提督「今日は瑞鶴の誕生日だからみんなで祝おう」   作:太平のタペ

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次回完結予定です(現在進行形で執筆とバイトをしながら)


中編

11/26 ヒトゴーイチマル 執務室

 

提督「……で、みんな考えてきたか?先に言っておくが俺は明日のパーティーの準備で忙しいからサプライズ案全投げしてるからな。期待してるぞ」

 

 

翔鶴「あの、それ今言いますか?」

 

 

提督「ぶっちゃけ言わなくてもいいとは思ったけど気分で言ってしまった。お前達なら心配ないとは思うがな」

 

 

翔鶴「…………(なんだかなぁ)」

 

 

 

 

 

提督「じゃ、適当に時計回りで発表していくか。俺から見て時計回りだから最初は瑞鳳からだな」

 

 

瑞鳳「はーい。私が考えてきたのはこれです!」

 

 

【みんなで料理作り】

 

 

提督「ほうほう」

 

 

加賀「みんなで、というのは鎮守府にいる全員でいいのかしら?」

 

 

瑞鳳「そうよ!駆逐艦のみんなが頑張って手料理を作ったり、私たちも美味しい料理を作れば瑞鶴も喜ぶと思うの!」

 

 

翔鶴「確かに微笑ましいわね」

 

 

葛城「先輩の好物とか量とかを自分たちで決められるし、ケーキとかもオリジナルのものを作りたいですよね」

 

 

提督「…………ふむ、なるほど。確かにいい考えかもしれないな」

 

 

瑞鳳「でしょ?やっぱりシンプルだけどみんなが笑顔になるような「だがダメだな」サプラ……え?」

 

 

瑞鳳「え、え?ちょっと待ってよダメとか良いとか言うにしても流石にいきなり過ぎるわよ!…………なんで、ダメなの?」

 

 

提督「…………料理をしようという企画自体に文句があるわけじゃない。鎮守府のみんなと瑞鶴の仲は良くなるだろうし、みんなが楽しくなるという点に関してもその通りだと言うべきだろう」

 

 

瑞鳳「え、だったら」

 

 

提督「だがな、瑞鳳……。みんなが料理を楽しめるのと、みんなが笑顔になれるかどうかは別問題なんだ。……単刀直入に言う。俺は!もう!二度と!比叡と!磯風の!飯は食べたくない!!」

 

 

一同「……………………」

 

 

提督「……生まれて初めてだったよ。灰色に紫の斑点がついたカレーを見たのも、カレーを食べて手首が痙攣を起こしたのも……」

 

 

瑞鳳「……次の案をお願いします」

 

 

 

 

 

葛城「じ、じゃあ次は私ね!私が考えたのはメッセージカード作りよ!」

 

 

翔鶴「メッセージカードってあれですか?誕生日プレゼントとかに挟まってたりする」

 

 

葛城「そうです!みんなでやればメッセージカードも、立派な本みたいな量になると思うんです!そうすれば、瑞鶴先輩ともっと距離を縮められると思うんです!!」

 

 

提督「お、おう。わかったから葛城は少し落ち着け」

 

 

瑞鳳「心なしか目が血走ってるように見えるのは私の気のせいだよね……?」

 

 

加賀「でも、メッセージを贈るっていう企画自体はいいものだと思うわ。シンプルだけど気持ちを一番伝えやすい手段だと思うし、手紙は保存できるからずっと手元に残るし」

 

 

提督「確かにいい案だと思うぞ」

 

 

葛城「ありがとうございます!」

 

 

提督「とりあえず、葛城の企画としてはメッセージカードを渡すっていうのが目的でいいか?もしそれでオッケーなら採用で。手紙だけならあと一日あるからそこまで時間もかからないだろうし、残り二人の案から一つサプライズを採用する感じで」

 

 

一同「了解です」

 

 

 

 

 

提督「次は翔鶴だな」

 

 

翔鶴「はい。私はドッキリとか良いかなって思いました。テレビで見たことあるんですけど、誕生日の当日にみんなが気づかないフリをして、最後にみんなでお祝いすると凄く盛り上がるってありましたよ」

 

 

提督「ふぅむ。確かに定番と言ったら定番だな」

 

 

加賀「…………」

 

 

瑞鳳「誕生日を知らんぷりするのは精神的に少し辛いけどね……責任は提督がとるから大丈夫だと思うけど」

 

 

加賀「…………」

 

 

提督「責任ってお前なあ……」

 

 

翔鶴「まあでも、仮に瑞鶴がしょんぼりしてもドッキリが終わったら機嫌は治ると思いますし、誕生日サプライズの鉄板ネタですからきっと許してくれますよ」

 

 

加賀「…………」

 

 

提督「……どうした加賀?さっきから顔色が悪いぞ?」

 

 

加賀「……いや、あのですね。実は前回の会議が始まる二日ほど前にですね……」

 

 

――回想中――

 

 

提督「……なるほど。つまり加賀の話を要約するとこうなるのか」

 

 

翔鶴「加賀さんは既に瑞鶴の誕生日に何が欲しいかを聞いていて」

 

 

葛城「その上先輩が誕生日を忘れてたから念を押すように伝えて」

 

 

瑞鳳「その日にプレゼントを渡すと宣言してしまっていると……」

 

 

加賀「……………………」

 

 

一同「……………………」

 

 

提督「…………翔鶴のドッキリ案はなしだな」

 

 

 

 

 

提督「ていうかあれだな、本当に瑞鶴好きだな」

 

 

翔鶴「流石に少し言い過ぎましたね……。さっきから加賀先輩の顔真っ赤になったまま元に戻らなくなってますよ」

 

 

加賀「…………」

 

 

瑞鳳「どうするのこれ。次の発表は加賀さんなんだけど」

 

 

提督「……お?加賀、ポケットから紙が落ちたぞ。……お、もしかしてこの紙に書いてあるのか?」

 

 

加賀「え、あ、待ってそれは」

 

 

提督「ええと、なになに……

 

 

『みんなで瑞鶴になる』

 

 

…………………………………………」

 

 

加賀「」

 

 

一同「……………………え?」

 

 

 

 

 

舞鶴鎮守府へ着任した日から一週間。

建造した瑞鶴と秘書艦の電、時雨、神通の五人を中心に少しづつ鎮守府は稼働していた。

 

 

活動開始して間もない鎮守府で行われるのは、主に訓練と遠征に書類仕事である。出撃はあまり行われることは無かった。と言うのも、艦娘にも食事や睡眠・休息の類は必要不可欠であり、資材の少なさも出撃の少なさに滑車をかけていた。

 

 

そもそも、世界規模で現在深海棲艦との戦いが激化しているのは中華人民共和国であり、日本が深海棲艦から被害を受けているのは中国への通り道だからと言われている。

 

 

中国は侵略を止めようと深海棲艦に戦いを挑んでいるようだが、艦娘の存在は未だ確認されないため一方的な侵略をうけているらしい。他の国も自国を守るので精一杯のようで、事実日本も中国が囮になっている間に艦娘を揃えて戦力を増やす魂胆と士官学校で聞いた覚えがある。

 

 

そんなわけで日本では深海棲艦は、今のところ中国から流れてくる少数しかいないのだ。

 

 

戦いに出るとしても、今のままでは深海棲艦との戦闘経験(練度)が低いため自分から攻撃には行かず、ギリギリまで時間をかけて資材と戦力を蓄えるというのが大本営からの指示であった。

 

 

 

 

 

妖精は、必要な資材を渡せば艦娘を生み出してくれるというのは分かっていた。そして先週から考えられていた提督適性の高い者ほど重巡や空母が出やすいというのも、また事実だった。

 

 

現在横須賀に着任している建造最後の提督は、四人の中で最も提督適性が高かったのだ。

 

 

提督適性は、主に妖精とどれだけ意思疎通ができるかで決まる。適性を持たない者はそもそも妖精が見えない。妖精が見えたとしても、妖精へ言葉が通じなかったり妖精の言葉が理解出来なければ適正は低いままなのだ。妖精との会話、即ち意思疎通が可能であるということが、提督になれるかどうかを分ける境界線だったのだ。

 

 

横須賀提督以外の提督は、会話は出来るが妖精の声がどうしても片言に聞こえてしまう。だが、横須賀の提督は同じ日本人と会話しているように聞こえるというのだ。そして提督の適性の高さは、あの建造ドッグで既に証明されていた。

 

 

彼は、何と妖精の言葉を聞きながら資材を正確な量で準備していた。弾薬の一つ一つ、鋼材の重さ、燃料の量を精密に確認しながら妖精に渡していった。

 

 

 

 

 

そうして生まれたのが、海軍の人間が求めて止まなかった戦艦。長門型戦艦一番艦『長門』だった。

 

 

横須賀提督は着任してからも、大本営へ赴いては要請の声を聞いて新たな艦娘を生み出していると聞く。

 

 

 

 

 

着任してから一ヶ月が過ぎた。男一人だけの環境とはいえ、仕事だと考えながら過ごすと案外慣れるものだ。艦娘たちも始めは緊張や私に対しての距離感があったが、それも少しづつ緩和してきていると思う。

 

 

目立った戦いもなく、艦娘は遠征や訓練で自己を磨き、私は資材や書類を纏めて処理し、当番制で食事や家事をこなし、たまにではあるが他の艦娘とコミュニケーションをとって遊ぶこともあった。

 

 

何というか、これには私もあまりに拍子抜けした。人類の存亡をかけた戦いの最前線に立っているにも関わらず、私たちが行っていたのはさながら学校で行われる合宿のようなものと差して変わらなかったからだ。

 

 

当然、深海棲艦が私たちの鎮守府周辺海域に現れて戦いになったことは何度もあるが、それを抜いても命のやり取りをしているような恐ろしさは見当たらなかった。

 

 

……当時の深海棲艦で発見されていたのは、駆逐艦イ級・駆逐艦ロ級・軽巡洋艦ホ級・重雷装巡洋艦チ級のみだった。中国では重巡洋艦レベルの深海棲艦が確認されていたらしいが、少なくとも日本には未だ現れてなかった。

 

 

それから数ヶ月後には中国が深海棲艦に敗れた為、日本が次の標的となるのだった……。

 

 

 

 

 

ここで、当時の舞鶴鎮守府と現在の鎮守府の二つの違いについて説明しておこう。

 

 

まずは工廠。現代では艤装の開発や艦娘の建造が行われていた場所だが、当時の鎮守府ではただの資材置き場でしかなかった。何故このような扱いになっていたかを説明しよう。

 

 

第一に艤装の開発であるが、これは当時の時点でほとんど解析が行われていなかった。必要なのは敵と戦う艦娘であり、敵も軽巡や駆逐ばかりだったので初期装備でも戦えたのだ。そのため艤装の開発を行うことはされていなかった。

 

 

第二に艦娘の建造。これも、当時と現代では違う仕組みだったのだ。

 

 

そもそも、なぜ建造ドッグが必要なのか。それは、現代の提督の提督適性に関係している。昔の提督になるには、妖精と会話が可能なくらいの適性が必要となる。それは少なくとも全国にいる約三十万人中四人という恐ろしい倍率だ。

 

 

妖精が見えなければ資材を直接渡すことはできないし、そうなれば鎮守府で何かあった時に対応ができない。そこで作られたのがあの建造ドッグだったのだ。

 

 

建造ドッグの使い方は至って単純。ドッグの中に必要な資材を入れてから艦娘に妖精を呼んでもらい、ある程度の時間放置するだけ。そうすれば、妖精が資材を使用して艦娘を生み出してくれるのだ。

 

 

つまるところ、現代にいる提督のほぼ全員が妖精を見たことがない、あるいは見れるが意思疎通ができないのだ。

 

 

だが、現代には当時の頃から作られていた艦娘の建造レシピがあるし、適性がなくても艦娘を生み出すことができる。建造ドッグは言わば、才能はあるが適性のない提督候補への救済措置であった。

 

 

 

 

もう一つは入渠。これも当時は、艦娘用の普通の風呂であった。まだ当時は艦娘の傷を癒す方法が見つからなく、自然治癒以外に見つかっていなかった。

 

 

現代のような艦娘の傷を癒す入渠になるのは、これから何年か後で行われる艦娘の身体構造と自己治癒力の解析からとある特殊細胞が発見される話に繋がるが……今はあまり深入りしないでおこう。

 

 

 

 

 

このように、当時は不便で暗中模索状態であった。当然、戦いでは傷つき苦痛の表情を浮かべる少女に心を痛め、建造は行われていたものの少ない人数で二十四時間体制の警備を行い、日に日に増えていく書類や戦いの案件に頭を悩ませていた。

 

 

そんな私を四六時中支え続けてくれていたのが、秘書艦である瑞鶴だった。

 

 

彼女は、初めこそ私に対して固く生真面目な態度を頑なに取り続けていたが、この鎮守府に慣れてくると真面目な仮面を取り外し、みんなと気兼ねなく話すムードメーカーになっていた。

 

 

当時の彼女の立場を一言で表すなら、「姉」だった。

 

 

駆逐艦の艦娘は、艦時代の大きさからか総じて幼い容姿の子が多く、彼女が姉のような立場として他の子達を上手くまとめ上げてくれた。それは傍目から見たら微笑ましい光景で、見ていると日頃のストレスを忘れさせられるものだった。

 

 

今思えば、彼女ももう少し甘えたかったのではないだろうかと後悔もしている。私の鎮守府で空母はまだ瑞鶴しかおらず、姉妹艦はおろか同種の艦娘もいなかったのだ。私の仕事の手伝いに他の艦娘の面倒まで見てたら疲れてしまうはずなのだ。

 

 

だが、彼女はあくまでも「この鎮守府では私がお姉ちゃんだから。私は可愛い妹のために頑張らないといけないの。……でも、提督さん。心配してくれてありがとう」と言っていた。思えば、それからだろうな。笑顔で頑張る彼女の存在に、気が付けば恋をしていた。

 

 

無論、好きになったからとはいえ私は提督であり、瑞鶴は艦娘。あくまでも立場は戦わせる者と戦う者であった。

 

 

 

 

 

……それの立場は、現代から約二年ほど前に開発された『艦娘最大練度上昇専用改装具』こと『ケッコンカッコカリ』が開発されてから変化したのだが。

 

 

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