君の名は。そして   作:こどくなうさぎ

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第5話

今日は初めてのデート。

 

先週は瀧くんが仕事でだめだったけど、今日こそはやっと。

 

先週の女子会のことは始まりしか覚えていないけど、大変だったみたい。ニヤニヤしてくるのが気になるけど。

 

私は待ち合わせ場所で瀧くんを待っている。

 

つい待ち合わせ時間の一時間前に着いてしまった。

 

瀧くん、この格好気に入ってくれるかな。

 

「なあそこの姉ちゃんひとりか?」

 

ちゃらちゃらしてそうな見た目の人が声をかけてきた。これってナンパ?

 

「人を待っているので」

 

「なあ、そう言わんと俺とすこしお茶でも飲もうやないか」

 

「いえ、結構です」

 

しつこいナンパだった。

 

「ほら行こうや」

 

「いや、放して」

 

しつこいナンパは腕を掴んで無理やり連れて行こうとする。

 

「いや、やめて、瀧くん!」

 

「男待ちやったか。せやけど、俺の方がその瀧ってやつより」

 

「俺より何だって?」

 

瀧くん!!

 

「その手を放せ」

 

「何や文句ッ」

 

瀧くんは私の腕を掴む手を捻り、私の手をとって

 

「大丈夫か? 三葉」

 

「怖かった、瀧くん」

 

瀧くんは私を抱きしめてくれた。

 

「お前何してくれるんや」

 

そんな私達が面白くなかったのか先程の腕のせいか怒りを露にしていた。

 

「お前が俺の女に手出すからだ」

 

瀧くんが私を俺の女って言ってくれた。

 

「なんやと?」

 

今にも殴りかかってきそうだった男が拳を振り上げ、そして

 

「そこの君! 何をしている」

 

警備員かお巡りさんかが来た。

 

「この付近で迷惑行為をはたらいている男がいると通報があった。君には話を聞かせてもらいたい。あなたたちは大丈夫ですか」

 

「はい。ありがとうございました」

 

しがみついて震える私を抱きしめながら瀧くんは答えた。

 

 

 

私が落ち着いたのはちょうど待ち合わせ時間の時だった。

 

「これからは俺が迎えに行くよ」

 

「え? でも」

 

「三葉は可愛いから、また同じ事になるかもしれない。俺はそうなるのは許せない」

 

「ありがとう、瀧くん。でも遠いよ?」

 

「大丈夫。それにそのうち同じ家から行くことになるだろうから」

 

「それって……」

 

「まあ、追々。それじゃあ行こうか」

 

「うん。ねえ、瀧くん」

 

「なんだ?」

 

「どうかな」

 

その場でくるりと一周回って瀧くんに見てもらう。

 

「あ、えと、とても可愛い」

 

「ありがとう。それとね?」

 

「うん?」

 

「手、繋ご?」

 

「ああ、そうだな」

 

瀧くんの手はごつごつしていた。

 

でも、懐かしい瀧くんの手の感触に心が温かくなる。

 

「それで、今日はどこに行くの?」

 

「まずはちょっと腹ごなしにカフェかな」

 

「カフェかあ。どこのカフェ?」

 

「お楽しみ。自動販売機があるバス停ではないから安心しろ」

 

「ふふ。テッシーに怒られるよ」

 

「いいんだよ。でも、懐かしいなあ。手作りカフェ」

 

「瀧くんも丸太切ったりしたんよね」

 

「お前に怒られたけどな」

 

「当たり前よ。人生の基本でしょ?」

 

「はは。そうだな」

 

「そういえばね、今度テッシーとサヤちんの結婚式があるんよ」

 

「あの二人が? そうか、あれはやっぱりあいつらだったのか」

 

「瀧くんなにか心当たりが?」

 

「ああ、俺が就活中、店で勉強してたらとある男女二人組の会話が耳に入ってきて、ブライダルフェアだったり神前式だったり聞こえて、去り際に男のことをテッシーって呼んでいたのが聞こえたんだ」

 

「そうやったの。そうや、瀧くんも二人の結婚式に行こうや」

 

「え? 俺が? 俺はあいつらにとっては初対面だぞ?」

 

「なら、今度テッシーとサヤちんに会わへん? それで入れ替わりのこと話すん」

 

「信じてもらえるか? いや、テッシーならオカルト好きだったし大丈夫か? でも信じてもらえても急に参加はできないだろう?」

 

「それなら大丈夫よ。あの二人なんだかんだでまだ迷ってるから招待状もまだ来てないんよ」

 

「なら、そうしようか。と、話してるうちに着いたぞ」

 

「ここ? ってここって」

 

「見覚えあるか?」

 

「うん。だって、ここって司君たちと」

 

「そしてお前が散財したところだな」

 

「そんなことまで言わんでいいの。行こ?」

 

 

 

「内装はあの頃のままなんやね」

 

「ああ、いい雰囲気だ。それで、決まったか?」

 

「まだなんよ。これもこれも捨てがたいし、でも社会人になってからのこの値段は痛い」

 

「そうか」

 

って瀧くんもう呼んでしもたん? 私まだ決まっとらんよ?

 

「これとこれとこれを」

 

あっという間に頼んでしまった。

 

「二人で分けたらいいだろ」

 

「あ、そうやね」

 

そうだ。もう恋人だから分け合うのも普通のことなんだ。

 

それならあーんも?

 

「お待たせしました」

 

頼んだものが届いた。やっぱり綺麗。

 

東京に来て数年経つけど、まだまだ色々新鮮でキラキラしてる。

 

パンケーキを切り分け、口へ運ぶ。

 

「おいしいー!!」

 

幸せ。

 

瀧くんを見ると、瀧くんは私の顔をじっと見ていた。

 

「どうかしたん」

 

「いや、三葉はパンケーキ食べる時そんな顔をしていたのかって。司は俺がパンケーキをたくさん食べる時は目をキラキラさせながら食べていたと言っていたから」

 

そっか。私はそんな顔をしていたんだ。

 

瀧くん身体で目をキラキラさせて。

 

「瀧くん」

 

「なんだ?」

 

「あーん」

 

「…………」

 

「ほら、はよう」

 

「……あーん」

 

瀧くんの口のなかに放り込む。

 

「どう?」

 

「三葉の味がする」

 

「バカ! ヘンタイ!」

 

「はあ、ほら、三葉も。あーん」

 

「へ? あ、あーん」

 

口のなかに瀧くんの食べていたパンケーキの味が広がる……?

 

「どうだ?」

 

「……瀧くんの味がする」

 

パンケーキの味なんてわからなかった。

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