東方狂世録   作:myo-n

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狂夜の紅月に踊る吸血鬼編
第1話


 何もない、誰もいない、何も感じない。

 そんな夢みたいな空間の中に俺はいる。

 体も動かせない中、暫くしているとうっすらと人の影が見える。

 顔は分からない。分かるのは綺麗な金髪と紫色の服ぐらいだ。

 

「――――――」

 

 その人影は何か言うとこちらに何かをかざす。

 それが何だと思う暇もなく俺の意識は落ちていった。

 

−−−

 

 朝日が眩しくて目を開ける。

 しかし、俺は起き上がらずに呟いた。

 

「…知らない天井だ」

 

 布団で寝ていたはずが、いつの間にかベッドに変わっている。

 状況確認の為にも一度起き上がり周囲を見る。

 質素なベッドとタンスと小さめのテーブル。

 必要最低限の物しか置いていない。

 

「何処だここ…?」

 

 右の方に窓があるからそこから外の景色を見ようとする。

 しかし外は暗く何も見えなかった。

 仕方ないと外の景色を見るのはやめる。

 

「よっこいしょっと」

 

 ベッドから降りて立ち上がる。

 服はいつもの普段着だ、特に変なところは無い。

 

 少し歩いてタンスを開ける、何も無い。

 ハンガーもかけていないな、誰かの部屋というわけでもなさそうだ。

 

 扉の所まで歩く。

 そしてドアノブに手をかけてゆっくりと回そうとする。

 しかし鍵でもかけられているのか開かない。

 

「………」

 

 もう一度回す、しかし開かない。

 

 ……うん、どうしよう。

 どうみてもこれは閉じ込められている。

 そして閉じ込められているのにどうしてこんなに冷静でいられるのか。分からない。

 

 よし一度状況を整理しよう。

 まずこの部屋は俺の部屋じゃない、着ている服も寝巻きから普段着に変わっている。

 そして今は夜、周りにはベッド、タンス、小さめのテーブルだけ。

 唯一の部屋の出口である扉は鍵がかかっていて開かない。

 一応窓もあるが、外が暗い上に開かない。

 窓を割って飛び降りるのも手だが、ここが何階かが分からないので却下する。

 

 そこまで考えて、俺はベッドに腰をかける。

 これ以上は考えても答えがでないからだ。

 悔しいが、俺にできる事は無い。

 誰かが来るまで待ってみるか。

 

---

 

 30分が自分の感覚で過ぎたと思った時、部屋の扉が開いた。

 開けたのは…メイド服を着た女性。

 銀髪なのがとても目立つ綺麗な人だ。

 

「お目覚めになりましたか」

「あ、はい。そうです、あの…ここはどこですか?」

 

 女性は軽くお辞儀をしながら自己紹介をしていく。

 

「申し遅れました、私この館のメイド長を務めています十六夜《いざよい》咲夜《さくや》と申します。以後お見知りおきを」

「は、はいよろしくお願いします。えっと…館ってどういうことですか?」

「その点については移動しながら説明させていただきます。どうぞこちらへ」

 

 十六夜さんは扉を開けて俺に出るように促す。

 俺としても聞きたい事はあるから断ったりはせずに部屋の外に出る。

 

「おぉう、長いな…」

 

 外に出るとそこには長い廊下が広がっている。

 300メートルはあるんじゃないかと思えるほどの長さだ。

 

「では行きましょう」

 

 十六夜さんは驚いている俺に構わずに歩き出すのでそれについていく。

 何処かへ移動している途中で十六夜さんに質問を投げかける。

 

「あのっ、十六夜さん。少し聞きたい事があるんですけど」

「はい、答えられる範囲でしたら何でもどうぞ」

 

 そう淡白に返す十六夜さん。

 クール系なのだろうか、、まぁそんな事はどうでもいい。

 重要なのは質問だ。

 

「ありがとうございます。じゃあまず…ここは何処ですか?」

「ここは紅魔館、当主のレミリア・スカーレット様が治めている屋敷でございます」

「へー…」

 

 屋敷とか冗談でも言っているのかと突っ込みたくなるが、十六夜さんの言葉は嘘じゃないと思える程のそっけない答えだった。まるでここが屋敷なのが当たり前みたいな感じだったので取り合えずは信じてみよう。

 質問は続く。

 

「俺は何でここにいるんですか?」

「門番の美鈴が庭で倒れている貴方を発見しまして、放って置くわけにもいかずあの部屋で寝かせていました。鍵をかけていた件については貴方が暴れた時の予防策としてですのでお気になさらず」

「そ、そうですか」

「他に知りたい事はありますか?」

「あ、あります。十六夜さんは何故メイド服を着ているんですか?」

 

 俺がいた国は日本、日本でメイド服を着るような奴なんてコスプレイヤーぐらいしかいない。

 しかし見たところこの人は趣味で着ているなんて感じはしない。

 

 俺の質問に十六夜さんは一度立ち止まり、こちらを向く。

 

「これが私の仕事服ですのでこの館で働いている限りはこの格好は止めないでしょう」

「そ…そうですか……」

「質問は以上で終わりですか?」

「はい、ありがとうございます」

「私は答えられる事を伝えただけです。それでは行きましょう」

 

 それだけ言うと十六夜さんはくるりと振り返ると歩き出す。

 そこからは特に話す事もないので無言の時間が続く。

 

 そして10分ほど歩いたところで、人一倍大きな扉の前に着いた。

 

「こちらです、この部屋に入ってください」

「はい」

 

 そう返事をすると十六夜さんが扉を開ける。

 中から生臭い匂いがするが我慢して中に入る。

 そして俺が入ると同時に十六夜さんが扉を閉め始める。

 

「それでは私は仕事があるので…さようなら」

「ありがとうございました。また会いましょう」

「………えぇ」

 

 少し妙なためを作って返事をする十六夜さん。

 そして扉が閉まると同時に施錠音が聞こえる。

 中は…薄ぼんやりと明るいが見えにくいな、しかも生臭いし。

 そう思っていると部屋が徐々に明るくなっていく。

 

「お、着いた」

 

 周りを見る、どうやらここはゲームとかで出てくる玉座みたいな場所だ。

 部屋には真ん中に置かれている大きい椅子以外何も無い。

 しかもその椅子には6、7歳くらいと思われる女の子が何か口で噛んでいる。

 その服は赤色に汚れていて髪はボサボサである。

 

「けど何でこんな所に子供が?」

 

 俺が呟いた声に反応したのか、女の子が何かを吐き出す。

 

「ほぅ、中々いいな。見たところ…17歳前後か、私の好みの年齢だ」

 

 女の子とは思えないほどの口調。

 それに好みって一体何の好みだ。

 

「背がそんなに高くないところが傷だが、中々のイケメンではないか」

「あ、ありがとうございます」

 

 貶されたのか褒められたのかは分からないが取り合えず礼を言っておく。

 すると少女は笑う。

 

「ははははは!!!どうやら久しぶりに上玉じゃないか!!おい、人間!!名は何と言う!!」

「えっと…上井《かみい》和希《かずき》ですけど」

 

 少女は俺の名前を聞いて嬉々とした表情で立ち上がると光り輝く物体を放ってくる。

 何だこれ…と思っていたが体が何かを感じたのか本能的に光の物体を避ける。

 光り輝く物体は俺の後ろにある扉にぶつかると大きな爆発を起こす。

 俺は爆発の風圧に乗せられて少し吹っ飛ぶ。

 

「今のを避けるか!面白いぞ、人間!!!」

「何だよ今の!!?」

「今日は気分がいい!貴様が朽ち果てる前に特別に私の名を教えてやろう!!!私はレミリア・スカーレット、この紅魔館の当主であり吸血鬼だ!!!」

 

 駄目だ会話が噛み合わない。

 話し合いで穏便に済ます…というのはどうにも無理そうだ。

 しかもあの少女はどうやら十六夜さんが言っていた当主のレミリアさんらしい。

 あの子が当主かどうかは後で考えるとして、問題は彼女が俺に物凄い殺気をぶつけていることだ。

 殺気とかそういうものは無いと今まで思っていたが今後から少し考えていかなければならない。

 もっとも今の状況の俺に今後があるかが謎だが。

 

 周りをもう一度見る。

 鍵は施錠され、出口は一つしかなく、目の前には今にも俺を殺さんとする狂気に満ちた少女。

 ……これ詰んだんじゃね?と思ったときレミリアさんが叫ぶ。

 

「遊び相手として10分間私の攻撃を耐え切ったら特別に貴様を見逃してやろう!!」

 

 その言葉が本当かどうか分からない。

 だが今の状況ではその言葉を信じるしかない。

 やってやる…10分間逃げ切ってやる。

 

 そう決意した俺はレミリアさんが出す次の攻撃を見極めようと腰を低く構えた。

 

「はあっ!!」

 

 光の物体がこちらにめがけて飛んでくる。

 先程より若干速いが避けられない程ではないので避ける。

 こいつまさか手加減して弄んでいるのか…?

 

 その疑問は確信に変わる。

 

「ほら、どうした!!!どんどん速くしてやるから死ぬなよ人間!!!」

 

 これは鬼畜ゲーの始まりだなと俺は思った。

 

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