山から逃げ帰った俺とかなでは田圃道を手を繋いで歩いていく。ここは人気のない場所で蛙の声が聞こえてくる。
例の山は現状の戦力ではどうしようもない。俺とかなでだけでは足りない。あの九本の矢と山や森の中の城ということで考えられる相手はおそらくギリシャ神話の英雄だろう。
「コウ、星が綺麗ね」
「そうだな。都会じゃ見れない」
歩いていると嫌な気配がして振り返る。そこには二メートルを超える巨体な大男と長い黒髪の少女。少女は黒いワンピース姿で大男の腕に座っている。
場所こそ違うが、これはまるでFate/stay nightであったシロウとアルトリアがイリヤスフィールとヘラクレスがあったシーンではないか。
隣ではかなでが姿を変えている。手には光り輝く槍が握られていて、服装は白銀の鎧に白いマントへと変化している。そこでふと気づいた。
俺はあくまでも、サーヴァントを使役して戦う
「目と目があったので勝負です」
「ポ〇モンかよ」
「いや、まあ侵入者を生きて返すわけにはいかなだいだろう。次は戦力を集めてこられたら面倒だしな」
「……ごもっとも」
相手の大男は少女を降ろすと、巨大な弓を召喚する。相手のクラスはアーチャーのようだが、やはり嫌な予感は当たる。
「コウ、やる」
「ああ。前衛は任せる」
さて、少女の方を俺が相手にする訳だが……彼女はクラスカードを取り出した。それはキャスターのカードのようだ。
「インストール」
ローブを被った姿となった彼女は杖を持っている。それもフェイトでは特徴的な奴だ。
「メディアのクラスカードか」
「正解です」
地面から大量の骸骨の兵士が湧き出てくる。それを虚数魔術で作った刃で斬り裂く。
隣では無数の矢をかなでが槍で防いで接近し、キャスターを狙う。それをさせないようにアーチャーが盾になる。逆に矢で俺が狙われるのでかなでもあまり距離を開けられない。
一進一退の攻防が繰り広げられている。しかし、相手の方が有利だ。神話クラスの魔法を乱射してくれば防戦一方になるし、機械人形を沢山放ってくる。
「このままじゃジリ貧?」
「そうだな。なら、試してみるか」
現実世界でも相手はここまでの魔術が使え、魔術工房まで作っているのだ。だったら、俺にだってできないはずはない。
「時間を稼いでくれ」
「任せて」
かなでに防御を任せ、俺は指を切って取り出したスマホに操作してから血を塗りたくる。
「――――――告げる。電子の海に漂いし我が剣よ、汝の身は我が下に、我が命運は汝の下に。BBの寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
「何を……」
「我が親愛なる者よ」
心を込めて適当に唱えると、召喚魔術が発動する。巨大な魔法陣がスマホから現れて、中から言い争うような声が聞こえてくる。
「あれ?」
「えっと……」
言い争う声の中、ひょこっと魔法陣から出てきたのは赤い髪の毛をツインテールにし、黒いゴシックドレスを着た少女。
「マスターの召喚に従い、サーヴァント、アーチャー。ここに現界しました」
『『あぁああああぁぁぁっ!?』』
『言い争ってるから……』
どうやら、ジャックとジャンヌちゃんで来るのを争っていたようだ。正直言ってジャックが来てくれるとかなり助かったのだがな。
「マスター、私は受肉しているのでもう一人呼んでも問題ありません」
「いや、そうか。ジャックを呼べばいいか。シータはかなでの援護を頼む」
「お任せください」
防戦一方で怪我を負って腕などから血を流しいるかなでの援護にシータが入る。シータの矢によって有象無象は焼き払われ、強力な矢はメディアを狙う。
「ちっ!」
「信じられません……サーヴァントが増えたの?」
「撤退をしやにいれるか」
かなでに治癒の魔術を使いつつ、すぐに召喚を行う。今度はジャックを指定して呼び出す。ジャンヌちゃんは今回、お留守番だ。
「来てくれ、ジャック」
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン♪ おかーさん、何を解体すればいいの?」
「あれだ。宝具を使っていい」
「わ~い♪」
「もう一人っ! しかもあれって……」
「撤退だっ!」
「逃がさない」
「そうです」
「あは♪」
ジャックの周りから大量の霧が噴出し、周りを覆いつくす。大男が少女を抱えて急いで逃げている。しかし、その後ろを越えるように矢が放たれる。かなでも追いかけているので霧の中で戦闘が続く。迷ってどこにいってしまうかもわからないが、これはジャックが張っている奴だから問題ない。
「あっ、逃げられた!」
そう思っていたのだが、霧に何かが混ざると破壊されてしまった。連中の姿が消えていて、残ったのは竜牙兵だけだ。
「どういうこと?」
「おそらく、魔術か薬品を使ったんだろう。それでジャックの霧を破壊して転移で逃げたのだろう」
「時間稼ぎに霧を利用されたようですね」
「う~ごめんなさい」
「いや、いいさ」
しかし、こうなると色々と問題がでてくる。戦力で有利になったが、あちらは魔術工房がある。おそらくもっと強くなるだろう。
「マスター、提案があります」
「なんだ?」
「宝具の全力発動の許可を頂きたいのです」
「シータ?」
「魔術工房ごと消し飛ばせば憂いはなくなるかと」
インドラの矢を山に叩き込もうというのだ。それはもはや、バンカーバスターどころか衛星兵器みたいなのを放つ感じだろう。
「それは駄目だ。改めて交渉するべきだ」
「え~解体しちゃ駄目なの?」
「自然破壊は駄目。美味しい物がなくなる」
「そっかー」
ジャックとシータの頭を撫でながら交渉のことを考える。まあ、こちらの武力をちらつかせながら交渉すればいいだろう。そう考えていると身体から力が抜けてくる。
「なんだこれ……」
「あ、わたしたちはもう戻るね。おかーさんの魔力が危ないから!」
「ああ、それか。頼む」
「うん。ばいばい!」
ジャックが消えて、シータとかなでが支えてくれる。シータは受肉しているから、かなでと同じ魔力を与えるのは魔術や宝具の使用の時だけでいい。
「返って休みましょう」
「そうです。休みましょう」
「ああ、ところでシータ。霊体化とかできないよな?」
「無理です。申し訳ございません」
「いや、いい。母さん達になんえて説明するべきか……」
「私の妹でいいと思う」
「そうだな。それがいいか。シータもいいか?」
「はい。もとから私達は義理の姉妹ですから」
「それもそうか」
「うん。お姉ちゃん」
かなでがお姉ちゃんなのか、シータがお姉ちゃんなのかはわからないが、そういう方向でいくことにする。
その後、両親をどうにか説得して俺は寝込むことになった。シータとかなでは常に傍にいて甲斐甲斐しく世話をしてくれる。寝る時は二人に挟まれながらだし、人見知りでもあるのかシータは特に俺にべったりだ。
その間にかなでは親から料理を習ったりしていたが、どこからどうみても二人とできているということで説教もされた。
肝心な連中は数日後にやってきて、堂々と家に入り込んできた。というのもあの二人は俺が出ていった後にやってきた人達で警察官の人らしい。そんな二人は会談を申し込んできた。
こうなったら受けるしかない。なにせこっちは不法侵入した上に器物破損したわけで……逮捕されてもおかしくない。
というわけで俺の部屋で俺の背後でかなでとシータが警戒していて、相手も男性が背後に立って警戒している。
「さて、色々と話しもありますが、まずは昨日のことです。こちらが襲った理由は貴方の禍々しさです」
「え?」
「貴方の魔力はかなり異質なのです。特に虚数魔術と泥を使っていますよね?」
「まあな。確かに襲われても仕方がないか」
ゲームをやっていたら危険なことがわかる。それに俺の魔力は異質らしいからな。
「まあ、それと今まで出会った人は問答無用で襲い掛かってきたので貴方達もその手合いと判断しました。私の私有地に入ってきて防衛装置を破壊してきたので」
「それはわかった。こちらは帰郷したら魔術工房ができていて、調査にいっただけだ。で、どうするんだ?」
「街に被害を出すつもりはないのですか?」
「ない。俺の方も両親の安全を守るためにいっただけだ」
「わかりました。では、私達と不可侵条約の魔術契約をしましょう。ただし、一般人に被害がでた場合やでる場合は即座に破棄です」
「わかった。それでいい」
互いにデメリットはない。メリットもとくにないので問題ない。いや、この街のことを任せられるのでこちらのメリットはあるな。
相手側はこの街を守るために工房を作っているらしいので、任せておけばいい。というか、警察側もFATE/VRについて調査を開始しているらしい。色々とはっちゃけてる馬鹿が結構でているので各都道府県で対策として魔術工房を作っているらしい。本当に秘匿すべきことだというのに嘆かわしい。というか、システム的にどうなるのだろうか?
そんなわけで俺達も見送られて無事に元の街へと戻った。
しかし、この家は三人で過ごすにはやはり狭い。そもそも一人用のワンルームだ。なので引っ越しをすることにする。魔力がどうにかなればジャック達を召喚するからだ。
という訳で新しい家を別の街なども手を伸ばして色々と探しに寄ったのだが……おかしいな。
夜、三人で帰っているとなぜかいきなり堕天使となのる変態老人に襲われたのだ。