簪の奇妙な冒険 -宇宙翔け夢物語-   作:原作未読の魔改造フェチ(百合脳)

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あれ何でだろう、まだ終わらない……
さっさと元の世界に戻して入学させたいのに……
ま、まぁルミルノ戦終わったら殆どすっ飛ばして最終神父戦まで大幅カットの予定だし多少はね?


『もう一つの物語』その2

 体中に鋭い痛みが走る。一つ一つは耐えられない程の苦痛ではないが、それが無数に、しかも絶え間なく続くとなれば話は別だ。ルミルノの目的が『生け捕り』である以上殺される事は無いだろうが、いずれは失血により気を失ってしまうだろう。いや、痛みに耐え切れずに気絶するのが先かもしれない。

 どちらにせよ、生け捕られた時点で彼女の言う『ホワイトスネイク』なる人物に引き渡され、『何か』される事には変わり無かった。「『DISC』を取り出す」と言うのが何の事なのか簪には分からなかったが、「その為に死なれるとマズイ」と言うからには「用が済んだら殺される」だろう事は充分に予想できた。

 いやいや、もっと穿った考え方をするならばルミルノの『生け捕り』という目的が真か偽か、簪に見抜く術は無いのだ。ひょっとすると彼女の気分次第でコロっと殺されるかも……。

 

(……発想がネガティブ過ぎるかな? でもこの状況だし、仕方ないよね……)

 

 そう、今のこの状況。自分の"ルームメイト"に襲われている、というだけならまだいい。いや良くは無いのだが、まだ理解の範疇だ。

 問題なのは、その方法。「風によって紙を操り、切断力を持たせたその紙で攻撃する」……『超能力』など信じてもいなかったが、目の前で実演されるどころか自身の身で味わってしまっては、「そういう物もあるのだ」と認めざるを得なかった。

 そんな人知を超えた力を使われた時点で、尋常の方法ではこの状況を覆せまい。ルミルノが言うには、自分にもこの『超能力』―――『スタンド』の才能があるらしいが、それが本当だとしても扱い方はおろかその糸口さえ掴めていないのなら意味は無い。要するに現状を打開できる可能性は皆無と言って良かった。

 

(……現状を打開する可能性、なんてある筈も無いのに。どうして私、『考えるのを止めない』んだろう?)

 

 全身を切り刻まれ痛みが思考を圧迫して尚、頭の片隅では冷静に状況を分析する自分が居る事に少し驚く。そして呆れもする。この状態で思考する事に、分析する事に何の意味があるというのだろう、と。

 ―――確かに、この最後に残った思惟すら放棄してしまえば私は気絶するだろう。そうなればこの身の破滅は免れ得ない。

 だが今の様に必死で痛みに耐えて脳を回転させ続けた所で、現状を打開する方法は無いのだから結局は時間稼ぎにしかならない。つまり今の私は無為に苦痛を長引かせているに過ぎないのだ……と、理解はしている。倒れてしまえば楽になれると、分かってはいるのだ。

 

 だがしかし、それでも簪は耐えていた。どうにもならない絶望を前にして、抵抗に意味は無く苦痛しか得るものは無いと分かっていて、それでも簪は足掻き続ける。それはもはや理性から来る判断では無い。理性的な思考ではとっくに諦めている。だからこの足掻きはもっと本能的なものだ。

 とは言うものの、ただ「死にたくない」というだけの『生存本能』でも無い気がする。既に『生存本能』も無視して逃げ出したくなるレベルの苦悶が続いているのだ。相変わらず致命傷となるような一撃は無いが、だからこそ『意識を閉ざす』という安易な逃避を選択してしまう程に追い込まれている。今の簪の支えとなっているのが『生存本能』だけならば、とっくに倒れ伏していただろうと確信していた。

 では一体何だというのだ、『生存本能も、死にたくなる程の苦痛すらも凌駕する本能』とは? 何か、心の一番奥……根幹となる部分に引っ掛かるものを感じる。胸の奥から、熱いものが込み上げてくるような感覚。

 もう少し……何か『きっかけ』さえあれば、『大切な何か』を掴める気がする……。

 

 

 

 と、不意にルミルノが口を開く。予想外に耐え続ける簪に、そろそろ痺れを切らしたようだ。

 

「なかなか頑張るな、カンザシ……辛いだろう? そろそろ楽になったらどう、だッ!」

 

「……ぐ、ぅぅああッ!」

 

 

 『ルーネイトエルフ』が腕を突き出す、と同時に飛んできたトランプが簪の肩を抉った。深い傷では無いものの、いよいよ出血は激しい。激痛で一瞬思考が途切れ、ブラックアウトしつつある意識。

 頭の中を走馬灯が巡る。物心着いた頃から現在までの記憶。楽しかった事や、悲しかった事。親しい者達との思い出。姉―――楯無との確執。

 

 

   ※   ※   ※

 

 

 その瞬間、視界が一気にクリアになる。遠のきかけた意識が戻ってくる。痛みは気にならなくなり、思考回路が高速で回転し、つかえが取れたかのように心の奥底から『意志』が湧き上がる。

 

(そうか……そうだったんだ。私は、()()()()()。……『だからこそ』ッッ!!)

 

 『答え』は見つかった。『全てを凌駕する程の本能』……それは更識簪を『更識簪』たらしめる、唯一にして最大の『意志』。簪が生まれ持った衝動でありながら、今の今まで自覚すること無く、而して更識簪という人間の自己同一性(アイデンティティ)に多大な影響を与えてきたそれは、姉に対するコンプレックスの中に垣間見えた。

 覆しようの無い才能の差を自覚しながら、苦しむだけだと理解してなお届かぬ目標へと挑み続け、存在理由(レゾンテートル)まで見失ってもまだ諦め切れずに足掻き続ける。……正に今の状況と同じではないか。どうする事もできない攻撃に晒されて、苦痛を長引かせると分かっていても抵抗を続け、理由すら自覚できないまま諦め切れずに足掻き続けている、現在の簪と。

 

 ならばその根幹は同じ物だ。

 それこそが生物としての本能すら超える、彼女の根源的な『意志』。

 

 

(『()()()()』じゃん。諦めたら、立ち止まったら、最期まで貫けなかったら。……そんな『私』は、『私』じゃ無い……『更識簪(わたし)』とは認めない!! 『私』は、『更識簪』は―――愚かだろうが意味が無かろうが、最期の(とき)まで『()()()()』を追い求め続けるッッ!!)

 

 ……そこに『結果』は必要ではない。重要なのは『過程』だ。彼女自身が全てを投げ打って、決して諦めず『結果』に向かって走り続け、最期まで貫き通したならば。最終的に辿り着いた『結果』がどんなに愚かしく無意味であったとしても、彼女は『納得』して受け入れるだろう。

 彼女にとっての判断基準は『格好良さ』だ。少なくとも、彼女が『格好良い』と信じるアニメやマンガのヒーローなら、最後の最後まで絶対に足掻き続けるだろう。もし仮に物語がバッドエンドだったとしても、彼女はそれを受け入れるし、そこに至った『物語』を『格好良い』と肯定する。例えその様子が滑稽で無様に見えても、他の誰にも認められなくとも、それで自己の理念を貫き通せるならば、彼女だけはそれを『格好良い』と認める。

 何故も何も無い。それが彼女だからだ。『格好良さ』を追求する為なら理性も本能も超越して命だって惜しまない。それが彼女の生まれ持った衝動であり信念だからだ。それを目指す事こそが更識簪の存在理由(レゾンテートル)であり、何にも侵されない彼女自身の、彼女だけの『意志』だからだ。

 

 そんな『格好良さ』を、そこへ向かおうとする『意志』を。……きっと、彼女は。

 

 

 

(―――きっと、私は。『浪漫(ロマン)』と、呼ぶのだろう)

 

 

   ※   ※   ※

 

 ここまで、ほんの一瞬の思考。次の瞬間、背中に激痛が走る。予想だにしなかった箇所への深い痛みに不覚にも倒れ込んでしまうが、それが彼女の『勘違い』を霧散させた。

 

   ※   ※   ※

 

 

「……なんだ、まだ動けるのか? 思ってたよりタフな奴だったんだな、カンザシ」

 

 倒れた簪を見て気絶したのかと一端攻撃を中断したルミルノだったが、彼女が再び起き上がったのを見てポケットから新たなトランプの箱を取り出した。その中身を宙にばら撒くと彼女の周囲を旋回するトランプは先の二倍になる。

 

「……諦める訳には、いかないもんね」

 

「……?」

 

 しかし、簪の様子が先程までと違う事に気付き、僅かに警戒心が芽生える。その間にも簪は立ち上がる。

 

「でも、『現状を打開する力』が無ければここで終わってしまう。……だから、『貴女達』は『傍に立って』くれようとしたんだね。……私の、無意識下の『立ち向かう意志』に応えて! そして今、私は『意志(ロマン)を自覚した』ッ!」

 

「何の話だ……いや、『誰』と喋ってる?」

 

 突然語り出した簪に困惑するルミルノだったが、すぐに『会話の相手が自分では無い』ことに気が付いた。簪は彼女に構わず話し続ける。俯いたまま、『自分自身に言い聞かせる』ように。

 

「私は壁を背にしていた……背中が切られる筈は無かった、でも『背中は傷付いた』……なら、切られた『()()()()』はどこにあった? ……答えは、()()()()()()()

 

「……ハッ!?」

 

 一見、支離滅裂に聞こえる発言。しかし、確かに簪の目の前には『()()()()()()』があった。

 

 ルミルノも漸く気付く。簪を庇うようにして彼女との間に立つ、『双子の美少女の人形(ドール)』の存在に。簪の左側に青い目を持つ少女、右側には紫の目を持つ少女。髪はどちらも金髪で、自分の目と同色のドレスを身に纏っている。

 そして正面に居るルミルノからは見えなかったが、簪からはその『双子人形』の()()に切り傷が開いているのが見て取れた。

 

「ルミルノ……貴女はゴミ箱の残骸に埋もれていた『この子達』に気付いていなかったのかもしれない。でも私への攻撃の『流れ弾』が、この子達の背中に当たって……そのダメージが『私に返ってきた』、だから『気付けた』……」

 

 双子の人形が簪を振り返る。それに応えるように顔を上げた簪の瞳は、『左眼が青』、『右眼が紫』のオッドアイに変化していた。『双子人形』の二人それぞれと同じ色だ。

 

「『この子達』は『()()()()』ッ! ……朝から怖がって大騒ぎしてたのが恥ずかしいほど『馬鹿馬鹿しい真相』だけど……まあ、これもまた喜劇(ロマン)、かな?」

 

「『お前のスタンド』ッ! 目覚めていたのか!? 本人の『気づかぬ間』に!」

 

 

『Oui mademoiselle.(はい、御主人様。) 私達は、御主人様のスタンドです』

 

 驚愕するルミルノを無視して、双子は微笑みながら簪に自らの名を告げる。

 

『青の私が、オルタンス』

『紫の私は、ヴィオレット』

 

『私達は、二人で一人……御主人様、『私達』の名を呼んで?』

 

「『貴女達』……『私のスタンド』の、名前……」

 

 双子はそれぞれの個体としての名の他に、もう一つ……二人の総称、『スタンド』としての『自分達』の名前を欲した。それは本体である簪が名付けるべきもの。そして『彼女達』を自らの一部として受け入れた瞬間から、彼女の脳裏には一つの名前が浮かんでいた。まるで遠い昔から、もう決めてあったかのように。

 

 

「……『貴女達』は、私が迷い込んだこの『もう一つの世界』で、私が新たに紡いでいく『物語(ロマン)』の始まり。……自身の存在理由(レゾンテートル)を、『浪漫』を自覚して歩み始める、『生まれ変わった(かくごをきめた)』私の精神(こころ)表象(あらわれ)―――」

 

 

「―――『もう一つの物語(アナザーロマン)』。それが『貴女達』を意味する名だよ」

 

畏まりました(Je comprends)、御主人様』

 

 

 ……To Be Continued→




散々もったいぶってようやっと登場簪さんのスタンド、『もう一つの物語(アナザーロマン)』。

ただ分かる人にはとっくにスタンド名モロバレだった説。
そもそも簪さん第1話からロマン厨だったしなぁ。
あからさまに"物語"に"ロマン"ってルビ振ったりしてるしなぁ。

それはそうと、今作品のスタンド名は洋楽から取るつもりはありません。
いつかジョジョ原作で使われるかもしれないので。被り防止です。
(訳:洋楽はよう知らんので無理しません)
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