視界を覆い尽すかのような、大量の泥の怪物達。それらが一斉に襲い掛かってくる。しかし、可愛らしい小さな女の子が放つ炎の矢が光線のように魔物を纏めて貫いていく。倒れた泥の怪物は溶けていく。
体感で一時間くらい後、数百匹を殺すと殺し尽したのか現れる事が無くなった。改めて周りを見ると、暗い世界の中に変化が訪れていた。切り立った崖の上にある道に俺達は立っていたのだ。空や周りは相変わらずの闇だが、道には青い炎が灯った灯籠が立っていて、道を示している。
『どうやら、生き残ったようですね。まあ、首だけですが、及第点でしょう』
何処からともなく、BBの声が聞こえて来た。周りを見ても、誰の姿もない。しかし、首だけなんだよな。ギリギリ、残っているのだが。しかも、女の子の頭の上に乗せられていて、その女の子は楽しそうにバランスを取っている。
『しかし、その姿で戻ると死にますよ。この世界でなら大丈夫ですが』
「まじで?」
『まじです。その世界はBBちゃんの世界ですから意志力だけで生きていけますが、外に出たら身体はありませんからね』
それは不味い。この世界でずっとこの姿とか絶対に嫌なんだが。
『まあ、助かる方法を教えますよ。ジャックちゃんが私を解体しようと狙っている事ですしね』
「あ~」
「ジャック?」
「俺のサーヴァントだ」
「そうですか」
『はいはい、お話はそこまでです。取り敢えず、説明を先に聞いてくださいね。いいですか、一度しか言いませんよ。まず、その先にある門を目指してください。そこで試練を受けて頂きます。その試練に成功するとスキルを差し上げます。選ぶスキルは自己改造です。もう、わかりますね? 後は好きにしてください。全てを教えるつもりはありませんから。それにヒントは貴方の近くにあります』
そう言って、BBの声は聞こえなくなった。さて、BBの言葉を考えてみよう。自己改造を取れという事だった。そして、ヒントが俺の近くという事だ。
「?」
それはつまり、俺を乗せている少女の事だろう。彼女を受肉させた方法は泥の怪物の身体を使ってだ。それはつまり、俺の身体も泥を使って受肉させないといけないという事だ。
「シータ、この道を進んでくれ」
「シータ、それが私の名前なのですか?」
「そうだ。何か思い出したか?」
「何も……ごめんなさい。真名すら忘れた私には宝具は……」
「別に大丈夫だ。真名はこれで思い出しただろうし、宝具は分からいが弓に関する事だろう。それに魔力放出(炎)はあるだろう。それをメインに使えばいい。むしろ、それを極めればインドラの矢を再現する事も出来るだろうしな」
古代インドの民族叙事詩ラーマーヤナの主人公であるラーマの妻。貞淑かつ聡明な女性で、常に夫を想い、その助けになりたいと願っている少女だ。 しかし、この二人が寄り添う光景は現実には決して叶わない。その原因は、生前のラーマが猿同士の抗争に介入した際、味方の猿であるスグリーバを助ける為とはいえ、敵対する猿のバーリを騙し討ちにした事でバーリの妻の怒りを買い、后を取り戻すことができても、共に喜びを分かち合えることはないという呪いを掛けられてしまった事せいだ。
「わかりました。それで、このまま道なりに進めばいいのですね?」
「頼む」
「はい。全てはマスターのお望みのままに」
記憶の無いシータにとっては繋がりのある俺が全てなのだろう。むしろ、これはシータ・オルタなのだろうか?
取り敢えず、シータが弓に矢を番えながら進んでいく。しばらく崖の道を進んでいくと、先に大きな3つの門が見えてきた。
「門、ですね」
「ここから試練なのか」
門には女性の姿が描かれている。左から、超巨乳、巨乳、微乳。そう、門に描かれているのはパッションリップ、BB、メルトリリスだった。
「どれに入りますか?」
「真ん中だな」
他の二つはまだ無理だろう。というか、BBの弟子になるのだからそれしかないだろう。
「では、こちらですね。開けます」
「いや、待て。魔力を込めて破壊しろ」
「わかりました」
しっかりとチャージした白色に輝く矢をシータが放つ。狙い通り、門を破壊してその先に居た大きなゴーレム達を貫いた。門には大きな穴が開いており、地面は溶けて熱気が出ている。よく見ると結晶化までしている。
「マスターの言う通りにして正解でしたね。あのまま入った瞬間、襲われたら大変でした」
「確かにそうだな」
入った瞬間、左右から殴りかかってくるんだから質が悪い。中に入ると声が聞こえてきた。
『何してくれてるんですか? なんで門を開けずに破壊しているんですか!』
「え、だって入った瞬間襲われるのは基本だし」
『……そうですか。わかりました。えいっ』
「待て、何をした!」
『べっつに~なんでもないですよ~じゃあ、頑張ってくださいね!』
一方的に会話が消えた。
「マスター、門を進んだ先ですが……道が全部一緒です」
「……うわぁ、これか!」
ゴーレムが全滅した後、スケルトンやゴーストが現れだしていた。
「シータ、突っ込め」
「はい!」
ダッシュで走り抜けていくと、地面から手が出て来てシータの足を掴もうとしてくる。それをシータは飛び越える。しかし、着地予定の場所にはゴースト達がたむろしている。
「シータ、粘着性の炎が燃え広がるイメージをするんだ」
「わかりました。撃ちます」
空中で作り出した矢を素早く弓で射ていく。矢が着弾すると同時に炎がゴーストを焼き尽くしていく。しかし、一射では範囲が足りない。
「放った矢を拡散させて、いっきに焼き尽くすのもいいかも知れない」
「そうですね」
着地と同時に走ってゴーストの中を抜けていく。シータが更に矢を放って、道の敵を一掃して走り抜ける。前方に巨大なゴーレムが道を防いでいる。ゴーレムが拳を放ってくる。シータは飛び上がって、ゴーレムの腕に着地してそのまま駆け上がっていく。ゴーレムは口を開いてビームみたい物を収束させていく。
「させません」
シータはその場所に矢を放った。矢はゴーレムの頭部を貫いて爆発した。その爆発の中を突き進み、道の先へと進んでいく。すると、今度は上から沢山の獣が降って来た。それをステップを踏むように左右に避けながら進んでいく。
これ、ジャックでも明らかにきつそうだ。ジャンヌちゃんも駄目だろう。かなではわからないが……いや、多分無理だろう。シータが戦えているのは、ここで召喚して受肉したからだろう。それに聖杯のバックアップもここならあるからな。あれ、それだと他の子もなんとかなるかも?
「マスター、門です」
「やっとか」
これでスキルが手に入る……って思ったら、やっぱりそうはいかない。
「マスター、敵性体を確認しました」
ライオンの頭と山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持つ強靭な肉体を持ち、口からは火炎を吐く存在……そう、キマイラだ。
「難易度高いな、おい!」
普通はもっと後で、出て来る奴だろう。普通なら、辛いだろうが、俺が今連れているのは神話にも語られている存在だ。だからこそ、どうにかできるだろう。
「こちらにはまだ気付いていないだろうか?」
「大丈夫です」
「だったら、狙撃だな」
「わかりました。それが一番安全ですからね。それと、マスター……いったん降ろしますね」
「ああ、わかった」
真剣に弓を構えて、魔力を大量に込めていく。シータは三本の矢を作り出して、ほぼ間もなく放つ。それぞれの矢が三つの頭を貫く。しかし、まだ生きている。キマイラは口から炎と毒の霧を吐こうとしてくる。しかし、その前に真っ黒に染まった第四の矢が内部へと潜り込んで、内部から爆発した。
「うわぁっ……」
しかし、頭部だけになってもこちらに突っ込んできた。シータはすかさず矢を放つけれど、突撃が止まらない。
「マスターっ」
シータは俺を抱えて、地面を蹴って灯籠の上に飛び乗ってキマイラの先へと飛ぶ。シータは更に俺を上に投げて直に矢をキマイラに放つ。キマイラは矢を受けながら闇の中にそのまま落ちていった。残った身体は崩れていき、後には宝玉みたいな物があった。俺自身は落ちて来た所をシータに受け止められた。
『……クリアーです。そのアイテムを拾ってスキルを選んでくださいね。それと帰るには魔法陣を用意しておきますので、そちらに乗ってくださいね』
直ぐにシータが拾って、俺の口元に差し出してくれる。これって口をつけるしかない。取り敢えず、引っ付いてみると宝玉が俺の中に消えていく。すると、スキルを選択する画面に出た。俺は言われた通りに自己改造を選択する。するとランクがBだった。
「さて、どうするか……」
「取り敢えず、そこに置いてみますか?」
「そうだな」
シータがキマイラの身体の上に乗せてくれる。直ぐに自己改造を意識して、泥を取り込んでいく。これで身体を作るが……明らかに材料の泥が足りない。それにシータに持ち運んで貰うんだから、小さい方がいいだろう。
「シータ、何か希望はあるか? 小さいので」
「猫です。猫のぬいぐるみがいいです」
「わ、わかった」
自分の身体を猫みたいな物にする。すると、嬉しそうにシータが俺を抱き上げて、頬擦りしてくる。更にぷにぷにしたり、撫でてくる。しばらくされるがままになった後、頭の上に乗せてくれる。
「じゃあ、狩りをお願い」
「わかりました。任せてください」
ついでなので奥へと進んでいく。すると大量の触手の魔物が居た。海魔と呼ばれる魔物だった。無茶苦茶エロい奴等だ。
「汚物は消毒だ」
「汚物は消毒です……?」
大量の泥の怪物を倒し、その泥を集めていく。戻ってゴーレムやゴースト、スケルトンの素材も集めていく。集めた泥を魔力に変換してから、シータに渡す事により効率よく溜まっていく。翌々考えると魔力には質もあるし、強化するほうがいいだろう。