本がたくさんあった部屋から一瞬にして大きな広間に移動した。
転移魔法って便利だなー、最初からこれを使っていればなー…。
しかし過ぎた事に文句は言えない。
そう思いながら、俺は周りを見る。
どうやら着いた場所には霊夢さん、レミリア、十六夜さんの三人とよくできた人形を持っている金髪の少女が椅 子に座っていたようだ。
…ん?霊夢さん、あなた何で俺たちよりも早くいんの?
転移魔法なる瞬間移動をした俺とパチュリーさんより早いなんて。
こいつ何て脚力してんだ、いやいやそう言う話じゃない。
「いやーやっぱり楽ね、あんたんとこのメイドに運んでもらうと」
「霊夢…貴方、重くなりましたね」
「やかましい」
あ、そういう事ね。
十六夜さんには時を止められるというチートがあるの忘れてたわ。
時間止めて霊夢さん移動させたらそりゃ俺たちよりも早いわけだ。
それにしても十六夜さんは霊夢さんを運んでここまで来たのか…
ここがどこにあるのかは知らないけどお疲れ様です。
「パチェも来たの?」
「えぇ、彼を送るついでよ。暇だし話ぐらい聞いておこうと思って」
「そう、あんまり無理しないでね。じゃあ今から異変について会議しましょう」
レミリアはパチュリーさんを心配した後、椅子から立ち上がった。
そして俺はパチュリーさんに連れられて彼女の隣の椅子に座る。
そしていよいよレミリアが喋ろうとした時、十六夜さんが手を上げた。
「お嬢様、美鈴とフラン様は召集しなくても良いのでしょうか?」
「美鈴は寝ているだろうし、フランも寝ているだろう。今は寝かしときなさい」
「かしこまりました」
「よし、じゃあ説明するわよ」
十六夜さんは質問を終えると静かに席に座る。
そしてレミリアが説明を始める。
「まず今回、私が正気を失った事についてよ。そもそも500年も生きている私がそうそう正気を失って暴れる事はない。だが数日前、私は緩やかに狂っていく自分を自覚した。よって太一がここに来る数日前、私は咲夜に命じて自ら密室に閉じこもった。だけどまさか太一が入って来るのは意外だったわ」
そこまで言うと、レミリアは十六夜さんに目を向ける。
十六夜さんは若干バツの悪そうな顔になるが、直ぐに元の表情に戻る。
「申し訳ありません。お嬢様が閉じこもってから数日経ち、それを狙っていたかのようなタイミングで現れた上井様を事件の関係者かと思い疑ってしまいました。上井様、大変申し訳ありませんでした」
「別に死んではいないし、大丈夫だ。話を続けてくれ」
そりゃそんなタイミングで来られたら俺も疑う。
つまりあれは仕方のなかったことだ。
ってそれより、レミリアが500年も生きている?
普通に考えて嘘だろと思いたいがここは俺の常識では考えられない事が多くあるから嘘じゃないだろう。
その証拠に、俺以外の奴は平然としている。
なんて思いながら、話は続く。
「まぁいいわ。結果的に私は救われたんだから許す」
「ありがとうございます」
「それじゃあ、話を続けるわよ。
部屋に入って来た太一を私は面白がって弄んだ。ほんと、よくあれに耐えれたわね。それで私の遊びをクリアして、まだ僅かに残っていた理性で逃がそうとしたけど黒いものが私にまとわりついて来た。これから後は、太一と咲夜が説明して。悪いけどあれから後の記憶が無いの」
「かしこまりました。ではまず上井様からどうぞ」
おぉう、いきなり来たな。
でも当事者は俺とレミリアと十六夜さんだけだし……ん?十六夜さんは当事者か?
十六夜さんについて首を傾げると、十六夜さんがまたも頭を下げる。
「申し訳ありません。あの時の中の様子は時を止めて大体把握しておりました。万が一貴方に死なれれば色々と面倒ですので」
「そ、そうですか…」
時を止めて中の様子を伺っていたのか十六夜さん。
もしかしたら俺が死にかけたら助けてくれたのかもしれない。
……それはなさそうに見えるけどなぁ。
だって俺けっこう死にかけてたし、最後の方とか部屋が凹む威力の槍投げられてるからな。
十六夜さんに抗議の目を向けると、にこりと殺気の篭った微笑みを返された。
あ、これはわりとマジなやつだ。
そう思いすぐに十六夜さんから視線を外す。
「…えーと…じゃあレミリアに代わって説明させてもらうぞ。まぁ途中まではレミリアが言っていた事と同じだ、でも黒い何かがレミリアを覆うと文字通り狂ったんだ。俺に赤黒い槍みたいなのを投げてきたり、ずっとぶつぶつ呟いていたしとにかくやばかった」
「赤黒い槍…?もしかして…」
「えぇ霊夢、その通りよ。その槍は私のスピア・ザ・グングニルね、ただしスペカで威力を抑えてないフルのやつね」
「貴方…自覚してやってたなら封印してたところよ」
「分かってるわよ、あの時は狂っていたから仕方ないでしょ。私も覚えてないんだから」
「それもそうね。あ、話を戻していいわよ」
「分かった。普通ならあの場面で多分その槍を食らって終わりだった。でもよく分からないけど俺には当たらなかった…いや当たる前に掻き消えたんだ。それで俺はレミリアの所まで走って彼女を説得して気絶した」
説得した内容は結構恥ずかしい内容だったのでここは伏せておく。
だけど俺の知っている事は全て話した、ここで嘘ついても意味は無いし。
話を聞き終えた霊夢さんが十六夜さんに聞く。
「大体同じような感じ?」
「えぇ、全く同じよ」
「そう…えっと、太一だっけ?ちょっとこれに触れなさい」
そう言って霊夢さんは一枚のお札を手渡してくる。
特に断る理由がないのでそれを受け取る。
何か起こるのかと思いきや、何もなかった。
何故札を渡してきたのかを霊夢さんに聞く。
「何でこんなものを?」
「あんたの話を信じるためよ。実はその札、私以外が触ると青く光るようにしてあるのよ。嘘だと思うなら他の奴に渡してみなさい」
「へー…」
やや半信半疑で隣にいるパチュリーさんに札を渡してみる。
するとパチュリーさんの手元に渡った札は青く強い光を放った。
結構キツイ光だったので素早くパチュリーさんから札を返してもらう。
「光強くね!?」
「目くらまし程度だから大した事ないわよ」
「そういう物なのか!?」
「そんな物ね。ほら返しなさいよ」
「お、おう」
催促されて札を手渡すと素っ気無く札を取る霊夢さん。
とてもと言うほどでもないけど男勝りなんだなこの人。
そう思っていると霊夢さんに睨まれました。
「あんた今変な事考えなかった…?」
「い、いや特に何も」
「……そう」
そう答えて自分の席に戻る霊夢さん。
あの人はエスパーなのか。
怖ぇー……
そんな霊夢さんは椅子に座ると俺に白いカードを3枚投げて渡してくる。
「餞別よ、能力がある奴に渡しているの」
「これは?」
白いカードを見つめながら霊夢さんに聞く。
見たところ、何の変哲も無い普通のカードだ。
「それはスペルカードよ、ただし何も入ってない素の状態だけどね。弾幕ごっこに必要だから持っておきなさい」
「あぁ…分かった。けどこれどうやって使うんだ?」
「能力使ったら適当にできるわよ」
「…そうか、ありがとな」
「どういたしま―――」
霊夢さんがどういたしましてと言う途中で大きな揺れが発生する。
それと同時に部屋の電気も消えて周りが暗くなる。
皆が慌てる(特にレミリア)中、十六夜さんが火の灯った蝋燭を持ってくる。
「皆様落ち着いてください。先程の衝撃ですが、どうやら原因は外にいる何者かの襲撃かと思われます」
「どうしたの咲夜!?その鼻血は!!?」
蝋燭の明かりに照らし出された十六夜さんは鼻からポタポタと血を垂らしていた。
それに驚いて心配するレミリア、涙目になっていて若干可愛い。
そしてレミリアの顔を見た十六夜さんは一瞬顔がにやけたかと思ったけど気づいたら元のクールな顔に戻っていた(ついでに鼻血もふき取られていた)。
前々から気になるけど、この人ひょっとして同性を愛せる人か……?
そんな疑問は置きつつ、周りの状況を確認する。
「一体何が起こったんだ!?」
「誰かがこの館に攻撃したのよ。私の魔法によると…氷妖精ね」
そう言いきるパチュリーさん。
吸血鬼だけでなく妖精とかもいんのかよ……
何でもありだな。
「パチェ以外全員外の様子を見に行くわよ!」
「かしこまりました」
「めんどくさいわね…」
「わ、分かった」
先程まで慌てふためいていたレミリアがサッと立ち上がる。
それに合わせて霊夢さんと十六夜さんが立ち上がる。
俺も立ち上がるとパチュリーさんが何処からか取り出したのか、分厚いコートを手渡してくる。
「これを持って行きなさい。相手は氷妖精、慣れてないあなたが丸腰で行くと凍死するわよ」
「あぁ…ありがとな」
「……気をつけてね」
「ん?今なんて?」
「…何でもないわ」
パチュリーさんが何を言ったかは分からないけど、先に行くレミリアの後を追って俺は立ち上がって部屋から出た。
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