皆さんが楽しめれば幸いです……。
では、続きです。
三日後 東京 私立相談所前
太陽が顔を見せ始める夜明けに自分は事務所前にいた。しばらく休業にするのでお得意先に連絡を入れたり、羽柴から聞かされていた横浜鎮守府の再建の準備もあり、出発日をずらして、今日鎌倉市に向かう。
「さて、行きますか……」
入口に『しばらく休業させていただきます』との張り紙を貼り、荷物を積んだ状態で停めている大型バイクに跨がると、エンジンをふかし、事務所を後にした。
「新しい提督が今日来るんだよね……」
野外に設置されたテントで作業をしていた私は三つ編みポニーテールが特徴の夕雲型1番艦『夕雲』が両手を机に伸ばして呟く。
先程から同じ事しか言わないので私は夕雲に
「さっきから同じ事を言い過ぎよ?皆だって不安があるしまた前みたいになるって思っている子もいるけど、我慢しよう」
「そう言う『高雄』だって本音だと嫌なんでしょ?」
夕雲に指摘された私はペンを持つ手を止めた。
確かに前任みたいな人だったら如何しよう……とかまた地獄の始まりだと思うと恐い。でも、長門や加賀が太鼓判を押している人と聞いたので、複雑な気分なのが事実。
「さ、私達は提督が来る前に書類を終わらせましょう」
夕雲に言った私は再びペンを走らせる。でも、その手は微かに震えていた。
「毎度ありがとうございました~」
両手に大量の荷物を抱えた状態で店内から出てきた自分に通り過ぎる人全員が驚く。
「ちょっと買い過ぎたかな…?」
皆のお土産として買ったはいいが、流石に買い過ぎたと自分は思った。
早朝に出発した為、あっちには後1時間後辺りには着くと考えた。
バランスよく買い物した品をバックに入れ、出発をしようとしたら、
「おい!如何してくれるんだよ!!?」
怒声が聞こえたので声がした方を見るとチャラい男ら数人で二人の女性を囲っているのが見えて自分は見過ごせずに男らの方に歩く。
「待ってください!私達はぶつかっていません!!」
「だったら如何やってアイスが服に付くんだよ!?」
如何やら男の服にアイスがついたからそれをあの二人のせいにしているのだと考え、仲裁に入る。
「まぁまぁ、お兄さん方、ちょっと落ち着いてください」
「あ゛!?なんだお前!」
男らが振り返って自分を睨むがこちらもそれ以上に睨み返すと目線を逸らした。
「そちらの女性さんも悪気があった訳じゃないのでこれで手を打って下さい」
そう言って福沢さんを一枚男に渡すとそれで満足したのか「次から気ぃ付けろよ!」と言って離れていった。
「あ、あの!ありがとうございます!!」
男らが去って漸く容姿が見られる。
一人目は灰色に近い髪をツインテールに結い、白の袴に黒の胸当て、赤よりは朱色に近いミニスカートの少女。
二人目はショートの茶髪ではあるが毛先周辺が黒。そしてどことなく長門さんと雰囲気が似ている女性だった。
「そちらこそ、大丈夫だった?変な連中だったから」
自分がそう言うとツインテールの子が「大丈夫です!」と言った後に「まだ、名前言ってませんでした。翔鶴型2番艦正規空母の瑞鶴です!」と言った。
「私は長門型2番艦戦艦の陸奥です。先程は助かりました」
如何やら艦娘のようだ。だからと言って別にどうこうと言うのではないので自分は関係なかったが、
「別に、あんな連中がいるだけで悲しいもんですよ。お二人はどちらまで?」
「横浜鎮守府です。前の鎮守府から新しく来る提督のサポートするようにと言われまして」
その言葉を聞いて自分は羽柴の顔を思い出す。大方交渉(脅し)でもして寄越したのだろう……。
「なんだ、丁度自分も横浜鎮守府に用があるから一緒に行く?側車に乗せられるから」
そう言って愛車である『ツェンダップ KS750』に取り付けたウラル社の側車『ギア・アップ』を親指で指しながら「一応二人なら乗せられるから」と二人に言う。
「でも……、申し訳ないよ。私達は「良いんだよ。一人で向かうのも虚しいから…ね?」……そ、そう言うなら……」
瑞鶴は自分にそうは言うが、自分の押しに押されて承諾してくれた。
早速自分は荷物を整理して側車に乗せられるようにすると陸奥さんが「瑞鶴、貴方が乗りなさい。私は彼の後ろに乗るから」と言った。
……、それを聞いた自分は少し焦った。陸奥さんが側車の方に行くかと思っていたので安心していたけど、まさかの事態に自分は平然とした顔で「えぇ、分かりました」と言った。
その時、瑞鶴が「まだ、お名前聞いてなかったですね」と言った時に自分が名乗っていないのを思い出した。
「あぁ、まだだったね?自分は材原明斗、東京の方で私立相談所を営んでいるんだ」
「私立相談所?」
聞き慣れない言葉に瑞鶴は首を傾げる。そこで自分は「簡単に言えば助言者。その人の悩みを聞いて解決策を導いてあげる。それを仕事にしているんだよ」と答えた。
「成程。しかし、何故横浜鎮守府に?」
「秘密。守秘義務があるからね」
そう言ってエンジンをふかし、駐車場を後にして横浜鎮守府に向かう。
「高雄さん!緊急事態です!!」
それは突然だった。書類整理に追われていた私の元に長良型2番艦軽巡洋艦『五十鈴』が慌てた様子で私に報告する。
「横浜鎮守府近海に深海棲艦が敵襲です!」
その言葉を聞いて驚く。鎮守府にはまともに戦えるメンバーがいない。
「敵は?」
「軽母が2隻の駆逐が5隻です!」
相手の真意が分からない。でも、それだけなら……」
「解った。私が出撃するわ」
「待って下さい!高雄さんだけでは「五十鈴、それ以上何も言わないで」…はい」
そして私は早歩きで出撃用意をする。例え、轟沈してでも……。