あの彗星の夜から幾日か過ぎて、俺たちは岐阜の高校に転入することになった。
田舎だったが、そこそこいた同級生たちはあちらこちらへ散らばってしまった。
俺と三葉と早耶香は三葉の親父さんが手を回してくれたのか同じ学校だった。
三葉はあの日から心に穴が空いたように暗い表情を見せるようになった。
時折右手の掌を見つめたり、赤い組紐を握りしめたり。
早耶香によると、二葉さんが亡くなった頃の三葉のようだと。不可思議な仕草はなかったらしいが。
三葉が明るい表情を多く見せるようになってきたのは受験が迫ってきた頃だった。
三葉と早耶香は東京の大学を目指していた。
三葉が東京を目指す動機はかつての糸守から逃げ出したいというものではなく、探し物を求めに行くというものだった。
俺も特にビジョンはなかったので、東京の大学に行くことにした。
全員が各々の大学への進学が決まり、打ち上げを開いた。
その帰り道、俺は早耶香に告白をした。
早耶香は目を丸くして、しばらく呆然とした後、涙を流しながら肯定の返事をくれた。
翌日、二人で三葉に報告すると、
「おめでとう、サヤちん。二人がいつ恋人になるのか心配してたんよ」
「ありがとう、三葉。三葉も思い人はよ見つかるといいね」
テッシーとサヤちんが恋人になった報告をしにきた。
とてもおめでたい。サヤちんはずっとテッシーのことが好きなのを知っていたから。
私の思い人。二人はまるで私に既に思い人がいるように話してくる。そんなことないのに。
でも何か心に引っ掛かるものがある。
四葉が言うには私は彗星が墜ちる前の日、ひとりで東京へ行ったらしい。
『デートに行く言っとったよ。お姉ちゃんのやないみたいやけど』
私は東京には知り合いはいないはず。なのにどうして?
もしかして私は二人の言う思い人に会いに行ったのだろうか。
私は覚えていないけど、あの頃私は時々変だったらしい。
自分の胸を揉んだり(四葉談)男っぽくなったり凝った洋食を作ったり机を蹴り飛ばしたり(テッシーは狐憑き言ってた)
『お姉ちゃんあの日はもっとひどくて、みんな死ぬから逃げろ言ったり、俺言うたり、慌てて御神体の方に走って行ったりしたんよ』
心がざわめく。
あっという間に月日が過ぎた。
私は社会人四年目として東京で働いている。
イケメンと言われる男の人から告白されたり合コンに誘われたりもしたけど、全て断ってきた。
心がこの人じゃないと訴えるのだ。
サヤちんとテッシーはつい先日に結婚した。
私を待っていたみたいやけどいつまでも待たせるわけにはいかないからと二人を説得した。
私はいつものように電車にのり会社へ向かう。