東方狂世録   作:myo-n

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第9話

 死ぬたびに炎に焼かれて復活する藤原さんに出会い、霊夢に護身用のスペルカード【夢想天生】を貰った俺は今霊夢達が歩いて出来た道を歩いている。

 

 そんな俺は歩きながら、色々と呟く。

 

「はぁ…それにしても、まるでファンタジーの世界に入ってきたみたいだな……」

 

 魔法、時間停止、不死身、どれも今まで無いと信じていたものだ。

 そんな物アニメの中か小説だけの話かと思っていたのに俺は見てしまった。

 それもとても手品とは言えないレベルの物ばかりだ、納得せざるを得ない。

 おまけに言うと、俺にも何か力があるみたいだし。

 人の攻撃を消せるわ、やけに体は軽いわで俺にも超能力とかいう分類の力があるのを認めざるを得ない。

 これらは何故使えるようになったのか、はたまた元々俺が持っていた物だったのか……考えれば考えるほどわからなくなる。

 

 暫く考え、その答えが曖昧なものばかりに気づいた俺は首を振る。

 

「考えても仕方がないな…。よし、今は目先の事に集中しよう」

 

 今の俺にはやらなければいけないことがある。

 それは狂気に染められたチルノの友達の大ちゃんを元に戻すという約束だ。

 チルノから話を聞く限り、黒い何かが大ちゃんに纏わり付き自分を犠牲にチルノを逃したらしい。

 チルノにとって大ちゃんは親友と言っているから、一刻も早く助けてあげたい。

 

 そう思いつつ、俺は懐に入れている3枚の素のスペルカードを取り出す。

 これは霊夢から餞別に貰った物だが…使い方が未だに分からないのだ。

 

「まさに宝の持ち腐れってやつか…」

 

 まじまじとスペルカードを見つめるが何も出てこない。

 そもそもこれはどういう過程でスペルカードになるのかが分からないまま貰ったので、ただの白いカードなのだ。

 

「…ま、いつか使えるだろ」

 

 そう呟いて懐に仕舞う。

 その時、離れた所からバカでかい音が響いた。

 その音に一瞬だけ怯むがすぐに落ち着いて状況を確認する。

 

「この先は確か…霊夢の所か!!」

 

 霊夢とチルノに何か異変が起きたのだろうか。

 この先にいるのは間違いない。

 そう思うとすぐに音が起きた方に向かって走り出した。

 

-----

 

「こいつは厄介ね…」

 

 チルノに案内されて着いた先は小さな泉。

 そこの水が物凄く汚かったから早く大妖精を探そうとしたらまさか誰かが不意打ちをかけてくるなんて……

 しかも私でさえ感知しにくいし視認もしにくいなんて…ここら辺の妖怪ってこんなに強かったかしら?

 

 霊夢は懐からスペルカードではなくお札を取り出す。

 そしてそのお札を僅かに視認出来ているソレに向かって投げた。

 投げられたお札は、大妖精に当たる数センチ前で爆発して煙を出す。

 そしてその隙に一時撤退をしようと霊夢は駆け出す。

 しかしチルノが動かないので、霊夢は叫んで呼びかける。

 

「分が悪いわ…チルノ!一旦退くわよ!!」

「…………」

「チルノ!!」

 

 チルノが動かない、どうしたって言うのよ……

 取り敢えずチルノを無理矢理にでも連れて行かないと危ないわね。

 

 霊夢は渋々ながらチルノの元へと駆け寄りチルノを引っ張る。

 だが霊夢に対抗するかのようにチルノは踏ん張った。

 

「ちょっとチルノ!!ふざけてないで早く行くわよ!!!」

「………」

 

 一歩も動かないチルノに痺れを切らしたのか、霊夢は引っ張るのをやめてチルノを抱えて連れて行こうとする。

 しかし抱えようとしてチルノの顔を見た時、霊夢はぎょっと驚いた。

 

「……!?」

 

 目に光が宿っていない…!?

 さっきまであんなに元気そうだったのに。

 まさかあいつの仕業…?

 

 そう考えて霊夢はソレの方を見る。

 ソレは霊夢を全く見ていないが、突如喜びの叫びをあげた。

 

「チルノちゃん!!!!!!!ワタシ会いたかったよ!!!ズットズットズットズットズットズット待ってタンだよ!!!!!!これで一緒にイラレルね、ずーっと、ズーット先の…未来まで!!」

「………ぁぅ」

 

 ソレは喜びながらチルノの方へと近づく。

 このままではマズイと思った霊夢は懐からスペルカードを取り出す。

 そして近づくソレに立ちはだかる様にチルノの前に立つ。

 

「いい加減にしなさい。あんたは誰よ!!」

 

 霊夢はソレに問いかける。

 ソレは霊夢に視線をやり、ぶつぶつと喋る。

 

「アナタハ誰??チルノちゃんのトモダチ???ソレとも…ワタシ達のジャマをする人??……ワカラナイ、ワカラナイヨ」

 

 徐々に不安定になっていくソレの言葉。

 仕掛けるなら今しかない、そう思った霊夢はスペルカードを掲げる。

 

「【霊符:ミニ夢想封印】!!!」

 

 霊夢の頭上に陰と陽のすいか程の大きさの陰陽玉が大きな音を立てながら2個出現する。

 

「くらいなさい!!」

 

 陰陽玉は霊夢の掛け声でソレの方へと発射される。

 しかしソレは避けもせずに陰陽玉に突っ込んで行った。

 陰陽玉がソレに当たる、するとソレは叫びながら空中でもがく。

 

「痛いイタイタイタイいいいい!!!!なんでコンナコトするの????」

「決まってるじゃない、さっきのお返しよ!!」

「オカ……えし…。なら…私もオカエシ」

 

 ソレは霊夢に向かって手を伸ばすと手の先に泉の水を収縮させる。

 ヘドロのような泉の水は霊夢の陰陽玉と同じ程の大きさになり発射される。

 

「私はワルくないもん…あなたが、わるい!!!!!」

「はあ……全くめんどくさいわね【霊符:二重結界】」

 

 霊夢は水色のバリアを展開して水球を防ごうとする。

 しかし水がバリアに触れた途端にバリアがジュウと音を立てて溶け始めた。

 驚きながら咄嗟の行動でチルノを後ろに蹴飛ばして自分も二重結界から出る霊夢。

 彼女の勘と本能がそこにいてはいけないと悟ったからだ。

 

「っ!!」

 

 霊夢は自分がいた場所に目を向ける。

 そこには自分が展開した二重結界が黒い水によって覆われて溶かされていた。

 

「一体何なのよ…私の二重結界があんな簡単に壊されるなんて」

「ふふふ…私はわたし、ソレ以上でもソレ以下でもなイ!!!さあチルノちゃん…行きマショウ?」

 

 ソレがクイッとチルノに向かって手を招く。

 普通の状況ならチルノはついて行かないはずだが、彼女は今正気ではない。

 霊夢はソレの狙いに気づいてチルノの下へと近寄ろうとする。

 しかし霊夢の邪魔をするかのようにうねうねと泉の水が霊夢の道を塞ぐ。

 

「邪魔よ!」

 

 霊夢は札を投げつけて爆発させ、爆風で道をこじ開ける。

 そこにはチルノを抱きしめているソレの姿があった。

 

「さァ……イッショニ…行きマしょう…………?」

「……ぁあ……ああああああああああああああぁぁぁぁ!!!!!!!???あたいは何してっ、あたいは、あたいはあたいはあたいはあたいはあたいはあたいはぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!!!!!!!!」

 

 発狂するチルノ、ソレはニヤリと気持ちの悪い程までに口角を上げる。

 このままじゃまずい…そう思った霊夢は懐から札ではなく何か書かれている針を取り出す。

 

「これは使いたくなかったんだけど仕方ないわっ!!【封針(ふうしん)幻想滅(げんそうめつ)】」

 

 幻想滅……先代の博麗の巫女が編み出したこの世界から生み出た幻想を滅する特殊な経が書かれた針。

 これを使えば幻想郷で生まれた存在を塵にする事ができる。

 正直なんでこれを使おうとするのかは分からない、けどこれを使わないと何か拙い事になる予感がした。

 でも本当に使っていい物なの?狂っているあの黒い奴を殺すことになるのよ…?しかも殺すではなく完全な消滅、私にそんなことができるの?

 

 躊躇している様子の霊夢、だが発狂しているチルノを見て決意を固める。

 そして未だにチルノを抱き続けているソレに幻想滅を投げようとする。

 しかしそのタイミングを狙っていたかのように背後から水が出て霊夢にまとわりついた。

 

「しまっ―――」

 

 言葉を発しきる前に水は霊夢の周りを覆い水の中に閉じ込めた。

 ソレはニヤリと口角を吊り上げて霊夢の方を見る。

 

「フふふ……さようなラ、お姉サん。さぁ…チルノちゃん、私と一緒になりまショウ?」

「ああぁ……あたいの中に…汚イモノ……が…………」

 

 黒い何かがチルノの体に少しずつ纏わりついていく。

 その度にチルノは苦しそうな声を上げて助けを求める。

 しかし誰も来ない、霊夢は必死に出ようと懐のスペルカードを取ろうとするが水の中では激しい水流が巻き起こっていて霊夢は動く事すらままならない。

 時間が経ちチルノに纏わりつく黒い何かがチルノの首まで侵食する。

 もう叫ぶ力も残っていないチルノはピクピクと僅かに体を動かす事しかできない。

 

 もう駄目だって言うの…?

 博麗の巫女の私がいながら…無残にもチルノを洗脳されちゃうわけ……?

 

 絶望的な状況の中で霊夢は息苦しそうに空気を吐き出してしまう。

 霊夢もまた危機的状況下にあるのだが彼女はそれでも水流に抗うようにもがく。

 

 苦しい…息が、もう……

 

 いよいよ限界になってきた霊夢とチルノをみてソレは笑う。

 

「アト少しだよチルノちゃん…あとすこ――――」

「【不死:火の鳥―鳳翼天翔】!!」

 

 ソレが勝ちを確信したその時、ソレ目掛けて不死鳥の形をした炎が襲い掛かってきた。

 

「!!???」

 

 不死鳥の形をした炎はソレにぶつかり、ソレの身を焼く。

 身を焼かれる痛みにより、ソレは一時水のコントロールを失いチルノから離れる。

 ソレが離れた事によりチルノにまとわりつく黒い何かの侵食は止まり霊夢を閉じ込めていた水の球が形を維持できなくなり流れる。

 

「ゲホッ……ゴホっ…今のは…まさか」

「よぉ、博麗の巫女。大丈夫か?」

 

 男勝りな口調で霊夢の目の前に白髪の少女が現れる。

 その少女の姿をみて霊夢は驚きながら彼女に立たされる。

 そして息を整えて返事をする。

 

「…大丈夫よ。助かったわ」

「そうか、なら良かった」

「ところで何であんたがここに?」

「あいつに少し借りがあってね、それを返しに来ただけさ」

「奇遇ね、私もあいつに今借りを返そうと思ってたのよ」

 

 ソレが身を焼く炎を水で消す。

 先ほどまで笑っていたソレの顔が激昂のあまり歪んだ。

 

「さっきの人…?何で…ナンデ私のジャマヲするの…!!!!!それに…なんで生きてイルの!!!!」

「生憎私は死んでも死ねなくてね、生き返ったのさ」

「…うう………ウウううう!!!!!死ね死ね死ね死ねシネシネしね、シネええええええええ!!!!」

 

 叫ぶ…というよりは獣の咆哮に近い雄叫びをあげるソレ。

 ソレは周りに黒い球をいくつも生成する。

 

「あれに触れない方がいいわよ。どういうわけかあの球私の結界を溶かせるみたいだし」

「そうか、助かる」

「別にいいわよ。さ、始めましょうか。行くわよ、藤原妹紅」

「あぁ、第二ラウンドの開始だ!」

 

 白髪の少女、藤原妹紅と霊夢は気を引き締めてスペルカードを取り出した。

 

 




さてはて上井君はいつ到着するのやら…
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