続きです。
凬森提督から指令された海域も無事攻略し、帰投している時だった。
「ねぇ、鎮守府の方から黒煙上がってない?」
島風が指を指しながら言った先は黒煙を上げている横須賀鎮守府だ。
「もしかして…、敵襲!?」
鈴谷が不安そうな声で言うけど、私は「急ごう!」と言う。それに続いて金剛も「ohそうですネー!!愛しのテートクが待ってマース!!」と通常運転で話している。
そんな会話をしていると、鎮守府が近くなり、黒煙が上がっている場所が正門付近だと特定も出来た。
「大破、中破の者は入渠、小破と無傷の人は私と一緒に現場に!」
『了解(デース)!!』
待ってて、提督。私が、この長良がすぐに!!
「フフッ、アーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!」
飛び交う銃弾砲弾を両手に持つ軍刀で斬って斬って斬りまくる。
「如何した?もっと撃てよ?」
狂気の笑みを浮かべているのだろう。その場にいる全員が表情を凍りつかせ、震えているのだから。
「さぁ、懺悔しろ。加賀を殺したその罪を!!!!」
第10鎮守府の連中に一歩一歩確実に近づいて行く。恐怖に震え、慄くその姿は滑稽だった。
「さぁ、死ね。そしてその命で償え」
そう言って斬首しようとしたが、後ろからの気配を感じて振り返ると砲弾が飛んでくるがこれも斬る。
「これは一体どういう状況なのかしらねぇ?」
「戻って来たのか……。長良、金剛、島風、不知火」
どうやら、出撃していた艦隊が戻って来たようだ。面倒だが、ここで戦闘不能にすれば後が楽だろう。
「良いでしょう、かかって来なさい…!!」
目の前にいる男、提督と同じ白の軍服を着ているので他の鎮守府の提督なのだろうか?
けど、明らかに殺気を剥き出し、今にも攻撃をして来そうな感じだ。
「テートク!!大丈夫デースカ!?」
「わ、私は大丈夫だ。けど…、彼の方がまずい」
提督はあの人の方を見て言った。何が起きたのか状況が把握出来ない中で、黒塗の車が数台止まると中から大元帥と大本営の人間が出て来た。
「な、何が起きたのじゃ…!?」
驚いている大元帥に彼がそちらを見ると、
「爺さん、答えてくれ……。人の命ってこんなにも、儚く、脆いのか……?」
涙を流しながら、言う彼に大元帥は「明斗…、落ち着いてそれを地面に置くのじゃ」と言った。
「落ち着け?巫山戯るなぁぁぁぁ!!!!!」
彼の怒声は鎮守府内にいた他の皆にも聞こえたらしく、こちらに向かってくるのが分かる。
「目の前で、目の前で自分が護るって言った人を死なせてしまったんだぞ!!!!目の前で、母さんや妹の未依や、母さんの秘書艦の『みらい』が死ぬ瞬間を見た自分に落ち着けだって…?巫山戯るなよ!!!」
傷口から血を流し、大声で言う彼に、ある種の恐怖を覚える。
「それでも、これ以上暴れないで頂戴?」
「だったら、殺せよ?自分を…。この材原明斗を!!!!」
狂っている……。焦点の合わない目、三日月の様に口角を上げている。そしてボロボロにはなっているけど白の軍服を着ている。
砲弾を斬っている時点で私達に勝ち目はないのが分かる。でも、この人を止める方法があるのかと聞かれると、あるにはあるけど、上手く事が進む筈がない。
「皆、動かないでね?私が一人で行くわ」
皆に微笑んで言った私は艤装を解除して一気に走り出す。相手も「自殺行為に等しいな!!」と叫び、刀身が私の身体を掠める。服が破けるが気にもせずに腹部に渾身の正拳を喰らわせる。
「ングッ!?」
防御は一切考えていなかったのが幸いで、彼はそのまま後方に吹き飛ぶとそのまま地面に倒れて気を失った。
「か、確保ォォォ!!!」
憲兵の声が聞こえてくると私はそのまま地面に座り込んだ。
あの後、少年は憲兵に拘束されるとそのまま病院に搬送された。彼が殺害しようとした艦娘も別の車で横須賀鎮守府を後にした。私は金剛と島風、不知火に文句を言われつつも無事で良かったと言われて、私も「うん…ありがとう」と返事をした。
そして、提督と大元帥が私達に事の顛末を話してくれた。それを聞いた私は、怒りが込み上げてきた。
「何よそれ……。助けた張本人を殺そうとしたの!?」
熊野が声を荒らげて提督に言う。提督も「熊野、私もそんな気持ちだ。しかし、憶測でしかないが、多分最初に出てくるのが第10鎮守府の提督だと思ったのだろうだから彼女らは砲撃をした。しかし、砲撃した後になって砲撃した相手は別人だと解ったのだろう」と説明した。
「それで、あの少年は?」
霧島が冷静な声で大元帥に問うと大元帥も「病院で治療を受けておるが……、意識はまだ戻らん」と言う。
「如何して…、如何してなの!!」
泣き崩れる長門さん達……。あの少年は大元帥の孫で、最近ブラック鎮守府と摘発された横浜鎮守府の提督代理として所属する艦娘達のカウンセリング等をしていたらしい…。そして今回の逮捕劇に参加、事の終わる手前で……。
「今回の件はわしに責任がある……。あの子の、心の傷を抉ってしまったのじゃからな……」
大元帥もぐったりとした状態で言う。私達には如何する事も出来ない…。彼女らを慰めるのも、彼の悲しみを取り払うのも……。