東方狂世録   作:myo-n

3 / 12
頑張っていくぞ、おー!


第3話

 部屋に差し込む日差し。

 部屋はとても静かで外で風に揺られる木々の音が微かに聞こえるくらいである。

 部屋の中にはベッドとテーブルの二つしか置かれていなく、非常に質素に見える。

 一見、誰もいない様な部屋だと思うが、その部屋のベッドの上では1人の青年が眠っていた。

 そして、その隣には――――

 

 ---

 

 目が覚める、どうやら死んではいなかったようだ。

 だがしかし起き上がる事が出来ない、それに体が痛い。

 

「ここは…」

 

 確か…俺はレミリアって女の子に殺されかけたんだっけ。

 最初の方は光の球だったけど途中から正気を失って赤黒い槍を出してきた。

 その槍は馬鹿みたいな威力で俺の体はボロボロにされた。

 既に満身創痍(ぼろぞうきん)だった俺は気合で意識を保ってレミリアに近づいた。

 当然ながらレミリアは俺に槍をぶつけてくる。

 もう詰んだなと思ったけど不思議な事に一撃必殺みたいな威力を持つ槍をかき消してしまった。

 それでレミリアを抱きしめて何か言った後気絶したんだな。

 

 そこまで考えてふと、体にかかる重さに気づいた。

 

「うっ……ぅぅ」

 

 体にかかっている重さの正体に目を向ける。

 そこには新品同様に綺麗なドレスを着ているレミリアが苦しそうな様子で寝ていた。

 

「…おい、大丈夫か?」

 

 体が動かないので声をかける。

 しかし起きる気配が無い。

 どうしたものかと考えていると、部屋の扉が開く。

 

「失礼します」

 

 言うと共に部屋に入ってくる女性。

 俺はこの人を知っている。

 白髪でメイド服の美人の十六夜さんだ。

 

「えっと…こんにちは、十六夜さん」

「はい、こんにちは」

 

 十六夜さんは俺に挨拶と一礼をするとレミリアの所へと近づく。

 彼女はレミリアの肩を持って優しく揺さぶる。

 

「お嬢様、日が出ていらっしゃいますよ」

「……うにゅ?……しゃく…や?」

「……ブフォ」

「??」

 

 レミリアがまだ眠そうな様子で目をこすりながら顔を上げる。

 そんな彼女が寝ぼけながら発した言葉を聞いて十六夜さんは手で鼻を覆う。

 その手から少しばかり血が滴り落ちたように見えたが、気のせいだったみたいだ。

 

「…はい、お嬢様。既に日が出ていますので大広間にお越しください」

 

 そう伝えながらどこからか持って来た濡れているタオルでレミリアの顔を拭く十六夜さん。

 顔を拭かれた事で完全に目を覚ましたレミリアは背伸びをする。

 

「う~…!あー、よく寝たわ。咲夜ー、今何時?」

「朝の十時前後かと」

「そんなに寝てたの?まぁいいわ、さっさと行くわよ」

「お客人はどうしましょうか?」

「動けたら行かせるけど……まだ治ってなさそうね」

 

 こっちを見て渋い顔をするレミリア。

 確かに今俺は体が動かせないので何処かへ移動などできるはずも無い。

 うーんと考えるレミリアは十六夜さんに命じた。

 

「取り合えずパチェに治してもらうように言って、移動は美鈴にさせて頂戴。それまで私はここに居とくわ」

「かしこまりました、お嬢様」

 

 そう言うと十六夜さんは消えた。

 比喩とかの消えたじゃなくて、本当に目の前で消えた。

 

 目の前で起こった現象に理解できずに驚いていると、レミリアがベッドに腰掛ける。

 

「驚いた?ま、うちの咲夜は〝時間を止める程度の能力〟を持っているから仕方ないさ」

「はぁ…?」

 

 理解できない事がもっと理解できなくなった。

 

 時を止める?そんな中二設定いらねーよ?

 そもそも俺の中じゃ時を止められるのは石仮面つけて吸血鬼になったザ・○ールドの使い手とスター・○ラチナの使い手ぐらいしか知らないよ?

 

「…信じてない?」

「…あぁ、流石に信じられない」

 

 少女が光の球を出したり、槍を出して部屋をぶっ壊したりしたのを見ても、流石に時を止められるんですよこいつと言われて納得はできない。

 

 そんな俺の態度にムッとしたレミリアが、二つのサイコロをポケットから取り出す。

 

「じゃあ私が今から実践してみるわ。私が持っているのは〝運命を操る程度の能力〟よ、簡単に言うと私は人であろうが物であろうがその運命を自由に操れる事ができるの。ここにサイコロがあるでしょ?今からこれで能力を見せるから見ときなさい」

「分かった」

 

 返事をすると、レミリアが二つのサイコロを同時に投げる。

 サイコロはテーブルの上に落ちると5と6の目で止まる。

 これじゃあ何も分からない、そう言おうとした時レミリアが喋る。

 

「―――――サイコロよ、貴様は四の目で止まる〝運命〟だ」

 

 レミリアがそう喋るとテーブルの上に落ちたサイコロはもう一度バウンドして両方とも4の目に変わった。

 

「どう?これが私の能力。分かりやすくするためにサイコロでやったけど、本当はもっと大きな物とかでも運命を操れるわ」

「おお…凄いな」

 

 感嘆の言葉が出る。

 サイコロという地味な物だったとはいえ、5と6の目だったサイコロが両方4の目になったのだ。

 これは凄いと思うしかない、しかもこれが人などでも運命を操れると言うのだから恐ろしい。

 

 俺に褒められたのが嬉しいのか、レミリアはややドヤ顔になる。

 

「でしょ?サイコロだと地味だとか言われて若干落ち込んでたのよ」

「いやいやそんな事無いと思うぞ。5と6だったサイコロが両方4になったんだし」

「そうよね!やっぱり、分かる人には分かるんだ…!!」

 

 何か最初の時との口調と様子が違いすぎてやや驚く。

 しかしこっちの方が可愛いので問題ない。

 

 そんな事を思っていると、十六夜さんが扉を開けて入ってくる。

 

「お嬢様、連れて参りました」

「ご苦労、では大広間へ…と言いたい所だが先に博麗神社に向かおう。咲夜、付いてきてくれ」

「かしこまりました」

「では客人、私は用事があるので行かせてもらうぞ。治療はパチェに頼むがいい」

「は…はぁ」

 

 なんだか間抜けな返事をした後、レミリアと十六夜さんは部屋を出て言った。

 そして代わりに寝巻きみたいな服に三日月の小物がポイントの帽子を被った女の子と背中に小さな羽根が付いている赤毛の女の子が部屋に入ってきた。

 

「ゴホっ、ケホっ……全く、面倒な事を押し付けてくれるわね」

「美鈴さんを戻していいんですか?帰るときに大変ですけど」

「その時はこの人に背負ってもらうわよ」

「そうですか…。あっ、初めまして!私は小悪魔と申します!!こちらはパチュリー様です!」

「パチュリー・ノーレッジよ、よろしく」

「俺は上井和希です、よろしくお願いします」

 

 お互いに名前を述べると、パチュリーさんは咳をしながら分厚い本を3冊程テーブルに置く。

 

「早速だけど貴方の体を治すわ、じっとしてなさい」

「分かりました」

 

 パチュリーさんは俺の周りに何やら怪しい魔法陣みたいな物を描き始めた。

 すると小悪魔さんが白い粉を持ってきた。

 

「これは睡眠剤です、これから行う魔法は少し痛みを伴いますのでこれで寝ていてください」

「は、はい」

 

 言われるがままに小悪魔さんに粉を口に入れられて水を飲まされた。

 即効性なのか、俺はすぐに瞼が落ちていく。

 小悪魔さんに頭を撫でられている様な気がするがそんな事を気にせずに俺は深い眠りへと誘われた。

 

 




感想など、送っていただけると嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。