mission0 新規着任
深海軍と地上軍の戦争が始まってわずか三カ月、地上側の重要拠点都市である呉の港町が夜間砲撃を受け壊滅した。敵襲撃艦隊を呉鎮守府連合艦隊が迎撃にあたり撃滅したが間に合わなかった。当時は索敵技術及び諜報技術が確立されておらず電波探知機や偵察用艦載機の配備、諜報員の派遣が進まずにいたのだ。
逃げ遅れた住民や兵士達が次々と敵艦載機の重機関銃やミサイルの餌食になり、敵艦から上陸した追撃部隊が侵攻した、夜間砲撃から二時間後、駐留していた陸軍や空軍が追撃部隊を殲滅した。この夜間砲撃事件の犠牲者数は一万人近くに及んだ。
事件の後一人の少女が瓦礫の中から救出され、海軍元帥に孤児として引き取られた。幸い、気絶していただけで無傷だった。その名は暁レイ、当時14才であった。この事件で妹の暁ユイと母親の暁カオルを亡くした。だが、父親の暁カイトだけは発見されなかった。
事件のとき、まだ小さかった彼女はこの二年間でかなり身長が伸びた。なぜか彼女の成長期は他の女子よりずれていた。整った顔立ちで腰まで伸びた黒に少し青みがかかった髪を綺麗に整えている。身長も175cmと兵士としては恵まれた体格だ。だが、軍人でなければ女優やモデルでもやっていけそうなほどの容姿だ。
事件から二年後、十六才になった
「二年前の事件の首謀者って、私のお父さんだったのね。」
資料を探っているときに知った、彼女の父親、暁カイトは深海側に寝返り、自らが住んでいた町を破壊したのだ。この事件は地上側を震撼させるに充分だった。
「今まで黙っていてすまなかった。」
「あなたを責めている訳じゃないわ。」
彼女は今、日本初の女性兵士として活動している、担当はスナイパー、女性独特の忍耐力は狙撃手に向いていると判断されたためである。
「だが、彼が敵側に寝返った理由が判らない。彼は何を見て、聞いて、感じたのだろう?」
大本営は二年経った今でも詳細を掴めていないのだ。元帥が申し訳なさそうにうつむく。
「そんなことは気にしてない、復讐をすべき相手が私のお父さんだっただけよ。」
「ということは、覚悟が出来たのだね?」
うつむいていた元帥が顔を上げる
「覚悟なんて昔からできてるわ提督に着任して
机を殴りつけながら叫んだ。兵士のものとは思えない綺麗な手から血が出ている。
「わかった、陸軍から君を外し海軍に移籍及び提督着任の手続きをしよう。」
「頼んだわ。」
そう言うと彼女は部屋から退出した。そして、入れ違いで二人の海兵らしき男性が元帥室に入っていった。一人は同期の長門コウスケ、彼も若くして軍隊に入り現在陸海空すべてを制覇する諜報特殊部隊のメンバーで実験投入を控えている。そしてもう一人は地上側では知らぬものはいないほど有名な鬼教官、吹雪リュウジその人だった。
レイも訓練で彼に会った事がある。教え方が的確で慕われている男だが、訓練で動きが悪いと鳩尾を殴ってくるため、恐れられてもいる、彼女も殴られた事がある。
元帥室からいきなり怒鳴り声が聞こえてきた。
「なんで暁レイの提督着任の話からC4の話になるんだよ!」
「馬鹿野郎!あれが鎮守府に仕掛けられてそれが時限式だったらどうするんだッ!爆発したら地上側の負けが確定するんだぞ!これに関しては元帥が正しい。」
「左様だ、我々は戦争をしているのだからな。」
「あと、ホウレンソウ『報告、連絡、相談』がまだ身につかないみたいだな、集団行動の基本を…。」
「うるさいわよ!喧嘩は余所でやりなさい!」
元帥室に思わず突入してしまった。
「ひえーっ!」
「すみませんでした。」
コウスケは気が抜けるような叫びをあげ、リュウジはきちんと謝った。
「儂もすまない!」
なぜか元帥も謝る。
「別に謝って欲しい訳じゃなくて。そう、着任先は決まった?」
「ああそうだった、君の着任先は呉鎮守府だ。」
「呉鎮守府…。」
因縁の地の名が入った着任先をもう一度繰り返す。
「あと、副司令として長門君を戦術教官として吹雪君を同時着任させる。」
普通ではあり得ない待遇だった。普通提督は単身で着任し艦隊の指揮を執るものだ。自分がこんな扱いなのか判らないが、今は気にしないことにした。
「応、副司令になった長門コウスケだ、改めて宜しくな!」
「お前の復讐の手伝いをすることになった吹雪リュウジだ、今まで酷い扱いをしてきたが、こんな俺で良いのなら宜しく頼むぞ。」
「暁レイよ、私の復讐に巻き込み利用する事になるけど許してね。」
着任メンバー全員が挨拶を交わす。
「別に構わん、さあ、鎮守府生活の準備をして復讐の航海に出撃だ!」
こうして暁レイの復讐が始まったのだった。