どうやら司波達也に憑依したみたいだが…… 作:さすおに
A組の教室に来た達也一行は直ぐに深雪を呼び出した。
10分程で深雪が女生徒を二人連れて現れた。
「お兄様。お待たせしました」
そう言って頭を軽く下げたが、達也は「構わない」と深雪の下げていた頭の上に手を乗せて撫でた。
「ねぇ、深雪。そちらにいる二人を紹介してもらえる?」
エリカは深雪の後ろに連れてよって現れた女生徒を見て言った。
「そうね。二人とも挨拶してもらえる?」
「はい!」
「わかった」
胸の豊かな女生徒と真っ平らな女生徒をまじまじと見て達也は苦笑した。
ありだなと。前世の日本にいた女性は程度の差はあれど本当に可愛い子は少なかった。
こちらの世界では同じ日本なのにも関わらず圧倒的な美少女揃いでますます憑依出来た事に感謝した。
「光井ほのかです。光波振動系魔法を使います」
視線は俺の方向けていたが、睨みつけられてるようで少し怖かった。
前の司波達也は何かやったのか?と疑問を湧いてしまう。
「北山雫。得意なのは振動系魔法」
口数の少ない紹介とその小さい身体がとてもマッチしていて可愛かった。
それかは俺たちも各々、自己紹介を済ませた。
「それじゃあ、工房と闘技場に見学行くけど二人ともいいんだね」
ほのかと雫は頷き了承した。
♢♢♢♢
あれから工房と闘技場を回った。
「お兄様……」
深雪は達也の手を両手で掴み、不安な面持ちで俺の顔を見上げていた。
「謝る必要はないからな。お前らもだぞ?」
「……お兄さん」
「……達也さん」
「達也くんどうするの?止めちゃう?」
「止めて止まるならはじめからやってないと思うよ」
「それにしても、美月があんな性格とは驚きました」
深雪は心底驚いた様子で眼前の美月を達也と見つめていた。
何故こんな事になったのか、あれは数時間前にさかのぼる。
魔工技師志望の美月と仕事でCADを研究してる俺の希望でもあった。
所狭しと並べてある機械は、確かに魔法科の学校だと言わんばかりに様々な種類の物が置かれていた。
達也の地下室に置いてあるものよりは圧倒的にスペック不足だが、この学校の生徒のCADの調整くらいなら容易に出来ると改めて感じた。
だが、いかんせん魔工技師の教師は質が低くい事を知ってしまった。
大した技術の習得は望めないと割り切り達也は早々に工房に無価値と判断を下した。
そんな冷めた目で見ていたらエリカとレオに工房にいる生徒が行なっている調整について質問をされた。
そこで俺は今やってる生徒らの調整のやり方が如何に一般魔工技師と比べて劣っているか語った。
それをそばで聞いていたであろう生徒がギロリとこちらを睨んできたので早々に退散する事にした。
それから昼食の時間になった。
第一高校は食堂制度を取り入れており生徒らはここを利用して食事をしている。
自ら食事を取りに行くスタイルで新鮮な面持ちの雫に苦笑してしまった。
席に着き、食事をはじめてから半刻の時間が過ぎた頃に男女の一科生の生徒が達也の周りを囲み二科生は失せろと圧力をかけてきた。
口々に深雪達一科生は僕、私達と同じ一科生同士で一緒に過ごすべきと語った。
丁度、食事を終えた達也はおもむろに深雪の方に振り向いて口を開いた。
「なぁ、深雪。俺とこいつらどっちといたい?」
「もちろんお兄様です」
即断した深雪に短髪の男子生徒がのぞけった。
「っ……んな」
すでに深雪は達也にしか視界に入らないかのように彼らを無視した。
それに業を煮やしたリーダー格である短髪の男子生徒が「チッ」と軽い舌打ちをし、離れていった。
その後を付いていく光景が金魚の糞にみえて笑ってしまった。
♢♢♢♢
そして今はまさに、美月が彼らに啖呵を切っている最中だった。
「いい加減に諦めたら如何なんですか?深雪さんは、達也さんと一緒に帰るって言っているんですよ?他人がそれを咎めるのは間違っています」
「そうだぞ。二人は愛し合ってるんだ」
レオの援護射撃に深雪が悶えた。
「そ、そんな愛し合ってるなだなんて」
体をクネクネ動かし頬に手を当てながら恥ずかしがる深雪に興奮した達也。
「……深雪」
「な、」
返事をする前にその可愛らしい唇に俺の唇を重ねた。
受け入れはじめた深雪の目はトロンとしていた。
「た、達也さん。そ、それは何をしてらっしゃるんですか」
真っ赤に頬を染めながらほのかが問いかけた。
「ん?キスだけど?」
「深雪と達也さん、大胆」
言葉少なに呟いた雫の頬も微かに染まっている辺りそういう事なんだろう。
深雪の口から離れた達也は雫の方に向かっていった。
「雫こっち向いて」
「んっ…あっ」
小さな雫の口にもフレンチなキスをし
「ほのか」
「は、はい」
ほのかにもキスをした。
「お、お兄様。またですか?今度はこの二人なんですね」
怒った深雪から発せられる冷気に寒気が襲うも笑って誤魔化した。
「俺は雫もほのかも好きになった。もちろん深雪、お前の事も愛してるぞ」
「も、もう。何度もそうやって誤魔化されると思わないでくださいね」
何とかなったが、深雪よ。真っ赤になった嬉しそうにしてる顔を鏡で見せてやりたいよ。
どんなに俺の事が好きなんだよ。
「おーい達也くん。あっちが固まってしまってるよ」
どうやら俺たちのラブラブ空間に彼らは当てられてしまっていた。
「……ごっほん。僕たちは彼女たちに相談する事があるんです」
いち早く回復した男子生徒。
「おい、そういうのは自治活動中にやれよ」
「うるさい!ウィード風情が指図するな」
「おい、お前死んだぞ」
達也は右手に付けたCADを一タップしてある起動式を発動した。
するとその喚いていた生徒ら全員に白いわっかのような物が身体を覆い、全身が完全に隠れたら光が消えた。
「なっ……」
「これはなんだ!?」
「何にもないぞ」
「へっ。ウィードの魔法なんだから不発だろ」
そう結論を出してこちらが魔法の起動を失敗したと錯覚してニヤニヤ笑っていた。滑稽だった。
「同じ一年なのに今いったどれだけ優れていると言うんですか?」
「どれだけ優れているかだと!?見せてやるよ」
彼が取り出した特化型CADの銃口がこちらを向いていた。
「……ひぃぃ」
「……」
「お、お兄様」
ほのかは声にならない悲鳴をあげ、雫は無言ながら達也の袖を掴み震え、深雪は達也の顔を見て懇願した。
「みんなは何も心配しなくていい」
俺は彼女たち3人を抱きしめた。
「「「きゃっ」」」
突然の抱きつきに驚いた3人だったが震えた身体が収まり出した。
「……どうせ彼は何もできない」
「え?」
深雪の疑問符はすぐに別の方向で回答された。
「どうして!?」
「何故だ!?」
「魔法が発動しないだと!?」
「フハハハハハハ。実に愉快。実に気持ちのいい三下発言ありがとう。君たちはもう魔法は使えない」
俺の馬鹿にした哄笑が校庭に広がった。
「……使えない?」
どこから漏れた悲痛の叫び。
「ねぇ、どんな気持ち?ねぇ、どんな気持ち?ウィードと蔑んでた人より下になった気持ちは?」
馬鹿にしたような言葉で尋ねた。
「下になった?」
「ハッ。まさか気付いていなかったのか?魔法が使える、それがどれだけ特別だったのか。君たちはもう使えない、唯の一般人に成り下がった」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
魔法を使えなくされた一人の女生徒が絶望し泣きじゃくった。
だが、そんな馬鹿騒ぎも突如として終わった。
仕方ない、既に騒ぎは大きくなりすぎている。
「何事ですか?自衛目的以外の魔法は校則違反の前に犯罪行為ですよ!」
現れた女生徒の一人は第一高校の生徒会長である七草真由美だった。
「あいつが、僕らに魔法を」
指差した方角には俺が映った。
「達也くん。詳しく説明してもらえるかな」
「自衛目的での魔法の無効化を行いました」
淡々と答えた達也はこちらを糾弾した生徒に笑った。
いまでと青白い顔が一層悪くなった。
「無効化というと術式解体か?」
七草会長と一緒に来ていた生徒が問いかけて来た。
「それに関してはノーコメントでお腹いします。それより会長、この方は?」
「あぁ、すまない。名乗るのが遅れたが私は風紀委員長の渡辺摩利だ」
ショートヘアーの長身の女性はキリッとしていた。
「達也くん。魔法の事は聞かないから解いてはもらえないかな?」
「いいですよ。ほら」
そう言って先ほどかけた永続的な阻止魔法を解除した。
「真由美、これは貸しだからな」
「もう、これでいいでしょ!」
真由美は背伸びをし達也の顔に向けて唇を突き出した。
そして達也と接触しキスをした。
真由美の人生での初の自分から促したキスであった。
♢♢♢♢
事情聴取や何やで時間を取られた達也たちはやっと帰宅できることになった。
「みんな、すまん。俺のせいで帰宅が遅くなったから今日は奢りで食事でもご馳走させてくれ」
達也たちはレストランに向かうのであった。
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