嘆きのマートルがいる女子トイレ、そこで僕達三人は例の件について話し合っていた。
例の件、それはとある女子生徒の噂とそれに纏わる人間の話だ。
ハリエットポッターは継承者である、その噂についてだ。
「それで、遂に完成したんだって?」
「そうよ、薬が出来たわ。あとは相手の一部分を手に入れるだけ」
「クラッブとゴイルの?」
ハーマイオニーが作り出した薬の話に、ロンが怪訝な顔を浮かべる。
そう、僕達は噂を信じてはいなかった。
そして、それ故に、ポリジュース薬を使ってスリザリンに忍び込もうと計画していたのだ。
「そうよ。それでハリエットの無実を確かめるの」
「確かにハリーは良い奴だけど、でも状況証拠がありすぎる。ほら、スリザリンだし」
「だから、友達を疑うなんて信じられない。本当、最低よ!ハリエットは最近マルフォイと険悪よ、きっとマルフォイが継承者なんだわ」
「でも、操られるとかそういうことだってあるだろ!例えば、服従の呪文とかさ」
「死喰い人が紛れ込んでるって?その話はないって、何度も言ったはずよ」
いつものようにハーマイオニーとロンが口論を始める。
だが、これも全て事が終われば解決することだった。
「ハーマイオニー、それで僕達はどうしたらいい?」
「おいおい、マジで飲むの?クラッブとゴイルのエキス入りジュース」
「一番怪しいマルフォイから聞き出している最中に本物のクラッブとゴイルが来ないようにしなくっちゃね。その手伝いをして貰うわ」
「どうやって?」
「考えてあるわ」
そう言ってハーマイオニーは可愛くラッピングされた袋をローブから取り出した。
「簡単な眠り薬を仕込んでおいたの簡単だけど強力なのをね。いい?2人が眠ったら物置に閉じ込めて髪の毛を抜くのよ。制服も着替えてね」
「君は誰の毛を抜くの?」
「もう手に入れたわ。ハリエットの、決闘クラブの時にちょっとね」
そう言って、恥ずかしそうにハニカミながらハーマイオニーが言う。
その様子に何を思いだしたのか、ロンが顔を真っ赤にした。
ハーマイオニーはそんな反応が恥ずかしかったのか、じゃあ私ポリジュース薬を見て来ると上擦った声で言って、逃げ出す。
僕達はお互いの顔を見合わせ、行こうかと計画を決行することにした。
計画は難なく成功、明らかに怪しい食べ物を躊躇いなく食べた二人は今や夢の世界である。
僕達は彼らの服に着替えて、そしてポリジュース薬に髪の毛を入れた。
「うぅ、人の髪の毛を入れた飲み物って気持ち悪い」
「そ、そうね。ちょっと、背徳的よね」
「君、もしかして緊張してる?嘘だろ、必要な行為だぞ」
「あ、頭で分かってても、感情はどうしようもないわ」
「僕はドキドキしない、寧ろ気持ち悪い。えぇい、ままよ!」
ロンが勢いよく薬を飲み干す。
ハーマイオニーもそれに続き、照れながら一気に飲んだ。
僕もそれに続いて飲むが、何て言うか表現できないくらい酷い味だった。
その証拠に、三人ともグラスを投げ捨てトイレに駆け込んだ。
うっぷ、吐きそう。
「ネビル?」
「そういう君は、ロン?」
「やった、成功よ!」
トイレから出て鉢会うという奇妙な光景がそこにはあった。
因みにいるのは、ハリエット、クラッブ、ゴイル、と大成功である。
僕達は薬が切れる前にスリザリンの寮に向かうことにした。
「いい、スリザリンは地下寮なの」
「合い言葉、どうする?」
「どうせ純血かなんかだろ」
吐き捨てるように僕の疑問にロンが答え、そんな気がしてきた。
そんな僕達が向かっていると、廊下でロンのお兄さんに出くわした。
「君達、こんな所で何してる」
「パーシー、そっちこそ」
「監督生を呼び捨てとは良い度胸だな。スリザリンは年上に対して礼儀も弁えないらしい」
「そうだった、やべっ」
思わず口に出してしまったことを後悔するロン、見た目はクラッブだから流石に拙かった。
どうしよう、時間がないと思っていると後ろからタイミング良く声が掛かる。
「クラッブ!ゴイル!どこにいたんだ?ずっと広間でバカ食いしてたのか?」
「マルフォイだ」
「あっ、ハリエット……」
僕達に近づいてくる途中でドラコが驚いた声を出した。
僕達が並んで立っていたせいで、先頭を行くハーマイオニ―の姿が見えてなかったからだろう。
「ド、ドラコ?えっと、そう!合い言葉を忘れちゃってクラッブ達に聞いてたの。そしたら、監督生に質問されてて」
「名前で……」
なんだかマルフォイの様子がおかしいと思いながら、この後の展開を見守る。
「ウィーズリー、彼女はよく迷子になるし合い言葉を忘れるんだ。そんな下級生を虐めて楽しいのかい?」
「態度に気を付けろよマルフォイ、スリザリンが廊下を歩いていたんだ。悪巧みでもしてると思われると考えつかなかったのか?まぁいい、もう行っていいぞ」
そう言って去って行く監督生、そして僕達はマルフォイに続いてスリザリンの寮に入ることが出来た。
寮に入ると、僕とロンは呼び出された。
因みに、ハリエットは置いてけぼりでソファーに座らされている。
「お前達、まさか僕の為に動くとは見直した。忠誠心は買ってやろう」
「それで僕の為に動くって?」
「なんだ、昨日の口論を聞いてて動いたんじゃないのか。アレだ、秘密の部屋の話だ」
「な、なんだっけ?」
はぁ、とマルフォイがため息を吐く。
その心底馬鹿だなという表情が、申し訳ない気持ちにさせる。
まぁ、ロンは寧ろ怒ってるようだった。
「ハリエットに危ないって言って怒られた話だよ。継承者に間違われるって思ってたからさ」
「継承者が誰か知ってるの?」
「知らないさ、僕だったらどんなによかったことか。そしたら、彼女は悲しまなくて済むってのにさ。まぁいいさ、彼女も機嫌を直してくれたみたいだし、それになんだかこっちを見てないか?」
そう言って、マルフォイに釣られてハーマイオニーを見る。
ハーマイオニーは、ちょっと熱っぽくて薬を飲んだ時の事を思いだしてか照れているようであった。
「なんか今日の彼女は、その、魅力的って言うか?」
「昨日のことは誤解だったって、それで上機嫌なんだ」
「おい、クラッブ!」
適当な事を言うロンを止めさせようとする。
それと同時に髪の色が変色していることに気付いた。
「そ、そうか」
「告白しちゃいましょうよ。間違いなく成功ですぜ!な、何だよネビ……ゴイル」
「僕達急用を思い出した、薬が必要なんだ。食べ過ぎて、胃薬が!」
ハーマイオニーに向けてメッセージを残し、僕達は急いで寮を逃げ出す。
マルフォイは、心ここにあらずと言った感じで僕達は難なく逃げ出した。
女子トイレに帰るとマートルが泣いていた。
どうやら日記帳を投げられたらしく、それが原因らしい。
ハーマイオニーは帰ってくるまで時間が掛かっており、今日は先に帰った。
そういえば、と乾いた頃合いで日記帳を開くと中は白紙だった。
スリザリンの寮に侵入した翌日、丁度作戦会議があったからノート代わりにはちょうどいい。
「それで昨日何があったんだ?」
「……告白された」
「わーお、マジでやったのかよアイツ」
「どうしよう、思わず逃げちゃった。薬も切れそうだったし」
「告白されたのは君じゃなくてハリーだぞ?」
わ、分かっていたわよとハーマイオニーのビンタが炸裂する。
とても痛そう。
まぁ、ともあれ継承者はハリエットでもマルフォイでもないことが分かった。
その事をノート代わりの日記帳に記入する。
「あれ?」
「どうしたネビル」
「インクが消えたんだ」
困惑する僕達の前で、日記帳には変化が起きた。
『その通り、彼らは継承者ではない。君は誰ですか?』
「日記に文字だ!凄い、魔法の道具だ」
「持ち主はトムリドル?確か功労賞を貰ってた人だわ」
「僕は、ネビルです」
奇妙な日記の質問に、僕は答える。
すると日記は色々と質問してきた。
そして、どうして僕が継承者を探しているのかについて書くと、犯人を教えることが出来ると文字が浮かび上がった。
瞬間、本が光った。
「うわ、本が!」
「ロン、どうしよう!」
「きゃぁぁぁぁ!」
そして、僕達は本の世界に呑み込まれた。