簪の奇妙な冒険 -宇宙翔け夢物語-   作:原作未読の魔改造フェチ(百合脳)

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ガヴリールドロップアウトの百合ss書きたい(時候の挨拶)

書き上がったはいいもののやっぱり撃破まで行けなかったよ……
や、撃破までは書いたんだけど長すぎてね……
なので二つに分割しました。残りは校閲が済み次第うpします。

………何時になったら入学するんだろうこのかんちゃん


「星」の導き! その3

 階段上から簪達を見下ろすは『ホワイトスネイク』の放った刺客、アディ・D・アース船長(キャプテン)。その身に纏う紅色のゴムスーツは、あらゆる打撃を跳ね返す『身に纏うタイプのスタンド』。その絶対的防御力を前に、簪達は完全に攻めあぐねていた。

 迂闊に動くわけにも行かない彼女達を暫く眺めていたアディであったが、次弾を放ってこないと見るや鷹揚に口を開く。

 

「ふむ……もう撃ってはこないようだな、私のスタンドの前ではあらゆる攻撃が無力という事を早々に理解してくれたようで何よりだ。では『砲撃戦』も終わったところで―――」

 

 アディが脚に力を込め、前傾姿勢になる。大地を踏みしめるにつれ張り詰めるゴム。それを見た全員がアディの次の行動を悟り、咄嗟にその場を飛び退く。

 

「避けろォーーーッ! ヤツは()()()()()気だッ!!」

 

「―――『突貫』! からの『白兵戦』と行こうでは無いかァァ!!」

 

 番えられた矢が弓から放たれるように、ゴムの反動で真っ直ぐに突っ込んできたアディ。その超高速度に加え咄嗟の事だったので迎撃する間は無かったものの、すんでのところで全員が回避に成功する。アディはそのまま地面に激突した。

 が、その身に纏うスタンドは落着の衝撃すらも反発力に変える。皆が体勢を立て直す間も無く床から天井へと跳ね上がり、そこからまた跳ねて天井から壁へ、壁から床へ、床からまた壁へと目紛るしく反射し続ける。縦横無尽に跳ね回るアディのスピードに翻弄され、攻撃も防御も侭ならない簪達。そこに生まれた隙を見逃してくれる程相手も甘くは無い。

 

「そ~ら、『接舷』だッ!」

 

「うわぁあああああああッ!?」

 

「しまった、エンポリオッ!?」

 

 二度目の突撃には対応しきれずエンポリオ少年への接近を許してしまう。勢いそのままに体当たりをかまされるが、それ自体にダメージは無い。衝撃は全てゴムスーツが吸収するからだ。

 しかし次の瞬間、反発力によってお互いに凄まじい勢いで跳ね飛ばされる。自らのスタンドで身を守っているアディと違い、何の防御も無いエンポリオがこのままの速度で壁に激突でもしようものなら熟れたトマトのように体は潰れ、真っ赤な液体が飛び散る事だろう。

 

「ッ! お願いヴィオレット!!」

 

『……間に合いました!』

 

「ああああッ……!? と、止まった……ありがとう簪……」

 

 そうはさせじと簪はヴィオレットを先回りさせ、その能力によってエンポリオ少年を()()する。あわやという瀬戸際だったが、何とか助かりホッと息を吐くエンポリオ少年。その様子を見て簪も安堵しかけた。

 しかしスピードで勝る敵の目の前でそんな姿を晒す事は、戦闘中においては致命的な隙となる。

 エンポリオに衝突後反動で壁まで跳んでいたアディは空中で反転し壁に着地、一瞬の溜めの後に簪へと狙いを定めて一直線に再突入!

 

「隙アリだッ! ()()()()()!!」

 

「簪ッ!? 『ストーン・フリィーーー!!』」

 

「くそッ、『キッス』!……駄目だ通じねえ!?」

 

「!? しまっ……!!」

 

 反応が遅れた簪に迎撃する余裕も回避する余地も無かった。代わりに応戦した徐倫の『ストーン・フリー』とエルメェスの『キッス』、二体の近接パワー型スタンドは拳のラッシュを放つが、アディはそれを自らの両の(かいな)によるラッシュで弾き、すり抜ける。

 そうして簪に到達するや否や彼女に肩からタックルをかまし、自分は再び天井へ離脱。一方の簪は先程のエンポリオと同様に吹っ飛ばされるが、先程彼を助けたヴィオレットは未だ彼の下にいる。つまり本体である簪の救援には間に合わない!

 

「きゃああああああああッ!!」

 

『御主人様ッ!?』

 

「簪ィィィィ!!」

 

「あたしたち二人の突き(ラッシュ)をそれ以上の突き(ラッシュ)で打ち払うなんて、恐らく『スタンドのスーツ』自体が身体能力を底上げしてるんでしょうけど……それにしたってこの近接格闘のセンス! 『流石』と言ったところね。けどまぁ、やれやれ……『救助』は()()()()()()()()()わ」

 

 為す術も無ければ手を打つ間も無い。その場に居るほぼ全員が一瞬後の簪の死を想起した―――彼女を助けるために()()()()()()()者を除いて。

 

「ああああぁぁっ……!? ってあれ? これは……」

 

「……ムッ、『ストーン・フリー』で編んだ『救助ネット』だと? 小賢しいマネを……」

 

 壁に向かって飛んでいた簪の体が壁際に張られたネットに受け止められ、その衝撃は緩やかに受け流される。一瞬遅れて自身が助かった事を自覚した簪は冷や汗を流しながら息を吐いた。

 ネットの正体は徐倫のスタンド『ストーン・フリー』。その能力は「体を糸状にほつれさせる」こと。徐倫は先ほどアディを迎え撃つと同時に、自らの糸を編んで後方へと『網』を張っていた。それで吹っ飛んだ簪をキャッチした、という寸法だ。

 

 そして徐倫はそのままネットを大きく振りかぶり、階段から繋がる廊下の向こう側へと簪を放り投げた。

 

「オォォラァ!!」

 

「え、ちょ、きゃっ!?」

 

「ヌ、味方を投げ飛ばすとは……何のつもりだ?」

 

 助かったと思った次の瞬間に投げ飛ばされた当の簪はもちろん、アディの方も困惑気味だ。姿勢制御で上手く勢いを殺してブレーキをかけ、彼女達から離れた位置に着地し様子を見る。

 

「ともかく場所が悪い。この階段じゃあ三次元的な動きが可能なヤツの方に分がある、一旦退いて場所を変えるわよ……()()()()()()()から先に行きなさい」

 

「いたた……うん、()()()()()追いつくんだね? ならそいつの足止め宜しく!」

 

「分かってるわ」

 

 徐倫の言葉を受け、簪は痛みを堪えつつも即座に立ち上がり、何処かへと走り去っていく。だがそれを見送るアディに焦りは見えず、残った面々に向き直った。

 

「ふむ、逃げたか……まあ良かろう、死ぬのが少し遅れるだけだ。それよりも許せんのは貴様らの態度! 『足止め』? 『すぐに追いつく』だと? よもやこの私を相手に戦って「生き残れる」と思い上がっているのでは無かろうな!? この『大海賊』たるアディ・D・アースを舐めているのかッ!」

 

「い~や、これっぽっちも舐めてなんかいないぜ……なんせアンタの『武勇伝』は全米に知られてるからな、危険性は充分に理解してるつもりだ」

 

「……ほう、私の事を知っているのかね。全くの蒙昧という訳でも無さそうだ」

 

 一瞬激昂しかけたアディだったが、エルメェスが自身の事を知っていると分かるや否や満足げにニヤリと笑って怒りを収める。どうやら自己顕示欲の強い性格のようだ。そんな彼女の心の琴線に触れるようにしながら、エルメェスは自分の知る『アディの武勇伝』を語り始める。

 

「そりゃアメリカ人なら誰でも知ってるさ。なんせ二年前の『マンハッタン海賊事件』は()()()()歴史に残るレベルの大事件だったからな……『現代に甦った大海賊』さんよ?」

 

 

 

   ※   ※   ※

 

 

 

 エルメェスの言う『マンハッタン海賊事件』とは、この世界において二年前のある日―――2009年の9月19日に発生した、まるで「酔っ払った三流作家がメモ帳に書き連ねた妄言」の如き珍事件である。

 

 

 

 全ては空から降ってきた『一発の砲弾』から始まった。

 

 その日、ニューヨーク州はマンハッタン島に店を構える喫茶店に、一発の『砲丸』が降ってきた。榴弾ですら無い為爆発もしなかったその鉄の塊はしかし、貫いた天井の破片と共に幾人かの客や従業員に降り注ぎ、ミンチに変えてしまった。

 何が起こったか理解が追いつかずに呆然としていたその他の人々も、店の外の道路を通りかかったバスが『二発目』の直撃を受けてスクラップになった瞬間、我先にと逃げ出した。

 この騒動は新たに砲丸が降ってくる度に加速度的に広がっていき、あっという間にマンハッタン中にパニックが伝播していった。

 

 特にハドソン川河畔の住人の混乱は凄まじかった。何せ『髑髏の旗(ジョリー・ロジャー)』を掲げる一隻の()()()が大砲から砲弾を撃ち出しながら徐々にこちらへと近付いて来るのだ。機械動力を積んでいる様子も無く、帆の力だけで航行しているその船は、榴弾が発明される以前の砲弾……全体が鉄でできた砲丸を使っているのも相まってあまりに時代錯誤。明からさまに異常、明からさまに元凶。接近する海賊船に恐怖し動揺するのも仕方ない事だったろう。

 そして遂に岸へと接舷したその船からは、一人の女が降り立った。言うまでも無くアディ・D・アース船長(キャプテン)その人である。そしてこの船には彼女しか乗っていなかった。彼女は驚くべき事に単独で船を操舵し、大砲をぶっ放し、そして今度は両手に海賊刀(カットラス)を携えて逃げ惑う市民の群れの中に切り込んで行ったのだ。

 彼女は一路銀行を目指しながら殺戮を繰り返した。途中で警官隊が大混雑の人の波を掻き分け漸く彼女の下へと辿り着いたが、当時の彼女はスタンドなど持っていなかったにも関わらず、臆する事無く銃弾の雨の中に飛び込んでいき、その全てを躱しながらも類稀なる格闘センスで警官を一人ずつ切り刻んでいった。

 

 最終的には軍の特殊部隊まで出張ってきて、とても生身の人間一人に対するとは思えないほどの過剰戦力の投入によって彼女は漸く降伏し事態は収束したのだった。むしろ何故彼女が生き残れたのか不思議なレベルの飽和攻撃であった。

 

 当然この事件はマスコミが大きく取り上げ世間を騒然とさせたのだが、とりわけ注目されたのは裁判における彼女の言動、特に『動機』の部分であった。

 

 

 ―――海賊たるもの、『金塊』を求めて『略奪』を行うのは当然だろう? 銀行の金庫に辿り着くまでの間、少しでも官憲の足止めになればと思い一騒動起こしてみたのだ―――

 

 

 ……なんとこの女、世界の金融の中心地であり、国連本部も存在するマンハッタン島を襲撃した理由を、政治的・宗教的その他いかなるテロでも無く、ただ純粋に「金銭目的の略奪行為」だと言い放ったのだ。

 当初は真の目的を隠すための方便だと思われたが、どれだけ背後を洗ってもテロ組織との繋がりなど見受けられず、政治や宗教等の思想に熱狂しているような形跡も無かった為に、その証言が唯一の事実であり真実であるのだと受け入れざるを得なかった。つまり、正真正銘()()()()()()()であったのだと。

 

 そうして彼女は稀代の狂人として益々メディアの脚光を浴びる事となった。帆船や砲丸など時代に逆行するようなそのやり方から『現代に甦った大海賊』と呼ばれ、死刑判決が下され刑務所に収容される頃にはアディ・D・アース船長(キャプテン)の名は全米に知れ渡っていたのだった。

 

 

 

   ※   ※   ※

 

 

 

「ほぉーう……私自身は獄中だったので()の騒ぎは実感が無かったが、そうか、私の名はそこまで広く知れ渡っていたか……フフ」

 

 エルメェスがおさらいした事件のあらましを聞き、その自己顕示欲が満たされたのかアディはニヤニヤとだらしの無い笑みを浮かべていた。

 

「それで……『大海賊』たる私の武勇を認識しているのならば。さっき貴様らがほざいていた『足止め』だの『追いつく』だのといった言葉は絵空事だと、貴様ら自身も理解できているのではないのかね?」

 

「いや……そうとも限らないぜ。この時点で既に相当時間は稼げたしな」

 

「………あぁっ!? 謀りおったな貴様ッ!?」

 

 ニヤついた顔のまま自信たっぷりで訊ねてきたアディだったが、エルメェスの指摘を受けて血相を変え怒り出す。自尊心をくすぐられるのに夢中で、会話そのものが時間稼ぎである事に気付かなかったようだ。この海賊、案外マヌケらしい。

 

「ふざけたマネを……フン、認めよう。まんまと『足止め』に引っかかったのは、確かに私のミスであった。しかし! こうなった以上はもう侮らん、もう一方の絵空事―――先に行った更識に『追いつく』というのは完璧に阻止してやろう。貴様らの皆殺しを以ってな!!」

 

「いや……残念だけど、『追いつく』のも既に()()()がある。今更止めらんないわ」

 

「は……?」

 

 一旦は平静を(内心はどうあれ表面上は)取り戻したアディだったが、次に聞こえた徐倫の台詞に呆気に取られる。見れば、徐倫はいつの間にやら一枚の布切れを持っていた。……いや、布切れではなく一着の服だ。先ほどまで簪が着ていた服と同一に見えるが、唯一の違いは「一枚の()()()が貼られている」こと。

 

「さっき簪が吹っ飛ばされた時、あたしが救助ネットを張るのと同時にエルメェスは簪(の服)にシールを貼っていた……そして十分に『足止め』が済んだ今、このシールを剥がす。それで『追いつく』のも完了ってワケ」

 

「あたしが延々お前と"おしゃべり"してたのはよォーー、時間稼ぎ以外にも『床に落ちた服とそれを拾う徐倫から目を逸らす』って意味もあったんだぜ……ほんと今更だけどな」

 

「じゃ、行くわよ皆」

 

 徐倫がシールを剥がすと同時に服はひとりでに動きだした。宙に浮かび上がったかと思うと凄まじい速度で何処かへと飛び去っていく……その服を掴んでいた徐倫と、彼女が自分の『糸』にくくり付けた他の全員も一緒に。

 これがエルメェスのスタンド『キッス』の能力。「『シール』を貼ったものを二つに増やす」という一見シンプルな能力だが、「シールを剥がすと増えた物は引き合って一つに戻る」という性質を活かせばこのような使い方もできる。

 その速度たるや、アディの機動力を以ってしても容易には捉えられないレベル。まして予想外の事態に固まってしまったアディは、咄嗟に反応できずみすみす彼女らを取り逃がしてしまった。

 

 

「………………」

 

 階段に残されたのは先ほど彼女が殺したチンピラ女囚の遺骸とそこから湧き出した血の海、そしてアディ自身だけ。束の間の静寂が流れる。

 

「こ、こ、こ……コケにしおってからにィィ~~~!! ヤツらただ殺すだけでは飽き足りん! 死体を帆柱(マスト)に吊るし上げた後に脚から少しずつ切り刻み肉片を海に投げ入れて鮫のエサにしてくれるわッ!! ……あ、船は無いのだったな……鮫もいないし、ええい、この刑務所にはワニが放し飼われていたな、この際それでも構わん! とにかくエサだッ!」

 

 漸く事態を飲み込んだアディは完全にブチギレた。未だ昼食時で他の囚人が食堂に集まっているのを幸いに、目撃者も気にせず自らのスタンドで廊下中を跳ね返り徐倫達を追っていくのだった。

 

 ……To Be Continued→




次回決着。書けてるのですぐ上がると思う多分。
就活で忙しくならなければだけども(就職浪人一周年)

   ※   ※   ※

他に書くこと無いのでアナロマのパラメータ置いときますね

もう一つの物語(アナザーロマン)』―――本体:更識簪
【破壊力:D/スピード:C/射程距離:A/持続力:B/精密動作性:A/成長性:A】
能力―――運動エネルギーを操る双子の美少女、自我を持った二体一対の人形(ドール)。……遠隔操作型のように見えるが群体型としての側面も併せ持つ、両者の中間のようなスタンド。
"動"を司る青の少女は『オルタンス』、触れた物に任意のベクトルのエネルギーを与え射出する。
"静"を司るのが紫の少女『ヴィオレット』で、触れた物のエネルギーを奪いその地点で停止する。
物理的打撃力は無いが、二体の能力が同地点に同時に働くと溢れたエネルギーが物体を破壊する。
余談だが本体の簪は彼女達の視界を、それぞれ青と紫に染まった左右の瞳を通じて認識できる。
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