【艦これ】私立相談役と元ブラック鎮守府   作:泉井 暁人

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 更新が遅くなりました。
 続きです。明斗の過去を知る加賀さん、そしてあの屑提督がいる横浜鎮守府は…。


第16話 現状と不安そして…

 

 あの屑提督が赴任してから1ヶ月、横浜鎮守府はまた前のような体制になった……。

 捨て艦に暴行、性行為に理不尽な解体。精神も身体もどんどん蝕まれてゆく。

 でも、高雄さんや陸奥さん、指令を信じて待っている人達は必死に耐えていた。

 そんな時だった、屑提督が私達を呼び出した。またセクハラ行為かと思ったら、

 「お前達にはある島の調査に行って貰いたい」

 そう言った後に資料を渡して部屋から追い出された。その後で皆で確認すると10年前の1109事件の際に沖合で深海棲艦と戦っていた艦隊の生存者が居ると言われている孤島で、私達は次の日雲行きが怪しい中、出発した。

 地図に指されていた場所は硫黄島だった。かつてそこは第二次世界大戦にて、『硫黄島の戦い』とまで知られている場所だ。

 深海棲艦の出現以降、島の立ち入り禁止とされ、深海棲艦の餌食となった輸送船や客船の墓場となっている。

 その場所に、私達は向かう事になった。

 「しかし、本当に居るのだろうか?」

 「解りません……。でも、資料が本当であれば鎮守府のレベルも上がる上に…」

 「明斗も戻ってくると思うんだな?」

 「はい……」

 メンバーの一人でもある長門さんと私は二人で話していた。

 ちなみに今回の出撃メンバーは私みらい、長門さん、 陸奥さん、瑞鶴さんの四人だ。

 「正直な話、あいつ絶対何か企んでると思うんだよね……」

 瑞鶴さんが不安そうな声であの屑提督について言っていた。確かに瑞鶴さんの言う通りで何を企んでいるのかが解らない。

 そして真っ黒い雲が覆う空の下で、目の前に深海棲艦の艦隊が見えてきた。

 「行くぞ!」

 長門さんの掛け声で戦闘態勢に入る。今は、目の前のことに集中しないと……!!

 「“イルギャアアアアア!!”」

 駆逐艦3隻、軽巡洋艦1隻、巡洋艦1隻、そして……。

 『“アイアン…ボトム…サウンドニ…シズミナサイ…!!”』

 初めて見る深海棲艦、私は動揺した。肌は白に対し、服装や髪、艤装は対照的な黒。それでも深海棲艦の悍ましさは醸し出していた。

 「クソ!補給もまともにしていないこの状況で正面から戦えん!撤退だ!!」

 長門さんの指示で退却する事になった私達。けど、雨が降り始めると海は大荒れ、台風が近づいていた。

 「このままだと死ぬぞ!!」

 必死に逃げようにも風と波で思うように動けず、高波によって私はそのまま海中に沈んでいった……。

 

 ひんやりとした風で私は身体が震えて、目を覚ました。

 「ここは……」

 目を覚ました場所は洞窟だった。目の前は海面で大量の難破船や破壊された船舶があり、そう簡単に入れない感じだった。

 「奥に、行くしかないのね……」

 一人だからか恐怖と不安しか感じられない。それでも一歩一歩洞窟の奥に進む。

 水滴の落ちる音、洞窟内で響く風の音。それらが私に更に恐怖を与える。

 でも、その時だった。

 「ん?」

 洞窟の奥で僅かに何かが光っているのが見えた。

 一縷の希望だ…と私は想うと走る。海水で濡れているので気持ち悪い感触を感じるけど、今はあの光の正体を……。

 そして、その光が放つ源を見つけた。

 妖精だった。眠りについている妖精……。私は地面に座り込んで悲しい気持ちになる。出口かと思ったらまさかの妖精だった。

 「もう、怖いのは嫌だよ……」

 誰にも聞こえるはずのない呟き……。でも、声が聞こえた。

 「貴方は一人ではありません」

 何処か懐かしい声……。そうだ、指令を庇って死んだ……。

 加賀さんの声に…!!

 「加賀さん!!」

 私は目一杯声を張り上げて加賀さんの名前を呼んだ。

 すると、私の声に共鳴するかの様に妖精も目を覚まし、眩い光を放った。

 

 暗い、海の底に私はいた。あぁ、そうか……。私は死ぬのですね…。この暗い海の底で、私は死ぬのですね…。

 けれど、私の意識は暗い海の底から一気に快晴の空に向かう。

 『加賀さん!!』

 在りし日の、懐かしい声…。そう、あれは提督が珍しく息子さんを連れて来た日の事だ……。

 

 10年前 横須賀鎮守府

 

 「こちらの事情で二日間程、息子の面倒を見てくれない?」

 食堂で朝食を食べていた折、提督が私達にそう言った。提督は自身のプライベートに関しては話さず、既婚者で息子さんと娘さんが居ると言う事しか知らない。

 その提督が今、私達の目の前で言い切った。

 「えっと……。提督の息子さん?」

 「えぇ、夫が海外に二週間派遣される事になって…、娘の方はすんなり宿泊先が決まったんだけど……」

 提督は私達に申し訳なさそうに言う。

 「大丈夫ですよ。非番の子達や第六駆逐隊も居るので」

 赤城さんは提督に言うと皆も頷く。けれど、提督は浮かない顔のまま

 「一筋縄ではいかないのよ……。うちの息子は…」

 私はふと、気になったことを提督に問う。

 「提督、その肝心の息子さんは?」

 「あぁ、うちの息子なら資料室に居ると思う…。あの子、無類の本好きなのよ……」

 

 提督の指示通りに資料室に入る。

 資料室はちょっとした図書館で艦娘の歴史、船としての記録現在における作戦の資料などが保管されている部屋だ。

 普段は誰も立ち入らないので少し埃っぽいが、風が吹いているので誰かが居るのは確実だった。

 「さて、何処から探そうか……」

 何処に居るのか捜そうとしたその時、

 「お姉さん、『加賀型第1番艦 正規空母』の加賀さんでしょ?」

 声の聞こえた左の方を向く。両手一杯に大量のファイルや本を持ち、何処か達観した目つきをする少年がいた。

 

 そう、これが私と彼との最初の出会い…。

 


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