カフェのあとはショッピングをしたり、クレープを二人で食べたりゆっくりと過ごした。
途中、晩ごはんはどうするか尋ねてきた。
もしかしてと思って瀧くんのおまかせでと答えた。
そうこうしているうちに時間はあっという間に過ぎて、空もいつの間にか闇に覆われていた。
「三葉。そろそろ晩ごはんにしようか」
「うん。私もおなかすいたよ」
「そっか」
そう言って連れて来たのは思っていた通り、瀧くんが(それと私が)バイトをしていたイタリアンレストランだった。
驚いた様子を見せず、笑みを浮かべる私を見た瀧くんは
「やっぱりバレていたか」
と苦笑した。
知っている人は残っているのかとフロアを見渡したけど、五年も経てばバイトの人なんてみんな変わってしまうよね。
料理はバイト時に美味しそうに思ってずっと食べてみたかったものを選んだ。
アルコールは瀧くんに禁止されてしまったからノンアルコールのもの。
会話はバイトで大変だったことや思い出のことでいっぱいだった。
レストランを出たらもうデートは終わり。
夜風にあたりながら駅まで二人で歩く。
瀧くんは私を家まで送りたかったみたいだけど、さすがに悪いかなと思って駅までにしてもらった。
「もう着いちゃったね」
自分から駅までとお願いしたのに後ろ髪をひかれる思い。
「三葉」
「なに? 瀧くん」
「これ」
そう言っていつの間にか持っていた大きいビニール袋からハリネズミのぬいぐるみを取り出した。
「初デート記念だ」
はにかみながら言う。
「私がハリネズミが好きって知ってたの?」
「糸守のお前の部屋でハリネズミの物をいくつか見たからな」
涙が溢れてくる。
彼が私のことを見てくれていたのだということが嬉しくて。
そして後悔。
「ごめんなさい。私、何も用意してない」
「それならさ、俺の組紐つくってくれないか?」
「組紐?」
「ああ。俺と三葉を繋いだ大切なものだから。以前持っていたのはお前に返したからな」
「うん。瀧くんの組紐つくるよ」
瀧くんへの思いを糸に込めて。
瀧くんからもらったぬいぐるみを胸に抱いて家に帰る。
運ぶのが大変だろうって袋も渡されたけど、私は袋に入れずに持っている。
私がハリネズミを好きだったのはいつからだろう。
瀧くんの髪をみてハリネズミみたいだと思ったことがあるのは覚えている。
私がハリネズミを好きだったのは私に似ていると思ったから。
周囲に針を出して自分に近づけないようにして。
そんなハリネズミが私に似ていると思ったから。
でも、もう私はハリネズミじゃない。
テッシー、サヤちん、そして瀧くんがいる。
だから今でもハリネズミが好きなのは私に似ているからではなく、瀧くんに似ているからかな。
家に帰ったらタキネズミくんを枕元に置こう。
タキネズミくんを抱いて眠りにつく。
いつかはタキネズミくんじゃなく瀧くんと一緒に寝られるようになるだろう。
そうなったら、タキネズミくんをと瀧くんと一緒に眠るのもいいかもしれない。