東方狂世録   作:myo-n

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第5話

「着いたわ。ここが目的地よ」

「そ、そうか…」

 

 息を切らしながら返事をする。

 ここがパチュリーさんの目的地であり、着いたわけだが…

 

「はぁ…はぁ…」

 

 超遠い、まるで嫌がらせのように遠い。

 階段下りてから真っ直ぐ進んで20分ってありえるか?

 俺がいたあの部屋からもう30分程歩いていたんだぞ。

 しかも人一人背負っている状態だったからもう限界だ。

 

「ありがとう、あと少し頑張って頂戴」

「分かってるって」

 

 頑張って足を動かし、扉を開けて中へと入る。

 中はとても広く、周りには至る所に本棚があってそこに本が置いてある。

 

「凄いな…。図書館か?」

「えぇそうよ。本が見たいなら、こあを付けて見せてあげるわ」

「あぁ、よろしく頼む」

「分かったわ。じゃあ奥に大きい椅子があるでしょ?そこまで運んで」

 

 よく見ると奥の方に座り心地の良さそうなクッションみたいな椅子がある。

 しかし…

 

「遠いな…」

「…気合よ」

 

 軽く500mはあるな、これ。

 というか500mも幅がある図書館って凄いな。

 

 やや驚きながら重い足を動かせる。

 ゴールは目の前なんだ、すぐ着くはずだ。

 

 そして半分ほど歩き続けると、小悪魔さんが本棚の角から現れる。

 

「あっ、パチュリー様と上井様!どどっ、どうしたんですか!!?」

 

 小悪魔さんは明らかに驚いている。

 まぁそりゃ、肌着一枚の男が女の子背負ってたら驚かれもするだろう。

 仕方の無いことだ。

 

 しかしパチュリーさんはバツの悪そうな顔で答える。

 

「ちょっと運んで貰っていたのよ、私の椅子までね」

「そ、そうですか…。あれっ?でもパチュリー様は確か転移魔法を使う事ができたのでは?」

「うっ…」

 

 痛いところを突かれた様な顔になるパチュリーさん。

 え?まさかテレポみたいなのができたりしたの!?

 それじゃあ俺の努力って一体…?

 

「でもあれは魔力を結構消費するわけでっ…!」

「結構消費するって言っても、パチュリー様の膨大な魔力の前では小さな物ですよね?」

「むきゅ…!」

「小悪魔さん、その話…本当ですか?」

 

 目は向けられないけどパチュリーさんに問いかける。

 しかしパチュリーさんからの返事は無い。

 代わりに小悪魔さんが返事をする。

 

「はい、本当ですよ。なんたってパチュリー様は偉大な魔法使いですから!!」

「パチュリーさん……」

 

 まさかそんな便利な物があったなんて…

 つまり俺の努力はまったくの無駄だったて事になるのか。

 悲しいな…。

 

「こあ…後で覚えときなさい」

「ええー!?何でですか―――あ、そういうことですか!!」

 

 パチュリーさんの言葉から何かに気づいた小悪魔さん。

 そして顔をニヤケさせて俺の周りをぐるぐる回りながら喋る。

 

「ねぇねぇ、どんなお気持ちですかー?パチュリー様が気に入られた殿方に密着できてどんなお気持ちですかー?」

「………」

 

 絶句するパチュリーさん。

 相当煽ってくるな…小悪魔さん、かなりうぜぇ。

 この状況を放っておくのは流石に酷なのでパチュリーさんに助け舟を出す。

 

「ま、まぁその辺にしないか?きっとパチュリーさんも疲れていたんだよ」

「そうですか~?意外とわざとやったのでは~?」

「わざとであろうがなかろうが別にいいだろ」

「上井様もそんなに否定なさらず~♪」

「むきゅ……」

「それくらいにしとけよ」

 

 ついいつもより低いトーンで言ってしまった。

 カッとなるとやってしまう俺の悪い癖だ。

 でも俺は執拗に煽ってくる奴は嫌いだから仕方ない。

 

 小悪魔さんはさっきとは違う俺の声を聞いて、ビクッと驚く。

 

「は、はいぃ!すみませんでした!!」

 

 そう言って一度平謝りすると、猛スピードで走っていった。

 それはもう脱兎という表現がぴったりなくらいに速かった。

 小悪魔さんが去っていったので俺は再び歩き出す。

 そして歩きながらパチュリーさんに優しく喋りかける。

 

「大丈夫か?でたらめな事を煽られるのは腹立つよな」

「…うん」

「まぁパチュリーさんが瞬間移動みたいな物が使えるのは驚いたけどな」

「…うぅ」

「でもそのせいで疲れているんだから、これは仕方ないことだ。なら俺が責任を持って運ぶのが筋ってもんだろ?」

「……そう…ね」

 

 パチュリーさんの返事を聞くと、会話が終わる。

 そのまま歩き続けてパチュリーさんが言った椅子に着いた。

 俺はパチュリーさんを優しく降ろす。

 

「到着だな。さて…どうしようか」

「…本でも見ていかない?」

「あぁ、それがいいな。やる事もないし」

「何の本がいいの?」

「それじゃここら辺の地理についての本で」

「…ごめんなさい、それはないの。私達もつい10年前にここに来たんだから」

「そうか…」

 

 そもそもの話、俺は一体何処の国に飛ばされたのかが分からない。

 日本にはいないだろう、日本にこんな屋敷があったら少なからず観光名所になるし。

 となると外国に飛ばされたという線が強いだろう。

 俺の予想ではヨーロッパの国辺りだと思うけど…言葉が通じてるしなぁ……。

 

 そんな俺を見てパチュリーさんが喋る。

 

「なら私がここについて説明してあげるわ。こあ、椅子を一つ持ってきて。あとここの地理についてまとめた書類もお願い」

 

 まるで小悪魔さんがいるかのように喋るパチュリーさん。 

 何をしているんだろうとか思っていたら小悪魔さんがすぐ走ってきた。

 彼女の手には椅子と4枚の書類があり、それをパチュリーさんに渡すと猛ダッシュで行ってしまった。

 

「この書類は私が知っている限りでの情報で作成したここの情報よ。大雑把な情報だけど、役に立つと思うわ」

「そうか」

 

 書類を受け取り目を通す。

 書類には色々記されていた。

 

---

【幻想郷】

 妖怪の賢者と呼ばれる、八雲(やくも)(ゆかり)が創造したとされる場所。

 現在自分たちを含め、妖怪や人など多種多様な生き物が生息している。

 幻想郷は元々人がいた世界、下界から切り離された世界である。

 そのため、下界の人間がこちらの世界に来る事は多少ある。

 しかしその場合、八雲紫や幻想郷を覆っている結界の修復などに携わっている博麗の巫女が下界から迷い込んだ人間を元の世界へと送り返している。

 

【博麗の巫女】

 幻想郷における人と妖怪とのバランスを保つ役目を担う巫女。

 その力は代々強力であり、現代の巫女である博麗霊夢は〝弾幕ごっこ〟と呼ばれる、殺さない為の戦闘を編み出した巫女だ。

 しかし彼女は自分の役目に対する行動意識が低く、度々その事を八雲紫に注意されている。

 そんな彼女だが、やる気になると誰よりも頼り強い存在になる。

 

【弾幕ごっこ】

 博麗霊夢が生み出した殺さないための戦闘。

 基本的にスペルカードと呼ばれる自身の技を練りこんだ札を3枚使う。

 ただ勝てば良いと言う物ではなく、美しさや技の構成などを見る事もある。

 

【異変】

 稀に自分たちの望みを叶えようとして、幻想郷に悪影響をもたらそうとする時の呼称。

 基本的に博麗霊夢とその友人らが解決に動き、終わった後は異変を起こした側が宴会を開き全てを酒に流す。

 

---

 

 書類の一枚を読み終わった事で、ある疑問が生まれた。

 

「なぁ、これに書かれている下界の人間が迷い込むって……」

「えぇ、貴方みたいな人間を指すのよ」

「いや、でもまさかそんな事が」

「あるのよ。現にこの紅魔館に人間である貴方がいるのは可笑しい事だもの」

「そうか……」

 

 これを読んでいて可笑しいとは思ったんだよ。

 日本にはそうそうないはずの目立つ館とかあるし、メイドさんはいるし、当主が吸血鬼とかいう想像上の物だし。

 ここは日本じゃないと思っていたがまさか世界が違ったなんて。

 でも博麗の巫女の博麗霊夢か八雲紫に会えば元の世界に戻してもらえるはずだ。

 当分の間はそれが目標だな。

 

 薄々ここは違う世界だと感じていたため、さほど驚きはない俺。

 パチュリーさんはそんな俺を見て、問いかけた。

 

「で、どうするの?貴方がここに居たいって言うならレミィは歓迎すると思うし、帰りたいなら手伝うわよ」

「うーん…怪我を治してくれたのはありがたかったけど、俺は帰るわ。家族とか友達とか心配だし」

「……そう、分かったわ」

 

 そう返事を返すパチュリーさんはどことなく寂しそうだった。

 しかし直ぐに元のクールな顔に戻って立ち上がった。

 

「それじゃあまずは霊夢に会わないとね」

「そうだな」

「私に何の用かしら?」

 

 意気込んだ俺とパチュリーさん会話に割って入るように一人の声が聞こえる。

 俺は声が聞こえた後ろの方向を向く。

 そこには紅と白の大きいリボンが特徴的な少女がこっちに向かって歩いていた。

 パチュリーさんはその顔をみるなり、めんどくさそうな顔になっていく。

 

「貴方…なんでここにいるのよ」

「少しあんたの所の当主に頼まれて来たのよ。下界の人間がいるのよってね」

「魔理沙は?貴方がいるなら一緒にいると思うのだけれど」

「残念、魔理沙はいないわよ。家にいなかったからどこかできのこでも食べてるんでしょ」

「そうね。で、何の用事なのかしら?」

 

 魔理沙というキラキラな名前が出てきたが、それについて追求すると話が長くなりそうなのでしない。

 というより、まさかこの子が博麗霊夢か?

 パチュリーさんも霊夢って呼んでたみたいだしきっとそうに違いない。

 これで帰れる…良かった。

 

 安心と喜びを顔に出していると、博麗さんがじろじろと見てくる。

 

「ふーん…どうやらこいつが下界から来た人間みたいね」

「えぇそうよ」

「確かに服装も違うしそもそもここにいるのが可笑しいし…」

「そんなに珍しいの?」

「そりゃ珍しいわよ、正気を失ったレミリアを元に戻したなんて話を聞いたらね」

「…何が言いたいの?さっさと彼を下界に戻しなさいよ」

 

 興味深そうに俺を見る博麗さんに痺れを切らしたのか、パチュリーさんがややイライラして言う。

 その言葉を聞いて博麗さんが首を横に振って答える。

 

「悪いけど、それはできないわ。少なくともこいつが異変に関わっている限りね」

「異変に関わっている?別に俺は何もしていないぞ」

 

 俺が否定すると、博麗さんが俺に目を合わせる。

 

「初めまして私は博麗霊夢、霊夢って呼んで。悪いけど、今回貴方は異変に関わっているわ」

「何でそんな事が分かるんだよ」

「詳しい事はレミリア達と一緒に話すわ。いいから行くわよ」

「待ちなさい」

 

 俺を強引に連れて行こうする霊夢さんをパチュリーさんが止める。

 

「何よ?」

「私も行くわ、だから彼を離しなさい。後で合流するから」

「…分かったわ、じゃあ大広間に集合よ」

 

 そう言うと霊夢さんは部屋を出ていった。

 するとパチュリーさんはため息をつく。

 

「はぁ…面倒な事になったわね」

「そんなの俺に聞かれても」

「分かってるわ。とにかく今やるべきは霊夢の話を聞く事よ、彼女が帰さないというなら帰してもらえないしね」

「…そうだな、じゃあ行くか」

「私が転移魔法を使うから、私を背負って頂戴」

「りょーかい」

 

 またパチュリーさんを背負う。

 しかし今度は歩かなくてもいい、パチュリーさんが瞬間移動もとい転移魔法を使って移動するのだから。

 そう思いながら、俺とパチュリーさんは部屋から消えた。

 




~おまけの話~

主=上井 パ=パチュリー 小=小悪魔

主「なぁ幻想郷について書かれているのはこれだけか?」
パ「えぇ、資料がないから私が記したの」
主「へー、凄いな」
パ「まぁ、暇つぶしに書いたから詳しくは無いけどね」
主「これで詳しくないのか…。それにしてもよく四枚も書けたな」
パ「何言ってるの、私が書いたのは三枚よ」
主「え?でもこれ四枚あるぞ」
パ「本当?ちょっと見せて」

パ「えーと…『必見!意中の男を落とす方法』…?」

主「何だったんだ?」
パ「…何でもないわ、ただの書類が混ざってたみたいね」
主「そうか」
パ「悪いけど、少しの間耳を塞いでくれるかしら?」
主「何で急にそんなこと」
パ「いいからやりなさい」
主「分かったよ」

パ「小悪魔!」
小「はいっ、何でしょうか!」
パ「これは何?」
小「それは私なりの応援です!パチュリー様、ファイトです!!」
パ「……貴方、後でお仕置きね」
小「えぇー!!何でですか!」
パ「話は終わり。さっさと行きなさい!」
小「でもそんな酷い仕打ちないじゃ「行きなさい、二度は言わないわよ」…はい」

主「……一体何だったんだ?」

~おしまい~
※この話は本文と全く関係ありません

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