方)」
「か、かんちゃん? 目が死んでるよ? どうしたのかんちゃん~!?」
『……ファイトです、御主人様』
※ ※ ※
―――かくして物語の舞台は運命の地、『IS学園』へッ!!
……To Be Continued→
楯無「あ……ありのまま今起こった事を話すわ! 『私は妹に嫌われていると思ったらいつのまにかキスと告白を受けていた』 な……何を言ってるか分かんないと思うけど私も何をされたのか分からなかった……催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてない、もっと素晴らしいものの片鱗を味わったわ……」
Answer:『楯無さんの与り知らぬ所でかんちゃんの好感度爆上げ作戦』(満了)
……好感度MAX状態からの再会直後、熱烈な
※ ※ ※
ちなみに今話を書く直前まで、簪さんが異世界転移した理由とか全く考えてませんでした。無説明のまま時間経過で読者が忘れるのを待とうかと。
けれども何か面白そうな設定思いついちゃったので後先考えずぶっ込みました。この設定が活きてくるのは第4部以降になると思われます。……失踪してなければ。そしてこの設定を忘却しなければ。
(追記)
忘れる所だったぜ。