暗闇の中、私は杖に光を灯して地図を見た。
地図上では、死んだ人物の名前が絶えず動き回っている。
「おい、明かりを消せ!」
「すみません」
途中、肖像画の人物から苦情が来たがそんなことはどうでも良かった。
少しずつ、地図上の足跡が近づいてくる。
それは、既に隣の角まで来ていた。
……もうすぐ、この角から来る。
どこだ、どこから来る!
私は視線を彷徨わせ来るであろう機会に備える。
風が、私の髪を軽く撫でた。
「馬鹿なっ……」
地図上で、私とピーター・ペティグリューの名前が交差した。
背後に回るその名前を確認するべく、私は振り向いてみるが姿はない。
「そんな、間違い……セブルスが来る、ノックス」
「ルーモス」
光が隠れていた私の正体を露わにする。
その光を杖から出した人物、セブルスは驚いたような顔をしてから軽く咳払いをして咎めるような視線を向けてきた。
「これはこれはポッター、こんな夜更けに何をしていたのかな?」
「セブルス、その、これは……」
視線を迷わせながら言い訳を考えていると、セブルスの背後から足音が聞こえた。
誰かが来た、そう思った時には声が掛けられる。
「そこで何をしている?」
「これはリーマス、こんな満月の夜更けに貴様こそ何をしている?」
「彼女から離れろ、何を企んでいるか知らないが彼女は君が触れて良い存在じゃ無い」
さぁおいで、とリーマスが私の腕を掴んだ。
その際、視線は私の忍びの地図に向けられていた。
「その手を離せリーマス!」
「何の真似だ、杖を向けるということがどういうことか分かっているのか?」
「警告はした、結果がどうなるかは貴様次第だ」
リーマスの手が、ゆっくりと私から離れその手が自分の杖を持つ。
互いに杖を向けるという一触即発の状況、セブルスが私を何故か庇うように前に立った。
「今がどういう状況か分かっているのか?シリウスブラックが、どこで目を光らせているか分からないんだぞ」
「勿論、何者かによってホグワーツに居るべきで無い人物が紛れ込んでいる。心当たりはお有りかな?」
「さて、なんのことだか分からないな」
何だか剣呑な雰囲気に、身動きを取ることが出来ない。
緊迫した状況、先に杖を下ろしたのはリーマスだった。
「今日の所は引き下がるとしよう。だが、君には失望したよハリエット」
「えっ?」
「その忍びの地図は私達が作った。それを持っていると言うことは、ホグズミードにも行ったね。自ら危険に近づくとは、死んだジェームズも報われない」
「黙れ!我輩の前で、あの男の話をするんじゃない!」
「今回のことだってそうだ。教師が見回りをしている、この意味が分かるかね?」
そんなのは考えるまでもない答えだ。
だが、流石の私も言われっぱなしは我慢がならない。
だから、思わず言い返した。
「分かっています。でも、確かめたいことがあったんです」
「確かめたいこと?」
「ピーター・ペティグリューがいたんです」
「そんな、まさか……彼は死んだはずだ」
「えぇ、だから地図がおかしかったんです。貴方が作った物は故障していたみたいですよ」
「話は終わりだ、去れリーマス!」
激高するセブルスに、リーマスが気圧されるように後退る。
彼は後ろ髪を引かれるかのように名残惜しげに私を見てから踵を返していなくなった。
その顔には、何か言いたげな、そして険しい物であった。
一触即発の状況もなくなり、安堵感を感じて思わずため息を吐いた。
「ふぅ……きゃっ!?」
だが、安心するのも束の間。
セブルスが、私の腕を握って壁に叩きつけるように勢いよく押しつけたのだ。
「セ、セブルス?」
「どういう、どういう状況か分かっているのか!不本意だが、リーマスの言葉には同意せざるを得ない!」
「痛ッ!」
ギュッと、私を握った腕に力が入る。
痛みに驚きながら、怒ったセブルスの顔を覗き見る。
動けば触れそうな程に近いその顔は、とても饒舌しにくい苦悶の表情に彩られる。
「愚かな、なんと愚かなことを……あの男とまったく同じだ」
「セブルス、痛いわ……」
「もう今日は帰りなさい……寄り道せず、良いな」
「……はい」
咎めるセブルスの顔は、影に隠れて見ることは出来なかった。
だが、例え見えたとしても合わせる顔は私にはなかった。
顔を合わせにくい、そんな気分だった。
セブルスに怒られてから暫くして、私はハーマイオニー達とハグリッドに呼ばれていた。
ハグリッドは来てからのお楽しみと言うことで、私達はまたドラゴンでも拾ったんじゃないかという話題で盛り上りながら小屋に向かった。
因みに、ドラゴンを拾った話は初めて聞いた。
ハグリッドの小屋に来て、開口一番にハーマイオニーが問い詰めた。
「さぁ、今度は何?ネタは上がってるのよ」
「いきなり何の話だ。まぁ、知ってたなら話が早い」
そう言って、ハグリッドは汚いネズミを取り出した。
「スキャバーズ!」
「ロン、やっぱり食べられてないじゃない」
「そうだな、今度猫に謝るよ」
「私に謝りなさいよ!」
また始まったと私は二人の喧嘩を呆れながら見るのだった。
ハグリッドの小屋を後にした私達は、この後の話をしながら移動する。
ホグズミードに行かないかという話は、こないだのことを反省しておとなしく城に引き籠もっているという形で進めていた。
そんな時だった。
「見て、あれ」
ハーマイオニーが何かを見つけて、声を上げる。
視線の先に顔を向ければ、そこには黒い犬が此方を見ていた。
どこかで見たことがあるような、そんな気がしていると犬が走り出す。
「あれ、こっちに来てない?」
「えぇ、そうかも」
「に、逃げろぉぉぉ!」
私達は踵を返して走り出す。
よく分からないが、襲われそうなのは確かだった。
だから、私達は必死に走る。
しかし、犬の速度には敵わなかった。
「あぁぁぁぁぁ!?」
「ロン!」
「ガウ、ガウガウガウ!」
「助けて、食べられちゃうよぉぉぉ!」
ロンが足を噛みつかれて、引きずられていたのだ。
ハーマイオニーが必死に助けようとするが、場所が悪かった。
なんと、ロンは暴れ柳の近くまで引っ張られたのだ。
「見て、穴があるわ!」
「アレは、確か抜け道よ」
「えっ!?」
「叫びの屋敷に繋がる抜け道!」
「た、食べられちゃうわ!きっと、被害者の声が響いていたんだわ。つまり、アレは人の肉を食べる常習犯って訳よ!」
それはまずいと私達は走り出すが、暴れ柳が問答無用で暴れ回っていて近づくことも敵わない。
そのせいで、ロンが引きずり込まれてしまった。
「い、行くわよ!」
「女は度胸!」
雄叫びを上げながら、もう自棄になって走り出す。
迫ってくる枝をジャンプして避け、そして転がるように滑り込む。
やった、なんとかなった!
「あっ、うっ!?」
「ハーマイオニー!」
「キャァァァァァァ!」
滑り込んで安堵した私の背後で悲鳴が聞こえた。
なんと、ハーマイオニーが枝に捕まって振り回されていたのだ。
危ない、そう思っていたら彼女の身体が此方に向いてくる。
えっ?
「キャァァァァ!?」
「こっち、来んなぁぁぁぁ!」
ハーマイオニーが穴に放り投げられ私を巻き込んで吹っ飛んだ。
視界が上下左右に揺れ動き、気付けば私はぐえっと変な声を上げてハーマイオニーの下敷きになっていた。
「……重い」
「重くない!」
「ギブギブ、どいてどいて」
「ご、ごめん」
急いで退いたハーマイオニーが差し出した手を握って何とか立ち上がる。
ふぅ、既に疲れたんだが見捨てちゃダメだろうか。
魔法で犬ぐらいどうにかなると思うんだけどな。
でも、どうせロンの事だからダメだろうなと思って助けに行くのだった。
セブルス「コイツ、怪しい」
リーマス「コイツ、怪しい」
ハリエット「リーマス嫌な奴」
ハリエット「えっ、えっ、やだ強引……」
セブルス「イエェェェェェイ!空前絶後のぉぉぉ!超絶怒濤のホグワーツ教師!」
リーマス「やめろや~もう分かったわ~」
ダンブルドア「デデーン、リーマスアウト~」
ロン「解説してる場合かッ~!」
ハリエット「やった、第三部完!」
※天丼、二回やるまでがネタである。後書きは本編と関係ないよ。
変更点
リーマスが疑われた。
リーマスが嫌われた。
忍びの地図は没収されなかった。