東方狂世録   作:myo-n

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紅魔館はすっごい攻略が早いですけど、そこは作者が慣れてないからって事で許してください。


第2話

 目の前に攻撃がきてそれを左に避ける。

 左に避けたところへ放たれる攻撃はしゃがんで避ける。

 そしてすぐさま立ち上がりまた走り出す。

 

 さっきから殆どこれの繰り返しだ。

 もう一時間経ったんじゃないかと思えるがどれくらい経ったのかが分からない。

 

「どうしたどうした!!まだまだこれからだというのに!!!」

 

 徐々に息が荒くなっていく。

 膝が悲鳴を上げているが気合で動かす。

 膝が完全に壊れるのが先か、それとも時間が経つのが先か。

 もはやそんな事も考える余裕が無くなってきた。

 

 そして徐々に激しくなる猛攻を全力で避け続けて、遂に少女が攻撃を止めた。

 

「ちっ…時間切れか」

「はぁ…はぁ……」

 

 疲労の溜まりすぎでガクッと膝を落とす。

 汗が大量に出て服がそれを吸う。

 濡れた服が引っ付いて気持ち悪い。

 

 逃げ切ったという達成感と喜びが湧く。

 その余韻に浸っているとレミリアが不満げな顔でこちらに近寄る。

 

「ちっ、まさか本当に逃げ切るとは。…まあいい、約束通り見逃してやろう」

 

 ほら行った行ったと急かされる。

 ホッと安心して彼女に背中を向けて扉へと向かう。

ーーーーだがそうした瞬間に彼女に異変が起こる。

 

「お前…何を!?ぐ…あああアああああぁぁァァ!!」

 

 驚いて後ろを振り向く。

 そこには先ほどのレミリア…と彼女に似た黒いナニカがいた。

 黒いナニカはレミリアの体に一瞬にして纏わりつく。

 苦しそうな叫び声は止んだが、代わりに沈黙が訪れる。

 静かな空間、永遠に続くのかと思われた矢先レミリアが喋る。

 

「いヤ…ヤメて…ヤメてヤメてヤメてヤメてヤメてぇぇぇ!!!」

 

 それが彼女の叫びかは分からない。

 だが一つ言えることがある、それはこの状態を放置しておくとまずいことになりそーー

 

 そう思いかけた時、何かに吹き飛ばされる。

 そして反対側の壁まで飛ばされてぶつかった。

 壁にぶつかったと同時にメキという嫌な音が聞こえた。

 骨を折ったのかと思い体を見るが折れていない、多分ヒビが入ったんだろう。

 何処を折ったかなんて分からない、全身に痛みが走っているからだ。

 ボロボロの体に鞭を打って立ち上がってレミリアの様子を見る。

 

 よく見ると彼女はカタカタ震えている。

 何か呟いているようだが聞き取れない。

 やがて震えが止まるとこちらに向いて。

 

「お兄サん…人。人…ヒトぁ……」

 

 呻くようにして言葉を発しながらこちらに近寄ってくる。

 扉は彼女の後ろ、そこにしか出口は無い。

 おまけに体はボロボロ、とてもじゃないが扉に向かって走ることなんてできない。

 

「はぁ…はぁ……くそっ」

 

 頭の中を絶望の二文字がよぎる。

 なんせ彼女が出した風で俺の体がボロボロになったんだ、仕方が無いだろう。

 しかも彼女は今正気じゃない、彼女にまとわりついている黒いものが恐らく正気を失わせている。

 

「おにイさン、ひと?ヒトは…コロさなイと…殺すころすコロスコロス――――!!」

 

 突如レミリアが走る。

 彼女の両手には赤い…いや赤黒い槍みたいな物が握られていた。

 あんなもの何処から?などと思う暇も無く赤黒い槍が投げられる。

 赤黒い槍は俺の横を通り抜けて壁にぶつかる。

 すると、今まで傷一つ付かなかった部屋の壁に大きな凹みができた。

 

「まじか…!!?」

 

 彼女はわざと外したのかそれとも狙いが定まらないのか。そんなことはどうでもいい。

 今俺がするべきことはあの槍に当たらないようにする事だ。

 

 槍が再度放たれる。

 今度は肉眼で追う事ができないスピードだ。

 

「なっ―――!」

「死ンじゃえ」

 

 肉眼で槍を見ることができずに気が付いたら槍は目と鼻の先にあった。

 流石にこれは避けられない、そう思い目を瞑る。

 しかし…何も感じない。

 恐る恐る目を開けると、目の前には何も無かった。

 

「ナんで?なんでなんでナんでナンデナンデ!!!」

 

 何でかなんてこっちにも分からない。

 イライラしているのかレミリアはもう一度槍を投げる。

 

 槍はまた俺の目の前まできて―――弾けるように霧散した。

 

「……え?」

 

 思わず出た一言。

 霧散したのは間違いなくレミリアの仕業ではない。

 正気を失っていて俺を殺そうとしている奴がそんなことをするはずが

ない。

 

 再度飛んでくる槍、それに対しやや怯みながらも両腕を出す。

 槍は目の前まで来ると手に当たるか当たらないかの距離で弾けた、周りには誰もいない。

 

「やっぱり…」

 

 恐らくだが、槍を霧散させたのは俺だ。

 誰かが助けてくれたのなら今のを防ぐために必ず姿を見せるからだ。

 まさか俺にそんな隠された力が…!?

 まあそんな冗談はさておき。

 

「やって…みるか」

 

 痛い体に鞭を打って立つ。

 正直、体の状態は最悪だ。

 全身は痛いわ、擦り傷に切り傷はあるわ、目も霞んでるわで限界に近い。

 だけど、今ここで動かないと彼女が、レミリアが辛そうだから。動くしかない。

 

 立ち上がった俺を恐れるように後ろへ下がるレミリア。

 しかし俺はゆっくりと彼女に歩んでいく。

 

「ッ…!!こなイで、こないでこないで!!!」

 

 彼女は発狂しながら槍を投げる。

 しかし狙いが大きく外れているので俺には当たらない。

 ゆっくりと一歩ずつ進む。

 

「…おい、いつまでふざけてんだ」

「ひッ…!!?」

「この館の当主のお前が…そんなザマじゃ、駄目だろ」

 

 歩きながら精一杯叫ぶ。これが俺の今の気持ちだ。

 息も絶え絶えで今にでも倒れたいが、なんとか踏ん張って歩く。

 段々と距離が近くなるにつれて徐々にレミリアが焦っていく。

 

「イや、いやイや嫌―――!!!!邪魔…シナいでッ!!」

 

 彼女の頭上に黒い雫みたいな物が集まっていく。

 それらはやがて大きな水の塊と化し、そしてドス黒くて巨大な槍へと変わる。

 

「フふふふ…アハハハハハ!!!!」

 

 狂気に満ちた笑い声を上げるレミリア。

 それはまるで勝ちを悟ったかの様なその笑い声だ。

 

「コレデ…終わリィぃぃ!!!!」

 

 叫び声とともに槍がこちらに向かってくる。

 正直言うと逃げたい気持ちでいっぱいだ、だがここで動かないと絶対に公開する気がする。

 何でだろう、何で見ず知らずの少女を助ける為にここまでするんだろう。

 

 自分に問う、何がしたいのか。

 そんな事…とっくに決まっている。

 俺は――――

 

「ただ目の前で苦しんでいる女の子を見ていられないだけだ!!」

 

 そう全力で叫ぶ、その叫び声に押し負けるかのように槍は消えた。

 その事によりレミリアは一瞬だけ隙ができる。

 その隙を逃さないとばかりに俺は走って彼女を抱きしめた。

 鉄くさい匂いとぬめっとした感触を感じる、それでも俺は彼女を抱きしめる。

 

「やめろ…ヤメロヤメロやめろやめてやめてやめて!!!!!!!」

 

 必死にもがいて抜け出そうとする彼女を死に物狂いで抑える。

 そんな彼女の頭に手を置いて、諭すように喋りながら頭を撫でる。

 

「怖がらなくてもいい、俺は何もしない。だから…安心しろ」

「ッ…!!!」

 

 彼女の動きがピタッと止まる。

 よく見ると彼女に纏わり付いている黒いものが薄れてきている。

 

「お前に何があったのかなんて、俺には分からない。ただ…俺は、お前の敵じゃ…ない」

「………」

 

 元々ギリギリだった体のうえに、レミリアの抵抗を必死に抑え込んだことで体が上手く動かない。

 おまけにもう瞼も重くて、今目を瞑ったら間違いなく意識を落とすだろう。

 だがそれでも俺は彼女を抱きしめて撫で続ける。

 もう少し…もう少しなんだ……

 

 最後に無言で強く抱きしめる。

 すると彼女に纏わり付いていた物が煙のように天へと昇った。

 そして俺が抱きしめていたのは狂気に満ちた黒いものではなくこの館の当主、レミリア・スカーレットだった。

 

「すーすー……」

「良かっ、た…」

 

 彼女が戻った事による安堵からか一気に体の力が抜ける。

 抱きしめている彼女をもう一度見る。

 寝ているようだが、その寝顔はとても可愛かった。

 

「俺も…少し、寝るか……」

 

 そして俺はレミリアを抱きしめたまま眠るように意識を失った。

 




おぜう様可愛い。
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