ナイトバス
私はその日、奴と対峙していた。
そう、それはマージ叔母さんという面倒な人だ。
「まだやってないのかい!聞いてないのかい!」
「すいません、今やります」
過剰なストレスが、うごぉぉぉ。
始めて言ったことを何度も言ったと被告は主張しており、と言うかそれは序の口レベルで殺意の波動に目覚めそうだった。
「このアバズレが!」
「ッが!?」
顔の中心に衝撃が走り、鈍痛が鼻を中心に走る。
ポタポタと赤い水滴が床に落ちて、鼻血を出していることを遅れながら気付く。
ど、どこからか鼻血が!?
「アハハ、いい様だね!あの女そっくりのブサイクよ!」
「お、落ち着くんだハリエット!」
「うっ……うぇぇぇぇん!」
私は泣いた、それはもう回りがドン引きするくらいに泣いた。
そして思ったのだ、このマージ叔母さんという邪知暴虐の叔母を殺さないといけないと。
「…………」
「ハ、ハリエット?」
「あぁ、スッキリした」
私は爽やかな笑顔を浮かべながら、愛と正義の願いを込めて杖を取った。
この呪文で世界に平和を、マージ叔母さん死すべし!慈悲はない。
「や、やめろぉぉぉ!」
「インペリオ!服従しろ!」
バタッと、呪文が当たった瞬間にマージ叔母さんが倒れる。
慌ててバーノン叔父さんが駆け寄ると、そっと目を開けた。
そして、周囲を見渡して口を開いた。
「ハリエットを裁いてはいけません。そうすれば、あなたがたも裁かれることがない。」
「な、何を……」
「人を罪人だと決めてはなりません。そうすれば、あなたがたも罪人だと決められることがないのです。赦しなさい。そうすれば、あなたがたも赦される。与えなさい。そうすれば、あなたがたにも与えられる」
マージ叔母さんはそう言って立ち上がり、主の教えを広めるために行かねばと言った。
どこに?決まってる、殉教の旅さ!
「OH、NOoooo!」
「HAHAHA!これじゃあ聖人君子だ、やったぜ!」
「元に戻すんだハリエット!」
「もういい限界だ!私は家出する!」
怒られる前にその台詞を吐き捨てて、私は走った。
もうこの際、魔法を使ったからもういいやとアクシオで荷物を取り寄せ、浮遊呪文で浮かせて夜の町を走った。
魔法省がどうした、魔法使いを守ってくれない魔法省なんて無くなればいいのだ。
魔法使いが法を守るのではない、法が魔法使いをマグルから守るべきなのだ。
「ハァ……これからどうするか」
「ワン!ハァハァ、ハァハァ!」
「うおっ、びっくりした。あれ、犬なんていたかな?」
息切れするまで逃避行した私は公園の階段に座っていた。
まぁ、そんなことをしていたらお腹が空いた野犬に遭遇することもあるかもしれない。
ただ、目の前の黒い犬は大人しいので恐らく、何処かの家から逃げ出したのだろう。
「……オスか」
「アゥン!?」
「よしよし、ハムならあるわよ」
カバンから非常食用にくすねたハムを取り出してやる。
すると、黒い犬はダラダラと涎を垂らしていた。
お、おう。そんなに、腹減ってたのかお前……。
「食べていいわよ」
「グラァ!ハフハフ、ハフハフ!」
「怖っ、どんだけだし、おっと」
私は黒い犬にドン引きして後退り、ぬかるみにハマって転びそうになる。
おっとっと、そう言いながら持ちこたえると目の前にバスがあった。
「はぁ?」
「迷子だな、乗りな」
「えっ、何これ?」
「おっと、夜の騎士バスを知らない?」
「えぇ、夜間しか営業しないの?」
「いや昼も走るが夜の騎士バスだ。まぁ偶然でもお客様だ」
行く宛もないし、漏れ鍋まで乗せて貰うことにした。
そう言えば、と後ろを振り返ったが黒い犬はいなくなっていた。
漏れ鍋にやって来た私は、部屋中を蛇だらけにしてみんなと愚痴り大会を開催していた。
やれ、マグルはお袋を酒漬けにしたとか、母親が兄妹を食べちゃったとか、川を泳いだりした話とか、みんな話のネタが尽きない。
そんな彼らとのお喋りを終わらせたのは、漏れ鍋の店主であるトムさんのノックだった。
「はい」
「ポッターさん、貴方に来客です」
「私にですか?取りあえず、どうぞ」
ギィ、と小さな軋む音を奏でながらドアがゆっくりと開いていく。
床にいた蛇達は私の方に集まり、身体に巻き付いた。
そのせいで、少し暑苦しいというか、今にも絞め殺されそうな光景が出来上がっていた。
「失礼す、えっ!?」
「あっ、大丈夫です。どちら様ですか?」
「あぁ、パーセルマウスだったな。私は、コーネリウス・ファッジだ」
「大臣?」
「うむ」
ダラダラと汗が垂れる。
しかし、魔法の使用はバレても何の魔法かは分からないはずである。
一応、私は探りを入れるように疑問を口にする。
「私を処罰しに来たんですか?」
「処罰?何か問題でも起こしたのかね?」
「未成年なのに魔法を」
「その程度のことで大臣が来る訳がないだろう」
ほっと胸をなで下ろす。
大臣は大袈裟に見えたかもしれないが、私は怒りで服従の呪文を使ったことがバレてないことに安心したのだ。
しかし、じゃあなんで大臣がここに来たのだろうかと疑問を覚える。
「私はある提案をしに来たんだ。夏休みの間、ここに居なさいとね」
「どうして、そんなことを貴方が言いに来たのかしら?それは、不自然だわ。何か、隠しているんじゃないですか?」
「……一度、君を見ておきたかったのだ」
私の問いにファッジはそう言ったが、言葉を紡ぐまでに間があった。
それは、この言葉が本心では無いという現れである。
ここに居て欲しい理由が、彼にはあるのだ。
「分かりました。漏れ鍋にいれば良いんですね」
「あぁ、分かってくれたか。私としてもマグルの家に居るよりは安全だと思っていたのだ。コレで肩の荷が下りるよ」
ファッジは、このままなら安全であると感じで部屋から出て行った。
そうそれは安全であり、つまりは『安心』である。
まるで、明確な『危険』が迫っていると知っていて、その『結果』を気にするかのようにだ。
……私の命が危ない、ということだろうか?
正直、思い浮かぶ理由としてはヴォルデモートくらいだった。
ふむ、さてどうするか。
私は透明マントを取り出すと、それを被ってそっとドアの外を覗う。
「うん?」
「どうしました?」
「いや、気のせいのようだ」
開けた瞬間、最初に見えたのは此方を見るファッジの姿だった。
まさか、こんなすぐに気付かれるとは外に出ない方が良いかもしれない。
ファッジは首を傾げながら、振り返るのをやめて再び部下と話し始めた。
仕方ないので聞き耳を立ててみる。
「それで、奴はどこに」
「分かりません、ですがいつまでも隠しておけませんよ」
「アズカバンから囚人が逃げた事が世間にバレたら支持率に関わる。何としても捕まえろ、日刊予言者新聞に情報を与える前にだ」
ファッジの指示に部下らしき人が頷いてどこかに行く。
私はその様子を見ながら、どうやらアズカバンから囚人が逃げたという言葉と安全という言葉から、私の命を狙う囚人が逃げ出したのではと予想した。
そして、それは日刊予言者新聞にはまだ捕っていない情報であることも分かった。
まだということは、いつか分かると言うことだ。
日刊予言者新聞の情報収集能力すごいなー。
それからと言う物の、私は毎日のように日刊予言者新聞を読み耽った。
「こ、これは!?」
その日、驚くべき事実を私は目にした。
「ロンがエジプトに!」
まぁ、それだけなのだが何か旅行券的なのが当たったらしい。
エジプトかぁ、凄い魔法使いとか魔法の本とかあるのだろうか、羨ましい。
数日間、新聞を読んで驚くべきことはそれくらいだった。
私の予想は外れたようだ。
ハリエット「あんまりだぁぁぁぁぁ」
マージ「聞こえますか、カップル達よ。悔い改めるのです」
ファッジ「アイエェェェ!蛇、蛇ナンデ!?」
ハリエット「奴は、エジプトにいる!」
※後書きと本編は別物です。
変更点
人が風船になるわけないじゃ無いですか
見てるだけじゃ我慢出来なくて、などと容疑者は供述しており……