始まり
2016年 2月 鎌倉市 人工島『横浜鎮守府』
人工島とは思えない自然豊かで前の鎮守府と変わらない環境だと私は聞いていた。でも、実際は違う。
風の噂で聞いた『ブラック鎮守府』、まさかここだと思わなかった。
提督の横暴な態度、休憩なしの出撃、大破寸前でも入渠禁止、食事も残飯のような代物だった。
まさに地獄のような場所に私はいた。
精神が狂い、部屋に閉じこもる子。提督の行為に泣きながら悲鳴を上げる子。解体された子。
「さぁ、次はお前だ」
もう、逃げ場なんてない。だったら……、せめて、解体される運命なら最後の最後まで抗いたい。
だから、私は逃げた。東京まで逃げ、倉庫の入口に掛けられている看板。
『私立相談役事務所』
もし、どんなことを言われても私は諦めない。絶対に……。
2016年 8月某日 鎌倉市 人工島『横浜鎮守府』
日本の本土から2.5km近く離れている場所に鎮守府は存在する。自然豊かで街も栄えており、何より艦娘が日々戦っている場所でもある。
そんな場所に、一人隠密行動する人物がいた。
顔の右部分だけを仮面で隠し、左部分は素顔ではあるが目はゴーグルで隠されている。そして身体を黒いマントで覆っている。
「さてと、相談されたからには依頼は遂行する」
ポツリと、誰も聞いていないのにその人物は呟く。
目の前には憲兵が3人程監視をしていた。憲兵がいる向こうには月夜で照らされた鎮守府が見えていた。
「さて、始ますかね?」
そう言って一気に憲兵の後ろに近付き、生い茂る草木を揺らす。
「おい、何かいるぞ?」
「気のせいだ。眠くて幻聴でも聞こえているんだろう?」
憲兵は幻聴だと言って無視したが、横に居た同僚がいないことに気付いた。
「おい、あいつどこ行ったんだよ?」
「こっちだよ」
その瞬間、二人は茂みに引きづられ、一人は気絶しており、一緒に引き込まれた憲兵も気絶していた。
「さて、お前に問う。面倒事は嫌いだから一回で答えろ」
ボイスチェンジャーを使用している為に機械独特の声で聞かれる。憲兵は恐怖に震えていた。
「た、頼む。命だけは……!」
「言ったろ、面倒事は嫌いだ。話せば命は助ける」
憲兵は首を上下に動かし、マントの人物は聞く。
「提督は今どこにいる?執務室か?」
「い、いや。別館だ…」
憲兵の男は答えたくなさそうな声で言う。
「執務室じゃないのか?別館のどこだ?」
マントの男は憲兵に聞く。憲兵は少し、躊躇うが、意を決して言った。
「別館5階、505号室で今頃お楽しみの最中だと思う……」
マントの男はポツリと、一言だけ言った。
「解った。ではしばし気絶してもらう」
そこから、憲兵の意識は無い。
「さて、向かいますか」
マントの男はそう言って別館の5階、505号室に向けて走る。
「しかし、ザル警備過ぎて途中から笑えてくるわ」
マントの男はそう言って505号室の扉の前に立つと、部屋の中から音がした。何かを打ち付ける音、女性の悲鳴に似た声、荒い息遣い。おそらくヤッている最中なのだろう。自分は胸糞悪い気分になる。依頼内容通りの行為が行われているようだ。
自分は我慢の限界で扉を蹴り飛ばして室内に入るとそこには禿げた男と青髪の少女が裸同士でいた。ハッキリ言う、マジで臭い……。
「な、何だ貴様!?」
「ある人物からの相談によって、この『犯罪相談役』である『黄泉』が貴方に罰を下しに参りました」
不気味な笑みを浮かべながら言った自分に相手は動揺した声で「う、浦風!こいつを殺せ!!」と叫び、浦風と呼ばれた少女が自分の前に立つ。
「お願いします。この場から去って下さい……」
「はいそうですかって言って帰るとでも?残念だけど、それは無理だよ。今回の依頼人、君達を助けて欲しくてボロボロになりながらも自分が経営する事務所まで赴いたんだよ」
自分の言葉に彼女は口を両手で隠して、涙を流し始める。何が起きているのかが把握出来ない禿げ男を自分は睨んだ。
「さて、こっから先は君に見せられない。全員を叩き起して大事な荷物だけを持ってこの別館から出るんだ。良いね?」
自分がそう言うと彼女はそのまま出て行く。禿げ男は恐怖に震え、自分に命乞いする。
「た、頼む!殺さないでくれ!!」
「それは聞けない案件だ。お前は罪を犯し過ぎた。そのまま恐怖を抱えたまま死ね」
そして、両腕にナイフを突き刺し、禿げ男の叫び声が別館に響き、一斉に扉が開かれると外に向かう足音が聞こえる。
「な、何でだよ。何で誰も助けないんだよ!!」
「だって、火災が起きれば誰だって逃げるだろ?」
そう、事前に発火装置をセットし、タイミングよく燃え始めた。
「さて、これは完全犯罪。誰にもバレてはいけない」
「ま、待ってくれ!!」
助けを求める禿げ男、しかし自分は聞こえないふりをして廊下に出て一言だけ言った。
「燃えろ。地獄の業火によって自身の罪を償え」
「嫌だァァァァァァァ!!」
木造建築だったのが災いだった為に燃えが早く、脱出が間に合うかの問題だった。
「急げ!!」
そして、廊下の突き辺りに窓があるのを見つけて走る際に、誰かの助け声が聞こえた。
「だ、誰か……」
か細い声で、自分はすぐさま声が聞こえた場所に向かう。
202号室とギリギリ目視出来る部屋に入ると茶髪のロングヘアーの人が倒れていた。
「今助ける!」
彼女を担ぎ、そのまま窓から飛び出す。そして、別館は倒壊。消火活動が行われている最中、自分は彼女を木に寄りかかるようにして寝かせるとそのまま逃げ去った。
これが、自分が最初に横浜鎮守府に訪れた時の出来事だ。
あとがき
初めての艦これを執筆しますので不慣れな場面もあります。それでも、皆さんが楽しめるように頑張ります。